初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】準々決勝-1 もりしー-ぶっち

大変お待たせいたしました。今回より準々決勝に入ります。2回戦までは2本先取でしたが、準々決勝から3本先取になります。白熱した試合が増えますね。
1試合目はもりしーさんとぶっちさんという顔合わせ。もりしーさんは前期Mathpower杯覇者。2回戦(vsくじらさん)の様子は以前書きました。ぶっちさんは第1期ベスト4の古豪。今期はシードで2回戦でいとうさんに勝利しての準々決勝進出です。なおこの試合から素数判定員が変わっております。じゃんけんによりぶっちさんが1本目の先手となりました。

1本目(15:02:48~15:12:51*1 )

初期手札 ぶ:(A446778TTKX) も:(A2567899QQQ)
ぶっちさんは絵札4枚(ジョーカーを含む)で悪くはないですが3,4枚出しでは決定的な勝負手になりそうな素数はつくれず攻撃力がない印象。もりしーさんの初期手札はQが3枚あることがカギとなりそうです。Qは2,3枚出しでは素数のバリエーションが少なく使いづらいカードですが、4枚出し以上では絵札としてその威力を十分に発揮できます。先手であれば即座に多枚出ししたいところですが今は後手。ぶっちさんが少ない枚数で出し続ければQが「お荷物」になります。

1.ぶ:647
2.も:D(4)658,P(QKX)
ぶっちさんの1手目は647。64XはX=A,3,7で素数になる三つ子素数で3枚出しの中では使いやすい・覚えやすい素数です。「むじな」で通じるらしい。対するもりしーさんはドローの後658。初期手札が悪いと踏んだのかカマトトに出ました。そして4枚目のQ、K、ジョーカーを手に入れます。

3.ぶ:D(3)47
4.も:D(5)57[GC]
ぶっちさんは47を出します。2枚出しでは57より小さい素数は出さないほうがよいです。というのは57を出されるとグロタンカットで場が流れ、相手は絵札を消費することなく親になってしまうからです*2。そのため59,6A,64=2^6など57より少し大きい2枚出しが好まれて出されます。もりしーさんは5,7を1枚ずつ持っていますが5は他の手札数枚とともに左側に寄せ大物手の1枚として使う様子で、57を出すかは何とも言えない状況です。ドローするとなんと5を引いてきました。これで57を出せ、さらに組んだ手札を崩さずに済みました。
4手目終了時の両者の手札 ぶ:(A38TTKX)(残7枚) も:(A2456899QQQQKX)(残14枚)

5.も:D(9)9629
6.ぶ:8TTK,P(237J)
もりしーさんはドローして9。Q・4枚に続いて9も3枚となりました。9629(黒肉)を出します。前の試合の8629(ハム肉)もそうですが「~肉」で終わる語呂合わせ素数はたくさんあります。まさに飯テロ。ちなみにもりしーさんの手札右側の(49QK)は4KQ9と並べれば「鹿肉(4KA29)」と読める素数になります。ぶっちさんが出したのは8TTK。残り手札は(A3X)で8TTKで勝負に出たようです。しかしこれは合成数(8101013=31*261323)。再びもりしーさんの手番になります。

7.も:X5QQQ8A|X=3
8.ぶ:%
もりしーさんが満を持して出したのはX5QQQ8A|X=3。35億!*3ぶっちさんは時間ギリギリでA3T2T8Kを出しますが場の3512121281よりも小さいため出すことは認められず強制的にパスとなります。
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9.も:9Q4K#
最後にもりしーさんが出したのは9Q4K。この4枚で出せる最大の素数で上がりとなりました。

35億素数が綺麗に決まりもりしーさんが1本目を取りました。

2本目(15:13:21~15:29:48)

初期手札 ぶ:(A22447789JX) も:(33455667799)
ぶっちさんの初期手札は絵札がJ,ジョーカーの2枚と少なめですがラマヌジャン革命A729が揃っています。もしこれを出してもりしーさんがパスしたとすると残り手札は(24478JX)。ここからたとえば2→X[IN]→7448J*4という出し方が考えられます。もりしーさんはなんと絵札ゼロ。なお初期手札11枚に絵札(T,J,Q,K,ジョーカー)が1枚も含まれない確率は約0.63%(160回に1回程度)でなかなか珍しい。革命時に強いAや2も手札になく、いきなりピンチといった状況。
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1.ぶ:D(6)A6=2^4
2.も:D(T)57[GC]
ぶっちさんはシンキングタイムが終わるとすぐにドロー。6を引きます。その6を使ってA6=2^4の合成数出しです。念のため合成数出しについて補足しておきますと、素因数場で指数出しを使う際、底はもちろん素数でなければなりませんが指数は2以上であれば素数でなくてもOKです(今回の場合は4)。また指数部分をさらに冪乗で出すこともできますが、その場合は右から計算します(たとえば2^3^2は2^(3^2)=2^9=512であって(2^3)^2=8^2=64ではない)。ぶっちさんはこれで手札を4枚消費しましたが場はA6なので1本目と同様グロタンカットされる可能性があります。もりしーさんはドローの結果、絵札Tを引きます。少しの時間考えてから57を出しましたが、グロタンカットで手番を取ったあとの戦略を練るのに時間を使ったようです。

3.も:D(6)66653
4.ぶ:D(8)4889J,P(A28TK)
3手目のもりしーさんのドローは6で手札の6は3枚に。それを66653で全部使います。解説ルームのせきゅーんさんによれば66653は左切り取り可能素数、すなわち66653,6653,653,53,3と左から1桁ずつ切り取っていってできる数がすべて素数です。素数1つを覚えるだけでいくつも同時に素数を覚えられることもあり、記憶しているプレーヤーも多いかと思います。対するぶっちさんは4889Jを出します。これが素数で、場が流れればX[IN]→727で上がりでしたが4889Jは合成数(488911=23*29*733)。手番を取ることができません。
4手目終了時の両者の手札 ぶ:(A224778889TJKX)(残14枚) も:(34799T)(残6枚)
integers.hatenablog.com

5.も:D(3)3
6.ぶ:X[IN]
もりしーさんがドローしたのは3。絵札は2手目に引いたTのみでまだまだ苦しい状況が続いています。結局ドローした3をそのまま出しました。ぶっちさんはこのままもりしーさんに親を握り続けられるのを嫌ってかジョーカーを出します。

7.ぶ:89
8.も:D(T)94,P(QQ)
ジョーカーで手番を得たぶっちさん、ここで何を出すかが重要になります。出したのは89。もりしーさんはドローの後、94を出してさらに山札を引きます。手番は再びぶっちさんに移りますが、この1手で絵札を3枚手に入れました。
8手目終了時の両者の手札 ぶ:(A2247788TJK)(残11枚) も:(34799TTQQ)(残9枚)

9.ぶ:47
10.も:D(Q)T9
11.ぶ:8J
12.も:D(K)QK
13.ぶ:D(K)%
9手目にぶっちさんが出したのは47。2枚出し攻勢を続けるようです。もりしーさんはまたも絵札(Q)をドローし、T9を出します。せきゅーんさんによると109は地球と太陽の直径比だそうです*5。ぶっちさんは即座に8Jを返します。ここでもりしーさんは絶好のタイミングでKをドローしQK。ぶっちさんはドローしてパスします。

14.も:QQT3
15.ぶ:%
もりしーさんはQQT3を出します。今が勝負の時と睨んでの4枚出し。QQT3は4枚出しの中ではそこまで大きな素数ではありませんが、ぶっちさんが4枚出しをあまり覚えていないだろうという読みも込めて出したと思います。ぶっちさんの残り手札は(A2278TKK)。7TKKが出せれば822Aで上がれます。ところが時間いっぱいのところでぶっちさんが出したのはKKT87。枚数が違うため手札に戻されパスとなります。

16.も:947#
もりしーさんが残りの手札を出し切って2本連取となりました。

もりしーさんは初期手札絵札ゼロという大劣勢を見事にひっくり返し勝利しました。

3本目(15:30:46~15:37:29)

初期手札 ぶ:(245578TTTQX) も:(AA233789JJQ)
3本目を前に帽子を脱いだぶっちさん、巻き返せるか。初期手札は絵札がジョーカーを含めて5枚あるものの奇数が7しかなく素数が非常につくりづらい。もりしーさんは絵札3枚でまずまずの初期手札ですがKがないのが惜しい。ラマヌジャン革命を起こすのも作戦のひとつとして考えられます。

1.ぶ:D(2)QT27,P(6667)
1手目、ぶっちさんはドローしますが引いたのは2。奇数を引けず。QT27を出しますが素数ではありません(121027=37*3271)。ちなみに(2,7,T,Q)は詰んデレセットです(素数になるのは2TQ7のみ)。偶数を消費することはできませんでしたがペナルティは奇数を引くチャンスでもあります。しかし、ペナルティで引いた4枚は(6667)。奇数は1枚だけであまり嬉しくない結果に。

2.も:D(5)57[GC]
もりしーさんはドローした後、長考に入ります。まずは残り10秒まで考えてからグロタンカット。

3.も:D(3)2A3J3J3A
4.ぶ:%
そして再びドロー。要領よく手札を並べ替え2A3J3J3Aを出します。大会史上初の8枚出し成功です。解説ルームも出された当初は困惑の様子でしたが2のあとに131(KA)を3つ並べたものだとわかると「『ニカカカ』*6って何ですか?」(みうらさん) まあ何であれ覚えやすいならいいんじゃないんですかね。なお213113113Xは四つ子素数だそうです*7。対するぶっちさんはQT466687を出しますがまたも場より小さい数を出してしまったので認められず、時間切れで強制パス。
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5.も:Q89#
もりしーさんが最後に出したQ89は素数。3本目ももりしーさんが勝利し準決勝進出を決めました。

前期Mathpower杯覇者がぶっちさんをまったく寄せ付けない試合運びでストレート勝ち。

講評

この試合はまさにもりしーさんの独壇場となりました。もりしーさんは今期のMathpower杯に向けて「35億素数」や大きな四つ子素数を中心に素数を覚えてきたようで、その成果が現れた結果となりました。Mathpower杯は2019年1月現在その試合経過が生放送される唯一の素数大富豪大会なので「魅せプレイ」を積極的に狙っていく絶好の機会です。とくに「35億素数」が出されたときの盛り上がりは今大会の名場面のひとつになりました。詳しいいきさつについてはもりしーさん自身がMathpower杯を振り返ったこちらの記事を参照。
prm9973.hatenablog.com

