初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】準々決勝-4 onewan-キグロ

ベスト4へ残る枠はあとひとつ。2回戦では白くまさんとの「動物対決」を制したonewan(わんわん)さんと、48828Q5=5^Jを出し会場を騒然とさせたキグロさんが残り1枠を賭けて戦います。onewanさんは2枚出し、キグロさんは3枚出しを中心とする戦術を得意とするプレーヤーで、落ち着いた試合展開になりそうです。もしキグロさんが勝ち上がりますと3期連続のベスト4入りとなります。1本目の先手はonewanさんになりました。素数判定員ははなぶさんが務めます。

1本目(16:42:36~16:52:07*1 )

初期手札о:(346789TJJQK) キ:(2345678TJQX)
onewanさんの初期手札は絵札5枚。4枚出しなら最大のKJQJがあるので、たとえば9643→KJQJ→T87などと組めると強い*2。キグロさんは11枚がすべてバラバラの初期手札。3枚出しで4番目に大きいKTJや4枚出しで3番目に大きいKTQJがあり、決して弱いわけではないのですが、onewanさんがあまりに良いため劣勢か。

1.о:D(X)8J
2.キ:D(8)%
1手目、onewanさんはドロー。ジョーカーを引きさらに手札が強くなります。2枚出しで4番目に大きい素数の8Jを出します。対するキグロさんもドローし、8を引きます。手札を並べ替え82X,3467を用意しているようですが、場の8Jに対してはジョーカーを使わなければ返せない状況。考慮時間の最後までカードを出さなかったことにより強制パスとなります。
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3.о:D(Q)T3
4.キ:D(J)T7
5.о:9J
6.キ:D(6)QX|X=K
7.о:D(2)%
onewanさんは再度ドロー、引いたのはまたも絵札のQ。T3で2枚出し攻勢を続けます。残り手札はQX,QK,9J,647でX=Kとすれば2枚出し最大素数のQKが2度出せます。キグロさんは手札は苦しいもののT3にはT7、9JにはQX|XKを出して親をとります。この応酬の間に私・カステラが解説ルームに到着。解説は第1期Mathpower杯・みうらさん、第2期Mathpower杯・もりしーさん、そして素数王・カステラという布陣に。
7手目終了時の両者の手札 о:(2467QQKX)(残8枚) キ:(23456688JJ)(残10枚)

8.キ:64=2^6
9.о:QK
10.キ:D(5)%
ドローを重ねた結果、手札の偶数カードがなかなか減らないキグロさんは64=2^6で一挙に偶数カードを4枚消費します。しかしこれはonewanさんが狙っていた2枚出し。ノータイムでQKが出されます。残り手札はQX,2647。キグロさんはドローしてパス。

11.о:QX|X=K
12.キ:%
onewanさんはQX|X=Kを出して勝負を決めにかかります。キグロさんは負けを悟ったのか即座にパスを宣言。

13.о:2647#
とどめは2647。onewanさんがまずは1勝。

初期手札の良かったonewanさんが2枚出し攻勢で勝利。

2本目(16:53:22~16:59:25)

初期手札キ:(A3335677JJQ) о:(22455799TKX)
キグロさんの初期手札は1本目はバラバラでしたが、今度は3が3枚、7が2枚、Jが2枚で奇数に偏っています。JQJを手札右側に寄せ、これを勝負手に3枚出しを仕掛けていく様子。一方のonewanさんは絵札3枚。ジョーカーがうまく使えるかがカギになりそうです。

1.キ:D(8)33A
2.о:D(4)%
手札を並べ替えつつ、キグロさんは山札に手を伸ばしてドロー。8を引きます。33Aを出し、3枚ある3のうち2枚を消費します。33……31という形の数は31,331,……,33333331まですべて素数です*3。onewanさんはドローしますが、カードは出さずパスを選択。

