初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】準々決勝-3 カステラ-nishimura@icqk3

私の準々決勝の対戦相手nishimura@icqk3さん(以下「nishimuraさん」と記します)は素数大富豪のcpu対戦http://searial.web.fc2.com/tools/sosutop.htmlの開発者。素数大富豪がしたいけど周りに対戦してくれる人がいないときや、秘密の作戦を試したいときに便利です。私はふだんそのサイトで一番強い「ver.4☆pro☆」*1で練習しているのですが、当時の勝率は調子がいいときで4割程度(現在はたまに勝ち越せるくらい)。めちゃくちゃ強いです。nishimuraさん本人も素数大富豪プレーヤーとして大会に出場しており、昨年1月のせきゅーん杯ではベスト8でした。予選リーグではキグロさんに勝利しています。nishimuraさんとはこのMathpower杯で初顔合わせでしたが、対戦前から手強い相手だと思っておりました*2。試合はnishimuraさんの先手で始まります。

1本目(16:15:50~16:18:27*3 )

初期手札n:(A3455778JJK) カ:(A2245669TJQ)
nishimuraさんの初期手札はグロタンカットが2組あります。絵札3枚でKJJがつくれますが確実に親をとれる勝負手ではないのでグロタンカットでドローの機会を増やすのがよさそうです。Qを引けば4枚出し最大素数のKJQJができます。私はnishimuraさんと同じく絵札3枚ですが偶数の多さが目立つ初期手札。こちらもドローでよいカードを引くことを期待したくなる手札です。

1.n:D(5)57[GC]
nishimuraさんのドローは5。まずは手持ちの57を出してグロタンカット。

2.n:57[GC]
ここでもう1度ドローするかと思いきや、ドローせず2回目のグロタンカット。

3.n:A543
4.カ:D(8)8QTJ
5.n:8KJJ#
そしてA543を出します。nishimuraさんはこれで残り4枚。ここでようやく私に手番が回ってきます。場は4枚出しなので私の返し方次第ではnishimuraさんに上がられてしまいます*4。nishimuraさんはまだ絵札を1枚も消費していないので残りの4枚のうち3枚もしくは4枚すべてが絵札と思われ、現状私の手札で出せる最大の4枚出し素数の5TQJでは返される可能性が高い。また場のA543はA729よりも小さいのでラマヌジャン革命が起こせれば一気に1桁カードの多い私の優勢になりますが手札に7がない。ドローの結果は8。革命は起こすことができませんが出せる最大の4枚出し素数が8QTJになったのでそれを出します。しかし、nishimuraさんが持っていたのは8KJJ。nishimuraさんがこれを出し上がり。
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1本目はnishimuraさんがテンポよく手札を出して勝利。3分足らずでの決着でした。

2本目(16:19:10~16:23:45)

初期手札カ:(A23344556QQ) n:(234677TTJQK)
私の初期手札は絵札がQ・2枚のみで1本目に続いて苦しい。ただし、今回は先手なので出す枚数次第では状況を打開できるかもしれません。一方のnishimuraさんは絵札5枚と恵まれています。対照的な初期手札となりました。

1.カ:D(A)5634AA
2.n:D(7)63KTQJ
3.カ:D(5)%
私はシンキングタイムが終わるとすぐにドロー。Aを引きます。できるだけ枚数を多くして出そうとしましたが、なかなか思い出せず、5634AAの6枚出し。56341Xは四つ子素数です。残りは(2345QQ)で一応3の倍数ではないですがどう並べればよいかは知りませんでした(最大は52Q4Q3)。nishimuraさんはドローの後63KTQJを出します。一気に10桁になりました。私は絵札が足りないのでドローしてパスするしかありません。

4.n:D(6)T246777#
nishimuraさんのドローは6。手札の7枚を最小に並べT246777と出します。これがなんと素数でnishimuraさんが2連勝。
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nishimuraさんが連勝で準決勝進出まであと1勝としました。

3本目(16:24:40~16:31:53)

初期手札カ:(234555669QK) n:(A34457899QX)
私の初期手札は絵札2枚。偶数が多くまたも苦しい状況に見えますが、私はある素数が出せることに気づきます。一方のnishimuraさんはジョーカーがありますが絵札は他にはQのみでこちらも厳しそう。

