初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第2期雪華流星戦】データ分析

昨年11月17日から素数大富豪オンラインで開催された素数大富豪トーナメント第2期雪華流星戦は4月30日に決勝が行われ、マリンさんが優勝しました。マスプライム杯2020に続いて2回目の大会参加であるマリンさんがタイトル獲得ということで驚きです。さて、恒例のデータ分析をしましたので、その結果を述べます。

基本情報

第2期雪華流星戦の概要を振り返ります。

  • 予選リーグ: 参加者20名(マモ第1期雪華流星を含む)を抽選で4つのリーグ(ゆき組・はな組・ながれ組・ほし組)に各5人ずつ振り分ける。各リーグ内で2本先取の総当たり戦を行う。勝数の多い順(同数の場合はセット勝率の高い順)に各リーグの上位3名がセミファイナル進出。ただし、現雪華流星が所属リーグにおいて3位以上になった場合、現雪華流星はセミファイナルを免除されファイナル進出。この場合、現雪華流星の所属リーグにおいて順位の繰り上げが行われ、進出が決定していない全参加者の中の最上位者が現雪華流星の所属リーグ3位としてセミファイナル進出。
  • プレーオフ: 勝数とセット勝率で順位が決まらないときは該当者で1本先取・総当たりのプレーオフを行い、順位を決定する。今大会ではプレーオフが行われる状況は発生しなかった。

マモ第1期雪華流星はゆき組において2位となりファイナル進出が決定。

  • セミファイナル: 進出者12名を事前の抽選で決定された4つの3人トーナメントに振り分け、3本先取の対戦を行う。各リーグの1位進出者はそれぞれのトーナメントにおいてシードされる。勝ち抜け者はファイナル進出。決定戦で敗れたプレーヤーは敗者復活戦へ。
  • 敗者復活戦: ファイナル進出決定戦で敗れた4名によるトーナメント。2本先取。勝ち抜け者1名がファイナル進出。
  • ファイナル: 現雪華流星・セミファイナル勝ち抜け者4名・敗者復活戦勝ち抜け者1名の合計6名による3本先取の総当たり戦を行い、勝数の多い順(同数の場合はセット勝率の高い順)に上位2名が決勝進出。
  • 決勝: 進出者2名による3本先取。

分析対象は第2期雪華流星戦の全試合(67試合・205勝負)です。

  • 予選リーグ(40試合・105勝負)
  • セミファイナル(8試合・33勝負)
  • 敗者復活戦(3試合・7勝負)
  • ファイナル(15試合・56勝負)
  • 決勝(1試合・4勝負)

第1期HNP杯*1・第2期蝉王戦との比較のため、行動データ・出された数・プレーヤーごとの集計の3つの観点から見ていきます。第1期HNP杯・第2期蝉王戦のデータ分析はこちら。

graws188390.hatenablog.com
graws188390.hatenablog.com

行動データ

素数出しやグロタンカット・ペナルティなどの割合を比較します。比較対象は以下の通り。
第3期Mathpower杯(2018年10月)/マスパーティ杯・一般の部(2019年10月)/第1期HNP杯(2020年4月~7月)/マスプライム杯2020(2020年9月(オンライン予選)・11月(決勝大会))*2/第2期蝉王戦(2020年7月~11月)

f:id:graws188390:20210503145527p:plain
f:id:graws188390:20210503145543p:plain

第1期HNP杯以降の傾向が続いています。素数出しの割合はわずかながら過去最小を更新。全出し戦略が今後も隆盛を誇るなら、その割合はもう少し小さくなりそうです。収束値の予想として46%がはっきりと見えてきました(おぼろげながら浮かんできたわけではない)。
グロタンカットは過去最高の割合を記録。これは新たなトレンドなのか、それとも元々グロタンカットの多いプレーヤー(かいたいさんなど)が活躍した影響なのか、今後注視していきたいと思います。
ラマヌジャン革命は若干減少、単独ジョーカー・合成数出しは横ばいとなりました。
ペナルティは過去最高、パスは過去最低となりました。返す素数合成数がない状況でもカマトトできる状況ならカマトトしたり、超多枚出しに対して勘出しでも対抗する場面が増え、安易にパスすることが少なくなりました。
また、今大会は1勝負当たりの平均手数が9.1手・中央値が6手と第1期HNP杯の11.6手・7手、第2期蝉王戦の10.7手・7手と比べて少なくなりました。極端に長手数の勝負がなかった(最長でも40手)こと、相全出しになっても多枚数出しで早期決着することも多かったことが理由です。

