初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】準々決勝-2 OTTY-マモ

解説ルームは鰺坂もっちょさん・みうらさん・(画面には映っていませんが)せきゅーんさんで先ほどの試合の振りかえり真っ最中。話題はもりしーさんの繰り出した「ニカカカ(2131131131)」「35億素数(3512121281)」について。213113113Xが四つ子素数だと判明し、もっちょさんはもりしーさんに「桁数・枚数が多くなったら(覚える素数の)優先順位がわからない、何を覚えたらよいの」か尋ねた際に「四つ子(素数)は優先して覚えたほうがよい」と答えられた話を紹介。四つ子素数を覚えるメリットは1つの数字の並び(たとえば213113113)を覚えれば同時に4つ(2131131131,2131131133,2131131137,2131131139)も素数を覚えられること、実際に出す際に戦略に応じて一の位を容易に変えられる柔軟性などがあります。デメリットは四つ子素数が必ずしも素数大富豪で強い、もしくは出しやすい素数とは限らないことです。
さて、続いて壇上で対戦するのはOTTYさんとマモさんです。両者とも北海道在住でもりしーさんが幹事を務めている「素数大富豪で遊ぼう会」の常連。昨年1月のせきゅーん杯にも参戦し、OTTYさんはベスト8、マモさんは準優勝でした。北海道(とくに札幌圏)は東京以上に素数大富豪熱が高く、もりしーさんを筆頭に優勝が狙える実力をもつプレーヤーが多い地域です。今まで以上にハイレベルな試合が予想されます。1本目の先手はOTTYさんです。

1本目(15:40:28~15:44:17*1 )

初期手札О:(2346679JKXX) マ:(A36889TTQQK)
OTTYさんは「7枚出しの名手」と呼ばれているらしく、多枚出しで相手を圧倒する戦いを得意とするプレーヤー。前期のMathpower杯では3枚出し、せきゅーん杯では4枚出しが主流だったことを考えるとせきゅーんさんの「数年先を行っている感じ」というコメントにも同感です。そのOTTYさんの初期手札ですがジョーカー2枚で絶好のチャンス。KKJ(3枚出し最大素数)やKJQJ(4枚出し最大素数)があるので今回は7枚出しではなく3・4枚出しで堅実に勝利を狙いそうです。一方のマモさんは絵札5枚で悪くはないですが、OTTYさんの初期手札がもっとよい上に先手がOTTYさんですから苦戦を強いられそうです。

1.О:3467
2.マ:D(5)6988,P(689T)
OTTYさんの1手目は3467。四つ子素数346X「三四郎」を出します。マモさんは次に来るであろうOTTYさんの勝負手を警戒してカマトトして手札を補充。

3.О:KJXX|X=Q|X=J
4.マ:D(T)%
OTTYさんはほぼノータイムでKJXX|X=Q|X=Jを出します。マモさんはドローして4枚目のTを引きます。KJQJを超えるには合成数出ししかありませんが、手札に揃っておらずパス。
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5.О:269#
最後の3枚・269を出してOTTYさんの上がり。

OTTYさんが初期手札を「4・4・3」で組み切って勝利しました。

2本目(15:44:57~15:48:54)

初期手札マ:(44578JQKKXX) О:(A3346699JJK)
1本目は先手のOTTYさんがジョーカー2枚の初期手札から難なく勝利しましたが、今度はマモさんがジョーカー2枚の初期手札を手に入れました。この勝負はマモさんが有利な様子。OTTYさんはそれに対抗することができるか。初期手札に(JJK)とあり、Qを引けばKJQJが揃います。ここで解説ルームにせきゅーんさんが玉子焼きを差し入れます。時刻はもうすぐ午前4時、予期せぬ展開があるかもしれません。

