初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】準決勝-2 カステラ-キグロ

準決勝のもう1試合は私・カステラとキグロさんの対決になりました。キグロさんは過去2度のMathpower杯、およびせきゅーん杯の計3度ベスト4となりましたが、いずれも準決勝で敗退しており、準決勝はまさに「鬼門」です。4度目の準決勝で初の決勝進出を目指します。2回戦では48828Q5=5^Jを出しましたが、準々決勝ではK9が素数であるかわからず出せなかったなど、調子は安定しているとは言いがたいようですが果たして。私は、キグロさんとは数学デーで何度か対戦していますが、勝ち切れずに逆転負けすることが多く、個人的には相性が悪い相手という印象をもっていました。キグロさんは3枚出しのラリーで着実に手札を減らしていくことが多いので、いかにキグロさんに3枚出しをさせないかを念頭に置いて試合に臨みました。じゃんけんの結果、1本目はキグロさんの先手で始まります。解説は鰺坂もっちょさん、せきゅーんさん、みうらさんです。

1本目(18:01:26~18:16:58*1 )

初期手札キ:(A25677999QX) カ:(445558TTQKX)
キグロさんの初期手札は絵札がQとジョーカーの2枚。ラマヌジャン革命A729がありますが、仮にこれを出すと残り手札は(56799QX)。私が返せなければ57[GC]→996QX|X=K(キグロQK)で上がりですが、返されるとA,2,3,4がない手札なのでかなり苦しめです。かといってこのままでも厳しそう。私は絵札5枚の初期手札ですが素数を作るために必要な奇数がKとジョーカーの2枚しかありません。遅かれ早かれ手詰まりになりそうな予感。

1.キ:D(3)A27
2.カ:D(Q)8TT,P(36J)
キグロさんはノータイムでドロー、3を引きます。そして出したのはA27。127は4番目のメルセンヌ素数(127=2^7-1)ですが、12番目のメルセンヌ素数の指数でもあります(170141183460469231731687303715884105727=2^127-1は素数)。続いて私の手番、ドローしたのはQ。絵札は6枚になりましたが、偶数だらけの手札なので、ここは8TTと出してカマトト。ペナルティで引いた3枚はうち2枚が奇数でまずまずといったところ。

3.キ:D(J)997
4.カ:D(4)KXJ|X=K
5.キ:D(4)%
再びキグロさんの手番、3桁最大の素数997を出します。その間に私は手札右側に8T63QTJKと並べていましたが、実はこれは素数です。もし出せていたら大会初の兆超え素数となりましたが、このままキグロさんに3枚出し攻勢を続けられては負けてしまうので、崩して3枚出し最大素数のKXJ|X=Kを出し親を奪います。
5手目終了時の両者の手札 キ:(34569JQX)(残8枚) カ:(344455568TTQQ)(残13枚)

6.カ:D(2)454543
7.キ:D(A)96A5X3|X=9,P(A378KK)
手番はとったものの、手札13枚で奇数は3の1枚のみでは戦いづらい。どこかで再びカマトトして奇数カードを手にしたいところ。しかし、キグロさんが手札を8枚まで減らしているうえに、私が最初にカマトトした直後も3枚出しを続けたことから、3枚6桁素数は持っていそうなのでそう簡単には手番を渡したくない。そこで、いったん多枚出しをして様子を見ることにしました。キグロさんにとっては、私に多枚出しで一気にカードを減らされては困りますから、どこかで返そうとしてくるはず。キグロさんにドロー、あわよくばペナルティによって手札を増やさせてから自分もカマトトで手札を補充しようという作戦です。キグロさんに多枚出しを返されるというリスクはありますが、うまくいけば偶数消費と手札(とくに奇数)補充の両方ができるというメリットを優先しました。出したのは454543で、45454XはX=A,3,7で素数になる三つ子素数です。キグロさんは96A5X3|X=9と出しますが、これは3の倍数(961593=3*37*8663)。ちなみにX=Jなら(9615113)素数だったようです。

8.カ:D(8)5TT8862,P(69TTJQK)
先ほどの作戦が思惑通りにいったので、予定通りカマトト。キグロさんと同じくらいに手札を増やしても大丈夫だろうというのと、キグロさんにQの在りかを知らせないために、Q・2枚を残して7枚出します。ペナルティで引いた7枚のうち奇数は3枚ですが、絵札が5枚
も含まれており、キグロさんからすぐに親を取り返せる強力な手札になります。
8手目終了時の両者の手札 キ:(AA33456789JQKKX)(残15枚) カ:(2566889TTTTJQQQK)(残16枚)