出された数について

複数回出された数を一覧にしました。

f:id:graws188390:20210503145359p:plain

グロタンカット57は不動の1位。そして2位には3枚出し最大素数の131311がランクインしました。平常時でも十分強いことは言うまでもないですが、相全出しの展開になっても、それを上回る合成数131312=2^4*29*283が揃いにくいことを考えると他の枚数の最大素数と比べても強い数です。
以下、単独ジョーカーX、ラマヌジャン革命1729、各枚数の最大クラスの素数合成数、もともと種類が少ない1・2枚出しが続くのは今までどおりですが、6位(12回)にそのどれにも当てはまらない8121011が入りました。第1期HNP杯では2回、第2期蝉王戦では3回でしたのでこれは驚きです。理由として次が考えられます。

  • 相全出しの後手札にoverKJQJがありそれを勝負手に4枚出しするとき、8121011を出して相手に絵札を出させoverKJQJ返しのリスクを減らす。
  • 逆に相手が4枚出しをしてoverKJQJが控えていそうなときに、先に8121011を出して4枚出しラリーによる相手の手札消費を食い止める。
  • 812101や8121013も素数であり、OTTYさんが81210から始まる素数をよく出すなど、知名度の高い素数である。

どの理由でも8121011は偶数消費型素数であること(overKJQJで残ったカードで作れる可能性が高い)、Kを使わないこと(Kは勝負手に使うことが多い、Kがない劣勢の状況でも揃っている可能性が高い)が効いています。とくにKを使わない4枚出し素数の中では12121211の次に大きいのでoverKJQJが絡む場面では出しやすい素数となります。

overKJQJは表にある13131112=2^3*1641389, 13131210=2*3*5*167*2621, 13131312=2^4*3*273569(各3回), 13131113=29*452797(2回)のほか, 13111312=2^4*819457, 13131011=31*423581が各1回の合計13回出されました。overKJQJ全体の頻度としては第2期蝉王戦とほぼ同じですが、13131312が突出して多かった第2期蝉王戦と比べると少しバリエーションが増えました。また、overKKQKJとして1313121312=2^5*3^2*19*31*7741が1回出されました。

1回でも出したプレーヤーの人数別の一覧は以下の通りです。

f:id:graws188390:20210503145435p:plain

各枚数の最大クラスの素数合成数や偶数消費型素数が多いことは今までどおりです。121012109(ドゥーさん2回・かいたいさん1回)は偶数消費型素数ですが、(TTQQX)の5枚で出せる唯一の素数です。455668483は偶数消費の四つ子素数(nishimuraさん・なきゃのさん各1回)。822111312106459も四つ子素数(しじみぷっちょさん・きのこさん各1回)。812101113548629(OTTYさん・なきゃのさん各1回)は四つ子素数ではありませんが末尾の9は3でも13でも素数になります*3。こうして見ると、同好会や家族といった集団で共有されている素数があるように思われます。

プレーヤーごとの集計

今回はファイナルに進出したマリンさん・かいたいさん・nishimuraさん・OTTYさん・マモさん・なきゃのさんの6人のプレースタイルを比較します(順序は最終順位に従う)。

f:id:graws188390:20210503145654p:plain

(※ 枚数クラスごとの”○○/△△”は場にその枚数クラスに属する数が出されたのが△△回で、そのうち正しく出されたものが○○回であったことを表します。合成数出しカマトトは場の数の属する枚数クラスに計上しました。)
全体の傾向としては11・12枚クラスの初手全出しやそれ以上の枚数クラスの勘出しの増加が挙げられます。7~9枚クラスは初手や相全出し後の枚数のチョイスで好まれたのか割合が高くなっています。8枚クラスが凹んでいるのはかいたいさんの影響と考えられます。
プレーヤーごとには次のような特徴が認められます。