2本目は前述のような映える素数はなかったもののもりしーさんの底力が発揮された勝負だったと感じます。2本目のもりしーさんの初期手札は絵札がなく。その時点で負けを覚悟してもおかしくない状況でした。しかしもりしーさんは諦めません。まずグロタンカットで親をとると66653を出します。これは偶数を消費するだけでなく多枚出しによってぶっちさんが返せずに再び親をもつことが大いに期待できる出し方です。ぶっちさんがペナルティを受けた後、もりしーさんは3の1枚出し。ここがこの勝負のポイントとなりました。この時点でぶっちさんから見るともりしーさんは初期手札から3枚ドロー、8枚出して残り手札は6枚。出しているのはすべて1桁のカードですからJ,K,ジョーカーが手札にあってそれを温存しているように見えます。もりしーさんの残り手札にジョーカーがあったとするとぶっちさんはジョーカーを返さない限りもりしーさんが再び親となります。なのでぶっちさんがあの場面でジョーカーを出したのはそれを阻止するということで悪手ではありません。ただしもりしーさんからするとぶっちさんにジョーカーを出させたという点ではもりしーさんの作戦勝ちといえるでしょう。

その後ぶっちさんは2枚出し攻勢を仕掛けます。2枚はすべての偶数カードが消費できる最小の枚数で素数大富豪の入門としては基本ですが、戦略面からいうと2枚出しは注意を要します。まず2枚出し素数が揃いやすいこと。初期手札が悪くてもドローやペナルティを繰り返せば最大素数(QK)やそれを超える合成数出し(KQ=2^5*4Aなど)が3枚出し以上に比べて容易に揃います。しかも1手で消費できる枚数が少ないので手数が多くなりドローの機会も多くなります。そのため2枚出しが主体の勝負では初期手札の優劣はあまり問題になりません*8。ぶっちさんの2枚出しに対し、もりしーさんはカマトトやドローを駆使し絵札をためてQKを揃えました。

次にグロタンカットの存在です。前述のように57を出すと即座に親がとれるので57より小さな2枚出しは(相手にグロタンカットを出されないように)避けることが多いです。ところが4を使う2枚出し素数はすべて57より小さい(4A,43,47)ので4を2枚出しで出そうとなると57より小さくても出すか、または合成数出し*9をしなければなりません。つまり4は2枚出しでは消費しにくいのです。ぶっちさんが57より小さい2枚出しをしたのがこの試合を通して2回ありましたが、その両方に4が含まれています(47,A6=2^4)。そして2回とももりしーさんにグロタンカットを出されています。

さて、もりしーさんにストレート負けを喫したぶっちさんですが、反撃の機会は何度かありました。1本目のX5QQQ8A|X=3や3本目の2A3J3J3Aの多枚出しの直後の勘出しは可能性は低いものの決まれば勝負の展開が大きく変わっていたかもしれません。実際は出したものの場に出ている数より小さいため認められず、残念な結果になってしまいました。また、3本目は初期手札が偶数ばかりだったので、思い切って初手全出しもありだったと思います。もし素数であればそれで1本取れますし、素数でなかったとしても手札が20枚以上となって戦略の幅が広がり、もりしーさんも戦いづらくなったかもしれません。ただし後者の効果は全出しをする方がある程度多枚出しを知っていることが前提となり、今回の場合その効果はあまり期待はできなかったでしょう。とはいえ全出し成功が一番の「魅せプレイ」であることは言うまでもありません。

この試合の数譜を改めて見てみます。

1本目
ぶ:(A446778TTKX)
も:(A2567899QQQ)
ぶ:647
も:D(4)658,P(QKX)
ぶ:D(3)47
も:D(5)57[GC]
も:D(9)9629
ぶ:8TTK,P(237J)
も:X5QQQ8A|X=3
ぶ:%
も:9Q4K#


2本目
ぶ:(A22447789JX)
も:(33455667799)
ぶ:D(6)A6=2^4
も:D(T)57[GC]
も:D(6)66653
ぶ:D(8)4889J,P(A28TK)
も:D(3)3
ぶ:X[IN]
ぶ:89
も:D(T)94,P(QQ)
ぶ:47
も:D(Q)T9
ぶ:8J
も:D(K)QK
ぶ:D(K)%
も:QQT3
ぶ:%
も:947#


3本目
ぶ:(245578TTTQX)
も:(AA233789JJQ)
ぶ:D(2)QT27,P(6667)
も:D(5)57[GC]
も:D(3)2A3J3J3A
ぶ:%
も:Q89#

次回はOTTYさんとマモさんの「北海道対決」です。

お知らせ

改めまして新年あけましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いいたします。
さて、年々盛り上がりを見せる素数大富豪ですが、2019年から「素数大富豪で遊ぼう会」*10の初代幹事・二世さんの呼びかけでオンライン素数大富豪デーが開催されることになりました!
nisei.hatenablog.com
これはオンラインで素数大富豪ができるサイト素数大富豪オンラインを使って素数大富豪をしよう、という企画です。予定では毎週日曜日の19時からおよび毎月13日の21時からで、今日はその初日です。誰でも参加可能なのでぜひアクセスしてみてください! 私も参加するつもりなのでよろしくお願いいたします。

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:それで上がりとなる場合や自分から5や7が3~4枚見えているなどで相手が57を持っていないと思われる場合はこの限りではありません。

*3:この”!”は階乗を表す記号ではありません。感嘆を表す記号です。また35億は2010年代半ばにおける世界の男性人口の概数です。

*4:「744はj-不変量の定数項」tsujimotterさんが2018年8月のロマンティック数学ナイトで紹介した素数

twitter.com

*5:INTEGERSにも書いてありました。integers.hatenablog.com

*6:素数を語呂合わせで覚えるのにKAで「カ」、TAで「タ」と読むことが多いです。日本語に頻繁に現れる音にもかかわらずうまく対応する数字がないのでこれは非常に便利です。

*7:213113113Xについてのもりしーさんのツイート

twitter.com

*8:裏を返せば多枚出しは揃いにくいので初期手札の時点でどれだけ揃っているかが重要になります。多枚出しをするプレーヤーが増えて「素数大富豪は運ゲー」といわれるようになった理由のひとつです。

*9:KQ=2^5*4Aの他に64=2^6,8A=3^4,86=2*43,94=2*47などが使いやすいです。

*10:札幌を中心に月1,2回開催される素数大富豪がしたい人が集まって素数大富豪をするイベント。もりしーさんが二世さんから引き継いで幹事を務めている。

極める合成数出し ~ふみこさんは愛に生く~

この記事は素数大富豪Advent Calendarの19日目の記事です。
adventar.org


今年も早いもので残りK日となりました*1。さて、本日、私・カステラが取り上げるテーマは「合成数出し」です。素数大富豪は「決められた出し方に沿ってカードを出し最も早く手札をなくしたプレーヤーが勝つゲーム」という点では大富豪やページワンなどと同じですが、「任意の(2以上の)整数は素数の積に一意に分解される」という素数の特徴*2が反映された合成数出しこそ素数大富豪を素数大富豪たらしめていると言ってよいでしょう。合成数出しの誕生のいきさつは素数大富豪の考案者・せきゅーんさんのブログに詳しく書かれています。
integers.hatenablog.com
この記事ではそんな合成数出しについて主に戦略面を中心に語っていきます。

強い合成数出し

素数出しにおいても強い素数があるように、合成数出しにも強い合成数が存在します。

2枚出し
  • KT=2*5*KA
  • KJ=3*19*23
  • KQ=2^5*4A
  • KK=K*TA

以上の4つが2枚出し最大素数QKより大きな合成数です。単に強いだけでなく2枚出しで手札を一度に5~7枚も消費できることも魅力的です。とくにKQについては初期手札の時点から揃っている場合が他と比べて多いので、見つけたときにはそれを勝負手にして手札を組むとよいでしょう。

3枚出し
  • KKQ=2^4*29*283
  • KKK=3*7*K^2*37

3枚出し最大素数KKJより大きな合成数はこの2つですが、2枚出しと比べると出される頻度は一気に下がります。というか揃うことが滅多にない。そこで比較的出しやすく戦略に幅をもたせることからオススメするのが合計8枚消費の3枚出しです。これは初期手札11枚を

  • (3枚出し)→(8枚消費の3枚出し)

に分けて出すことでKKJなどの強い素数がなくても、最初の3枚出しに対する相手のカウンターが小さければ残り8枚を一気に出して上がることができる「必殺技」です。以下に2万以上の3枚出しのうち、合計8枚で出せる合成数をまとめました。あなたのお気に入りを見つけて実戦で出してみましょう。

  • 2JT=2*5*2AJ
  • 2JK=43*49A
  • 2KT=2*5*2KA
  • 2KJ=TA*2AA
  • 3TJ=3*T337
  • 3JJ=53*587
  • 3QT=2*5*3QA
  • 3QJ=23^2*59
  • 3QK=7^3*7*A3
  • 3QK=7^2^2*A3
  • 3QK=7^2*7^2*K
  • 3QK=7^2*7*7*K
  • 3QK=7*7*7*7*K
  • 4JT=2*5*4AJ
  • 4JJ=7^2*839
  • 4JJ=7*7*839
  • 4KJ=T9*379
  • 4KQ=2^5*Q9A
  • 5TT=2*5*5TA
  • 5TK=K9*367
  • 5JJ=3^4*63A
  • 5JK=79*647
  • 5QJ=83*6A7
  • 5KJ=K*3947
  • 5KK=23^2*97
  • 6TT=2*5*6TA
  • 6QT=2*5*6QA
  • 6KT=2*5*6KA
  • 6KQ=2^7*479
  • 7JK=7*TA59
  • 7QT=2*5*7QA
  • 8JT=2*5*8AJ
  • 8JQ=2^3*TK9
  • 8QJ=K*6247
  • 9KK=Q7*7A9
  • TJT=2*5*TAJ
  • QTT=2*5*QTA
  • KQT=2*5*KQA
4枚出し以上

