初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第1期HNP杯】データ分析

4月27日から2ヶ月あまりに渡って繰り広げられた素数大富豪トーナメントHNP杯が終了しました。決勝はnishimura蝉王との熱戦を経て、優勝することができました。イェーイ!!

私はHNP杯を予選リーグからすべての試合を観戦し、そのログ*1を取りました。せっかくなので集めたデータをいろいろ分析してみて気づいたことでもまとめようかなと筆を執った次第です。

追記(2021年5月3日): 第2期HNP杯の開催が決定したため、タイトルと概要に「第1期」を追加しました。記事の本文中では簡潔さを優先しそのまま「HNP杯」としました。

基本情報

まずHNP杯の概要をおさらいしておきます。

  • 予選リーグ: 参加者20名を抽選で4つのリーグ(I・II・III・IV)に各5人ずつ振り分け、各リーグ内で2本先取の総当たり戦を行う。勝数の多い順(同数の場合はセット勝率の高い順)に各リーグの1位が総合1位~4位として本戦トーナメント進出。残りの16名を全体で順位付けし、上位8名が総合5位~12位として本戦トーナメント進出。
  • プレーオフ: 勝数とセット勝率で順位が決まらないときは該当者で1本先取・総当たりのプレーオフを行い、順位を決定する。1回の総当たりで決まらない場合は決まるまでやり直す。実際はリーグIVの1位決定戦(該当者3名・2回総当たり)、総合11位・12位決定戦(該当者3名・1回総当たり)が行われた。
  • 本戦トーナメント: 進出者12名を予選順位に応じて2ブロック(A・B)のパラマス式トーナメントに振り分け、2本先取の対戦を行う。各ブロックから勝ち残り者および最多勝利者(勝ち残り者を除く。複数いる場合は予選リーグの上位者)の2名、合計4名が決勝トーナメント進出。
  • 決勝トーナメント: 進出者4名によるトーナメント。Aブロック勝ち残り者とBブロック最多勝利者、Aブロック最多勝利者とBブロック勝ち残り者がそれぞれ対戦し、その勝者同士で決勝戦を行う。3本先取。

分析対象はHNP杯の全試合(62試合・139勝負)です。

  • 予選リーグ(40試合・94勝負)
  • プレーオフ(9試合・9勝負)
  • 本戦トーナメント(10試合・24勝負)
  • 決勝トーナメント(3試合・12勝負)

行動データ

ここ1・2年の素数大富豪のプレースタイルの変化は至るところで感じておりますが、定量的な分析は少ないのが現状です。そもそもどの指標を使えばそれを測れるかすら確立されていません。そこで、今回は単純に素数出しやグロタンカット、ペナルティなどの回数の多寡を見ることにしました*2。比較のため、第3期Mathpower杯(2018年10月)・マスパーティ杯・一般の部(2019年10月)*3のデータを参照します*4

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まず目を引くのは素数出しの割合の減少です。第3期Mathpower杯から10ポイント以上も減少しています(58.4%→55.9%→46.6%)。パスの割合も10ポイント近く減少(24.0%→17.3%→15.0%)。代わりに増えたのはペナルティ(8.4%→15.1%→22.8%)*5。多枚出しされても安易にパスせず勘出ししたり、初期手札があまりよくないと思ったら躊躇なく全出しを敢行したり、相手のKJQJを警戒して合成数出しカマトトでoverKJQJを狙ったりなどのプレースタイルの変化が数値からも窺えます。グロタンカット等の特殊効果のある数を出す割合(GC・RR・IN合計で5.6%→8.4%→11.8%)も増えており、その有効性が今まで以上に発揮されました。合成数出しについてはoverKJQJの隆盛に伴って回数は増加しましたが、途中のペナルティ(とくに合成数出しカマトト)により手数も増加するため、割合としては微増にとどまりました(3.6%→3.2%→3.9%)。

出された数について

最近は各プレーヤーが自身の”My素数”ともいうべき素数をもっており、非常に多くの種類の数が出されています。そのような状況の中で複数回出される素数は何かしらの意味がありそうです。以下にHNP杯を通じて複数回出された数を回数ごとにまとめました。

