初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】2回戦-3 カステラ-ジャッカル

今回は私・カステラとジャッカルさんの対戦を解説いたします。解説の前に簡単に自己紹介いたします。私は素数大富豪に出会ったのは2年前*1、本格的に始めたのはちょうど1年前です。今年1月に開催されたせきゅーん杯で優勝し、「素数王」のタイトルを戴きました。Mathpower杯は今期が初参戦でしたが、2冠が懸かるということで優勝候補のひとりとして数えられていたようです。
対するのはジャッカルさん。残念なことに手元にジャッカルさんの情報がありません。わかるのはMathpower初参戦、1回戦でヒロキさんを破っていることのみ。前期優勝のもりしーさん、前々期優勝のみうらさんが当時は無名のプレーヤーであったように、大会には「ダークホース」が現れるものです。こちらとしては気を抜く理由はありません。
さて、解説ルームでは前の試合*2の余韻が残っております。5^11の合成数出しについて、キグロさん本人が登場して解説。5冪の下4桁にはわかりやすい特徴があるのでそのパターンを覚えればあとは上数桁を個別にみていけばよいとのこと。詳しくは「QK -1213-」第60話を参照。試合の方はじゃんけんによりジャッカルさんの先手で始まります。なおこの試合から素数判定員が変わります。
前の試合までは中立な立場で解説を行ってまいりましたが、今回は私が対戦した試合ということで主に私の視点から、当時考えていた戦略等も交えて解説していきます。

1本目(14:16:48~14:27:11*3 )

初期手札 ジ:(23456889JKX) カ:(A255578TJQK)
ジャッカルさんの絵札はJ,K,Xの3枚。これで3枚出し最大KXJ|X=Kがつくれます。そこで残りの8枚を3枚・5枚に分ければ、たとえば859→KXJ|X=K→86423と組めます。私の初期手札は絵札が4枚とジャッカルさんより多いですが、仮にジャッカルさんが上述のように手札を組んだ場合には対抗する手段がありません。他にA,2,5,Tがあるので「~T=2*5*~A」という形の合成数出しが狙えそうですが2組必要な「~」に入るカードがありません。

1.ジ:2468J
2.カ:D(3)%
ジャッカルさんが1手目に出したのは2468J、5枚出しです。(偶数連番)+(奇数1枚)という形の素数は偶数消費かつ覚えやすいため多くのプレーヤーに記憶されている多枚出しです。ちなみに偶数部分を逆に並べた8642Jも素数です。それを見て私は7を手札右側に寄せます。もしここで親をとろうとすると、現時点で出せる最大素数7KTQJが次の手の有力候補だからです。7KTQJを除くと残りは(A25558)ですがこれでつくれる6枚出しは知りませんでした(降順に並べた85552Aが素数)。ドローしたところ3。やはり残り手札で上がるのは難しいと判断し(これも降順に並べた855532Aが素数)、ここは様子見のパスを選びます。

3.ジ:853
4.カ:D(9)8Q3
5.ジ:KX9|X=Q,P(778)
ジャッカルさんはノータイムで853。私は現時点で出せる3枚出し最大がKTJであることを確認してドロー。引いたのは9。ラマヌジャン革命が揃ったので手札左端に。KTJとA729を除いた手札で出せる素数8Q3を出します。出した直後にジャッカルさんの手札が残り3枚であることに気がつきました。つまりこれは悪手。なぜならジャッカルさんはまだ絵札を1枚しか出していないため、手札に絵札を2~3枚抱えている可能性が高い。ということは8Q3にカウンターして上がる可能性が高い。KTJを出していれば阻止できたかもしれないカウンターを許してしまう恰好となってしまいました。そのときのジャッカルさんの手札は(9KX)、返せる候補はK9X|X=K,KX9|X=T,9XK|X=6などたくさんあります。ジャッカルさんが出したのはKX9|X=Q。これは素数ではありません(13129=19*691)。なお(9,Q,K)はどう並べ替えても素数にできない詰んでるセットです。ジャッカルさんはペナルティで3枚引き、私に手番がまわってきます。
5手目終了時の両者の手札 ジ:(7789KX)(残6枚) カ:(A255579TJK)(残10枚)