4枚出し以上になると合計11枚の合成数出しが狙えるようになります。つまり初期手札の全出しです。素数大富豪cpuと対戦していると時折cpuが初期手札全出し合成数をすることから、初期手札11枚が実は合成数出し可能であったということが少なからずあるわけです。とは言うものの実際にそれをその場で計算して見つけるのは非常に困難です。しかも、初期手札は合成数出しの形の順番どおり都合よく並んでいるわけではありませんから仮に覚えていたとしてもそれをバラバラに並んだ初期手札から見つけるのは容易ではないです。そこでより見つけやすい合成数を優先して覚えるのがひとつの作戦です。どんな合成数が「見つけやすい」かは個人の感じ方によるため、一概に言うことはできませんが、ここでは使用するカードがばらけているものを取り上げます。初期手札にダブりがあるかどうかは簡単に判断できるので、もしなかった場合は以下の合成数出しが出せるチャンスがあります。

必要な11枚がすべて異なる11種11枚合成数出し(カッコ内は含まれない2種)(追記(2019年1月23日):新たに見つかったものがあったので追加しました)

  • 4AJQ=2^3*K*59*67 (8T)
  • 4K6T=2*3*5*A7*8J (9Q)
  • 6JK4=2*3A*9857 (TQ)
  • 7Q9T=2*5*J*648A (3K)
  • 85KQ=2^4*7*J*69A (3T)
  • QKT6=2*7A*8543 (9J)
  • 85674=2*3*T9*KA (JQ)
  • Q5378=2*J*4A*K9 (6T)
  • Q9A84=2^5*J*367 (TK)
  • K8976=2^5*43*TA (JQ)
  • 3869Q=2^5*T7*AK (4J)
  • 5Q86A=43*J927 (TK)
  • 58AK6=2^4*3*QT7 (9J)
  • 58KA7=J*43*Q29 (6T)
  • 6Q253=4A*T9*K7 (8J)
  • 68AK4=2*97*35J (TQ)
  • 76T48=2^3*95KA (JQ)
  • 8T7A4=2*3*K5J9 (6Q)
  • 8523K=7*J*AT69 (4Q)
  • 9Q7A8=2*43*T6K (5J)
  • 9624J=857*AQ3 (TK)
  • T8Q23=J*K*756A (49)
  • T853Q=2^7*6A*K9 (4J)
  • AQJ59=K*86243 (7T)
  • QA5T4=2^7*J*863 (9K)
  • A78629=3*J*54K (TQ)
  • 3654A7=K*28T9 (JQ)
  • 63852A=K*49J7 (TQ)
  • T9365A=K*84Q7 (2J)
  • AT7469=J*83*QK (25)
  • J65A84=2^7*9T3 (QK)
  • Q84A73=J^2*T6K (59)

A~Tにあと1枚加えてできる合成数出し(カッコ内は加えるカード)

  • 4T29A=7*586A3 (A)
  • 43A56=2*2*T789 (2)
  • T2754=2*83*6A9 (2)
  • 453389=67^2*TA (3)
  • T3648=2^5*4A*79 (4)
  • T6875=3^2*5^4*A9 (5)
  • 968T=2*3*5*7*46A (6)
  • 656A8=2*7*43*T9 (6)
  • T8937=4A*2657 (7)
  • 462T7=53*87A9 (7)
  • 269487=3^5*AT9 (9)
  • 6T48A=T3*5927 (T)
  • J65A84=2^7*9T3 (J)
  • 85674=2*3*T9*KA (K)
  • K8976=2^5*43*TA (K)
  • 76T48=2^3*95KA (K)
  • 3654A7=K*28T9 (K)

他に10連続+1枚の11枚合成数出しを探したところ

  • 68574=2*3*J*T39 (2~J+3)

がありました。

これらの合成数出しを見出すのにicqk3さんの素数探索
http://searial.web.fc2.com/tools/somake.html
http://searial.web.fc2.com/tools/sosutansaku.html
およびEvaTecさんの協力を得ました。ここに感謝の意を表します。

その他の合成数出し

上で示した合成数出しは勝負手になりうるものとして紹介いたしました。それ以外の合成数出しについても覚えることは無駄ではありません。ここで合成数出しを覚えるメリットとして次が挙げられます。

  • 「詰んでるセット」でも出せる

例えば99QKはそのままではどう並べ替えても素数にならない「詰んでるセット」です。ところがこれをK9Q9と並べるとK9Q9=373^2で合成数出しが狙える形です。

  • 確実にそれが「素数」でないといえる

素数をまとめて覚えようと四つ子素数などのまとめて覚えられるセットを探索しているときに、「これが素数だったら全部素数だったのに~」ってことありませんか? 例えば586XはX=A,7,9,Kで素数になりますがX=3だと素数ではありません(5863=11*13*41)。そこで5863の素因数分解を覚えてしまえば、手札に5,8,6とあるときに「586Xって1つだけ素数でないのがあったけどどれだっけ?」となったときにそれが5863であると思い出すための道標になります。もちろん合成数出しとして出せたのなら万々歳です。ちなみに5863の素因数分解の語呂合わせは「小春さんは良いJK」(5863=4A*J*K)です*3

最後に

この記事には「ふみこさんは愛に生く」という変わったサブタイトルをつけましたが、何か気付かれた方もいらっしゃるでしょうか。今日は12月19日、1219の素因数分解1219=23\times53。つまり「ふみこさんは愛に生く」という語呂合わせで覚えられます!*4

*1:今なんの違和感もなくKを13と読んだ方は素数大富豪中毒者です。たぶん。

*2:素数」を使って述べられる整数環\mathbb{Z}の特徴、ともいえます。この言い換えは\mathbb{Z}以外の一意分解環上で素数大富豪が可能であることを示唆します。実際、素数大富豪の派生としてガウス素数大富豪(\mathbb{Z}[\sqrt{-1} ]上の素数大富豪)が存在します。

*3:ちょうど1年前に作ったはじめての合成数出しの語呂合わせで私のお気に入り合成数のひとつです。

*4:2353といえば自然対数の底の有名な語呂合わせ「鮒一鉢二鉢一鉢二鉢至極惜しい」(2.718281828459045)に続く4桁です。

【第3期Mathpower杯】2回戦-4 onewan-白くま

2回戦の最後はonewan(わんわん)さんと白くまさんという「動物対決」です。onewanさんは関西日曜数学友の会*1の幹事。1月のせきゅーん杯や9月に行われた素数大富豪研究会にも参加しており、素数大富豪の熱心なプレーヤーと見受けられます。白くまさんは前期に続いてMathpower杯2度目の出場。1回戦でイシカワさんを破っています。解説は鰺坂もっちょさん・みうらさん・せきゅーんさんの3人でお送りします。1本目の先攻は白くまさんです。

1本目(14:39:47~14:48:36*2 )

初期手札 白:(A238TJJQQQK) о:(A23667899TK)
白くまさん、初期手札に絵札が7枚もあります。Qが3枚あるのが多少使い辛そうですが、QQT3→KJQJ→82Aとすれば使い切れます。onewanさんは絵札2枚でやや苦しめ。ラマヌジャン革命がありますが、出すために手番をとるのが難しそう。
f:id:graws188390:20181122220419p:plain

1.白:D(A)KTQJ
2.о:D(J)%
白くまさん、1手目からKTQJ、4枚出し3番目に大きな素数です。onewanさんは絵札が2枚しかないのでドローしてパス。

3.白:D(5)QA=J^2
4.о:D(8)9J
5.白:D(7)%
白くまさん、ドローしてQA=J^2の合成数出し。初期手札に7枚あった絵札ですが、これでQ・1枚だけに。これに返されると再カウンターできるカードがありません。onewanさんは9Jを返します。白くまさんはドローしますが7でカウンターできずパス。
5手目終了時の両者の手札 白:(A3578Q)(残6枚) о:(A23667889TK)(残11枚)

6.о:D(2)KT7A
7.白:D(4)%
6手目、onewanさんはドローしてからKT7A。131071=2^{17}-1メルセンヌ素数です。なおA,7,T,Kの4枚でつくれる素数ではこれが最大です。白くまさんはドローするものの返せるカードがないのでパスします。

8.о:D(A)83
9.白:Q7
10.о:D(6)%
先ほどのKT7Aで絵札がなくなったonewanさん。ドローしますが引いたのはA。83を出します。白くまさんはすぐさまQ7。これで白くまさんも絵札ゼロ。続くonewanさんの手番、ドローはすでに2枚もっている6。返せないのでパス。
10手目終了時の両者の手札 白:(A3458)(残5枚) о:(A2266689)(残8枚)

11.白:54A
12.о:69A
13.白:%
白くまさんが出したのは54A、100番目の素数。残り手札は83です。それに対してonewanさんが出した69Aはリーマンゼータに現れる最初の非正則素数(\zeta (12) = \frac{691 \pi ^{12}}{638512875})。白くまさんはドローせずパスを選択。

14.о:D(K)26=2*K
15.白:83#
絵札に加え奇数もなくなったonewanさん、ドローはK。26=2*Kの合成数出しで手札を減らします。これに白くまさんは残り手札の83を出し、上がり。

お互い絵札を消耗する勝負となった1本目は白くまさんが勝ちました。

2本目(14:49:43~14:53:52)

初期手札 о:(A235669TQQK) 白:(A244678889K)
onewanさんは絵札4枚。3・4・5枚出しでは勝負手になるような大きな素数がつくれない(それぞれ最大はQTK、6TQK、3QQTK)ので2枚出しか? 白くまさんは絵札がKの1枚だけ。1本目のonewanさんのような苦戦が強いられそう。

1.о:66523
2.白:%
1手目、onewanさんは66523を出します。66523といえばもりしーさんの箏曲に登場する「ゴツ美」素数です。白くまさんはノータイムでパスします。
prm9973.hatenablog.com

3.о:D(4)TA
4.白:K9
5.о:QK
6.白:D(A)%
手札にQKがあるので2枚出しがしたいonewanさん。しかしこのままだともう1枚のQが使い切れないのでドロー。4を引いてTAを出します。白くまさんのK9に対しQK。残り手札は3枚。白くまさんはドローしてパス。
f:id:graws188390:20181122220449p:plain