3.キ:863
4.о:997
5.キ:JQJ
6.о:D(6)%
キグロさんはonewanさんが考えている間に手札を組み切ったようです。まずは863。onewanさんの997を受けてJQJ。残り手札は(577)。ここでonewanさんはジョーカーを使ってKTX|X=Jが出せますがパス。
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7.キ:57[GC]
577も757も素数ですが、キグロさんはグロタンカット57を出し……

8.キ:7#
7で上がり。これでスコアは1-1のタイになります。

2本目はキグロさんが得意の3枚出しで制しました。

3本目(17:00:24~17:08:01)

初期手札о:(345677889KX) キ:(A24668TQQKX)
onewanさんの初期手札は絵札が2枚と少なめで火力に欠ける印象。ジョーカーやグロタンカットがあるのが救いか。一方のキグロさんは絵札5枚ですが、手札全体としては偶数に偏っています。2,4,6,8,T,Qが揃っているので2468TQAなどの偶数消費型多枚出しが狙えますが、キグロさんは後手なのですぐには出せません。onewanさんが1~3枚出しですと、一度に消費できる偶数カードが少ないので、キグロさんは奇数のカードが足りなくなってしまいます。

1.о:D(K)488X9|X=8
2.キ:D(T)KTQAX|X=A
3.о:D(5)%
onewanさんはドローし、Kを引きます。そして488X9|X=8と5枚出し。ちなみに48889「しばばばく」は誰かが出会い、twitter経由でもりしーさんが知り、せきゅーん杯で出されたというエピソード付きの素数です
*4*5。onewanさんもどこかでこの素数に出会ったのでしょう。対するキグロさん、ドローはT。4枚出し素数をKTQAX|X=Aと5枚で出しますが、残り手札がすべて偶数になってしまいます。onewanさんはドローしますが、場を上回る数をつくることができないのでパス。
3手目終了時の両者の手札 о:(355677KK)(残8枚) キ:(24668TQ)(残7枚)
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4.キ:D(4)64=2^6
5.о:3K
6.キ:D(Q)8T,P(9J)
キグロさんはドローするものの、引いたのは4。手札8枚がすべて偶数の中、64=2^6を出します。onewanさんはすでに手札を57,57,3K,6Kと組んでいます。まずは3Kを返します。キグロさん、この勝負3度目のドローも結果はまたしても偶数のQ。8Tを出してカマトト。

7.о:57[GC]
onewanさんが組んだ通りにカードを出していきます。まずはグロタンカット。

8.о:57[GC]
そして2回目のグロタンカット*6

9.о:6K#
最後に6Kを出して上がり。onewanさんが2勝目を挙げます。

onewanさんが準決勝進出に王手。

4本目(17:09:11~17:15:24)

初期手札キ:(A33889TTJKX) о:(4455889JQQK)
キグロさんは絵札がジョーカー含めて5枚の初期手札。KXJ|X=Kがあるので3枚出しが良さそうに見えます。onewanさんの初期手札は偶数カードの4,5,8,Qが2枚ずつあり、これらのカードを消費するのが難しそう。一気に消費する手段として445=5*89がありますが、キグロさんが小さな3枚出しでないと出せません。

1.キ:883
2.о:D(4)%
キグロさんはシンキングタイムに続いてさらに30秒ほど考えてから883を出します。88XはX=A,3,7で素数になる三つ子素数で、それぞれ「ヤバい」「ヤバみ」「ハバナ」という語呂合わせがあります。onewanさんはドローしますが、引いたのは3枚目の4。2回戦で自身が出したQ49などが返せますが、パスを選択。
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3.キ:TT3
4.о:D(3)QQJ,P(57K)
すでにA9,TT3,JXKと手札を並べ終えているキグロさん。ノータイムでTT3。onewanさんは3をドローし、右側に593「コックさん」をスタンバイ。時間ギリギリでQQJを出しますが、素数ではありません(121211=53*2287)。ちなみにTを2枚使う素数としてTT3があるのに対し、Qを2枚使う3枚出し素数は存在しません*7