1.マ:844X|X=3
2.О:D(A)946A
3.マ:KJQX|X=J
4.О:D(Q)%
マモさん、1手目からジョーカーを使って844X|X=3を出します。いきなりジョーカーを含めて出すというのは単にジョーカーを使わないで出せる素数がなかった場合も考えられますが、みうらさんが言うようにジョーカーを1枚消費してもなお「余裕がある」場合が多いです。ジョーカーを温存するよりも偶数の消費を意図した模様。OTTYさんは946Aを出します。946X「釧路」はX=A,3,7,Kで素数になり、四つ子素数に次いで覚えやすい素数たちです。それに対しマモさんが出したのはKJQX|X=J。OTTYさんはドローと同時にパスを宣言。KJQJを超える合成数出しは最低でも10枚必要(KJKT=2*5*KJKA)なのでドローしても9枚にしかならないOTTYさんは何をドローしても返すことはできません。
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5.マ:57[GC]
マモさんの残り手札は(57K)。実はこの3枚はどう並べ替えても素数にならない詰んでるセットなのですが、57があるのでグロタンカットから……

6.マ:K#
Kで上がり。マモさんが勝利し1-1のタイになります。

1本目とほぼ同じ展開となり、先手のマモさんが勝ちました。
ここで解説ルームにもりしーさんが登場。

3本目(15:50:01~16:02:55)

初期手札О:(A23567889JQ) マ:(22489TTJKKK)
1本目、2本目ともに先手の初期手札がよく、それが先手の勝利につながりましたが、今回の先手OTTYさんの初期手札は絵札2枚と苦しい。ラマヌジャン革命A729を起こすことができますが、カウンターされた際に後が続かない。後手のマモさんには絵札6枚の強い初期手札が入りました。KKJ、KJTKなどOTTYさんに十分対抗できる手札です。

1.О:D(9)57[GC]
1手目、OTTYさんはドローして9を引きます。ラマヌジャン革命を見切りグロタンカット。グロタンカットはその前後に2回ドローの機会があり、絵札を引くチャンスが増えます。絵札の少ないOTTYさんは次のドローに賭けることを選んだようです。

2.О:D(4)884A2QJ3699,P(A336789QQQX)
2度目のドローは4、絵札ではありませんでした。OTTYさんはなんと手札11枚をすべて出します。これが素数であればそのまま上がりとなりましたが、8兆越えのこの数は素数ではありません(8841212113699=7*29*43552769033)。結果としてペナルティ11枚となりましたが、もともと手札が苦しかったOTTYさんにとっては絵札を引く絶好機。Q・3枚、ジョーカーを手に入れますがKが1枚もないのがネックか。実際はマモさんがKを3枚持っています。もりしーさんによればOTTYさんは普段から一か八かの全出しをしているそう。大会前には「手札悪かったら一気に全出しして(素数であることに)賭けるかたくさん引くかにする」と話していたらしい。
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3.マ:8429
4.О:D(T)XQTJ|X=K,P(456X)
マモさんは8429を出します。この後KJTK→2TKとまっすぐ勝利を狙うようです。OTTYさんが出したのはXQTJ|X=Kですがこれは素数ではありません(13121011=101*163*797)。(TJQK)から作れる最大の素数はKTQJであることをOTTYさんが知らないはずはないので、このペナルティは故意のもの。単にカマトトするだけなら8429より大きければ何でもよかったのですが、あえて絵札4枚を見せることでマモさんへの牽制を図ったようです。手札がさらに増え、KJQJ、さらにはそれを超える4枚出し合成数があると思わせる作戦です。ペナルティで引いたカードの中に2枚目のジョーカーがありジョーカーを2枚使えばKJQJが出せる態勢に。またOTTYさんからQとジョーカーがすべて見えているのでマモさんがKJQJを持っていないこともわかりました。
4手目終了時の両者の手札 О:(AA23334456667888999TJQQQQXX)(残27枚) マ:(2TTJKKK)(残7枚)

5.マ:KJTK
6.О:D(6)XJQX|X=K|X=J
7.マ:D(J)%
マモさんは当初の作戦通り、KJTKを出します。絶対に親をとりたいOTTYさんはジョーカー2枚を使ってXJQX|X=K|X=J。マモさんはドローしてパス。

8.О:D(3)8A9457
9.マ:D(T)%
何とか手番をとったOTTYさん。マモさんの残り手札は4枚なので6枚以上出せば手番を維持できます。出したのは8A9457でこれは素数。ちなみにKJQJ超えの合成数出しにこの素数を含むものがあります(KJKQ=2^4*8A9457*2 )。

