初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第2期蝉王戦】データ分析

7月13日から素数大富豪オンラインで開催された素数大富豪トーナメント第2期蝉王戦は11月7日に決勝が行われ、私が優勝しました*1。さて、HNP杯に引き続き大会を通してのプレーの分析をしました。採譜に関しては他のプレーヤーの提供もあり、すべての試合のログを集めることができました。ここに感謝いたします。

基本情報

第2期蝉王戦の概要を振り返りましょう。

  • 予選リーグ: 参加者22名(nishimura第1期蝉王を除く)を抽選で2つのリーグ(リーグ13・リーグ17)*2に各11人ずつ振り分ける。各参加者は同じリーグのうちの6人(対戦カードはリーグ振り分けと同時に決定)とそれぞれ2本先取の試合を行う。勝数の多い順(同数の場合はセット勝率の高い順)に各リーグの上位5名、および残りの12名のうちの最上位の合計11名が決勝トーナメントへ進出。
  • 決勝トーナメント: 予選リーグを勝ち抜けた11名とnishimura第1期蝉王の合計12名によるノックアウト方式のトーナメント。nishimura第1期蝉王と予選リーグの成績上位者はシードとなる。3本先取。

分析対象は第2期蝉王戦の全試合(77試合・201勝負)です。

  • 予選リーグ(66試合・154勝負)
  • 決勝トーナメント(11試合・47勝負)

HNP杯との比較のため、行動データ・出された数・プレーヤーごとの集計の3つの観点からみていきます。HNP杯のデータ分析はこちら。
graws188390.hatenablog.com

行動データ

素数出しやグロタンカット、ペナルティなどの割合を比較します。前回使用した第3期Mathpower杯(2018年10月)・マスパーティ杯・一般の部(2019年10月)・HNP杯(2020年4月~7月)の他、マスプライム杯2020オンライン予選(2020年9月)のデータも参照します*3
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HNP杯のときには以前(第3期Mathpower杯)より素数出しが減少し、ペナルティが増加したと述べましたが、第2期蝉王戦は各分類の割合は概ねHNP杯とほぼ同じでした。マスプライム杯2020オンライン予選で多少以前の傾向に戻ったように見えますが、初心者同士の対戦など以前のような試合が多かったことを考えると、熟練者の対戦におけるプレースタイルはHNP杯以降安定しつつあると思われます。一方で、単独ジョーカーや合成数出しが若干減っています。単独ジョーカーの減少はある程度意図的に狙う*4ことができ、戦略というよりも嗜好の変化の影響がありえます*5合成数出しの減少は後述するoverKJQJの対策によるものが考えられます。

出された数について

HNP杯と比較して出された数に変化があったかを調べるために、複数回出された数を一覧にしました。
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HNP杯ではグロタンカット57、ラマヌジャン革命1729、単独ジョーカーXの特殊効果のある3種が上位を独占しましたが、第2期蝉王戦では4枚出し最大素数13111211と3枚出し最大素数131311が単独ジョーカーの回数を上回りました。以下、各枚数の最大クラスの素数合成数出しが並ぶのはHNP杯と同様ですが、2枚出しの増加に伴い101(HNP杯1回→第2期蝉王戦10回)、811(4回→9回)、911(3回→9回)、1213(3回→10回)などが回数を伸ばしました。
overKJQJについては、マスプライム杯2020オンライン予選でわずか1回しか出されなかったなど傾向の変化の兆しがあったので、数ごとに出された回数をまとめました。(13111211以下は4枚8桁素数)
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手番総数がHNP杯の約1.33倍になったにもかかわらず、回数がわずかに減る結果となりました。しかも出されたoverKJQJの半分が事実上最強の13131312です*6。これはoverKJQJを使う戦術が普及した結果、overKJQJでも返される可能性のある小さいものはたとえ揃っても出すのを控えた可能性があります。そのためか、HNP杯ではoverKJQJにoverKJQJで返すプレーが3回ありましたが第2期蝉王戦では0回でした。他にはoverKJQJは使うプレーヤーは増えたものの、実は13131312といったメジャーなものしか知らない・使えないという仮説が考えられます。表にあるoverKJQJはどれも比較的揃いやすく、HNP杯・第2期蝉王戦ではともに出ませんでしたが13121312=2^5*41*73*137、13121011=101*163*797、13111312=2^4*819457、13111213=89*179*823なども大会以外で行われる対戦でたびたび見られましたので、戦略のレパートリーにぜひ。
前回の分析に引き続き、複数人が出した数の一覧もつくりました。
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各枚数の最大クラスの素数合成数や偶数消費型が多いほか、98765431や986543などの連番型素数、8104Xや691210113Xなどの四つ子素数が見られます。また、8623や8627は表にないのに8629(ハム肉)はある、66449は表にないのに46643(よろろしみ)*7はあるなど語呂合わせの有無による普及度の偏りがあるようです。