7.о:Q49#
onewanさん、残り手札Q49を前にして空中で手を動かしながら何やら計算している様子。そしてついにQ49を出しました。これはぁぁぁぁぁ素数ぅだぁぁ! これでonewanさんが上がり。この勝負の前に腹痛を訴えていましたが「胃に良く」で勝利となりました。4Q9「良い肉」も素数でしたが体調を考えるとQ49でよかったかも。せきゅーんさんによれば1249はその3乗の下4桁が自分自身になる(1249^3=1948441249)という面白い性質をもった素数です。へー。

勝負後「お腹が痛いから早く終わらせた」と話すonewanさん。実際2本目にかかった時間はわずか4分(シンキングタイムを除けば3分)でした。

3本目(14:54:46~15:00:49)

初期手札 白:(3355579TTKX) о:(A2689JJJQKX)
白くまさんの初期手札ですが2,4,6,8が1枚もありません。偶数は一の位にあると素数にならないので偶数よりも奇数が多い手札の方が好まれますが、多すぎるのもそれはそれで使いづらい。一方のonewanさんはジョーカーを含む絵札6枚がある強い初期手札。QK、KXJ|X=K、KJQJがあり、白くまさんが何枚出しで来ても対応できそうです。

1.白:TT3
2.о:KJJ
3.白:D(9)%
白くまさんが出したのはTT3。3枚出しでTを2枚使える唯一の素数です。仮にこれが流れたとするとX[IN]→975=3*5*5*Kで上がれます。onewanさんはほぼノータイムでKJJを出します。ジョーカーはまだとっておくようです。白くまさんはJ,Q,Kのいずれかをドローできればカウンターできますが、ドローの結果は9。パスします。

4.о:D(T)QT2A
5.白:D(Q)KQX3|X=K
6.о:D(2)%
onewanさんは2Aで終わる素数を出したい様子。ドローしたTを使ってQT2A。あまり見かけない素数ですがこの4枚でつくれる素数の中ではこれが最大です。対する白くまさんはQをドローしてKQX3|X=Kを出します。こちらもなかなか目にすることがない素数ですがこの4枚でつくれる中ではこれが最大。onewanさんはドローしますが出せず、パス。
6手目終了時の両者の手札 白:(555799)(残6枚) о:(2689JX)(残6枚)
f:id:graws188390:20181122220511p:plain

7.白:59
8.о:9J
9.白:%
7手目、白くまさんが出したのは59、2番目に小さな非正則素数です。それにonewanさんは9Jを返します。白くまさんは何をドローしても返せない状況。ドローせずにパスを選びます。

10.о:862X|X=9#
onewanさん、残り手札を862Xと並べジョーカーを何にすればよいか考えているようです。862Xを出しX=9を宣言。8629は素数、これでonewanさんの勝ち。準々決勝進出はonewanさんとなりました。ちなみに862XはX=3,7,9で素数になる三つ子素数でした。

最後は8629「ハム肉」でonewanさんが試合を決めました。

講評

この試合は2~4枚出しの比較的穏やかな進行でした*3。1本目は白くまさんが1桁のカードよりも絵札を先に消費したがために、初期手札の優勢一転、あわやonewanさんに逆転されそうになりました。またKT7A(メルセンヌ素数)、54A(100番目の素数)、69A(リーマンゼータに現れる最初の非正則素数)といった特徴のある素数が多く出された勝負でもありました。こういった素数は「推し素数」としてゲームの中で出したい素数として挙げられることのある素数たちです。覚えやすい(覚えるモチベーションがある)かつ手札の中から見つけやすい、そして何より「推し」が出せる喜びのある素数ではあるのですが、勝負に勝つために出すという点ではそれが必ずしも最善手とはいえない場合があります。たとえば、1本目の12手目、onewanさんは69Aを出した結果手札から奇数がなくなり、次の手が出しにくくなりました。ここで仮に829を出し奇数を残していたとすると666A→2で上がれていたかもしれません。
2本目に関してはonewanさんの66523で偶数を消費してからの2枚出し攻勢が見事にはまりました。敗れた白くまさんには66523に対してたとえ返せる素数を知らなくても何か出すことが戦略として考えられました。勘出しは出したものが素数であれば親をとれるチャンスになりますし、素数でなくペナルティを受けたとしてもその結果絵札を引いてくる可能性があります。2枚出し最大素数QKは手札に揃いやすい素数ですので、手札が増えた結果onewanさんがQKのカウンターを警戒して別の戦略をとる可能性も出てきます。もちろんパスして相手に手の内を明かさないというのも悪いわけではないのですが、白くまさんの初期手札は絵札1枚とよくなかったので、ペナルティによって手札を強化するメリットが大きくなります。
3本目は初期手札で優勢だったonewanさんが押し切りました。先に絵札を使い果たした白くまさんが2枚出ししたところ、onewanさんが9Jで打ち取ることができました。

この試合の数譜を改めて掲載いたします。

1本目
白:(A238TJJQQQK)
о:(A23667899TK)
白:D(A)KTQJ
о:D(J)%
白:D(5)QA=J^2
о:D(8)9J
白:D(7)%
о:D(2)KT7A
白:D(4)%
о:D(A)83
白:Q7
о:D(6)%
白:54A
о:69A
白:%
о:D(K)26=2*K
白:83#


2本目
о:(A235669TQQK)
白:(A244678889K)
о:66523
白:%
о:D(4)TA
白:K9
о:QK
白:D(A)%
о:Q49#


3本目
白:(3355579TTKX)
о:(A2689JJJQKX)
白:TT3
о:KJJ
白:D(9)%
о:D(T)QT2A
白:D(Q)KQX3|X=K
о:D(2)%
白:59
о:9J
白:%
о:862X|X=9#

この試合でベスト8が出揃いました。次回から準々決勝に入ります。

*1:数学をキーワードに5分間で好きな事を語るイベント(connpassの概要より)。公式twitter:@kansai_nitimath

*2:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*3:大会後半になるととんでもない素数がたくさん出てきます。乞うご期待。

【第3期Mathpower杯】2回戦-3 カステラ-ジャッカル

今回は私・カステラとジャッカルさんの対戦を解説いたします。解説の前に簡単に自己紹介いたします。私は素数大富豪に出会ったのは2年前*1、本格的に始めたのはちょうど1年前です。今年1月に開催されたせきゅーん杯で優勝し、「素数王」のタイトルを戴きました。Mathpower杯は今期が初参戦でしたが、2冠が懸かるということで優勝候補のひとりとして数えられていたようです。
対するのはジャッカルさん。残念なことに手元にジャッカルさんの情報がありません。わかるのはMathpower初参戦、1回戦でヒロキさんを破っていることのみ。前期優勝のもりしーさん、前々期優勝のみうらさんが当時は無名のプレーヤーであったように、大会には「ダークホース」が現れるものです。こちらとしては気を抜く理由はありません。
さて、解説ルームでは前の試合*2の余韻が残っております。5^11の合成数出しについて、キグロさん本人が登場して解説。5冪の下4桁にはわかりやすい特徴があるのでそのパターンを覚えればあとは上数桁を個別にみていけばよいとのこと。詳しくは「QK -1213-」第60話を参照。試合の方はじゃんけんによりジャッカルさんの先手で始まります。なおこの試合から素数判定員が変わります。
前の試合までは中立な立場で解説を行ってまいりましたが、今回は私が対戦した試合ということで主に私の視点から、当時考えていた戦略等も交えて解説していきます。

1本目(14:16:48~14:27:11*3 )

初期手札 ジ:(23456889JKX) カ:(A255578TJQK)
ジャッカルさんの絵札はJ,K,Xの3枚。これで3枚出し最大KXJ|X=Kがつくれます。そこで残りの8枚を3枚・5枚に分ければ、たとえば859→KXJ|X=K→86423と組めます。私の初期手札は絵札が4枚とジャッカルさんより多いですが、仮にジャッカルさんが上述のように手札を組んだ場合には対抗する手段がありません。他にA,2,5,Tがあるので「~T=2*5*~A」という形の合成数出しが狙えそうですが2組必要な「~」に入るカードがありません。

1.ジ:2468J
2.カ:D(3)%
ジャッカルさんが1手目に出したのは2468J、5枚出しです。(偶数連番)+(奇数1枚)という形の素数は偶数消費かつ覚えやすいため多くのプレーヤーに記憶されている多枚出しです。ちなみに偶数部分を逆に並べた8642Jも素数です。それを見て私は7を手札右側に寄せます。もしここで親をとろうとすると、現時点で出せる最大素数7KTQJが次の手の有力候補だからです。7KTQJを除くと残りは(A25558)ですがこれでつくれる6枚出しは知りませんでした(降順に並べた85552Aが素数)。ドローしたところ3。やはり残り手札で上がるのは難しいと判断し(これも降順に並べた855532Aが素数)、ここは様子見のパスを選びます。

3.ジ:853
4.カ:D(9)8Q3
5.ジ:KX9|X=Q,P(778)
ジャッカルさんはノータイムで853。私は現時点で出せる3枚出し最大がKTJであることを確認してドロー。引いたのは9。ラマヌジャン革命が揃ったので手札左端に。KTJとA729を除いた手札で出せる素数8Q3を出します。出した直後にジャッカルさんの手札が残り3枚であることに気がつきました。つまりこれは悪手。なぜならジャッカルさんはまだ絵札を1枚しか出していないため、手札に絵札を2~3枚抱えている可能性が高い。ということは8Q3にカウンターして上がる可能性が高い。KTJを出していれば阻止できたかもしれないカウンターを許してしまう恰好となってしまいました。そのときのジャッカルさんの手札は(9KX)、返せる候補はK9X|X=K,KX9|X=T,9XK|X=6などたくさんあります。ジャッカルさんが出したのはKX9|X=Q。これは素数ではありません(13129=19*691)。なお(9,Q,K)はどう並べ替えても素数にできない詰んでるセットです。ジャッカルさんはペナルティで3枚引き、私に手番がまわってきます。
5手目終了時の両者の手札 ジ:(7789KX)(残6枚) カ:(A255579TJK)(残10枚)

6.カ:D(T)57[GC]
私はドローし、Tを引きます。もしここで革命すると残りは(555TTJK)となり途端に手札が弱くなってしまいます。しかもジャッカルさんは9,Xをもっていることがわかっており、しかも直前に3枚引いていることから革命されても返せるカードがある可能性が高そうです。革命は控えたほうがよさそう。そうこうしているうちに制限時間が迫ってきたのでいったん57を出し再び自分の手番にします。

