2月29日に開催された素数大富豪大会札幌杯の自戦記です。
素数大富豪大会札幌杯のルールはもりしーさんの次の記事にあるとおりです。
prm9973.hatenablog.com
無差別級に関して主なルールを述べると
- 1本目の先手は試合前のじゃんけんにより決定する。2本目以降は先手後手を入れ替える。
- シンキングタイム1分。
- 手番は持ち時間制。持ち時間は勝負ごとに5分。持ち時間が切れると1手15秒の秒読みに入る。秒読みが切れると強制パスとなる。
- カードは流す機会があるたびに流すカード全体をよく切ってから山札の下に追加する。
- 合成数出しに関して、(たとえ故意に間違える場合でも)素因数場に出される各数は場に出される数より真に小さくなければならず、(場の数)=(素因数分解)の等式が10を法として成立していなければならない*1。この条件を満たさない場合は無効な手として出したカードは手札に戻される。
さらに補足:
- 参加者16人によるノックアウト(トーナメント)方式。1試合はプレーヤー2人で行い、1回戦・準々決勝は2本、準決勝・決勝は3本先取したほうが勝ち上がり。対戦カードは大会当日に抽選で決定。
- ペナルティ時に山札が無くなったときに他のプレーヤーが手札を捨てるという処理を行わない。(公式ルールと異なる点)
- 新型コロナウイルス感染症の感染拡大および大会前日の北海道知事による緊急事態宣言に伴い、急遽オンラインでの参加を認める。対戦カードのうち一方ないし両方がオンラインでの参加者の場合、素数大富豪オンラインで対戦を行う。その際のルールは素数大富豪オンライン内のルールに従う。
私は1回戦でかいたいさん(東京工業大学素数大富豪同好会(私の後輩)・マスパーティ杯ベスト8)、準々決勝で佐藤雄介さん(北海道大学素数大富豪同好会)にそれぞれ勝ち、準決勝に駒を進めました。準決勝で対戦したのはOTTYさん(北海道大学素数大富豪同好会・第3期Mathpower杯ベスト8・第1期蝉王戦ベスト4)です。OTTYさんは1回戦でししとうさん(OTTYさんの妹・マスパーティ杯ベスト4)、準々決勝でnishimuraさん(第3期Mathpower杯ベスト8・第1期蝉王戦優勝・マスパーティ杯準優勝)にそれぞれ勝っています。
OTTYさんは家族全員が素数大富豪をプレーする一家*2の兄です。私とは非公式には対戦経験はあるものの、大会では初めての対戦です。いち早く(2018年前半)多枚出しに着手したプレーヤーで、81210から始まる素数を多く覚えています。
じゃんけんの結果、1本目の先手はOTTYさんとなりました。
1本目(6:00:30~6:04:14*3 )
初期手札 O:(223467789TT) カ:(36699JJQKKK)
私の初期手札は絵札が11枚中6枚とかなり強そうに見えますが、残りの1桁カードがすべて3の倍数で扱いづらい。OTTYさんの初手が3~6枚出しなら最強クラスの素数を返すことができますが、そのあとが続くかが怪しい。
1. O:2TT9
2. カ:D(K)KJQJ
3. O:%
OTTYさんの初手は2TT9。初手に4枚6桁を出すのはあまり見られない手です。普通の4枚出し戦法ならあとで出す勝負手のために絵札を温存しますから、初手は4桁がほとんどです。もしかしたらOTTYさんもたくさん絵札をもっていて初手にも絵札を回せるような状態だったかもしれません。しかし仮にそうだとするとKJQJを返される可能性のある4枚出しよりも絵札をたくさん使って出すはず*4ですから、やはり初手4枚6桁は不自然です。もっともありうるのは残り7枚が上がれる形(7枚出し素数・57[GC]と5枚出し素数など)で、こちらのカマトトを誘うものです。
ということで私は2TT9より大きな4枚出しを返さないといけないのですが、捌きにくい3の倍数が多い手札なのでドローしたところ、なんと4枚目のKを引きました。相手がKJQJを持っている可能性はほとんどありませんが、ジョーカーがまだ見えていないことも考慮してKJQJを出しました*5。OTTYさんは少し時間をかけた後ドローをしないでパスしました。
4. カ:D(2)9623KK
5. O:%
私の手札にはKが3枚の他は1桁の3の倍数だけで依然として組みづらい。ドローすると2でした。知っている6枚出し素数9623KKが揃った上に、残りも96Kで素数となって最高のドローでした。OTTYさんに返される可能性もありますが、ここは自分の都合を優先して出しました。OTTYさんは即座にパスを選択。
6. カ:96K#
予定通り最後の3枚を出してまずは1勝。
OTTYさんの初手4枚6桁(実際はカマトトを誘うブラフ作戦だったようです)に惑わされながらも手札の優勢が手伝って最初のゲームを取りました。
2本目(6:05:08~6:09:36)
初期手札 カ:(AA566789TJQ) O:(23458TTTKKX)
私の初期手札は5~Qが並んでいるものの絵札が3枚という点が少しネック。ドローして3かKがきたら6789TJQK(これ自体も素数)から派生する素数が出せるなと思いながら57[GC]と6869(ムバラク、素数)を並べてみる。
1. カ:D(X)6789TJQ6X|X=K