1.カ:6655543
2.n:D(7)Q544789,P(A2479KX)
私はシンキングタイムが終わるや否や6655543を出します。665554Xは四つ子素数で、偶数消費、かつ数字が降順で大変覚えやすく、見つけやすい素数です。もりしーさんから教えていただいた素数のひとつです。7枚出しですが絵札が1枚も含まれていないので返される可能性があります。そして返された際には手札4枚の私はパスするしかなく、nishimuraさんに親が移り、2本目と同様に残り手札全出しで勝負が決まることもあり得ます*5。実戦に戻りますとnishimuraさんはドローの後、Q544789を出しますがこれは合成数(12544789=2003*6263)。ペナルティとして山札を7枚引き、親は再び私になります。
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3.カ:29
4.n:QK
5.カ:D(6)%
私の残り手札は(29QK)。合計すると3の倍数なので4枚一度に出すことはできません。ドローして5枚出しができることに賭けることも考えましたが、3の倍数を引いてくるリスクがあります。ここは手札を29,QKに分け29から出します。するとnishimuraさんは即座にQKを返します。私はドローしてパス。
5手目終了時の両者の手札 カ:(6QK)(残3枚) n:(AA2344457778999XX)(残17枚)

6.n:9432A
7.カ:D(3)%
ここからnishimuraさんは私の手札の枚数+2枚以上の素数を出せば無条件で手番を維持できます。まずは5枚出し以上ですが9432Aでクリア。前の試合でマモさんが出した924A3の上位互換です。私はドローして手札4枚に。

8.n:D(8)57[GC]
いったんグロタンカットを挟んで……

9.n:D(T)984AX7|X=2
10.カ:D(T)%
6枚出し以上のハードルを984AX7|X=2でクリア。私はドローで手札5枚に。
10手目終了時の両者の手札 カ:(36TQK)(残5枚) n:(4789TX)(残6枚)

11.n:D(8)7489
12.カ:6TQK
13.n:D(A)%
nishimuraさんは手札を6枚まで減らしました。実は6枚出しをしなくてもX7|X=5[GC]→8T49で上がれます(8104X「八頭身」は四つ子素数)。実戦はnishimuraさんはドローし、7489の4枚出し。私はすぐさま6TQKを返します。それに対しnishimuraさんはJ,Q,Kをドローできれば出すことができましたが、引いたのはAでパス。

14.カ:3#
私が最後の1枚・3を出して上がり。

私が1本取り返して1-2となりました。

4本目(16:32:38~16:35:46)

初期手札n:(A2234569TQK) カ:(256789JJJQX)
nishimuraさんの初期手札はKQの合成数出しがあります。T9→KQ=2^5*4A→6=2*3に気づけばほぼ勝ちです。私は絵札がジョーカーを含めて5枚の初期手札。4枚出し最大素数KJQJや5枚出しで5番目に大きい素数KQJJJが出せます。nishimuraさんが4・5枚出しなら私にも勝機が生まれます。

1.n:D(Q)T=5*2
2.カ:X[IN]
1手目、nishimuraさんはドローしQを引きます。この手札では勝負しづらいと判断したのか、T=5*2*6と1枚出し合成数を出します。1枚出しの狙いとしては(偶数カードが出しにくいので)奇数や絵札を消費させることと言われますが、わざわざそれを狙うということは手札があまりよくないと考えられます。つまりここでジョーカー1枚を消費しても、絵札4枚なら勝算があるということになります。私はジョーカーを出して手番をとります。
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3.カ:8JJQJ
4.n:D(4)%
私は残り手札を8JJQJ,57,269と分け、8JJQJから出します。nishimuraさんの1手目がT=5*2であり、前述のあまり強い手札ではないだろうという推測から5枚9桁なら通りそうと判断。実際はnishimuraさんは絵札3枚であり、8JJQJに返すにはKをドローして9QQKKを出すしかない状況。ドローして引いたのは4だったためパス。

5.カ:57[GC]
私の思惑どおり、グロタンカットから

6.カ:269#
269で上がり。

前の試合に続いて、この試合もフルセットにもつれ込みます。

5本目(16:36:39~16:40:45)

