6月14日から3ヶ月に渡って繰り広げられた素数大富豪トーナメント第2期HNP杯が終了しました。決勝では予備予選から全勝で勝ち上がってきたマリンさんを破り、HNP杯2連覇を達成しました。
今回もデータ分析の結果を述べていきます。
基本情報
まずは第2期HNP杯の概要のおさらいから。
- 予備予選: 参加者12名(カステラ第1期HNP杯選手権者を含む)が抽選で決められた4名とそれぞれ2本先取の試合を行う。勝数の多い順(同数の場合はセット勝率の高い順、当該プレーヤー同士の対戦成績順(予備予選で対戦があった場合))に本戦トーナメントの順位を決定する。ただし現HNP杯選手権者は7位以上になった場合、現HNP杯選手権者は本戦トーナメントを免除され決勝トーナメント進出。この場合、現HNP杯選手権者より下のプレーヤーに対し順位の繰り上げが行われる。
- プレーオフ: 勝敗・セット勝率・当該プレーヤー同士の対戦成績で順位が決まらないときは該当者同士で1本先取・総当たりのプレーオフを行い順位を決定する。実際は9位・10位決定戦(該当者2名)が行われた。
カステラ第1期HNP杯選手権者は予備予選において4位となり決勝トーナメント進出が決定。
- 本戦トーナメント: 現HNP杯選手権者を除く11名を予備予選の順位に応じて2ブロック(A・B)のパラマス式トーナメントに振り分け、2本先取の対戦を行う。各ブロックから勝ち残り者および最多勝利者(勝ち残り者を除く。予備予選の勝数を含める。複数いる場合は予備予選の上位者)の2名、合計4名が決勝トーナメント進出。さらに各ブロックから本戦トーナメントで1勝以上挙げたプレーヤーでもっとも上位まで勝ち進んだ者(前述の決勝トーナメント進出者を除く)および最多勝利者(前述の各事項の該当者を除く。予備予選の勝数を含める。複数いる場合は予備予選の上位者)の2名、合計4名がワイルドカード決定戦へ進出。
- ワイルドカード決定戦: 進出者4名によるトーナメント。2本先取。勝ち上がり1名が決勝トーナメント進出。
- 決勝トーナメント: 現HNP杯選手権者・本戦トーナメント勝ち抜け者4名・ワイルドカード決定戦勝ち抜け者1名の合計6名によるトーナメント。現HNP杯選手権者および本戦トーナメント勝ち抜け者の中で予備予選が最上位のプレーヤーはシードとなる。3本先取。
分析対象はHNP杯の全試合(42試合・113勝負)です。
行動データ
素数出しやグロタンカット・ペナルティなどの割合を比較します。比較対象は以下の通り。
第3期Mathpower杯(2018年10月)/マスパーティ杯・一般の部(2019年10月)/第1期HNP杯(2020年4月~7月)/マスプライム杯2020(2020年9月(オンライン予選)・11月(決勝大会))/第2期蝉王戦(2020年7月~11月)/第2期雪華流星戦(2020年11月~2021年4月)/マスプライム杯2021(2021年7月(オンライン予選)のみ)
第2期雪華流星戦のデータ分析記事で素数出しの割合は46%に収束するだろうという旨を述べましたが、第2期HNP杯では46%を割り込み過去最小となりました。
第2期雪華流星戦*1と比較してグロタンカットの割合は減少、ラマヌジャン革命の割合は上昇、合成数出しの割合の減少という結果になっておりますが、その原因として全出し戦略から生じるさまざまな要素が影響していると考えられます。具体的には
- 全出し戦略を採ろうとして全出ししたところ素数で上がってしまったことが(たまたま)多かった(初手全出しHNPが5回・初手11枚出しHNP*2が2回・先手全出し直後の後手の全出しHNPが4回)。→相全出しでは頻繁に出るグロタンカットの割合が減少。
- 本来全出しが多いマリンさんが全出し戦略に持ち込む展開が(たまたま)少なかった(全出ししなくてもほぼ勝ち確定の初期手札・初手11枚出しがHNP・全出し直後の後手が全出しHNPなどでマリンさんが先手だった13勝負のうち全出し戦略が使える展開になったのはわずか1勝負)。→相全出しでは頻繁に出るグロタンカットの割合が減少。
- 相全出しになった後、革命状態したいプレーヤーと平常にしたいプレーヤーとの間で拮抗し革命の出し合いが相次いだ(2回以上革命が起きたのが9勝負(2回が5勝負・3回が1勝負・4回が2勝負・5回が1勝負*3 ))。→ラマヌジャン革命の割合の上昇。
- overKJQJが出る回数が少なかった(5回/113勝負。第1期HNP杯は17回/139勝負・第2期蝉王戦は16回/201勝負・第2期雪華流星戦は13回/205勝負)。→合成数出しの割合の減少。
