初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】2回戦-4 onewan-白くま

2回戦の最後はonewan(わんわん)さんと白くまさんという「動物対決」です。onewanさんは関西日曜数学友の会*1の幹事。1月のせきゅーん杯や9月に行われた素数大富豪研究会にも参加しており、素数大富豪の熱心なプレーヤーと見受けられます。白くまさんは前期に続いてMathpower杯2度目の出場。1回戦でイシカワさんを破っています。解説は鰺坂もっちょさん・みうらさん・せきゅーんさんの3人でお送りします。1本目の先攻は白くまさんです。

1本目(14:39:47~14:48:36*2 )

初期手札 白:(A238TJJQQQK) о:(A23667899TK)
白くまさん、初期手札に絵札が7枚もあります。Qが3枚あるのが多少使い辛そうですが、QQT3→KJQJ→82Aとすれば使い切れます。onewanさんは絵札2枚でやや苦しめ。ラマヌジャン革命がありますが、出すために手番をとるのが難しそう。
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1.白:D(A)KTQJ
2.о:D(J)%
白くまさん、1手目からKTQJ、4枚出し3番目に大きな素数です。onewanさんは絵札が2枚しかないのでドローしてパス。

3.白:D(5)QA=J^2
4.о:D(8)9J
5.白:D(7)%
白くまさん、ドローしてQA=J^2の合成数出し。初期手札に7枚あった絵札ですが、これでQ・1枚だけに。これに返されると再カウンターできるカードがありません。onewanさんは9Jを返します。白くまさんはドローしますが7でカウンターできずパス。
5手目終了時の両者の手札 白:(A3578Q)(残6枚) о:(A23667889TK)(残11枚)

6.о:D(2)KT7A
7.白:D(4)%
6手目、onewanさんはドローしてからKT7A。131071=2^{17}-1メルセンヌ素数です。なおA,7,T,Kの4枚でつくれる素数ではこれが最大です。白くまさんはドローするものの返せるカードがないのでパスします。

8.о:D(A)83
9.白:Q7
10.о:D(6)%
先ほどのKT7Aで絵札がなくなったonewanさん。ドローしますが引いたのはA。83を出します。白くまさんはすぐさまQ7。これで白くまさんも絵札ゼロ。続くonewanさんの手番、ドローはすでに2枚もっている6。返せないのでパス。
10手目終了時の両者の手札 白:(A3458)(残5枚) о:(A2266689)(残8枚)

11.白:54A
12.о:69A
13.白:%
白くまさんが出したのは54A、100番目の素数。残り手札は83です。それに対してonewanさんが出した69Aはリーマンゼータに現れる最初の非正則素数(\zeta (12) = \frac{691 \pi ^{12}}{638512875})。白くまさんはドローせずパスを選択。

14.о:D(K)26=2*K
15.白:83#
絵札に加え奇数もなくなったonewanさん、ドローはK。26=2*Kの合成数出しで手札を減らします。これに白くまさんは残り手札の83を出し、上がり。

お互い絵札を消耗する勝負となった1本目は白くまさんが勝ちました。

2本目(14:49:43~14:53:52)

初期手札 о:(A235669TQQK) 白:(A244678889K)
onewanさんは絵札4枚。3・4・5枚出しでは勝負手になるような大きな素数がつくれない(それぞれ最大はQTK、6TQK、3QQTK)ので2枚出しか? 白くまさんは絵札がKの1枚だけ。1本目のonewanさんのような苦戦が強いられそう。

1.о:66523
2.白:%
1手目、onewanさんは66523を出します。66523といえばもりしーさんの箏曲に登場する「ゴツ美」素数です。白くまさんはノータイムでパスします。
prm9973.hatenablog.com

3.о:D(4)TA
4.白:K9
5.о:QK
6.白:D(A)%
手札にQKがあるので2枚出しがしたいonewanさん。しかしこのままだともう1枚のQが使い切れないのでドロー。4を引いてTAを出します。白くまさんのK9に対しQK。残り手札は3枚。白くまさんはドローしてパス。
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7.о:Q49#
onewanさん、残り手札Q49を前にして空中で手を動かしながら何やら計算している様子。そしてついにQ49を出しました。これはぁぁぁぁぁ素数ぅだぁぁ! これでonewanさんが上がり。この勝負の前に腹痛を訴えていましたが「胃に良く」で勝利となりました。4Q9「良い肉」も素数でしたが体調を考えるとQ49でよかったかも。せきゅーんさんによれば1249はその3乗の下4桁が自分自身になる(1249^3=1948441249)という面白い性質をもった素数です。へー。

勝負後「お腹が痛いから早く終わらせた」と話すonewanさん。実際2本目にかかった時間はわずか4分(シンキングタイムを除けば3分)でした。

3本目(14:54:46~15:00:49)