9.キ:6A
10.カ:D(J)QK
11.キ:D(8)KQ=X^5*4A|X=2
12.カ:D(2)%
勝負を通しての制限時間*2まで残り5分。キグロさんはいったん33Aを手にもつも、時間ギリギリで出したのは6A。私はドローの後、2枚出し最大素数のQKを出します。キグロさんはそれを超える合成数出しKQ=X^5*4A|X=2でカウンター。QKに対するカウンターは記録に残っている試合では史上初です*3。私はドローしてパス。
12手目終了時の両者の手札 キ:(337889JK)(残8枚) カ:(22566889TTTTJJQQ)(残16枚)
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13.キ:83
14.カ:QT=2*5*J^2
15.キ:D(2)%
キグロさんは83と再び2枚出し。キグロさんからはKとジョーカーがすべて見えており、私がTKやQKをもっていることはあり得ないので、9Jで親がとれそうです(その後873Kで上がり)。しかし私はこれにQT=2*5*J^2と合成数出しで対抗。手番は私にうつります。

16.カ:86869
17.キ:8J3K7,P(AA367)
私の残り手札10枚は86869とTQTTJの2つの5枚出し素数に分けられます。勝負を通しての制限時間が迫っていることから、小さい方の86869から出します。対するキグロさん、「3の倍数だけチェックして出す」と言って8J3K7を出しますが、これはまさかの3の倍数でした(8113137=3*641*4219)。

18.カ:TQTTJ#
最後にTQTTJを出して私の上がり。制限時間内に勝負が終わって一安心。

15分にも及ぶ激戦は私の勝利となりました。

2本目(18:18:02~18:22:22)

初期手札キ:(A245579TQKK) カ:(2455777QQKX)
キグロさんの初期手札には先ほど出したKQ=2^5*4Aがあります。KQ=2^5*4A→57[GC]→KT9がほぼ勝ち確定ルート。私には絵札4枚にグロタンカットが2組ある初期手札。キグロさんが3枚出しすると踏んで、KQX|X=K→57[GC]→57[GC]→4Q27と組みます。KQX|X=Kより大きな3枚出しはKKJしかないので、キグロさんの勝負手がKKJでなければ勝てます。4Q2XはX=A,7,J,Kの4つで素数になる「JK四つ子素数」です*4

1.キ:4A
2.カ:KQ=2^5*4X|X=A
3.キ:D(6)%
キグロさんは一時は手にカードを5枚ほどもち多枚出しを窺いますが、最終的に出したのは2枚出しの4A。私はそれにKQ=2^5*4X|X=Aを返します。1本目にキグロさんが出したのと同じ合成数出しです。これより大きな2枚出しはKK=K*TA(またはKK=A3*TA)しかありませんが、キグロさんはもっていません。パスするほかありませんが、残りの持ち時間でパスの後の作戦を考えるのに使います。
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4.カ:57[GC]
ところが私の残り手札は57と7Q7。まずは57でグロタンカット。

5.カ:7Q7#
そして7Q7を出して上がり。

2本目は早い決着で私の勝ちとなりました。これで決勝進出に王手。

3本目(18:23:38~18:32:55)

初期手札キ:(345799TJQKK) カ:(A2234589TTK)
キグロさんの初期手札がまたしてもよい。5枚出しで2番目に大きな素数KKQTJとグロタンカット57があるのでKKQTJ→57[GC]→9439というルートがあります。943Xは4桁最大の四つ子素数です。3枚出しで攻めるならQT9→KKJ→57[GC]→439。一方の私の初期手札は絵札3枚ですが素数のつくりづらい(TTK)という組み合わせで、あまりよいとはいえません。右側に98TTK(この手札で作れる最大の5枚出し素数)と並べてはみましたが1本目と同じようにどこかでカマトトを狙おうと考えていました。

1.キ:D(J)T3
2.カ:D(7)T8,P(2Q)
キグロさんは戦略がなかなかまとまらない様子。ドローをしてさらに考えます。残り1秒で出したのはT3。私がこれに返すには絵札を使わなければなりませんが、出したところでキグロさんにQKを返され絵札を消費するだけに終わる可能性が高い。そこでT8を出してカマトト、山札から2枚引きます。

3.キ:499
4.カ:D(A)823
5.キ:JQJ
6.カ:D(Q)QTK
7.キ:D(3)%
3手目、キグロさんは499を出します。残り手札はK,57,KJQJ。せきゅーんさんによれば499は素数大富豪が考案されたカフェで売られていたという「素数カクテル」の価格です*5。また、今春札幌にオープンする予定のカレー屋「カレー パンドラ」(店長はもりしーMathpower杯! twitter: @curry_pandrah)が現在、土・日曜日にイベントバー「エデン 札幌」で特別営業しているのですが、トマトチキンカレーが499円だそうです*6。さて、勝負のほうですが、私は823を返します。これまでのドローとペナルティでグロタンカット57やラマヌジャン革命A729、2枚出し合成数のKQ=2^5*4Aが揃ったので、それらを温存する一手です。キグロさんは私がまだ絵札を1枚も消費していないことから、返されるのではないかとJQJを出すのに躊躇しましたが、ついに出しました。私はドローしたうえでQTK。キグロさんはJかQを引けば再度返せるチャンスでしたがドローしたのは3。パスします。
7手目終了時の両者の手札 キ:(357KK)(残5枚) カ:(AA224579TQ)(残10枚)