7.カ:D(J)5592J
8.ジ:D(T)%
私は再度ドローします。親でグロタンカットをするとその前後でカードをドローできる機会が得られるのでけっこう便利です*4。まだ5が2枚残っていたのでドローしたばかりのJと合わせて5592Jと出します。55921Xは四つ子素数*5です。ジャッカルさんはドローしてパス。

9.カ:D(4)KTJ
10.ジ:D(Q)KQX|X=K
11.カ:D(6)%
9手目、私はドローして4。この時点の手札は(A4TTJK)でJを除く5枚が3で割ると1余るカードです。個人的にはカードを3で割った余りによって3つのタイプに分類したとき、どれか1つのタイプに集中しているのはあまり好きではありません。というのもここから3枚出しすることを考えると、同じタイプのカード3枚では必ず3の倍数になってしまい出せないからです。もともとは(A,T,ドローしたカードでできる素数)→KTJ、または(T,T,J,K,ドローしたカードでできる素数)→(A,再度ドローしたカードでできる素数)で上がろうとしていましたがKTJを先に出し、流れたら再度ドローして4枚出しを狙うことにします。今思えばあまりよい戦略ではなかったように思います。というのも、ジャッカルさんの5手目からK,Xが手札にあることがわかっているのでその後ペナルティやドローでJ,Q,Kのどれか1枚でも引いていればKTJに返せると判断できるからです。ジャッカルさん、ドローはQ。これでKQX|X=Kとカウンターすることができました。私はドローしてパス。
11手目終了時の両者の手札 ジ:(7789T)(残5枚) カ:(A46T)(残4枚)

12.ジ:T987
13.カ:D(Q)Q64A
14.ジ:%
ジャッカルさんはT987。Tから降順に4枚並べると素数になります。ジャッカルさんの残り手札は7の1枚です。私は手札4枚でしたが3の倍数なのでドローします。Qを引きQ64Aを出します。残り手札はTの1枚。ジャッカルさんはドローせずにパス。これで私の次のドローがA,3,7,9,K,Xなら素数がつくれて私の勝ち、2,4,5,6,8,T,Qなら素数をつくれない、または1枚出ししても返されてジャッカルさんの勝ち、Jならまだ決まらないという状況になりました。
f:id:graws188390:20181115213256p:plain

15.カ:D(A)TA#
運命のドローの結果、引いてきたのはA。TAを出して私の勝ち。

両者手札が1枚ずつになるまでもつれた勝負ですが、最後は私が勝ちとなりました。

2本目(14:28:06~14:31:25)

初期手札 ジ:(A246689TJQK) カ:(AA6789TTQKX)
ジャッカルさんの初期手札は6が2枚ある他はバラバラで、覚えている素数が見つけやすいといった印象。ジャッカルさんも2468TQAがあることに気がつきます。私の初期手札もAAをJとみなせばダブりはT・1つのみ。覚えている多枚出し*6を見つけましたが後攻*7なので出せるかどうかは先攻のジャッカルさん次第。

1.ジ:2468TQA
2.カ:KAATQTX|X=J
3.ジ:%
ジャッカルさん、フライング気味に2468TQA。前期のMathpower杯でせきゅーんさんが放った「2億」素数です。私がシンキングタイムで見つけたのは7枚出しではなかったため組み直しです。前述のようにAAをJとみなすことで6枚12桁の素数を7枚出しで出すことができそうです。そこでKAATQTX|X=Jを出しカウンター。「2億」の時代を終わらせます。
f:id:graws188390:20181115213323p:plain

4.カ:D(4)98467#
7枚出しカウンターが決まったのはよかったのですが、残り手札は(6789)で3の倍数でした。ドローして4。これで3の倍数ではなくなり、98467と並べ替えて素数となり私の勝ち。2本先取で準々決勝進出。

7枚出しに7枚出しを返した私が2連勝で試合を決めました。

講評

結果としては私の2戦2勝となりましたが、改めてタイムシフトを見ると決して私が(もりしーさんがくじらさんを下したときのように)常に優勢というわけではなかったことが感じられます。1本目はジャッカルさんの1手目2468Jがなかなかいい手で、これに返すかどうかは人や手札によって判断が分かれるところです。たとえば最初にジャッカルさんが2468J→(5枚(勝負手))→(1枚)*8と組んでいた場合、初期手札11枚に絵札(T,J,Q,K,X)が3~4枚あることが多いので勝負手の5枚出しは絵札が2~3枚含まれます。後攻としては

  • (先攻5枚出し)→(後攻5枚出し)→(先攻5枚出し(勝負手))→(後攻5枚出し(勝負手))→(先攻出せず)→(後攻1枚出し)#

という流れが理想のひとつですが、いま先攻(ジャッカルさん)が2468Jを出したので後攻(カステラ)は直後の5枚出しにも絵札を使わなければならず、その結果残りの手札でつくる勝負手が先攻の勝負手に勝てなくなる可能性が高まります。いきなり勝負に出る

  • (先攻5枚出し)→(後攻5枚出し(勝負手))→(先攻出せず)→(後攻6枚出し)#

という流れもありますが、現時点で初期手札11枚を5枚出し勝負手と6枚出し素数に分けるのは至難の業。現在これを難なくこなせる人間はほとんどいません。6枚を3枚・3枚に分けた

  • (先攻5枚出し)→(後攻5枚出し(勝負手))→(先攻出せず)→(後攻3枚出し)→(先攻3枚出し)→(後攻3枚出し)#

については後攻が勝負手を出した後手札に絵札がほとんど残っていないのに対し、先攻は絵札を温存しているので先攻のほうが強い3枚出しを出せる可能性が高いです。
よって1手目の5枚6桁は後攻にとってはどの戦略も難しいかなり厳しい手といえます*9。もちろん、以上の議論は先攻が手札を(5枚)→(5枚)→(1枚)と組んでいることが前提です。たまたま知っている5枚出しがあってそれを出したという場合はこの限りではありません。
2本目は7枚出しにカウンターをした結果、残りが3の倍数となってしまいました。相手は残り4枚なので6枚11桁を7枚出しして、たとえば8TQTKAA→X[IN]→967とするなり、先にドローしてから考えるなり方法はありました。結果としては12桁の素数を出して会場が盛り上がり、ドローして素数がつくれたのでよかったのですが、手堅く勝利をものにしたいのだったならもう少し考えてから行動すべきだったと思います。

試合後に感想戦を行いました。2本目、ジャッカルさんの残り手札は(69JK)。これは3の倍数なのでジャッカルさんは6K→9Jと上がる予定だったそうです。もちろんこれでもよいのですが、たとえば2468TQAの代わりに864Q2TJを出せば残りはA6K9で素数となります。
どんな素数を覚えているのですか? と尋ねられましたので「みんなが覚えていそうな素数、プラスアルファ」と答えました。これについて補足いたします。まず「みんな」とはここでは「私が知っている他の素数大富豪プレーヤー」と考えていただいて差し支えありません。これは単に自分の所属するコミュニティが偏りすぎていて素数大富豪プレーヤーの割合が相対的に高いことに起因した表現です。「みんな」が知っている素数、すなわち知名度が高い素数*10

  • KKQKJ(5枚出し最大)、KKKKTJ(6枚出し最大)など各枚数における最強クラスの素数
  • 76543、68TQJなど並びに規則性がある素数
  • 86T24K(偶数消費)、936QJ(3の倍数消費)など特定のカードを大量消費できる素数
  • 69593(ロックコックさん)、924TA(靴下)など語呂合わせがある素数
  • 65537(フェルマー素数)、KT7A(メルセンヌ素数)など特別な性質をもつ素数
    • とくに8T4X、T9Q6Xなど四つ子素数
  • T2A(第1期Mathpower杯でみうらさんが出した素数(ウイニングプライム))、84Q3A(第2期Mathpower杯でもりしーさんが出した素数)など大会で出た素数

などさまざまな種類があります*11素数大富豪で出せる素数は4枚出し以上になると膨大となりすべてを網羅することは非常に困難です。ゆえにある程度的を絞った覚え方が必要だと思います。そのときの基準のひとつとして知名度があります。素数大富豪プレーヤーたちに知れ渡った素数はそれだけ何かしらの覚える価値があると考えられます。それは必ずしも素数大富豪に強くなることに働かないかもしれませんが、覚えるモチベーションとしては悪くないと思います。
次に「プラスアルファ」ですが、感想戦では最後に出した98467を挙げました。これは1本目の講評でも述べた5枚出し戦略に関係します。98467は5枚5桁の素数ですが、これにカウンターするには5桁ではかなり限られ、6桁以上、すなわち絵札を使わなければなりません。つまり出す側としては1枚も絵札を消費することなく先ほどの2468Jのような効果が期待できるというお得な素数です。絵札を使わない分、勝負手をより強力にすることが可能です。しかも98467は同時に偶数を3枚消費するという点でも価値のある素数です。他にも素数を覚える基準はありますが、それを紹介するのはまたの機会にいたしましょう。

最後に数譜を再掲することで解説を締めくくります。

1本目
ジ:(23456889JKX)
カ:(A255578TJQK)
ジ:2468J
カ:D(3)%
ジ:853
カ:D(9)8Q3
ジ:KX9|X=Q,P(778)
カ:D(T)57[GC]
カ:D(J)5592J
ジ:D(T)%
カ:D(4)KTJ
ジ:D(Q)KQX|X=K
カ:D(6)%
ジ:T987
カ:D(Q)Q64A
ジ:%
カ:D(A)TA#