6.カ:D(T)57[GC]
私はドローし、Tを引きます。もしここで革命すると残りは(555TTJK)となり途端に手札が弱くなってしまいます。しかもジャッカルさんは9,Xをもっていることがわかっており、しかも直前に3枚引いていることから革命されても返せるカードがある可能性が高そうです。革命は控えたほうがよさそう。そうこうしているうちに制限時間が迫ってきたのでいったん57を出し再び自分の手番にします。

7.カ:D(J)5592J
8.ジ:D(T)%
私は再度ドローします。親でグロタンカットをするとその前後でカードをドローできる機会が得られるのでけっこう便利です*4。まだ5が2枚残っていたのでドローしたばかりのJと合わせて5592Jと出します。55921Xは四つ子素数*5です。ジャッカルさんはドローしてパス。

9.カ:D(4)KTJ
10.ジ:D(Q)KQX|X=K
11.カ:D(6)%
9手目、私はドローして4。この時点の手札は(A4TTJK)でJを除く5枚が3で割ると1余るカードです。個人的にはカードを3で割った余りによって3つのタイプに分類したとき、どれか1つのタイプに集中しているのはあまり好きではありません。というのもここから3枚出しすることを考えると、同じタイプのカード3枚では必ず3の倍数になってしまい出せないからです。もともとは(A,T,ドローしたカードでできる素数)→KTJ、または(T,T,J,K,ドローしたカードでできる素数)→(A,再度ドローしたカードでできる素数)で上がろうとしていましたがKTJを先に出し、流れたら再度ドローして4枚出しを狙うことにします。今思えばあまりよい戦略ではなかったように思います。というのも、ジャッカルさんの5手目からK,Xが手札にあることがわかっているのでその後ペナルティやドローでJ,Q,Kのどれか1枚でも引いていればKTJに返せると判断できるからです。ジャッカルさん、ドローはQ。これでKQX|X=Kとカウンターすることができました。私はドローしてパス。
11手目終了時の両者の手札 ジ:(7789T)(残5枚) カ:(A46T)(残4枚)

12.ジ:T987
13.カ:D(Q)Q64A
14.ジ:%
ジャッカルさんはT987。Tから降順に4枚並べると素数になります。ジャッカルさんの残り手札は7の1枚です。私は手札4枚でしたが3の倍数なのでドローします。Qを引きQ64Aを出します。残り手札はTの1枚。ジャッカルさんはドローせずにパス。これで私の次のドローがA,3,7,9,K,Xなら素数がつくれて私の勝ち、2,4,5,6,8,T,Qなら素数をつくれない、または1枚出ししても返されてジャッカルさんの勝ち、Jならまだ決まらないという状況になりました。
f:id:graws188390:20181115213256p:plain

15.カ:D(A)TA#
運命のドローの結果、引いてきたのはA。TAを出して私の勝ち。

両者手札が1枚ずつになるまでもつれた勝負ですが、最後は私が勝ちとなりました。

2本目(14:28:06~14:31:25)

初期手札 ジ:(A246689TJQK) カ:(AA6789TTQKX)
ジャッカルさんの初期手札は6が2枚ある他はバラバラで、覚えている素数が見つけやすいといった印象。ジャッカルさんも2468TQAがあることに気がつきます。私の初期手札もAAをJとみなせばダブりはT・1つのみ。覚えている多枚出し*6を見つけましたが後攻*7なので出せるかどうかは先攻のジャッカルさん次第。

