初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

マスプライム杯2023・参加報告

この記事は素数大富豪Advent Calendar 2023の2日目の記事です。

adventar.org

昨日は二世さんのハム肉素数 - にせいの日記でした。たくさんのハム肉(8629)素数の紹介、面白かったです。そこには挙がっていませんが8628629(ハムにハム肉)が私のお気に入りハム肉素数です。

本稿では去る9月10日に行われましたマスプライム杯2023の振り返りをします。

マスプライム杯は2016―2018年に行われていた数学の祭典「Mathpower」の一企画として開催された素数大富豪大会を起源にもつ、素数大富豪の大会ではもっとも歴史のある大会です。2019年に数学イベント「マスパーティ」の一企画として開催ののち、2020年から現在の名前で独自に企画されるようになりました。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い昨年(2022年)までは素数大富豪オンラインでのオンライン予選とその勝ち上がり者8名による決勝大会*1の2日制でしたが、今年は4年ぶりの完全対面開催となりました。

マスプライム杯2023ではMathpower杯・マスパーティ杯・マスプライム杯を通して初めて3・4人対戦が採用されました。

  • 1回戦: 参加者15名をスペード(4人)・ハート(4人)・ダイヤ(4人)・クラブ(3人)の4ブロックに振り分けそれぞれで対戦する。50分(3人対戦は35分)間で対戦を繰り返し、勝利数がもっとも多いプレーヤーが決勝トーナメントに進出。なおペナルティの枚数は3枚を上限とする。
  • 決勝トーナメント: 進出者4名によるノックアウト方式。準決勝は2本先取・決勝は3本先取。

放送対戦の数譜はこちらから。
graws188390.hatenablog.com

1回戦

対戦カードは事前による抽選により決定され、私はハートブロックで対戦することになりました。対戦相手はramdosさん・Oknowさん・3TKさん。ramdosさん・Oknowさんは同じ同好会のメンバー、3TKさんは4年ほど共に素数大富豪をしてきたプレーヤーで、相手の手の内を知っているという点ではやりやすいカードになりました。試合は終始私のペースで進みました。勝負手に関する判断をいつもより甘めで、(KやXが分散し)KQKで手番がとれると踏み込めるのが多人数戦ならではです。道中でQ7Tの合成数出しや44TA36AのHNPもあって全8セットのうち6勝という大勝で1回戦を勝ち上がることができました。

twitter.com
twitter.com
twitter.com

準決勝

準決勝の相手はスペードブロックの勝者です。スペードブロック(コロちゃんぬさん-もりしーさん-さしみさん-でこぽんさん)の試合はマスプライム杯のYouTubeチャンネルで中継され、私はそれを観戦しました。終盤の連勝でさしみさんが勝ち上がりとなりました。スペードブロックでは2~4枚出しの枚数が少ない素数を中心に出されていたので、より多い枚数の素数を出すプレイが有利なのかなと考えていました。
(以下常体)

第1セット

じゃんけんの結果、第1セットの先手はさしみさんに。
相手はドローして57→KQJTA2876Aの全出し失敗。
こちらの初期手札は(225679TQKKX)。先手ならKKQTX|X=J→57[GC]→6229でほぼ勝ちだが、相手に全出しされたのでKKQKJを返される可能性がある。ゆえにこちらも全出しするのが定石だが、相手は直前のペナルティ10枚と次の手番のドローで残り1枚ずつのKとXを両方手に入れなければKKQKJは揃わないので、このKKQTX|X=Jが通る可能性はいつもより高そう。
少考の末、全出ししようとドロー。引いたのは9。KKQTX|X=J→57[GC]→92269の組み切りが残っているのでもう一度選択ができる。考え直してKKQTX|X=Jを出すことを決意。相手はKKQKJを持っていなかったようで無事に通り、第1セットを勝利。

第2セット

先手は私。初期手札は(A24789TTQKK)。多枚出し狙いでドロー。Aを入手したので7AA2QTTK→894Kとし、相手に返されることなく勝利。しかし、ここはドローせず単にKQTTK→984A27で十分(返される確率が15%ほどで、返されたとしても相手に上がりきられる確率はさらに減る)だったと思う。今回は相手の絵札が少なかった(3枚)のでどちらでも勝てたが、気を付けたい。それか初手に絵札を5枚使える素数を覚えて組み切る(KQTTKと比較すると、返せる素数が相手にある可能性が上がるものの相手がそれを出せるとわかる可能性が下がる)。4KTTKQAA(→8297)、7KQAATTK(→8429)、9KQTA2TK(→874A)、72TKTQK(→984AA)、8KQT4TK(→9AA27)、87TQKTK(→94A2A)、94KTTQK(→872AA)、97KTTQK(→84A2A)などのどれか1個でも覚えていればよりよかっただろう。

決勝

相手はOTTYさん。マスプライム杯2020・2021で準優勝の強豪である。かく言う私も第3期Mathpower杯・マスプライム杯2022で準優勝。対外的には「両者3度目のMPC決勝進出、勝てば初優勝」という好カードになった。

第1セット

第1セットの先手はOTTYさん。私はじゃんけんが弱すぎる。
私の初期手札は(A3555669TKK)、相手の初手は7QTQTJ。絵札が足りない。一応ドローして(9を引く)パスの後、84A27で相手の上がり。