2本目
ジ:(A246689TJQK)
カ:(AA6789TTQKX)
ジ:2468TQA
カ:KAATQTX|X=J
ジ:%
カ:D(4)98467#

次回はonewanさん対白くまさんの試合を解説いたします。

*1:当時のツイート(素数大富豪をプレーしていた):

twitter.com

*2:2回戦-2 せきゅーん-キグロgraws188390.hatenablog.com

*3:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902

*4:このテクニックは「グロタンチェンジ」と呼ばれています。

*5:多枚出し対策として6桁の四つ子素数を覚えて大会に臨みました。

*6:どんな素数だったかは今は伏せておこうと思います。

*7:Mathpower杯では直前の勝負の敗者が次の勝負の先攻となる。一方、せきゅーん杯は先攻を交互にもつ。

*8:たとえば2468J→893XK|X=J→5。893JKは「ヤクザJK」。

*9:いずれ11枚を5枚出し素数・6枚出し素数臨機応変に分けられるようになればこの限りではありませんが……

*10:といいながらもせっかくなので類似の、少しマイナーなものも混ぜてあります。ここに挙げた素数知名度が上がりますように。

*11:ここに挙げた分類は重複することがあります。たとえば2468TQAは規則性あり・偶数消費・大会で出た素数です。

【第3期Mathpower杯】2回戦-2 せきゅーん-キグロ

2回戦2試合目はせきゅーんさんとキグロさんというなかなかの好カード。キグロさんは日曜数学会*1の幹事。Mathpower杯では第1期・第2期ともにベスト4、せきゅーん杯でもベスト4の実力者。さらにこの記事の執筆時点(2018年11月)でおそらく唯一であろう素数大富豪小説「QK -1213-」*2の作者でもあります。せきゅーんさんは素数大富豪の考案者。1回戦でコロちゃんぬさんを破り2回戦進出です。じゃんけんにより1本目の先攻はキグロさんになりました。

1本目(13:44:53~13:49:43*3 )

初期手札 キ:(234557888JX) せ:(AA2799TTJJQ)
キグロさんの初期手札は絵札がJ,Xの2枚しかなく、しかも偶数が多め。キグロさんはこの11枚を3748828X55Jと並べています。一方のせきゅーんさんは絵札は5枚あるもののKがないのが辛いところ。とくに4枚出しに弱く、出せる最大は2QTJ(4枚出し35番目*4 )です。ドローに恵まれれば、絵札大量消費で親をとってラマヌジャン革命を仕掛ける奇襲ができる可能性がありますが……。

1.キ:48828X5=5^J|X=Q
2.せ:%
奇襲を仕掛けたのはキグロさんでした。解説のみうらさんも「キグロさんの札の順番が気になりますね」と気にしていらっしゃいましたが、その不可思議な並べ方はなんと合成数出し、48828X5=5^J|X=Q! これには壇上の素数判定員、解説も含めみな呆然。合成数出し成功と判定されたときには会場から自然と拍手が起きました。「知ってるのも凄いですけど気付くのももっと凄い」とみうらさんがコメントしています。合成数出しに気付かなかったために負けたという勝負も実際ありますので、「気付く」ことには覚えることとは違う難しさがあるといえます。せきゅーんさんはこの7枚出しにカウンターを試みるも時間切れにより強制パス。ちなみにせきゅーんさんが出そうとしていたのはJ9JTTQAでしたが、実はこれは素数。あと1秒、間に合いませんでした。
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3.キ:37#
キグロさんが残りの2枚を37として出して上がり。37は最小の非正則素数です。この勝負の12時間ほど前のMathpowerの企画「インテジャーズ イン 仮面ライダービルド」で紹介されていました。非正則素数について、詳しくはtsujimotterさんのこちらの記事を参照。
tsujimotter.hatenablog.com

1本目から大技が飛び出しました。2本目以降もハイレベルな勝負の予感……

2本目(13:50:35~14:06:04)

初期手札 せ:(AA289TTJJXX) キ:(A344889TJQK)
せきゅーんさんの初期手札にジョーカーが2枚あります。Q,Kがないのが惜しいですがT,Jが各2枚とかなり強い手札。なお初期手札11枚にジョーカーが2枚含まれる確率は約3.8%。2人のどちらかがジョーカーを2枚持っている確率はこの倍の約7.7%でおよそ13回に1回起こります*5。キグロさんは絵札がT,J,Q,K各1枚ずつと悪くはないですが、せきゅーんさんの優勢は変わりなし。

1.せ:D(2)J
2.キ:%
1手目、せきゅーんさんがドローしたのは2。時間ギリギリでJの1枚出し。直前の負けを引きずっているのか、この1枚出しに自信がなさそうです。キグロさんはノータイムでパスを選択。

3.せ:D(7)A729[RR]
4.キ:[R]D(9)A489
5.せ:[R]D(3)AX83|X=4
6.キ:[R]D(K)%
せきゅーんさんは再度ドロー、7を引きこれでラマヌジャン革命の4枚が揃いました。さっそくA729[RR]。みうらさんも解説していますが、もしこれを最初から狙っていたとすると1手目のJ・1枚出しは革命後に邪魔となる絵札を革命前に消費してしまおうという意図が考えられ、1本目の敗北に動揺していたわけではなさそうです。対するキグロさんはA483を用意してからドロー、9を引きます。A48Xはラマヌジャン革命A729にカウンターすることのできる唯一の四つ子素数です。A483、A489どちらも素数ですがキグロさんはA489を出します。せきゅーんさん、ドローは3。先ほどキグロさんが出そうとしていたAX83|X=4で再カウンター。これにはキグロさんもしまったという身振り。ちなみにA283も素数で、こちらならジョーカーを消費せずに出すことができました。キグロさんはドローするもKでパス。
6手目終了時の両者の手札 せ:(2TTJX)(残5枚) キ:(3489TJQKK)(残9枚)

7.せ:[R]D(6)J
8.キ:[R]D(6)8,P(2)
せきゅーんさんにはこの時点で2JTTX|X=Kや2→XTTJ|X=4での上がりがあります。ところがせきゅーんさんはドローして6。1手目同様、時間いっぱいまで使ってのJ・1枚出し。キグロさんは絵札5枚と革命時ではかなり苦しい手札。ドローはせきゅーんさん同様6で状況を打開できるカードではありません。8を出して1枚ですがペナルティを受けることを選びます。手に入れたのは2、革命時ではかなり強いカードです。ちなみに合成数出しを故意に間違えれば素因数場に出したカードの分も山札から引かなくてはいけないため場が1枚出しの場合でも大量のカードを引くことが可能です。今大会の放送試合では誰も合成数出し失敗を記録していませんでしたが、合成数出し失敗時の「若本ボイス」はあったそうです。

9.せ:[R]D(6)6T6TX|X=7,P(A79QK)
9手目のせきゅーんさんのドローはまたしても6。6T6TXを出しますがジョーカーを7と宣言。これは3の倍数(6106107=3*7*290767)なので素数でないことは簡単にチェックできます*6。ちなみに6T6TXはXが何であっても素数になりません(66TTX|X=3,T6T6X|X=9,T66TX|X=Jなどで素数)。このペナルティで両者手札が11枚に逆戻り。
9手目終了時の両者の手札 せ:(A26679TTQKX)(残11枚) キ:(234689TJQKK)(残11枚)

10.キ:[R]KTQJ
11.せ:[R]D(3)A729[RR]
12.キ:D(2)3469
13.せ:D(3)66T3
14.キ:822K,P(4568)
せきゅーんさんがペナルティを受けたことでキグロさんに親がまわってきました。制限時間の最後まで手札を並べ替え、出したのはKTQJ。4枚出しでは3番目に大きな素数ですが革命中なので3番目に弱い。それでもキグロさんは絵札の消費を優先しました。手札は3469、82Kに分かれていますが(2,8,K)は詰んでるセットです。せきゅーんさん、先ほどのペナルティの結果手札にA,7,9が加わり再びラマヌジャン革命が出せる状態になっていました。ドローの後、A729[RR]。この勝負2回目のラマヌジャン革命により場が平常に戻ります。キグロさんが絵札を大量消費した直後なのでこれは最高のタイミングでの革命です。キグロさんは2をドローして、当初の勝負手3469を出します。346Xは四つ子で、しばしば「三四郎」と呼ばれています。3469には「3-Sylow群」*7という語呂合わせもあるようです。せきゅーんさんのドローは3。66T3を出し、素数。この判定にせきゅーんさんは安堵の表情。どうやら66T3が素数かどうか知らなかったらしく、「出会い」だったようです。ちなみに66TXはX=3,7,9で素数になる三つ子です。14手目、キグロさんは822Kを出します。これが素数であればキグロさんの上がりとなりますが、残念ながら合成数(82213=19*4327)。
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15.せ:KQX|X=K
16.キ:%
せきゅーんさんの残り手札は(3TQKX)、革命が2回起き場が平常なので、この手札ならどうとでも勝てます*8。せきゅーんさんはここからT3を残しKQX|X=K。3枚出しで2番目に大きな素数です。キグロさんはいったんは山札に手をかけるものの諦めてパス。

17.せ:T3#
せきゅーんさんがT3で上がり。1-1のタイとなりました。

2本目は2度のラマヌジャン革命でキグロさんを翻弄したせきゅーんさんが勝利を収めました。試合は3本目に突入します。

3本目(14:07:02~14:13:53)

初期手札 キ:(A355678JJKK) せ:(233456799QQ)
キグロさんは初期手札に3枚出し最大素数KKJがあり、これを勝負手にするのがよさそう。キグロさんもKKJの存在に気づき、手札右側に寄せます。せきゅーんさんの初期手札は絵札がQ・2枚のみとあまり嬉しくない構成。両者にグロタンカットのチャンスがあります。

1.キ:D(5)6A
2.せ:D(Q)73
3.キ:8J
4.せ:D(A)QQ,P(4T)
シンキングタイムが終わっても手札の並べ替えを続けるキグロさん。どうやら手札を組むのに苦戦している様子。ドローをし、時間切れ直前で6Aを出します。せきゅーんさん、ドローしますがQ、これで手札のQは3枚。2枚出しにおいてQがつく素数はQ7とQKしかないのでQはかなり厄介です。キグロさんは8Jを返します。残りの手札は557、53、KKJに分かれています。せきゅーんさんはドローしますが、返せるカードがなくQQでカマトト。
4手目終了時の両者の手札 キ:(35557JKK)(残8枚) せ:(A23445699TQQQ)(残13枚)

5.キ:557
6.せ:D(T)593
7.キ:KKJ
8.せ:%
先ほどまでに手札を組み切ったキグロさん、557を出します。せきゅーんさんの出した593に対しては3枚出し最大素数KKJ。これを見てせきゅーんさんはパス。事実上の投了です。

9.キ:53#
キグロさんが53を出して上がり。準々決勝進出となります。
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3本目は初期手札にKKJがあったキグロさんが勝負を優位に進め勝利しました。