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1位はダントツでグロタンカットの57。2位はラマヌジャン革命の1729、3位は単独ジョーカーで特殊効果のある3種で上位を独占しました。以下、

  • 13111211(4枚出し最大素数)
  • 131311(3枚出し最大素数)
  • 1313121011(5枚出し2番目に大きい素数)
  • 1313121311(5枚出し最大素数)
  • 13(1枚出し最大素数)
  • 1312(=2^5*41、2枚出し最大素数1213超え合成数)

と各枚数の最大クラスの素数合成数が続く結果となりました。これらの結果は昨年8月に私ともりしーさんとで行った百本勝負での結果とほぼ同じです*6。他に複数回出された数の傾向としては

  • 1枚出し: そもそも1枚出しは種類が少ないので1枚出しをたくさん行えば必然的に同じ数が何回も出てくることになります。なお表にはありませんが4(=2*2)・10(=2*5)も各1回出ており、2~13がすべて出たことになります*7
  • n枚2n桁: 上記の最大クラスには敵わないが勝負手として強力。
  • 各枚数最大素数を超える合成数: 上述の1312の他、1313(=13*101)・131312(=2^4*29*283)・13131011(=31*423581)・13131312(=2^4*3*273569)などが該当。とくに4枚出し最大素数KJQJを超える4枚出し合成数はoverKJQJ(通称「お化け」)と呼ばれ、2019年下半期ころから使われはじめています*8
  • 偶数消費型: 素数大富豪黎明期から使われ続けている定番素数。とくに8は扱いづらいのか8のつくものが多かったように思います。
  • 語呂合わせ素数: いわゆる”My素数”の典型。出す人が1人でも複数回出されたものが多く表にたくさん登場することになりました。773(「ななみ」3回のうち2回がななみさん)、2593(「2コックさん」2回とも二世さん)、1310111483(「かわいい石破さん」2回とも阿武隈さん)、3282108110811211113799(「みつばふたばひとは1QJJスナックx」(四つ子素数)2回とも3TKさん)など。

が挙げられます。

これから素数大富豪を強くなりたい人にはぜひこの表にある素数を覚えてもらいたいのですが、他人の”My素数”とかは癖が強すぎる場合があるので(もちろんそれらの存在を否定するつもりは一切なく、単に自分にとっては使いやすくても、他人にとっては扱いづらいものもあるという意味です)、複数”回”ではなく複数”人”が出した素数の一覧もつくってみました。それでは見てみましょう。

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各枚数の最大クラスの素数合成数や偶数消費型が多く残りました。これらは素数大富豪プレーヤー共通で使いやすい(使える)素数合成数として一定のお墨付きがあるということになります。この表の素数を覚えて、さらに”My素数”も用意すれば大会でもそれなりに戦えるかもしれません*9

プレーヤーごとの集計

プレーヤーによるプレーの差異を見るために各プレーヤーが出した数をまとめました。決勝トーナメントに進んだ4人の他、総手数が100を超えたかいたいさん、ささらさんを集計対象としました。

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(※ 枚数クラスごとの”○○/△△”は場にその枚数クラスに属する数が出されたのが△△回で、そのうち正しく出されたものが○○回であったことを表します。合成数出しカマトトは場の数の属する枚数クラスに計上しました。)
まず、全体の傾向としては、3~5枚クラスに山がある(2枚クラスは半分以上がグロタンカット)ものの、他の枚数も積極的に出されています。特に10~12枚クラスは初手全出しがあるためペナルティの割合が高くなっています*10。それを踏まえると、プレーヤーごとに次のような特徴が認められます。