初期手札n:(2334569TKKK) カ:(AAA2334678Q)
nishimuraさんはKが3枚の初期手札。5枚9桁最大の9KTKKが出せます。(23456)という5連続の並びは最大奇数の65423が素数。よって65423→9KTKK→3という組み方があります。一方の私の初期手札は絵札がQ・1枚のみ。しかし、Aが3枚、2が1枚、3が2枚あります。ということはふだんならJ,Q,Kで出すところをそれぞれAA,A2,A3で代用して出すことができます。たとえば6KQQKという5枚出し素数がありますが、この手札なら6A3QA2A3と8枚で出すことができます。つまり、nishimuraさんが多枚出しで仕掛けてきても含まれる絵札が0~1枚なら4・5枚出しの知識である程度対応できるということになります。
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1.n:D(5)965423
2.カ:4QA2A3
3.n:D(X)KKT35X|X=3,P(??????)
nishimuraさんのドローは5。965423の6枚出しを選択しました。私は手札を6枚出し素数、5枚出し素数に分け4QA2A3を出します。本来なら4QQKと4枚出しで出せる素数ですが、今回は6枚で出せます。nishimuraさんは手札6枚ですが、合計が3の倍数なのでドロー。ジョーカーを引きます。もりしーさんから「実はコレ35億なら出せるものあるんですよ」とコメント。確かに35XTKK|X=Jが素数で、その後Kで上がれます*7。最終的にnishimuraさんが出したのはKKT35X|X=3。しかし判定は合成数(131310353=359*499*733)。ちなみにジョーカーを9としていれば(131310359)素数でした。

4.カ:876A3#
私が残りの5枚を出してゲームセット。準決勝進出を決めました。ちなみに876A3も本来なら876Kと4枚出しで出せる素数。後で調べたところ8763Aも素数でした。

2連敗したときはもはやこれまでか、と思いましたがその後3連勝で準決勝進出を決めました。

講評

直前のOTTYさんとマモさんの試合にも引けを取らない試合になりましたが、あれから4ヶ月経って改めて振り返ると反省点・改善点が次々見つかったのでそれらを綴っていきます。
1本目はnishimuraさんがほぼ完璧の試合運びで勝利しました。私に手番が回ってきた時点でnishimuraさんの手札は4枚、場は4枚出しですから、どうしても返す必要があります。対抗できる素数が手札になかったのでどうしようもありませんでした。唯一気になった点はnishimuraさんの3手目A543です。A729より小さいのでラマヌジャン革命を起こされる可能性があります。543Aや54A3などならその可能性がなくなるのになぜA543なのか。1543年が鉄砲伝来の年だから*8?
2本目、私の出した6枚6桁(5634AA)にnishimuraさんが6枚10桁(63KTQJ)を返したのが見事でした。1枚ドローして手札を12枚にしてから6枚出し2回で組む戦法*9では6枚10桁が勝負手になりえます。こうした6枚出しの応酬は今後ますます見る機会が増えることでしょう*10。私としては1手目で四つ子素数の5Q4QA36A*11があったのに出せなかったことが敗因です(もし出せて、そのまま流れたら4523で上がり)。
nishimuraさんが準決勝進出に王手をかけられて迎えた3本目、私は1手目の6655543を出したあとのケアができていませんでした。残り手札(29QK)は合計が3の倍数で一発で出せないからです。もし1手目でドローしていれば7を引けたので92Q7K*12が出せましたし、他のカードだったとしても次の手番でもドローすれば手札が6枚になりますから3枚出し攻勢を仕掛けることも可能でした。結局3手目に手詰まりとなってしまい、その後しばらくnishimuraさんが主導権を握る展開となりました。最終的にはnishimuraさんにミスが出て私が勝ちましたが、反省の残る勝負となりました。
4本目は初期手札がよかったことと、nishimuraさんがほぼ勝ち確コースを見落としたことが私の勝利の要因となりました。盤石の態勢で戦えたと思います(自画自賛)。
最終・5本目は初期手札に絵札が1枚しかない厳しい状況でしたが、上で述べたようにA,2,3のカードがたくさんあったことが救いでした。nishimuraさんが6枚6桁を出したことで「返されなければ勝ち、返されると負け」と勝負の構図が単純になり冷静な判断ができたと思います。
試合全体を通してはnishimuraさんが当時の想定以上に強かったことが挙げられます*13。どの勝負も油断してはならない展開でしたし、実際にたった一つの判断の違いが勝敗を分けたものもありました。nishimuraさんが私の知らない素数を次々繰り出すので返すことができるか、出しても返されるのではないかと思いましたがそれと同時に今度はどんな素数を出してくるのだろうと楽しみな部分もありました。素数大富豪はルール上着手可能なプレーが素数によって完全に規定されていますが、どれが合法手なのかは一見しただけではわからないという大きな特徴があります。これは素数大富豪に参入するのに立ちはだかる大きなハードルとなっているわけですが、同時にでたらめに出した手がたまたま合法手(素数)だったという一発逆転があったり、プレーヤーによって知っている合法手が異なるという他のゲームには見られない魅力になっています。

