初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

全出ししたくない

この記事は素数大富豪Advent Calendar 2023の20日目の記事です。

adventar.org

昨日はマモさんの一か八か - まもめもでした。つい「一も八も」の素数を欲してしまうのは欲張りか怠慢か。

本稿では全出しへの対策を(主に全出し以外の方法で)考えます。

「全出し」とは

2023年の素数大富豪プレーヤーで知らない人はいないと言っていいほど普及した「全出し」ですが、紹介しておきます。
全出しとは、(素数である確証なしに)場に手札すべてを出すこと、およびそれが素数でなかったときに受けるペナルティ後の戦略のことです。素数大富豪は手札を先になくすことが勝利条件のゲーム*1にもかかわらず、手札が多いことが大体の場合で有利です。というのも、素数大富豪では一度に出す枚数に制約がないゆえ大量の手札を一気に消費することが可能であり、それに返すには同じ枚数が必要であるゆえ相手の手札が少ない場合は返される心配がないからです。全出しをするプレーヤーとしないプレーヤーが対戦する場合、先手後手にかかわらず前者が勝つことが圧倒的に多いです。そのため、全出しが普及した今から競技素数大富豪を始めるなら真っ先に全出しを覚えるべきです。とくに現在のトッププレーヤーにできるだけ早く追いつき、追い越したいのならば全出しは必須の戦略です。

なぜ全出しは台頭したか

全出しを主戦力とするプレーヤーは2020年以降(プレーヤーの名前を挙げるならマリンさん以降)に登場しました。コロナ禍以降に素数大富豪を始めた彼らにとっては素数大富豪fc2やオンライン素数大富豪といったオンラインでの対戦がメインです。実物のトランプを使う場合には大量のトランプを扱うのに煩わしさがありますがオンラインにはありません。また、合成数出しカマトトが登場した2019年頃には「素数大富豪本来の意図にそぐわない」などの否定的意見がありましたが(あったのです)、そのような声が彼らに届く機会はなかったようです。「とりあえずの全出しでも上級者への牽制となりえる」「枚数が多いほうが組み切りやすい」といった全出し戦略そのものに初心者が参入しやすい点があることは言うまでもありません。

アンチ全出しのための全出し対策

最初に断っておくと、私は全出しが好みではありません。最近は初期手札が並くらいであっても全出しするプレーヤーが多く、全出しが他にどうしようもないときの最終手段として扱われていたころから素数大富豪をプレーしている私にとってはどうも釈然としません。
初手全出しにはほとんどの場合全出しで返すのが最善手であるため、全出しを完全に避けることは今後も競技素数大富豪の最前線で戦い続けるには不可能です。それでもなるだけ全出しを回避したい人(私以外にいるだろうか)のために全出し対策を紹介します。

先手の場合

初期手札にKKJがあるなら3枚出し、KJQJがあるなら二刀流、絵札が多いなら絵札攻めは全出し党でもそうするので今はスルー。問題は初期手札がそれらを含んでいないような良くない場合です。全出し党なら迷わず全出しするのでしょうがちょっと待ってほしい。その初期手札、本当に全出しですか。たとえば、大きさは無視して3・8や4・7(ドロー後なら3・9や4・8)と組めるなら先に3枚ないし4枚のほうを出してKKJやKJQJを持っているように見せる。相手がカマトトすればこちらの上がりだし、相手が日和ってKKJやKJQJを先出ししたなら、相手がその直後に上がりきれなければこちらにもまだ分がある。たとえば相手が残りを全出ししたなら、やはりブラフ勝ちである。そうでないときでも相手は勝負手を出した直後でそれほど絵札はもっていないだろうから、まだチャンスがあるかもしれない。そもそも初期手札が良くない時点でこちらの劣勢なので過度な期待はしないこと。それが嫌なら初手で潔く全出ししなさい。

2023年12月12日 第12回はち杯 mickey-カステラ (1回目) 第7セット
カステラ:(7978J2QX83A)
mickey:(9XKA428JA4J)
カステラ:D(2)Q8=2^7
mickey:D(A)JK=AAA244*XJ89|X=4,P(QT3T7687T646)
カステラ:X8J=7^2*A39|X=6#

2023年12月12日 第12回はち杯 カステラ-はち 第2セット
カステラ:(97922AQ22XJ)
はち:(J36TT3JKX39)
カステラ:D(T)72T9
はち:KJXJ|X=Q
カステラ:%
はち:T3T3369,P(55Q8974)
カステラ:JQ=2*2*2*AX9|X=3#

ただし、3人以上で対戦する場合は初手8・9枚出しやブラフの効果が弱くなるので全出し気味に構えたほうがよいでしょう。

後手の場合

こちらが後手で相手に初手全出しされた場合は基本的には全出しで返す。例外はこちらが即座に上がれるとき・KKの合成数出し・XXがあり1枚出しで勝てる場合くらいです。こちらにKKJがあり相手にKKQがなさそうなら3枚出ししてもよいと思います(2やKの持ち具合で判断)。

2023年12月12日 第12回はち杯 カステラ-はち 第5セット
はち:(T2TA6AT86Q3)
カステラ:(6A23TX4K798)
はち:D(4)T6T8QAA2T643,P(9QK84QJ25Q35)
カステラ:9X7A8=2*43*T6K|X=Q#