5.キ:KXJ|X=K
6.о:D(5)%
キグロさんは3枚出し最大素数KXJ|X=Kを出します。onewanさんはドローしてパス。

7.キ:A9#
A9は素数ですが逆にした9Aは素数ではありません*8。キグロさんが正しくA9を出して上がり。

4本目はキグロさんが勝ち、3試合連続のフルセットに。ここでもりしーさんは次の試合の準備のため、解説終了となります。交替でせきゅーんさんが解説に加わります。

5本目(17:16:50~17:26:16)

初期手札о:(AAA356789JK) キ:(A7899JJQQKX)
onewanさんの初期手札は絵札2枚ですがAが3枚あります。2を引いてラマヌジャン革命が起こせるとかなり強いですし、JやKの代わりにAAやA3と出すことで多枚出しも狙いやすい。キグロさんの初期手札は絵札がなんと6枚。ラマヌジャン革命がない限りキグロさんが主導権を握りそうです。

1.о:J593
2.キ:QAX7|X=0
3.о:D(X)KXAA|X=K
4.キ:KJQJ
5.о:%
1手目、onewanさんはJ593「いいコックさん」を出します。ちなみに11593には「連続する9つの素数がすべて4n+1の形である最小の素数」という性質があります*9。対するキグロさんはQAX7|X=0を出します。ジョーカーを0として使う、少し珍しい出し方です。ジョーカーの使い方としては少しもったいないように思えますが、まだ手札にはKJQJが控えています。onewanさんはここでジョーカーをドロー。KXAA|X=Kで対抗します。しかし、キグロさんがKJQJを出し、親はキグロさんが取りました。
5手目終了時の両者の手札 о:(A678)(残4枚) キ:(899)(残3枚)

6.キ:D(3)983
7.о:D(8)%
キグロさんの残り手札は(899)ですが、899も989も素数ではありません(899=29*31,989=23*43)。3をドローし、983を出します。3桁で3番目に大きい素数です。絵札がないonewanさんはドローするも絵札を引けず、パス。

8.キ:D(K)K
9.о:D(8)%
残り手札が9・1枚のキグロさん、ドローしたのはK。K9なら素数ですが、自信がなかったのか引いてきたKだけを場に出しました。すでにジョーカーは2枚とも流れているのでここでonewanさんに返される可能性はありませんが、次も9と合わせて素数をつくることのできるカードをドローする保障はありません。
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10.キ:D(5)59#
キグロさんの再度のドローは5。59を出して上がりとなりました。キグロさんが準決勝進出。

最後はキグロさんが勝利をもぎ取りました。キグロさんは3期連続のベスト4入りです。

講評

準々決勝最後の試合は2枚出しや3枚出しが主体で地に足の着いたものになりました。
1本目はonewanさんが先手&初期手札絵札5枚&最初のドローがジョーカーという序盤での有利な状況から危なげなく勝利。2本目はキグロさんが堅実な3枚出しで勝ちました。どちらも自分のペースに持ち込むことで勝負を優位に進めました。
3本目はonewanさんの1手目488X9|X=8に対し、キグロさんはKTQAX|X=Aと返したことで手札の奇数がなくなり、その後に素数を出せなくなりました。ここは知っている素数*10を無理に出すよりも、勘出しでも偶数消費を狙った数を出す戦略のほうがよいように思います。出したのが実際に素数であれば奇数を温存したことでその後も素数をつくれる可能性が残りますし、素数ではなくペナルティを受けても奇数を手に入れるチャンスとなります。ただし、それでも偶数過多の状況から一気に抜け出すようなことはあまりないので、4枚出し以上の偶数消費型素数を多く覚えている必要があります。
4本目は2本目と同様にキグロさんが3枚出し攻勢を仕掛けて勝利。初期手札にKXJ|X=Kがあったこともあり、まさに盤石の態勢でした。
2-2で迎えた5本目は初期手札が極めてよかったキグロさんが4枚出しラリーを制し、親をとったことが勝因となりました。途中K9が素数であると決定できずにKを出す、というアクシデントもありましたが、最後は59を出して上がりとなりました。
試合全体を通して、キグロさんは3枚出しによって勝利を重ねました。先手のときには(受け手(小さな3枚出し))→(受け手(少し大きな3枚出し))→(勝負手(3枚6桁))→(上がり手(残り))ときっちり手札を組んで2勝しました。着実に勝利を手繰り寄せるようなプレーが多く、多枚出しでもジョーカーを消費してでも素数だと知っている数を出し、勘に頼ることはあまりしないように思います。一方、onewanさんは覚えている素数はあまり多くないようですが、時折48889(3本目)などの多枚出しを仕掛けてきます*11。キグロさんはこれに無理に返した結果、手札が偶数だけとなりonewanさんがその後の勝負を優位に進め勝利しました。2回戦でも見られましたが「推し素数」がいくつかあるようで、キグロさんよりも戦略の幅が多彩になっています。