第2セット

先手は私、初期手札は(224569TQKKX)。最初に目についたのはKQ=2^5*4X|X=Aだが、それを出すと残りの(269TK)がわからない。TK→KQ=2^5*4X|X=A→269とするのも、カマトトからのKKがあり、そうなった場合に立て直せない。KKQTX|X=Jも残りの(224569)がわからない。ドローすると8。偶数が全部揃ったので偶数消費多枚出し素数が有力。8642TQXK|X=Qとすると残りが(259K)でこれもわからない。8642TQX2K|X=Aという出し方もできるが残りが(59K)で3の倍数。時間もないので次のドローでいいカードを引くことに賭けて8642TQX2K|X=A。相手は9824TJ3J3と出すが合成数
手番が私に戻ってきた。運命のドローは2。これで手札は(259K)…ってさっき避けたやつ! 思わずのけぞる。3の倍数を引くよりましだけど。952Kか925Kだった気がするが、並べ替え最大奇数の952Kなら覚えてそうだから925Kにしたら外れ。このセットも落として2連敗濃厚かと思いながらも手札を並べなおす。ペナルティで(67TK)を引き、手札は(25679TKK)。
相手は2回のドローと2回の57の後、7枚出し失敗でこのセット3度目の私の手番。このとき相手が何をしてもドローして全出しと思って手札をTKK65297の順に並べていた(素数になりやすいように値を小さくするためTKKを先頭に、あとは適当)。
ドローはQ。全出しの際になるべく数を小さくしようとQを前の方に入れようとしたが、気まぐれでTKK6529Q7で出したらこれが素数! 落としかけていたセットを拾い1勝1敗。思うところはたくさんあるが、それはいったん後回し。

第3セット

先手はOTTYさん。初手はドローの後全出し失敗。こちらの初期手札は(A2244578QQX)、こちらもドローして(3を引く)全出しで応じる。ペナルティ後の手札は(AA22234444556789TJQQKXX)。絵札は少ないがXが2枚あるのは大きい。
相手が素数出し失敗し山札が尽きて私の手番。A729[RR]を出して相手の絵札をお荷物にする。相手はA237を出してきた。これで私から2とXがすべて見えたことになり、相手の革命返しの可能性がなくなった。A223を出して手番をとってから12枚出しで流れたカードを回収。
相手はKTTQJと5枚出し。こちらはラリーしながら手札消費を狙う。KTJQ3→98QTJ→68Q57ときて相手が96767と合成数を出し、私の手番に。
4が未だに4枚残ったままなので44449を出す。相手は36857と食らいつく。このときの私の手札は(AAA22223357XX)。ここに来て手札が偏ってうまい数が出しにくい。AXA33|X=0でAAXを消費するも手番を維持することを選択。
手札は(A222257X)、2を一気に消費する方法が難しい。とここで思いついたのが2の1枚出し。Xはすべて見えているので返されることはない。問題は相手がAの合成数出しカマトトをしたときで、その際に流れたXが回収される可能性がある。相手はパスしたのでもう一度2。相手パスの後57→A22X|X=3で上がり。

第4セット

先手は私、初期手札は(A45789JQKKX)……KKQXJ|X=K→57[GC]→894Aの勝ち確定である。一応98754Aが素数だったかなと思いながらも、より確実なほう、準決勝の最後の素数894Kに合わせたほうということでこの順に出し勝利。3勝1敗で優勝。

第2セットを落とさなかったことが優勝の最大の要因であろう。確実に勝つルートはあったと思うので掘り下げていく。
初期手札(224569TQKKX)で組むことを考えるなら、KQ=2^5*4X|X=Aの残りでできる素数926TK、KKQTX|X=Jの残りでできる素数654229は覚えていてもよかった。65KTKQX|X=J(→4229)も覚えていたら検討の余地はあっただろう。62549→KKQTX|X=J→2(62549にカマトトなら2QKTKX|X=J)、46229→KKQTX|X=J→5(46229にカマトトなら5XTQKK|X=J)に至っては当時の知識でも出せていたはずである。8をドローした後なら86KQXTK|X=J(→52249)なんかも使えそうである。5枚7桁素数はあまり使う機会はないが、KQ=2^5*4AやKK=A3*TAの残り、革命下でのラリーなどで使う機会がまれにある。
そして952Kを覚えていなかったことは痛恨の極みであった。4枚出しは上位互換に限れば1000個に満たない*2ので、その気になればすべて覚えてしまうこともできるはずである。
第3セットについては革命後の立ち回りが手札の優勢さの割にはうまくなかったと思う。A0、AA、A2で始まる素数のレパートリーが少ないのが組み切りを苦しくした原因だろう。昨今の超多枚出しへの対抗として革命を増やしている自身としては喫緊の課題である。そもそも最近は実戦不足からのミスが多くなっているので(現に先ほどの梅森戦で敗北した)、練習の機会を積極的に設けよう。

マスプライム杯2023において、私は当初3人戦・4人戦の導入に戸惑いがありましたが、終始和やかな雰囲気で行われ素数大富豪大会の理想の形のひとつとして大変素晴らしかったと思います。二世さんをはじめとする大会に開催に尽力してくださったスタッフの皆様に感謝申し上げます。

明日の素数大富豪Advent Calendar 2023の担当はもりしーさんです。「素数音楽vol.2」ということで、昨年の素数で音楽を作ろう! - 素数交響曲第2番の続きでしょうか。私は音楽に対してはまったくの素人ですが、もりしーさんや巨大なナメクジさんの素数音楽には心惹かれるものがあるので楽しみにしております。

*1:2021年は決勝大会も素数大富豪オンラインで開催。

*2:ゆぅくりっどさんのツイートによれば937個。