8.カ:9QT4AA
9.キ:D(8)%
私の手札は残り10枚。知っていた素数9QT4AA*7が見つけられたので、これを除くと残りは(2257)。5227なら素数だったはずと9QT4AAを出します。キグロさんはドローして手札が6枚になりましたが、どう並べても場の9QT4AAを超える数を出すことができないのでパス。

10.カ:5227#
念のため5227が素数かどうかチェック。小さな素数では割れなかったので出しました。判定は素数! これで上がりとなり、私の決勝進出が決まりました。
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私が3本連取でもりしーさんの待つ決勝へ。

講評

この試合は私にとっては初期手札がよくないなどの困難がありましたが、終始ゲームの主導権を握ることができたのが勝因だったと思います。過去のキグロさんとの対戦から、キグロさんは3枚出し程度のラリーを続けて手札を減らしていくプレーヤーだとわかっていたので、ラリーの展開にならないように心がけました。早い段階でカマトトしたり、その枚数での最大素数合成数を出すなどで、ラリーの途中に出すような中くらいの素数を出しにくくしました。そして手番を手に入れると5・6枚出しで手札を一気に消費しました。とかく偶数が多い手札だったので、偶数消費型の素数を中心に出していきました。キグロさんにとっては思うような戦い方ができず、厳しいと感じていたのではないでしょうか。
キグロさんは先手と初期手札のよさという有利な状況を生かしきれませんでした。せっかく強い初期手札を手に入れても勝負手以外でうまく組み切れないと手札をすべて出し切ることができないので、運頼みの展開になったり勝負手を少し小さいものに変えたりしなければなりません。それを少しでも減らすには、できるだけ多くの素数を覚えることに尽きます。たとえば、3本目の5手目、キグロさんの手札(57JJQKK)には3枚出し最大素数KKJがありましたが、これを除いた(57JQ)で作れる素数を知っていれば、迷うことなくKKJを出すことができたはずです。この4枚で作れる最大の素数は7Q5Jですが、他にもキグロさん自身が執筆している素数大富豪小説「QK -1213-」の第18話に登場する57QJがあります。

この試合の数譜を再度まとめてご覧ください。

1本目
キ:(A25677999QX)
カ:(445558TTQKX)
キ:D(3)A27
カ:D(Q)8TT,P(36J)
キ:D(J)997
カ:D(4)KXJ|X=K
キ:D(4)%
カ:D(2)454543
キ:D(A)96A5X3|X=9,P(A378KK)
カ:D(8)5TT8862,P(69TTJQK)
キ:6A
カ:D(J)QK
キ:D(8)KQ=X^5*4A|X=2
カ:D(2)%
キ:83
カ:QT=2*5*J^2
キ:D(2)%
カ:86869
キ:8J3K7,P(AA367)
カ:TQTTJ#


2本目
キ:(A245579TQKK)
カ:(2455777QQKX)
キ:4A
カ:KQ=2^5*4X|X=A
キ:D(6)%
カ:57[GC]
カ:7Q7#


3本目
キ:(345799TJQKK)
カ:(A2234589TTK)
キ:D(J)T3
カ:D(7)T8,P(2Q)
キ:499
カ:D(A)823
キ:JQJ
カ:D(Q)QTK
キ:D(3)%
カ:9QT4AA
キ:D(8)%
カ:5227#

次回はいよいよ決勝戦です! もりしーさんがMathpower杯連覇を果たすのか、私・カステラが2冠を達成するのか、乞うご期待!

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:1本あたり15分。15分が経過した時点で勝敗がついていない場合は勝負を中断、お互い手札のカードすべてを使って1つの数をつくる。素数判定の結果、素数がつくれた方の勝利。両者つくれた場合はより大きな素数がつくれた方の勝利。両者つくれなかった場合は手札の枚数の少ない方の勝利。

*3:せきゅーん杯でもKQ=2^5*4Aが出されていますが、このとき場に出ていたのはT9でした。

*4:通常の四つ子素数と同様、一度に素数を4つ覚えられるので便利です。

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*5:せきゅーんさん自身による素数大富豪誕生のエピソードをまとめた記事。integers.hatenablog.com

*6:お住まいが近くの方はぜひ。

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*7:912T4J「キューピー二頭身じゃん」。実際のキューピーは三頭身に近い。出典: キューピー - Wikipedia