初期手札 白:(3355579TTKX) о:(A2689JJJQKX)
白くまさんの初期手札ですが2,4,6,8が1枚もありません。偶数は一の位にあると素数にならないので偶数よりも奇数が多い手札の方が好まれますが、多すぎるのもそれはそれで使いづらい。一方のonewanさんはジョーカーを含む絵札6枚がある強い初期手札。QK、KXJ|X=K、KJQJがあり、白くまさんが何枚出しで来ても対応できそうです。

1.白:TT3
2.о:KJJ
3.白:D(9)%
白くまさんが出したのはTT3。3枚出しでTを2枚使える唯一の素数です。仮にこれが流れたとするとX[IN]→975=3*5*5*Kで上がれます。onewanさんはほぼノータイムでKJJを出します。ジョーカーはまだとっておくようです。白くまさんはJ,Q,Kのいずれかをドローできればカウンターできますが、ドローの結果は9。パスします。

4.о:D(T)QT2A
5.白:D(Q)KQX3|X=K
6.о:D(2)%
onewanさんは2Aで終わる素数を出したい様子。ドローしたTを使ってQT2A。あまり見かけない素数ですがこの4枚でつくれる素数の中ではこれが最大です。対する白くまさんはQをドローしてKQX3|X=Kを出します。こちらもなかなか目にすることがない素数ですがこの4枚でつくれる中ではこれが最大。onewanさんはドローしますが出せず、パス。
6手目終了時の両者の手札 白:(555799)(残6枚) о:(2689JX)(残6枚)
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7.白:59
8.о:9J
9.白:%
7手目、白くまさんが出したのは59、2番目に小さな非正則素数です。それにonewanさんは9Jを返します。白くまさんは何をドローしても返せない状況。ドローせずにパスを選びます。

10.о:862X|X=9#
onewanさん、残り手札を862Xと並べジョーカーを何にすればよいか考えているようです。862Xを出しX=9を宣言。8629は素数、これでonewanさんの勝ち。準々決勝進出はonewanさんとなりました。ちなみに862XはX=3,7,9で素数になる三つ子素数でした。

最後は8629「ハム肉」でonewanさんが試合を決めました。

講評

この試合は2~4枚出しの比較的穏やかな進行でした*3。1本目は白くまさんが1桁のカードよりも絵札を先に消費したがために、初期手札の優勢一転、あわやonewanさんに逆転されそうになりました。またKT7A(メルセンヌ素数)、54A(100番目の素数)、69A(リーマンゼータに現れる最初の非正則素数)といった特徴のある素数が多く出された勝負でもありました。こういった素数は「推し素数」としてゲームの中で出したい素数として挙げられることのある素数たちです。覚えやすい(覚えるモチベーションがある)かつ手札の中から見つけやすい、そして何より「推し」が出せる喜びのある素数ではあるのですが、勝負に勝つために出すという点ではそれが必ずしも最善手とはいえない場合があります。たとえば、1本目の12手目、onewanさんは69Aを出した結果手札から奇数がなくなり、次の手が出しにくくなりました。ここで仮に829を出し奇数を残していたとすると666A→2で上がれていたかもしれません。
2本目に関してはonewanさんの66523で偶数を消費してからの2枚出し攻勢が見事にはまりました。敗れた白くまさんには66523に対してたとえ返せる素数を知らなくても何か出すことが戦略として考えられました。勘出しは出したものが素数であれば親をとれるチャンスになりますし、素数でなくペナルティを受けたとしてもその結果絵札を引いてくる可能性があります。2枚出し最大素数QKは手札に揃いやすい素数ですので、手札が増えた結果onewanさんがQKのカウンターを警戒して別の戦略をとる可能性も出てきます。もちろんパスして相手に手の内を明かさないというのも悪いわけではないのですが、白くまさんの初期手札は絵札1枚とよくなかったので、ペナルティによって手札を強化するメリットが大きくなります。
3本目は初期手札で優勢だったonewanさんが押し切りました。先に絵札を使い果たした白くまさんが2枚出ししたところ、onewanさんが9Jで打ち取ることができました。

この試合の数譜を改めて掲載いたします。

1本目
白:(A238TJJQQQK)
о:(A23667899TK)
白:D(A)KTQJ
о:D(J)%
白:D(5)QA=J^2
о:D(8)9J
白:D(7)%
о:D(2)KT7A
白:D(4)%
о:D(A)83
白:Q7
о:D(6)%
白:54A
о:69A
白:%
о:D(K)26=2*K
白:83#


2本目
о:(A235669TQQK)
白:(A244678889K)
о:66523
白:%
о:D(4)TA
白:K9
о:QK
白:D(A)%
о:Q49#


3本目
白:(3355579TTKX)
о:(A2689JJJQKX)
白:TT3
о:KJJ
白:D(9)%
о:D(T)QT2A
白:D(Q)KQX3|X=K
о:D(2)%
白:59
о:9J
白:%
о:862X|X=9#

この試合でベスト8が出揃いました。次回から準々決勝に入ります。

*1:数学をキーワードに5分間で好きな事を語るイベント(connpassの概要より)。公式twitter:@kansai_nitimath

*2:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*3:大会後半になるととんでもない素数がたくさん出てきます。乞うご期待。