  • カステラ: 勝負数に対する総手数が著しく少ない(つまり長期戦が少ない)。枚数クラス別では3枚にピークがあるが6~9枚も割合多く出す。ペナルティが少ないが、不確定な勘出しに消極的ともいえる。
  • nishimuraさん: 枚数分布は平均的だが6~9枚でも成功率が高い。出した61個の素数に重複が一切ないことから相当数の素数を覚えているよう。
  • OTTYさん: いわゆる「お化け」狙いの戦法。枚数は4~5枚に集中している。序盤に全出しし、手札を集めてから合成数出しで相手を圧倒していくスタイル。
  • 3TKさん: 合成数出しカマトトで手札を増やしてから一気に消費していく。使う素数に偏りがあるのか7枚と9枚が多くなっている*11
  • かいたいさん: ペナルティで手札を補充し枚数で押し切る点ではOTTYさんや3TKさんと共通しているが、こちらは9枚~11枚と枚数で勝負(全出しの枚数クラスと重なるためペナルティも多くなっている)。
  • ささらさん: カステラとは対照的に勝負数に対する総手数が多い(大会最多手数(89手)および次点(72点)はいずれもささらさんの対戦)。3~5枚出しの着実な攻めと一発逆転を狙う全出しの併用だが全出しは空振りが続いた。同じ素数を何度も使用する傾向がある。

ちなみにグロタンカットを最も多く出した人”グロタンカッター”はささらさん・3TKさん・かいたいさん・OTTYさん(各13回)、ラマヌジャン革命を最も多く出した人”革命家”は3TKさん(4回)、単独ジョーカーを最も多く出した人”道化師”はHokutoさん(5回)でした*12

まとめ

データ分析を通して、合成数出しカマトトやoverKJQJなど、昨年12月の素数大富豪研究会で注目された戦略が現在の素数大富豪界を席巻していることが再確認できました。多枚出しの割合も増え、”My素数”を使いこなすプレーヤーも数多く現れました。一方で、大会レベルの上昇に伴って、新規参戦のハードルが上がっているという懸念もあります。
素数大富豪トーナメントが始まり、オンラインでは大会が継続的に開かれるようになりました。HNP杯は7月5日に幕を下ろしましたが、次の大会の第2期蝉王戦は翌6日に対戦カードの抽選が行われ、まもなく予選リーグが開始します*13。第2期蝉王戦でもまたデータ分析を行うつもりです。今回の結果との比較が今から楽しみです。

おまけ

前回の記事で紹介したイロレーティングをHNP杯の分まで計算いたしました。結果は以下の通りです。
(レーティング推移のグラフにおける各プレーヤーを表す色は今後の便宜のため勝手ながらこちらで決めさせていただきました。)

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*1:ドローの内訳はないので完全な数譜ではない。なおログといっても丸太のことではないし、ましてや対数のことでもない。

*2:分析のたびに手法を変えるのは良くないのですが、データ量が増えて今までと同じだと面倒なので、大まかな傾向を掴むことを目的とするとこの方法が良さそう。

*3:ともに動画配信サイトで放送された試合を対象に集計。

*4:本当は第1期雪華流星戦(2019年12月~2020年4月・オンライン)も対象としたかったのですが、データ不備のため除きました(予選リーグ完全数さん-二世さん・完全数さん-マモさんのログがない。もし持っていて提供できる方がいらっしゃいましたら私までご連絡ください)。

*5: 第3期Mathpower杯の分析記事でペナルティの割合を10.9%としておりましたが、これはパスを分母に含めない場合の割合(38/342)です。合成数出しの割合についても同じ。

*6:詳細はこちら。graws188390.hatenablog.com

*7:1はルール上場に出すことができますが素数でも合成数でもないため必ずペナルティとなります。なおペナルティも含めて1が場に出たことは大会を通じてありませんでした。

*8:overKJQJについては3TKさんの記事にまとめられております。hana3101382283.hatenablog.com

*9:ただし、前述のとおり偶数消費型が8を使うものに偏っているなど参加者全体での偏りがあるためそこを補う必要があるように思います。

*10:なお全139勝負のうち初手全出しが30回(うち成功2回)、初手57→2手目全出しが10回(うち成功0回)、初手57→2手目57→3手目全出しが1回(うち成功0回)ありました。(全出しかどうかは枚数クラスで判断したため実際は全出しでなかった可能性のあるものも含みます)

*11:こちらの記事によれば9枚出しのMy四つ子素数を数多く抱えている様子。hana3101382283.hatenablog.com

*12:“道化師”というネーミングはおしるこさんが提案してくださいました。感謝申し上げます。

*13:まだ開幕カードが確定していませんが、私の最初の対戦は13日(対3TKさん)の予定です。