プレーヤーごとの集計

プレーヤーを何人かピックアップし、プレースタイルの違いを見ていきます。今回はベスト4のカステラ・かいたいさん・マモさん・けんさんの他、注目のプレーヤーとしてささらさん、なきゃのさんを選びました。
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(※ 枚数クラスごとの”○○/△△”は場にその枚数クラスに属する数が出されたのが△△回で、そのうち正しく出されたものが○○回であったことを表します。合成数出しカマトトは場の数の属する枚数クラスに計上しました。)
全体の傾向としては6枚クラス(HNP杯59/90→第2期蝉王戦128/164)や8枚クラス(17/40→50/78)が増えて多枚出しのレベルがまた一段上がりました。12枚クラス(5/25→6/52)は挑戦回数が増えているものの成功率は下がっており、初手全出しおよびそれを受けての後手全出しの増加が窺えます。それを踏まえると、プレーヤーごとに次のような特徴が認められます。

  • カステラ: HNP杯ほどではないが勝負数に対する総手数が少ない短期決戦型。枚数クラス別では6~9枚の精度が高いほか、11~12枚クラスでのHNPを4度記録した。合成数出しが多い。
  • かいたいさん: HNP杯での多枚出しからoverKJQJにシフト。全プレーヤーの中で最多となる4回のoverKJQJを記録。グロタンカット23回は断トツ(2位はなきゃのさんの15回)。
  • マモさん: 全体の平均に近いプレースタイル。第3期Mathpower杯での4枚出し主体から6~9枚出しに精度よく出し、高い適応力を発揮している。
  • けんさん: 全出しの後のoverKJQJを勝負手に据えた4枚出しの比重が高く、overKJQJを出した回数はかいたいさんに次ぐ3回。ラマヌジャン革命を多用する。
  • ささらさん: HNP杯のときよりも多種多様の素数を出すようになった。出す枚数も若干増えている。
  • なきゃのさん: 7~8枚クラスで絵札の多い素数(QTJK素数など)を繰り出す。大会の最大素数(433612645678910111213)を記録。

グロタンカットを最も多く出した人”グロタンカッター”はかいたいさん(23回)、ラマヌジャン革命を最も多く出した人”革命家”はけんさん(6回)、単独ジョーカーを最も多く出した人”道化師”はししとうさん(4回)でした。

まとめ

HNP杯が終了した直後に行われた大会とあって、全体の傾向の変化はわずかでしたが、overKJQJの扱い方に関してはマスプライム杯2020オンライン予選終了直後にもりしーさんが指摘していた変化*8を検証できました。今後もデータ分析を通して戦略のトレンドを追っていこうと思います。

おまけ

素数大富豪イロレーティングを第2期蝉王戦の分まで計算いたしました。結果は以下の通りです。イロレーティングについてはこちらの記事を参照。
graws188390.hatenablog.com
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*1:全出しを2連発で決めるなど運に恵まれた結果、3-0で勝ちました。prime-meeting.hatenablog.com

*2:13と17は素数蝉の周期に由来

*3:第3期Mathpower杯とマスパーティ杯・一般の部については動画配信サイトで放送された試合を対象に集計。

*4:たとえば自分の手番で手札が(QKX)のときにKQX|X=K(他の3枚出しでもOK)と上がるかX[IN]→QKと上がるか選べる。

*5:嗜好の変化については大会を勝ち上がった人にも依るので難しい問題ではあります。

*6:13131313=13*73*101*137は奇数とKの消費が多くほとんど出せない。

*7:4649(よろしく)の関連で4643(よろしみ)があるのでその発展型。

*8:マスプライム杯2020オンライン予選でoverKJQJが1回しか出されなかったことについての考察。

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