10.О:D(5)8QT2Q4A39
11.マ:D(4)%
マモさんがドローして手札5枚になったので、確実に手番を保持するためのハードルが7枚に上がりました。OTTYさんは8QT2Q4A39を出します。9枚出しでしかも素数! 大会史上初の9枚出し成功*3、さらに出された素数としての大きさも記録更新*4です。これには解説ルームは呆然、もりしーさんでさえも「何だよコレ……」と漏らすほど。なお81210212413Xは四つ子素数。OTTYさんは8QTから始まる素数を多く覚えているらしく、それでこの四つ子素数を知っていたようです。
11手目終了時の両者の手札 О:(3335666689Q)(残11枚) マ:(24TTJK)(残6枚)

ja.primedaifugo.wikia.com

12.О:D(5)853Q3663669,P(AA2247789JK)
OTTYさんは残り11枚まで手札を減らしたものの手札に3の倍数が多く残り依然として厳しい状況。手札に5・1枚を残しまたも11枚出し。祈りながら出すものの叶わず、判定は合成数(853123663669=23*12497*2968099)。手札は再び23枚まで膨れ上がります。

13.マ:D(7)72KTTJ
14.О:D(5)%
ようやく手番が回ってきたマモさん。ドローして72KTTJを出します。残りは4の1枚。最後の1枚に素数ではないカードを残したのは72KTTJが勘出しではなく素数だと知っていたからだと思われます。OTTYさんはドローを含めた24枚の手札に絵札はわずか3枚。72KTTJを超える数を出すことができずパス。

15.マ:D(X)4X|X=A#
4について素数になるのはA,3,7の3種。マモさんのドローはジョーカーで見事上がり。準決勝進出に王手をかけました。

OTTYさんが2度も11枚出しを試みるも及ばず、マモさんが3本目を制しました。

4本目(16:03:52~16:07:41)

初期手札О:(A2334688TQK) マ:(44556799TJQ)
両者ともに絵札3枚の初期手札です。1桁カードを見てみますと下(A23)が多めのOTTYさんのほうが扱いやすそうです。というのは絵札を使う素数をQならA2のように分けて出すことができるからです。

1.О:D(2)8QT2A24K3
2.マ:9QJT65447,P(?????????)*5
先ほどマモさんに王手をかけられ後がないOTTYさんはドロー、2を引きます。出したのは8QT2A24K3。直前の勝負で出した四つ子素数81210212413Xで勝負に出ます。マモさんが返せなければ863で上がり、返されると大ピンチに陥ります。マモさんは手札に59を残して9QJT65447を出しますがこれは合成数(912111065447=389*991*2366053)。ちなみに並べ替え最大奇数の976544QTJは素数でした。
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3.О:863#
OTTYさんが863で上がり。なお3枚出しにおいて6と8を両方使う素数が863とその下位互換683しかないので863は3枚出しの中でもとくに覚えるべき素数のひとつになります。

4本目はOTTYさんが勝利し2-2。試合は最終・5本目に入ります。

5本目(16:08:37~16:12:55)

初期手札マ:(A234579TQKX) О:(A334458TTJX)
マモさんの初期手札は絵札4枚。グロタンカットとKQの合成数出しに気付けば次に挙げるほぼ勝ち確*6の出し方があります:

  • KQ=2^5*4A→X7|X=5[GC]→9T3

また11種11枚合成数出しもあります:

  • XQ253=4A*T9*K7|X=6

一方のOTTYさんも絵札4枚。手札を544A3,3,8TTXJと並べています。マモさんが小さい5枚出しで来たら544A3、次いで勝負手として8TTXJ|X=Kを出し最後に3で上がりという作戦でしょうか。あるいは544A33も素数なので8TTXJ|X=K、544A33の順に出すこともできます。

1.マ:D(K)57[GC]
1手目、マモさんはドローしKを手に入れます。考える時間を稼ぐためか、ひとまずグロタンカット。
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2.マ:924A3
3.О:D(J)TTJJX|X=J
4.マ:KKQTX|X=J#
マモさんの手札は10枚。絵札5枚でKKQTX|X=J(5枚出し2番目に大きい素数)がつくれるので残りの(A2349)で5枚出しがつくれればよいことになります。出したのは924A3。自信がなさそうな表情でしたがこれは素数。OTTYさんはこれを受けて作戦変更。ドローで手に入れたJを加えてTTJJX|X=Jを出します。手札の中で出せる最大の5枚出し素数です。しかし反撃も及ばずマモさんがKKQTX|X=Jを出してゲームセット。準決勝進出はマモさんになりました。