この試合の数譜を再掲いたします。

1本目
о:(346789TJJQK)
キ:(2345678TJQX)
о:D(X)8J
キ:D(8)%
о:D(Q)T3
キ:D(J)T7
о:9J
キ:D(6)QX|X=K
о:D(2)%
キ:64=2^6
о:QK
キ:D(5)%
о:QX|X=K
キ:%
о:2647#


2本目
キ:(A3335677JJQ)
о:(22455799TKX)
キ:D(8)33A
о:D(4)%
キ:863
о:997
キ:JQJ
о:D(6)%
キ:57[GC]
キ:7#


3本目
о:(345677889KX)
キ:(A24668TQQKX)
о:D(K)488X9|X=8
キ:D(T)KTQAX|X=A
о:D(5)%
キ:D(4)64=2^6
о:3K
キ:D(Q)8T,P(9J)
о:57[GC]
о:57[GC]
о:6K#


4本目
キ:(A33889TTJKX)
о:(4455889JQQK)
キ:883
о:D(4)%
キ:TT3
о:D(3)QQJ,P(57K)
キ:KXJ|X=K
о:D(5)%
キ:A9#


5本目
о:(AAA356789JK)
キ:(A7899JJQQKX)
о:J593
キ:QAX7|X=0
о:D(X)KXAA|X=K
キ:KJQJ
о:%
キ:D(3)983
о:D(8)%
キ:D(K)K
о:D(8)%
キ:D(5)59#

準々決勝4試合がすべて終わりました。ベスト4はもりしーさん、マモさん、私、キグロさんです。
次回から準決勝。1試合目はもりしーさんとマモさんです。

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:9643は四つ子素数346XでX=9としたものの上位互換。T87は偶数を2枚使う3枚出し。

*3:次の333333331は合成数(333333331=17*19607843)。 A123568 - OEIS Factorization of 33...331 33…31という形の素数に関してはINTEGERSでも言及されています。integers.hatenablog.com

*4:もりしーさんが見たであろうツイート。

twitter.com

*5:せきゅーん杯では準々決勝もりしー-カステラの3本目で出されました。

*6:このときの若本ボイスは今までに出てきていないバージョン。

*7:「QK -1213-」第21話でも言及されています。

*8:91は「パッと見素数」と呼ばれています。www.ajimatics.com

*9:すなわち、11593,11597,11617,11621,11633,11657,11677,11681,11689は連続する9つの素数であって、すべて4で割ると1余ります。出典: https://primes.utm.edu/curios/page.php/11593.htmlprimes.utm.edu

*10:KTQJは4枚出しで3番目に大きい素数で、キグロさん自身もせきゅーん杯で4枚出しとして出しています。こちらの記事を参照: prm9973.hatenablog.com mathingnow.hatenablog.com

*11:2回戦でも66523を出しています。