講評

素数大富豪考案者vsベテランプレーヤーという対戦でしたが、どの勝負も白熱した展開となり見応えがありました。1本目の合成数出しは先述の「QK -1213-」の第45話を彷彿させるものでした*9。そのエピソードを超えるような勝負をキグロさん自身が実現させました。しかも5^11はMathpower杯直前に投稿された第60話に登場する合成数。キグロさんにとっては記憶に新しい合成数だったのではないでしょうか。ゆぅくりっどさんの以下の記事でも紹介されているロマン溢れる合成数です。
akatanana-818ubugqm.hatenablog.com
2本目はラマヌジャン革命を効果的に使ったせきゅーんさんの戦略勝ち。「再革命」はほとんど例がなく、私が目にしたのはこれが初めてだと思います。最初の革命後のA489→AX83|X=4という連続カウンターも見事でした。
3本目は初期手札の良し悪しが勝敗を分けました。1手目で手札を組み切れなかったキグロさんが苦し紛れに出した6Aは手札にQK,TK,9Jのないキグロさんからするとあまりよくない手でしたが、せきゅーんさんの手札がよくなかったことに救われた恰好になりました。ちなみに、キグロさんの初期手札からの組み方のひとつとして

  • 653→KKJ→57[GC]→8AJ

がありました。

数譜でもう一度この試合を振り返りましょう。

1本目
キ:(234557888JX)
せ:(AA2799TTJJQ)
キ:48828X5=5^J|X=Q
せ:%
キ:37#


2本目
せ:(AA289TTJJXX)
キ:(A344889TJQK)
せ:D(2)J
キ:%
せ:D(7)A729[RR]
キ:[R]D(9)A489
せ:[R]D(3)AX83|X=4
キ:[R]D(K)%
せ:[R]D(6)J
キ:[R]D(6)8,P(2)
せ:[R]D(6)6T6TX|X=7,P(A79QK)
キ:[R]KTQJ
せ:[R]D(3)A729[RR]
キ:D(2)3469
せ:D(3)66T3
キ:822K,P(4568)
せ:KQX|X=K
キ:%
せ:T3#


3本目
キ:(A355678JJKK)
せ:(233456799QQ)
キ:D(5)6A
せ:D(Q)73
キ:8J
せ:D(A)QQ,P(4T)
キ:557
せ:D(T)593
キ:KKJ
せ:%
キ:53#

次回は私・カステラが戦います。相手はジャッカルさんです。

*1:5分間で数学を語るイベント(twitterの自己紹介より)。公式twitter:@nichimath

*2:小説投稿サイト「カクヨム」にて連載中。kakuyomu.jp

*3:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902

*4:上位互換のみ。

*5:初期手札でプレーヤー2人のどちらかがジョーカーを2枚持っているという事象は第3期Mathpower杯では放送された勝負42回に対し3回起こっており確率による想定に近い値でした。

*6:各位の和が3の倍数であればもとの数も3の倍数。

*7:数学の、とくに有限群の理論において「Sylowの定理」と呼ばれる重要な定理があります。有限群G素数pに対し、その極大であるようなp-部分群(位数がpの冪であるような部分群)をGのSylowp-部分群というのですが、Sylowの定理はSylowp-部分群についての情報を与える定理です。

*8:実戦の進行はKQX|X=K→T3でしたが必勝のルートだけでも3QXTK|X=Qや3→X[IN]→QTK(もう1枚のジョーカーはすでに流れていることに注意)があります。

*9:「何てこっちゃ?」って方はリンクから読んでください。ここではネタバレはいたしません。

【第3期Mathpower杯】2回戦-1 もりしー-くじら

放送された試合以外にホールでは1回戦の他の試合が進行しています。
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壇上では2回戦に入ります。まずはもりしーさんとくじらさんの対決です。もりしーさんは前期Mathpower杯の優勝者。昨年は無名のプレーヤーでしたが今年はディフェンディングチャンピオンとして優勝候補の筆頭です。対するくじらさんは1回戦タカタ先生によって能力が「開放」*1。もりしーさんを相手にどんな戦いを見せてくれるのか。じゃんけんにより1本目の先攻はもりしーさんです。なおこの勝負から素数判定員が変わっています。

1本目(13:31:00~13:34:56*2 )

初期手札 も:(A233577TJKX) く:(23445899JQX)
もりしーさんの初期手札はジョーカーを含む絵札4枚にグロタンカットがあります。偶数も少なめなので理想的といってよいでしょう。3J→KT=2*5*XA|X=K→773という2枚出し合成数を使った戦略もとれます。一方のくじらさんは絵札がジョーカーを含む3枚ですがKがないので3枚出しだと不利な手札です。というのは、3枚6桁素数(上位互換のみ)はKKJ,KQK,KJJ,KTJ,QTK,JQJ,TJJの7つですが、そのうち上位5つにはKが含まれ、KKJ,KQKにいたってはKが2枚必要となるからです。しかも先攻はもりしーさん。これはかなり厳しい勝負になりそうです。

1.も:T33
2.く:D(7)%
1手目、もりしーさんはノータイムでT33。この3枚出しにくじらさんはドローするものの返せず。ちなみに1033は23571113......102110311033と1033以下の素数を順に並べた数が素数(Smarandache-Wellin素数*3 )だったり、2つの過剰数(自分自身を除く正の約数の和が自分自身より大きい自然数)の和で表せる最小の素数だったりします(1033=945+88)。私の推し素数のひとつです。
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3.も:KXJ|X=K
4.く:D(6)%
続いてもりしーさんが出したのはKXJ|X=K、3枚出し最大素数です。くじらさんは返しようがありません。

5.も:57[GC]
そしてグロタンカットから……

6.も:A27#
A27であっという間にもりしーさんの勝ち。くじらさんは天を仰ぐ。

もりしーさんが初期手札から組み切って難なく勝利。初期手札がよかったこともありますが、相手に流れを一切渡さない勝ち方はまさにチャンピオンです。いいところがなく負けてしまったくじらさん、2本目で巻き返せるか。

2本目(13:36:02~13:42:08)

初期手札 く:(A233359QQKX) も:(245779TJQKK)
くじらさん、絵札がジョーカーを含めて4枚あり悪くない初期手札ですが、3の倍数のカードが多いのが少し気になるところ。手札に偶数しかなくて素数が出せないということはありますが、3の倍数しかなくて出せないというのもたまに起こるので注意したいところ。もりしーさんは絵札5枚にグロタンカットあり。もし先攻だったらKKQTJ→57[GC]→4729でほぼ勝ち確の強い初期手札。

1.く:D(4)59
2.も:QK
3.く:D(7)%
くじらさん、ドローして4。59を出します。多枚出しを仕掛けてくる相手には1・2枚出しでじわじわと追い込むのは有効な作戦のひとつです。対するもりしーさんは少し考え2枚出し最大素数QK。早めに親をとって自分のペースに持ち込むようです。

4.も:947
5.く:QQK,P(456)
親をとったもりしーさんはすぐさま947。残りの手札は257,KTJに分かれます。くじらさんはQQKを出すも合成数(121213=47*2579)。ちなみにQQXはXが何であっても素数になりません。覚えておくとよいかもしれません。
5手目終了時の両者の手札 く:(A233344567QQKX)(残14枚) も:(257TJK)(残6枚)

6.も:257
7.く:QA3
8.も:KTJ#
もりしーさんは手札の3枚出し素数の小さい方、257を出します。くじらさん、もりしーさんのKTJよりも大きいKQX|X=Kが手札にありましたが出したのはQA3。もりしーさんが無事KTJを出して勝利。2本先取でもりしーさんが準々決勝進出。
f:id:graws188390:20181031134555p:plain

1本目に続いてもりしーさんがくじらさんを圧倒する結果となりました。さすがチャンピオンといったところです。

講評

2本とももりしーさんの圧勝に終わったわけですが、くじらさんが勝つ方法はあったのでしょうか。1本目は先攻のもりしーさんが初期手札からT33→KXJ|X=K→57[GC]→A27の流れがT33の直後にKKJを返されない限り勝ち*4となる手順なのでほとんど対抗することができません。相手の勝負手がKKJでないことを信じてカマトトする方法もありますが、相手の勝負手がKKJの場合には無駄になってしまいます。
2本目については、初期手札にKQ=2^5*XA|X=4があるので、これを勝負手とすると残り手札は(3339Q)。すべて3の倍数なのでそのあとが続きませんが、最初のドローの4と組み合わせるとQ9=3*43と3に分けることができます。つまり
Q9=3*43→KQ=2^5*XA|X=4→3
でほぼ勝ち確です*5。この手順はMathpower杯終了後最初の数学デー*6で見つけました。

twitter.com


最後にこの試合の数譜です。

1本目
も:(A233577TJKX)
く:(23445899JQX)
も:T33
く:D(7)%
も:KXJ|X=K
く:D(6)%
も:57[GC]
も:A27#


2本目
く:(A233359QQKX)
も:(245779TJQKK)
く:D(4)59
も:QK
く:D(7)%
も:947
く:QQK,P(456)
も:257
く:QA3
も:KTJ#

次回は第1期・第2期ともにベスト4のキグロさんが登場。せきゅーんさんと対戦します。

*1:1回戦終了後のタカタ先生のコメント(タイムシフト13:02:01あたりから)より。

*2:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902

*3:Smarandache-Wellin素数に関するせきゅーんさんのブログ記事。integers.hatenablog.com

*4:KKJの直後にKKQ(=2^4*29*283)またはKKK(=3*7*13^2*37)の合成数出しを返される場合も考えられますがほとんど起きません。

*5:KQ=2^5*XA|X=4→9343Q3ならなおよい。

*6:数学好きまたは数学好きでない人がなんとなく集まる部室みたいなやつ(twitterの自己紹介より)。毎週水曜日にソノリテ(神田)、毎週金曜日にφカフェにて開催。公式twitter: @sugaku_day

【第3期Mathpower杯】1回戦-2 せきゅーん-コロちゃんぬ

第3期Mathpower杯1回戦放送2試合目を解説します。1試合目の解説はこちら。
graws188390.hatenablog.com
graws188390.hatenablog.com