最後にもう一度数譜をご覧ください。

1本目
n:(A3455778JJK)
カ:(A2245669TJQ)
n:D(5)57[GC]
n:57[GC]
n:A543
カ:D(8)8QTJ
n:8KJJ#


2本目
カ:(A23344556QQ)
n:(234677TTJQK)
カ:D(A)5634AA
n:D(7)63KTQJ
カ:D(5)%
n:D(6)T246777#


3本目
カ:(234555669QK)
n:(A34457899QX)
カ:6655543
n:D(7)Q544789,P(A2479KX)
カ:29
n:QK
カ:D(6)%
n:9432A
カ:D(3)%
n:D(8)57[GC]
n:D(T)984AX7|X=2
カ:D(T)%
n:D(8)7489
カ:6TQK
n:D(A)%
カ:3#


4本目
n:(A2234569TQK)
カ:(256789JJJQX)
n:D(Q)T=5*2
カ:X[IN]
カ:8JJQJ
n:D(4)%
カ:57[GC]
カ:269#


5本目
n:(2334569TKKK)
カ:(AAA2334678Q)
n:D(5)965423
カ:4QA2A3
n:D(X)KKT35X|X=3,P(??????)
カ:876A3#

次回は準々決勝の最後の試合です。onewanさんとキグロさんがベスト4をかけた対戦を解説します。

*1:私のいつもの設定はこちらです。

*2:現在ではオンライン素数大富豪デーでもりしーさんと互角の勝負を展開していらっしゃいます。

*3:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*4:2回戦では同じような状況で相手の手札の枚数を把握してなかったせいで負けそうになりましたが、このときはきちんとnishimuraさんの手札の枚数を確認しました。

*5:たとえば87X3A59|X=7→44Q9(877315X「バナナ最高」は四つ子素数)や83Q959X|X=3→A447(83129593「野菜肉コックさん」、下記の記事参照)があります。nisei.hatenablog.com

*6:nishimuraさんの発声は「にごじゅう」なのですが動画を見るとnishimuraさんから見て左から5,2,Tとカードが並んでいること、および素因数場のカードが5が先に流れるように回収されていることから「T=2*5」ではなく「T=5*2」としました。ルール上は素因数場に出す素因数の順序はプレーヤーの自由であり、順序の選択が流れたカードが再び山札になるときの順序に影響するので「T=2*5」と「T=5*2」の区別は必要です。

*7:他に35KKXK|X=Qがありますがこの場合手札に残るのはTとなりすぐには上がれません。

*8:それなら1453(これも素数)年も東ローマ帝国滅亡とか百年戦争終結で世界史的には有名のはずだが……

*9:2019年2月現在、この戦略を使いこなせるプレーヤーはまだいないように思えますが、近い将来スタンダードな戦法になりそうです。

*10:現に、先週(2月17日)のオンライン素数大富豪デーでも62TQQKや82QQQKが出されています。

*11:私は「故意に呼びつける(512412K6)」と覚えています。

*12:ちなみに92Q7Jも素数で92Q7Kと合わせて双子素数「QK -1213-」第57話に9QK27が登場したので、その上位互換として覚えていました。

*13:現在はオンライン素数大富豪デーでもりしーさんと互角に渡り合っていらっしゃいます。