予想を上回る戦いが繰り広げられた試合はフルセットの末、マモさんに軍配が上がりました。

twitter.com

講評

上級者同士の試合は今までにないほど大きな素数の打ち合いになり、解説陣も追うことができないほどでした。
1本目・2本目は先手が初期手札11枚を4枚・4枚・3枚に分けて順に出すという戦略で勝利しています。この「4・4・3」戦法は2017年12月のもりしーさんの記事で紹介されていますが、当時は手札を組めるようになるために多くの素数を覚えなければならないという難点がありました。しかし、投稿からMathpower杯までの1年弱でその難点をクリアしたプレーヤーが現れました。現在では素数大富豪における正攻法として確立されています。
prm9973.hatenablog.com
3本目はOTTYさんが全出しなどでマモさんに揺さぶりをかける派手な勝負となりました。手札を大量に抱えることで一見通りそうな素数も返されてしまうのでは? と思わせ戦略を変更させます。手札が増えるということはその分上がりから遠ざかるので、手札を一気に消費するスキルが必要になります。前述の正攻法よりも高度な作戦ですが、そのまま戦っては競り負けてしまうような初期手札でも勝利を目指すことができます。
4本目はOTTYさんが1手目から9枚出しを決め勝利をもぎ取りました。初期手札11枚および最初のドローを加えた12枚の中に所望の9枚が含まれる確率は非常に低いですが揃ったときに出した際の威力は強烈です。できるだけそのような素数をたくさん覚えるために四つ子素数などが利用されることが多いです。
5本目は5枚出し攻勢でマモさんが勝ちました。初期手札を「5・5・1」に分ける戦法も先ほどの「4・4・3」と同じようにオーソドックスな戦い方となっています。3・4枚出しでは使いづらい絵札の組み合わせでも9TQJJやTQTTJなどの5枚出しの勝負手になりうる素数があるので、「4・4・3」を習得したら「5・5・1」に挑戦して戦略のバリエーションを増やしましょう。

白熱した試合を数譜でもう一度。

1本目
О:(2346679JKXX)
マ:(A36889TTQQK)
О:3467
マ:D(5)6988,P(689T)
О:KJXX|X=Q|X=J
マ:D(T)%
О:269#


2本目
マ:(44578JQKKXX)
О:(A3346699JJK)
マ:844X|X=3
О:D(A)946A
マ:KJQX|X=J
О:D(Q)%
マ:57[GC]
マ:K#


3本目
О:(A23567889JQ)
マ:(22489TTJKKK)
О:D(9)57[GC]
О:D(4)884A2QJ3699,P(A336789QQQX)
マ:8429
О:D(T)XQTJ|X=K,P(456X)
マ:KJTK
О:D(6)XJQX|X=K|X=J
マ:D(J)%
О:D(3)8A9457
マ:D(T)%
О:D(5)8QT2Q4A39
マ:D(4)%
О:D(5)853Q3663669,P(AA2247789JK)
マ:D(7)72KTTJ
О:D(5)%
マ:D(X)4X|X=A#


4本目
О:(A2334688TQK)
マ:(44556799TJQ)
О:D(2)8QT2A24K3
マ:9QJT65447,P(?????????)
О:863#


5本目
マ:(A234579TQKX)
О:(A334458TTJX)
マ:D(K)57[GC]
マ:924A3
О:D(J)TTJJX|X=J
マ:KKQTX|X=J#

次の対戦は私とnishimura@icqk3さんです。

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:6手目の時点でジョーカー2枚使えば出せた合成数出しのひとつ。KQJQ=2^3*3*TA*54A3ならジョーカー1枚の消費で出せました。

*3:8枚出しはこの20分前にもりしーさんが2A3J3J3Aで達成しています。

*4:それまでの記録はこの1時間半前に私が出したKAATQTJ(131110121011、約1300億)でした。

*5:マモさんがペナルティで引いたカードを並べきる前に勝負がつき、カードを片付けたため何を引いたかは不明です。そのため本来はカッコ内に引いたカードを書くところ”?”で表しました。”?”の個数でペナルティの枚数を表しています。

*6:KK=K*TAで返されない限り勝ち。