1.ジ:2468TQA
2.カ:KAATQTX|X=J
3.ジ:%
ジャッカルさん、フライング気味に2468TQA。前期のMathpower杯でせきゅーんさんが放った「2億」素数です。私がシンキングタイムで見つけたのは7枚出しではなかったため組み直しです。前述のようにAAをJとみなすことで6枚12桁の素数を7枚出しで出すことができそうです。そこでKAATQTX|X=Jを出しカウンター。「2億」の時代を終わらせます。
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4.カ:D(4)98467#
7枚出しカウンターが決まったのはよかったのですが、残り手札は(6789)で3の倍数でした。ドローして4。これで3の倍数ではなくなり、98467と並べ替えて素数となり私の勝ち。2本先取で準々決勝進出。

7枚出しに7枚出しを返した私が2連勝で試合を決めました。

講評

結果としては私の2戦2勝となりましたが、改めてタイムシフトを見ると決して私が(もりしーさんがくじらさんを下したときのように)常に優勢というわけではなかったことが感じられます。1本目はジャッカルさんの1手目2468Jがなかなかいい手で、これに返すかどうかは人や手札によって判断が分かれるところです。たとえば最初にジャッカルさんが2468J→(5枚(勝負手))→(1枚)*8と組んでいた場合、初期手札11枚に絵札(T,J,Q,K,X)が3~4枚あることが多いので勝負手の5枚出しは絵札が2~3枚含まれます。後攻としては

  • (先攻5枚出し)→(後攻5枚出し)→(先攻5枚出し(勝負手))→(後攻5枚出し(勝負手))→(先攻出せず)→(後攻1枚出し)#

という流れが理想のひとつですが、いま先攻(ジャッカルさん)が2468Jを出したので後攻(カステラ)は直後の5枚出しにも絵札を使わなければならず、その結果残りの手札でつくる勝負手が先攻の勝負手に勝てなくなる可能性が高まります。いきなり勝負に出る

  • (先攻5枚出し)→(後攻5枚出し(勝負手))→(先攻出せず)→(後攻6枚出し)#

という流れもありますが、現時点で初期手札11枚を5枚出し勝負手と6枚出し素数に分けるのは至難の業。現在これを難なくこなせる人間はほとんどいません。6枚を3枚・3枚に分けた

  • (先攻5枚出し)→(後攻5枚出し(勝負手))→(先攻出せず)→(後攻3枚出し)→(先攻3枚出し)→(後攻3枚出し)#

については後攻が勝負手を出した後手札に絵札がほとんど残っていないのに対し、先攻は絵札を温存しているので先攻のほうが強い3枚出しを出せる可能性が高いです。
よって1手目の5枚6桁は後攻にとってはどの戦略も難しいかなり厳しい手といえます*9。もちろん、以上の議論は先攻が手札を(5枚)→(5枚)→(1枚)と組んでいることが前提です。たまたま知っている5枚出しがあってそれを出したという場合はこの限りではありません。
2本目は7枚出しにカウンターをした結果、残りが3の倍数となってしまいました。相手は残り4枚なので6枚11桁を7枚出しして、たとえば8TQTKAA→X[IN]→967とするなり、先にドローしてから考えるなり方法はありました。結果としては12桁の素数を出して会場が盛り上がり、ドローして素数がつくれたのでよかったのですが、手堅く勝利をものにしたいのだったならもう少し考えてから行動すべきだったと思います。

試合後に感想戦を行いました。2本目、ジャッカルさんの残り手札は(69JK)。これは3の倍数なのでジャッカルさんは6K→9Jと上がる予定だったそうです。もちろんこれでもよいのですが、たとえば2468TQAの代わりに864Q2TJを出せば残りはA6K9で素数となります。
どんな素数を覚えているのですか? と尋ねられましたので「みんなが覚えていそうな素数、プラスアルファ」と答えました。これについて補足いたします。まず「みんな」とはここでは「私が知っている他の素数大富豪プレーヤー」と考えていただいて差し支えありません。これは単に自分の所属するコミュニティが偏りすぎていて素数大富豪プレーヤーの割合が相対的に高いことに起因した表現です。「みんな」が知っている素数、すなわち知名度が高い素数*10