相全出しが少なかったこともあり、1勝負当たりの平均手数は9.4手とマスパーティ杯・一般の部(8.8手)*4や第2期雪華流星戦(9.1手)に次ぐ低水準。中央値は5手と過去最小になりました(表にはありませんが札幌杯・無差別級(2020年2月)において平均手数7.4手、中央値5手を記録)。
また、overKJQJが減り革命が増えた原因として手札の偏りによる部分もあるかと思いますがoverKJQJは戦術として確立し対策もされるようになった(4枚出しを避ける・overKJQJにoverKJQJで返されるのを警戒し比較的小さなoverKJQJは出されなくなった)一方で、革命はいまだ戦術が整備されておらず(整備すること自体の労力が大変)力戦になりがちである(結果として形勢が不安定で革命が何度も起こる)ことが挙げられます。
出された数について
複数回出された数、およびその中で複数のプレーヤーが出した数をそれぞれ一覧にしました。
上位に入る数たちは多少の順位変動はあれど顔ぶれはこれまでどおり特殊(57・1729・X)、各枚数の最大クラスの素数・合成数、1・2枚出し、偶数消費の素数が並びます。
表にある数で個人的に気になったものをピックアップして紹介します。
- 86423(5回)・24683(3回)/463・643(各2回) 同じカードの組み合わせでできる素数が同時にランクイン。プレーヤーによって覚えている数が違ったり、平常時と革命時で使い分けることでこうした現象が発生します*5。現にもるぴかさんが平常時に86423、革命時に24683と使い分けていました。
- 8121013(4回)・8121011(3回) 第2期雪華流星戦では8121011が12回、8121013が1回だったのが今大会では逆転。第2期雪華流星戦のデータ分析記事で8121011はoverKJQJ戦略の下で頻出する素数であることを述べましたが、今大会ではoverKJQJが少なく8121011の回数が伸びませんでした。一方で8121013はもるぴかさんが3回出したことで全体の回数も増えました。
- 98765432110111213(3回) 1桁のカードを降順に並べたあとに2桁のカードを昇順に並べてできる13種13枚の素数。なお13種13枚素数の最大は98765432131121011です。
- 6653・66553(各2回) 一見何の変哲もない偶数消費型素数ですが、昨年度(2020年度)を通して1回も出されなかった素数です。これまで出されなかった原因としては似ている著名な素数がありそちらが優先される(5651・5653・5657・5659で合計12回、65651・65657・56569・56659で合計6回、66523が2回出ている)、5はグロタンカットに使われることが多いことなどが考えられます。
- 44887(2回) 同じく昨年度1回も出されなかった素数ですが、上位互換の48487・48847が各1回出ております。今大会では2回とも革命下で出されました。また44887はマスプライム杯2021オンライン予選でも1回出されました(巽さんが出会った)。
プレーヤーごとの集計
これまで各大会ごとに何名かのプレーヤーを選出しそのプレースタイルの比較を行っておりましたが、今回は長期的なプレースタイルの傾向を見るため、また安定した結果を得るため今年度(2021年度)の大会がすべて終了したあとに分析したいと思います。とはいえそれだけ記して分析を終えるのも素気ないと思うのでプレーヤーごとの行動データの表とグラフをつくりました。
グロタンカットを最も多く出した人”グロタンカッター”はマリンさん(11回・第2期雪華流星戦に続き2大会連続)、ラマヌジャン革命を最も多く出した人”革命家”は完全数さん(8回)、単独ジョーカーを最も多く出した人”道化師”はnishimuraさん(5回・第2期雪華流星戦に続き2大会連続)でした。
まとめ
HNP杯と銘打たれた大会ということもあってか、HNPによって全出し戦略になることが少なくなった影響が大きく現れた結果となりました。100~200勝負程度では確率の偏りによってこうしたことが起こることを身をもって体験しました。サンプルの数がもっと増えれば多少は軽減されるかもと思いながら筆を置くことにいたします(無い筆を置く)。
現在、第3期蝉王戦およびサブ大会の参加者募集中です。応募フォームはこちら。
docs.google.com
明日(9月25日)はマスプライム杯2021決勝大会です。見どころ紹介記事はこちら。
graws188390.hatenablog.com