解説ルームに先ほど敗れたタカタ先生が登場。10X,82Xは四つ子だがJはつかないこと、覚えましたよね? 前期は「8のスペシャリスト」、今期は「10のスペシャリスト」として参戦していることから来期は「12のスペシャリスト」? そうこうしているうちに壇上にせきゅーんさんとコロちゃんぬさんが登壇します。せきゅーんさんは素数大富豪プレーヤーなら誰もが知る素数大富豪の生みの親。本人は素数大富豪は強くないとは言いながらも、全プレーヤーの中で素数大富豪歴が長いのがせきゅーんさん。昨年のMathpower杯では2468TQAを出しており、弱いわけがない。対するコロちゃんぬさんは前期に続いてのMathpower杯参戦。1月のせきゅーん杯にも参戦し、予選リーグで私・カステラに勝っています。実力は十分。じゃんけんの結果、1本目の先攻はせきゅーんさんに。

1本目(13:03:48~13:13:28*1 )

初期手札 せ:(A33556699TK) コ:(A24577TJQKX)
せきゅーんさん、絵札が2枚しかなくやや厳しい。ラマヌジャン革命をするにも7が手札にありません。一方のコロちゃんぬさんはT,J,Q,K,Xと各1枚ずつあり強い手札。グロタンカットもあります。

1.せ:D(K)66A
2.コ:5TA
3.せ:D(J)3TK
4.コ:D(T)QTK
5.せ:D(Q)%
1手目、せきゅーんさんは少し考えてドロー。Kを引いてきます。そして66A。初期手札に2枚あった6を消費しての3枚出し。対するコロちゃんぬさんは5TA。こちらも偶数2枚を消費します(5は偶数)。せきゅーんさん、またも絵札(J)をドローして3TK。31013は一の位から読んでも同じになる回文素数です。ちなみに3TKTK(310131013)も回文素数です。コロちゃんぬさんのドローはT。さっそくQTKとして使います。せきゅーんさんは3連続絵札となるQをドローしますが、手持ちのJ,Q,Kでは素数をつくれずパス。
5手目終了時の両者の手札 せ:(35599JQK)(残8枚) コ:(2477JX)(残6枚)
f:id:graws188390:20181030135324p:plain

6.コ:2J
7.せ:9J
8.コ:D(8)%
6手目、コロちゃんぬさんは2Jを出します。もしこれが流れれば747X|X=K,X7|X=5[GC]→47,4X=7*7|X=9などで上がりとなります。しかしせきゅーんさんに返されるとかなり厳しくなりますが、せきゅーんさんに9Jと返されてしまいます。せきゅーんさんは残りの手札を53,59,QKと並べます。8手目、コロちゃんぬさんのドローは8。9Jには返せずパス。
8手目終了時の両者の手札 せ:(3559QK)(残6枚) コ:(4778X)(残5枚)

9.せ:59
10.コ:D(4)8X|X=J
11.せ:QK
12.コ:%
先ほど手札を組んでいたせきゅーんさん、出したのは59。その後、QK→53で上がる作戦。解説のみうらさんは「直前に相手が2枚出しを仕掛けているにもかかわらず自分から2枚出しを仕掛けるというのは相当自信があるんでしょうか」とコメント。相手が親でn枚出しをしたとき、たいてい相手はn枚出しが自分にとって有利と判断して出しているので多くの場合n枚出しの強い素数をもっています。なのでそこに自分からn枚出しをするのは普通はあまりいい手とはいえません。今回はコロちゃんぬさんが9Jに対しパスをしたこと、および手札に2枚出し最大素数QKがあることからせきゅーんさんは2枚出しでも自分のほうが有利と判断したのでしょう。コロちゃんぬさんはなんとか8X|X=Jを返します。せきゅーんさんのQKにコロちゃんぬさんはパスするしかありません。

13.せ:53#
せきゅーんさんが残りの手札を出しきり、せきゅーんさんの勝利。

せきゅーんさんが初期手札での劣勢を連続絵札ドローで巻き返し勝利しました。一方のコロちゃんぬさんは序盤の優勢を生かしきれず痛い敗戦となりました。

2本目(13:13:54~13:27:12)

初期手札 コ:(22578TTQQQK) せ:(A344668TJJK)
コロちゃんぬさんは絵札は6枚あるものの奇数が2枚しかない扱いづらい手札。T・2枚、Q・3枚をどう処理するかが問題になりそうです。せきゅーんさんは絵札4枚。解説のもっちょさんが言及しているように初期手札11枚に含まれる絵札(T,J,Q,K,X)の枚数は4枚が一番多く(26.69%)、次いで3枚(25.80%)、5枚(17.43%)、2枚(15.05%)となっています*2。ということでせきゅーんさんの手札は「普通」といえそうです。絵札の枚数で比べるならコロちゃんぬさんが優勢ですが、手札の扱いやすさを考えるとせきゅーんさんが有利。

1.コ:D(5)T=2*5
2.せ:D(A)%
コロちゃんぬさんのドローは5。それと手札の2を手にもち時間いっぱいまで考えてT=2*5。手札の奇数を温存して偶数カードを消費してきました。せきゅーんさんはドローしてパス。手札のJ,Kを出さずに様子を見るようです。

3.コ:D(4)T=2*5
4.せ:D(7)J
5.コ:D(6)%
3手目、コロちゃんぬさんは4をドロー。またもT=2*5で偶数を消費します。せきゅーんさんは先ほどパスした同じ手に今度はJを返します。続くコロちゃんぬさんのドローは6。もともと奇数が少ない手札で3回連続の偶数ドローはかなり苦しい。手札にKを残したままパス。
5手目終了時の両者の手札 コ:(4678QQQK)(残8枚) せ:(AA3446678TJK)(残12枚)

6.せ:D(6)666A
7.コ:D(A)QQQA
8.せ:D(K)%
せきゅーんさんのドローは6、これで手札の6は3枚になります。この3枚を666Aとして消費。コロちゃんぬさんはAをドロー。QQQとだして最後にA! 素数だ! ちなみに1212121は回文素数。なおこれより上の4枚出し回文素数はKJKA(1311131)のみです。それに対してせきゅーんさんは返せるカードはあるもののパスを選択。
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9.コ:D(9)67
10.せ:8J
11.コ:D(8)%
9手目、コロちゃんぬさんのドローは9。いったんは96Kを手札右側に寄せていたものの(487→96Kという出し方がある)、67の2枚出し。せきゅーんさんは8Jで応戦します。コロちゃんぬさんはドローしますが引いてきたのは8。これには解説陣も「う~ん」と唸る。パスせざるを得ません。
11手目終了時の両者の手札 コ:(4889K)(残5枚) せ:(A3447TKK)(残8枚)

12.せ:D(9)94A
13.コ:D(7)%
せきゅーんさんがドローしてきたのは9。いったん首をかしげるも94Aの3枚出し。コロちゃんぬさんは7をドローするもパスを選びます。

14.せ:3TK
15.コ:D(9)%
94Aでパスだったのを受け、再び3枚出しで勝負に出たせきゅーんさん。2回目の3TKです。絵札がKのみのコロちゃんぬさんはこれに返すにはどうしても絵札がほしいところ。しかしドローは9で叶わず。

16.せ:K
17.コ:D(K)%
せきゅーんさんの残り手札は(47K)。合計が3の倍数なので3枚出しはできません。そこで先にKを出し、返されなければ47で上がる作戦。返すにはジョーカーをドローするしかないコロちゃんぬさん。祈りながらドローするも引いたのはK。無念のパス。

18.せ:47#
せきゅーんさんが47を出して勝利。2本先取で2回戦進出。お互いの健闘を称え握手。

講評

3枚出し、4枚出しのラリーが見られ、前の試合からグンとレベルが上がりました。結果は2本ともせきゅーんさんが勝ちましたが、コロちゃんぬさんが勝っていてもおかしくはなかったと思います。
一般に手札の絵札の枚数は多いほうが有利です。というのは、絵札が多い分、大きな素数(n枚2n桁、2n-1桁)がつくれる可能性が高いからです。たとえば1本目の初期手札ではコロちゃんぬさんが優勢でした。せきゅーんさんが66Aを出したあとでも、手札を
T2A→KXJ|X=K→57[GC]→4Q7
と組むことができました*3。手札を組むポイントは、勝負手(この例ではKKJ)のあとにはすぐに上がれるようなカードを残すことです。絵札が多い手札はこのように大きな素数をつくれることが魅力ですが、大きな素数を出して絵札を一気に消費すると途端に手札が弱くなってしまいます。なので、大きな素数はそれで親をとった後にすぐに上がれるような場合に出すのが効果的です。この例だと手札(A24577TJQKX)に3枚出し最大素数KXJ|X=Kとグロタンカット57がありますから
(3枚)→KXJ|X=K→57[GC]→(3枚)
という出し方が考えられます。あとは残りの手札(A247TQ)を空いている箇所に当てはめて素数をつくれば完成です。ここで3枚出し素数をどれだけ知っているかが問われます。

最後にこの試合の数譜を再掲します。

1本目
せ:(A33556699TK)
コ:(A24577TJQKX)
せ:D(K)66A
コ:5TA
せ:D(J)3TK
コ:D(T)QTK
せ:D(Q)%
コ:2J
せ:9J
コ:D(8)%
せ:59
コ:D(4)8X|X=J
せ:QK
コ:%
せ:53#


2本目
コ:(22578TTQQQK)
せ:(A344668TJJK)
コ:D(5)T=2*5
せ:D(A)%
コ:D(4)T=2*5
せ:D(7)J
コ:D(6)%
せ:D(6)666A
コ:D(A)QQQA
せ:D(K)%
コ:D(9)67
せ:8J
コ:D(8)%
せ:D(9)94A
コ:D(7)%
せ:3TK
コ:D(9)%
せ:K
コ:D(K)%
せ:47#

次回から2回戦になります。シードの選手が続々と登場します。2回戦最初の放送試合は前期Mathpower杯・もりしーさんと1回戦でタカタ先生を下したくじらさんの対決です。

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902

*2:数値はもりしーさんの以下の記事から引用。 prm9973.hatenablog.com

*3:実戦では3手目のドローでせきゅーんさんにKKJが揃っていたので、仮にコロちゃんぬさんがこのように手札を組んでいたとしてもその通りに出せない可能性はあります。