2023年12月12日 第12回はち杯 mickey-カステラ (2回目) 第18セット
mickey:(2A5Q8442QT7)
カステラ:(AKKKJ33TJ2A)
mickey:D(J)TJQQA2244857,P(5K3Q86584735)
カステラ:3J
mickey:D(2)KQ=88*554334242525A6778TJQQ,P(JT678X6699X7Q4T9A9)
カステラ:KK=A3*TA
mickey:%
カステラ:J2K#

2023年12月12日 第12回はち杯 mickey-カステラ (1回目) 第2セット
mickey:(626Q456A9A9)
カステラ:(87XK332574X)
mickey:D(9)QAA245666999,P(9J723TQK5Q83)
カステラ:8=2^3
mickey:D(8)K
カステラ:X[IN]
カステラ:57[GC]
カステラ:4X=3*K7|X=J#

全出しの際は手札の合計が3の倍数でも構わず全部出したほうがよいです。その後は手札の内容を見てどの作戦を採るかの判断になります。
全出しした後の戦略はこの3年でずいぶん整備されてきました。それらについては(まだ出揃ってないものの)記事がありますのでそれらを簡単に紹介することにします。

多枚ラリー

参考記事
mickey57.hatenablog.com
mickey57.hatenablog.com
greenplus.hatenablog.com
簡単にいえば初期手札からの3・4枚出しラリーを倍の枚数で行うものです。1デッキに絵札は18枚しかないので10枚20桁は必ず通り、絵札の組み合わせによって9枚18桁や9始まりの10枚19桁も必勝になるものがあります。まずは10枚までの最大クラスの素数を覚えておく必要がありますが、よく使うものは意外と多くないようです。mickeyさんの最初の記事におけるtierS以上を覚えておけば十分で、tierAまで覚えるとよりよいでしょう。
7枚出しも有効で、絵札の枚数でディスアドバンテージがある場合にも使える可能性があります。ただし最近は「7・7・7・3」と悠長な組み切りは叶わないことが多い(最初の7枚出しをした直後に大きな7枚出しをされることが増えたため)ので、「7・7・10」とするか、最初の7枚出しを合成数出しにして後ろの「10」を小さくすることが考えられます。
よく使われる7枚出し合成数はmickeyさんの2つ目の記事およびさしみさんの記事を参照。

超多枚出し

参考記事
dil-13.hatenablog.com
dil-13.hatenablog.com
十数枚から二十枚にもおよぶ素数を出すもの。垓や𥝱サイズの素数を覚えておくという労力がかかるが、出せれば一撃で勝利をもぎとることができる。dilshさんの記事に使いやすい超多枚出しが紹介されています。

私がこれにもう一つ付け加えるなら、それは「革命」です。

革命

革命しておけば多枚ラリーを防ぐことができます。革命後の戦略はその必要性がこの数年いわれ続けているが未だに整備されておらず力戦模様にならざるを得ません。正面から全出しを受けるよりはまだましといった程度なので、過信は禁物です。

2023年5月6日 第11回はち杯 カステラ-マリン (1回目) 第2セット
マリン:(3T2584Q5822)
カステラ:(Q6699Q68A26)
マリン:D(Q)TQQ885542223,P(A3339KA5KATJ)
カステラ:D(X)A26Q6Q6X6899|X=Q,P(J9477TJX4K85)
マリン:D(T)AAA22233334555889TJ,P(K7J74)
カステラ:A729[RR]
マリン:A483
カステラ:XX49|X=A|X=0
マリン:%
カステラ:TJJQQK4566667889,P(A729A483XX49)
マリン:A729[RR]
カステラ:KJQJ
マリン:%
カステラ:D(A)A729[RR]
マリン:D(7)A224,P(29KJ)
カステラ:84T69
マリン:D(Q)22543
カステラ:A4867
マリン:A2335,P(JA729)
カステラ:665Q3
マリン:D(8)85223
カステラ:D(4)AX48X|X=0|X=7
マリン:%
カステラ:D(T)T49#

全出し相手に使うには注意したほうが良いもの

全出しが登場してから様々な戦術が試みられてきましたが、中には使用頻度が少なくなったものもあります。原因も併せて挙げますので、それを改善すればまた表舞台に現れる可能性があります。

overKJQJ

overKJQJは12枚程度使います。「4・4・4(overKJQJ)・4」とすると「7・7・7・3」と同様に最初の4枚出しに対し大きな4枚出しを返され、次の4枚出しが出せないので「4・4(overKJQJ)・8」に組む、最初の4枚を合成数出しにするなどの工夫が必要です。

待ち伏せ

相手の初手全出しに対し、全出しをせず「2・9」「3・8」「4・7」などで相手のミスを待つもの。どちらの順序で出しても返された上で枚数で押されてしまう。3人対戦で前の2人が全出しし山札がないときといった、元々勝つ見込みが低い場合に待ち伏せすることはあります。

まとめ

現在では全出しをされると全出しで返すのが最善であるため、全出しはもはや避けることができなくなっております。ゆえに全出しをしたくなければ、先手でそうしない選択をするくらいしかありません。全出し勢に少しでもこのような考え方が届くことを願いながら筆をおくことにします。

明日の素数大富豪Advent Calendar 2023の担当はさしみさんです。「21素数など可変系の紹介と考察」について書くとのことです。全出し隆盛の下で頭角を現してきたさしみさんの担当ということで、今日の内容とは真逆になりそうですが期待しましょう。

*1:このタイプのゲームとして素数大富豪のほかに大富豪やウノなどが該当する。