  • KKQKJ(5枚出し最大)、KKKKTJ(6枚出し最大)など各枚数における最強クラスの素数
  • 76543、68TQJなど並びに規則性がある素数
  • 86T24K(偶数消費)、936QJ(3の倍数消費)など特定のカードを大量消費できる素数
  • 69593(ロックコックさん)、924TA(靴下)など語呂合わせがある素数
  • 65537(フェルマー素数)、KT7A(メルセンヌ素数)など特別な性質をもつ素数
    • とくに8T4X、T9Q6Xなど四つ子素数
  • T2A(第1期Mathpower杯でみうらさんが出した素数(ウイニングプライム))、84Q3A(第2期Mathpower杯でもりしーさんが出した素数)など大会で出た素数

などさまざまな種類があります*11素数大富豪で出せる素数は4枚出し以上になると膨大となりすべてを網羅することは非常に困難です。ゆえにある程度的を絞った覚え方が必要だと思います。そのときの基準のひとつとして知名度があります。素数大富豪プレーヤーたちに知れ渡った素数はそれだけ何かしらの覚える価値があると考えられます。それは必ずしも素数大富豪に強くなることに働かないかもしれませんが、覚えるモチベーションとしては悪くないと思います。
次に「プラスアルファ」ですが、感想戦では最後に出した98467を挙げました。これは1本目の講評でも述べた5枚出し戦略に関係します。98467は5枚5桁の素数ですが、これにカウンターするには5桁ではかなり限られ、6桁以上、すなわち絵札を使わなければなりません。つまり出す側としては1枚も絵札を消費することなく先ほどの2468Jのような効果が期待できるというお得な素数です。絵札を使わない分、勝負手をより強力にすることが可能です。しかも98467は同時に偶数を3枚消費するという点でも価値のある素数です。他にも素数を覚える基準はありますが、それを紹介するのはまたの機会にいたしましょう。

最後に数譜を再掲することで解説を締めくくります。

1本目
ジ:(23456889JKX)
カ:(A255578TJQK)
ジ:2468J
カ:D(3)%
ジ:853
カ:D(9)8Q3
ジ:KX9|X=Q,P(778)
カ:D(T)57[GC]
カ:D(J)5592J
ジ:D(T)%
カ:D(4)KTJ
ジ:D(Q)KQX|X=K
カ:D(6)%
ジ:T987
カ:D(Q)Q64A
ジ:%
カ:D(A)TA#


2本目
ジ:(A246689TJQK)
カ:(AA6789TTQKX)
ジ:2468TQA
カ:KAATQTX|X=J
ジ:%
カ:D(4)98467#

次回はonewanさん対白くまさんの試合を解説いたします。

*1:当時のツイート(素数大富豪をプレーしていた):

twitter.com

*2:2回戦-2 せきゅーん-キグロgraws188390.hatenablog.com

*3:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902

*4:このテクニックは「グロタンチェンジ」と呼ばれています。

*5:多枚出し対策として6桁の四つ子素数を覚えて大会に臨みました。

*6:どんな素数だったかは今は伏せておこうと思います。

*7:Mathpower杯では直前の勝負の敗者が次の勝負の先攻となる。一方、せきゅーん杯は先攻を交互にもつ。

*8:たとえば2468J→893XK|X=J→5。893JKは「ヤクザJK」。

*9:いずれ11枚を5枚出し素数・6枚出し素数臨機応変に分けられるようになればこの限りではありませんが……

*10:といいながらもせっかくなので類似の、少しマイナーなものも混ぜてあります。ここに挙げた素数知名度が上がりますように。

*11:ここに挙げた分類は重複することがあります。たとえば2468TQAは規則性あり・偶数消費・大会で出た素数です。