2. O:D(8)8XTTT8K4K|X=Q,P(A3345677Q)
すぐにドローすると望外のジョーカーを引いてきました。6789TJQK関連の多枚出し素数と残りで素数を作るとなるとほどなく6789TJQ6X|X=KとA5Aを見つけ、この作戦でいくことにしました。初期手札+ドローの12枚からこれに返す9枚出し素数を見つけるのは大変困難です。果たしてOTTYさんは勘出しするも合成数(812101010813413=29*1009*27753699833)。
3: カ:A5A
残りを出して私が2連勝。
1本目に続き2本目もドローに恵まれ勝利。
3本目(6:10:30~6:17:15)
初期手札 O:(2578TTJJQKK) カ:(A23346778TK)
私の初期手札は絵札が2枚しかないものの私が覚えている多枚出しの中でもよく使っている4336(しざさら)が揃っている。OTTYさんの好きな81210も8A2Tである。43367A2TKが素数だったかなと思いながらOTTYさんの初手を待つ。
1. O:D(9)57[GC]
OTTYさんはすぐさまドロー。少し長い手札の組み替えののちグロタンカット。
2. O:D(2)229
3. カ:D(Q)827
4. O:D(6)KKJ
5. カ:D(4)%
OTTYさんは再びドローし手札を組み替えて出したのは229。KKJが本命かなと思いつつもOTTYさんが結構時間を使っていたので手詰まって229を出したようにも見えます。試合当日は2月29日だったので狙って出したようにも(実際はKKJが勝負手だが残りが組み切れていない見切り発車の手で2月29日は関係なかった)。KKJ越えのKKQ合成数出し(KKQ=2^4*29*283)に3枚必要な2が2枚見えていて、合成数出しカマトトしてもKKQ合成数出しが揃う可能性は低そう。ここはひょっこり手番が回ってきたときに43367QTKが出せるように827を出しました。OTTYさんは3度目の長考ののちKKJ。私はドローしてパス。
6. O:D(5)8QT6T5J#
OTTYさんが得意の81210素数を出して上がり。
OTTYさんが勝利し、これで私の2勝1敗。私が優勢であることは変わらないものの、過去に2連敗からの3連勝*6を経験したことがあるので、OTTYさんにそれを決められるのを阻止する上でも次の勝負で決着をつけたい。
4本目(6:18:25~6:22:29)
初期手札 カ:(2567799TQXX) O:(234556789JQ)
私の初期手札はジョーカーが2枚あるもののJとKがないので絶好とは言い難い。2本目で仕掛けた多枚出しをするにもこの手札で出せる手ごろなものが見つからない。
1. カ:9629
2. O:D(2)97Q5=628J*243*5,P(????????????)
そうこうしているうちにシンキングタイムが終わってしまったのでジョーカー2枚を温存して4枚出し。相手がカマトトしてくれれば57[GC]とジョーカーでいかようにも上がれるし、仮にKJQJを返されてもジョーカーのおかげでカマトトができる上にそのあとOTTYさんがすぐに上がれない場合には私のほうに分がありそう。OTTYさんは初期手札が芳しくなく合成数カマトト。
3. カ:57[GC]
相手がカマトトしてくれたのでグロタンカットから……
4. カ:7XTQX|X=K|X=J#
5枚出しでゲームセット。3-1で私の決勝進出となりました。
ブラフ気味の初手4枚出しの決断があまり時間をかけずにできたのがよかったと思います。
数譜
1本目
O:(223467789TT)
カ:(36699JJQKKK)
O:2TT9
カ:D(K)KJQJ
O:%
カ:D(2)9623KK
O:%
カ:96K#
2本目
カ:(AA566789TJQ)
O:(23458TTTKKX)
カ:D(X)6789TJQ6X|X=K
O:D(8)8XTTT8K4K|X=Q,P(A3345677Q)
カ:A5A#
3本目
O:(2578TTJJQKK)
カ:(A23346778TK)
O:D(9)57[GC]
O:D(2)229
カ:D(Q)827
O:D(6)KKJ
カ:D(4)%
O:D(5)8QT6T5J#
4本目
カ:(2567799TQXX)
O:(234556789JQ)
カ:9629
O:D(2)97Q5=628J*243*5,P(????????????)
カ:57[GC]
カ:7XTQX|X=K|X=J#
*1:言い換えると、(場の数)=(素因数分解)の等式において両辺の一の位が一致していることを要請するということ。詳細はせきゅーんさんの記事を参照。integers.hatenablog.com
*2:父・しじみぷっちょさん、母・きのこさん、妹・ししとうさん。全員が札幌杯に参加しました。
*3:時間はアーカイブにおけるこの勝負の放送時間です。配信(YouTube)
*4:例えば初期手札に絵札7枚なら7枚14桁→相手がパス→残り4枚と出されることが多いです。
*5:「QK部 -1213-」第51話にこの状況と似た設定の描写があります。
*6:第3期Mathpower杯準々決勝 nishimuraさんとの対戦 graws188390.hatenablog.com