  • マリンさん: 初手全出しからのoverKJQJ狙いが主戦法。そのため11枚クラス以上の出す回数が多い。7~10枚は少なめだが四つ子素数の56643289や86410から始まる素数を意図的に出しているので策がまったくないわけではない様子。11枚クラスで出した素数はいずれもHNPで、セミファイナルの対カステラ戦、決勝の対かいたい戦とここぞの場面で決めている。
  • かいたいさん: 第1期HNP杯では多枚数出し、第2期蝉王戦ではoverKJQJとプレースタイルが変化していたが、今大会では両者をミックスしてきた。overKJQJが3回は今大会最多。7・9枚クラスは多く出している一方8枚クラスの成功0の理由は謎である(第2期蝉王戦では4/5)。
  • nishimuraさん: 枚数別にみて満遍なく出している。無理やりな初手全出しはしないタイプで、するのはよほど初期手札が悪いときか相手に先に全出しされたときくらいか。12枚クラス以上で記録した素数(654323456789, 11123345678999, 11123456788999, 626289854312101013)はすべて知っているものと思われる*4
  • OTTYさん: 相手に全出しされて迎えた後手ではほぼ全出しする他、途中でも全出しを仕掛けることが多い。今大会の最大素数を記録。一方でかつて「7枚出しの名手」*5と呼ばれたように7枚クラスまではコンスタントに繰り出してくる。合成数出し11回はマリンさんと並んで最多タイ。ラマヌジャン革命5回は最多。
  • マモさん: 全出しは相手から仕掛けられたときにする場合が多く、自分からすることは少ない。初手は3・4枚出しが多い堅実派。しかし相全出しのときには途中で全出しに踏み切ることも多い。
  • なきゃのさん: 以前よりも初手全出しが増えたり、11枚クラスのQTJK素数を3回記録するなど、多枚出し寄りにシフトしてきたか。一方でここぞの場面でのペナルティにより試合を落とすこともあり、ペナルティの割合は3割に達した。

グロタンカットを最も多く出した人”グロタンカッター”はマリンさん(27回)、ラマヌジャン革命を最も多く出した人”革命家”はOTTYさん(5回)、単独ジョーカーを最も多く出した人”道化師”はnishimuraさん・OTTYさん(各4回)でした。

まとめ

今大会は全出し主体のマリンさん・かいたいさんがそれぞれ優勝・準優勝ということで、全出し戦略の強さが示された結果となりました。この2名の活躍もあってか全体の傾向としても全出しの影響が一段と強く出ました。今後さらに全出し戦略が優勢になっていくのか、はたまた別の戦略が登場するのか、第2期HNP杯はどうなるのでしょう*6

なお第2期HNP杯は現在参加者募集中です。応募フォームはこちら。
docs.google.com

おまけ

素数大富豪イロレーティングを第2期雪華流星戦の分まで計算いたしました。結果は以下の通りです。イロレーティングについてはこちらの記事を参照。

graws188390.hatenablog.com


f:id:graws188390:20210503145724p:plain

(twitterに上げた画像では「第2期雪華流星戦予選終了時」となっていたため修正しました。)

f:id:graws188390:20210503145738p:plain

*1:第2期HNP杯の開催が決定しましたので、今後は2020年のHNP杯を「第1期HNP杯」と記すことにします。

*2:第2期蝉王戦のデータ分析ではオンライン予選のみを参照していたので値が異なっております。

*3:812101113548623はOTTYさんが1回出しています。また、並びが似ている812101113268457はなきゃのさんが1回出しています。

*4:このうち11123345678999と11123456788999は麻雀の役満九蓮宝燈」の和了形の素数

*5:まだ7枚出しが珍しかった2018年頃の二つ名。7枚が普通の枚数として扱われるようになった現在ではそう呼ばれることはなくなっている。

*6:そういえば第2期HNP杯は私・カステラにとって初めてのディフェンディングチャンピオンとしての大会ですね(今までの優勝は単発の大会だったので)。