初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】2回戦-1 もりしー-くじら

放送された試合以外にホールでは1回戦の他の試合が進行しています。
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壇上では2回戦に入ります。まずはもりしーさんとくじらさんの対決です。もりしーさんは前期Mathpower杯の優勝者。昨年は無名のプレーヤーでしたが今年はディフェンディングチャンピオンとして優勝候補の筆頭です。対するくじらさんは1回戦タカタ先生によって能力が「開放」*1。もりしーさんを相手にどんな戦いを見せてくれるのか。じゃんけんにより1本目の先攻はもりしーさんです。なおこの勝負から素数判定員が変わっています。

1本目(13:31:00~13:34:56*2 )

初期手札 も:(A233577TJKX) く:(23445899JQX)
もりしーさんの初期手札はジョーカーを含む絵札4枚にグロタンカットがあります。偶数も少なめなので理想的といってよいでしょう。3J→KT=2*5*XA|X=K→773という2枚出し合成数を使った戦略もとれます。一方のくじらさんは絵札がジョーカーを含む3枚ですがKがないので3枚出しだと不利な手札です。というのは、3枚6桁素数(上位互換のみ)はKKJ,KQK,KJJ,KTJ,QTK,JQJ,TJJの7つですが、そのうち上位5つにはKが含まれ、KKJ,KQKにいたってはKが2枚必要となるからです。しかも先攻はもりしーさん。これはかなり厳しい勝負になりそうです。

1.も:T33
2.く:D(7)%
1手目、もりしーさんはノータイムでT33。この3枚出しにくじらさんはドローするものの返せず。ちなみに1033は23571113......102110311033と1033以下の素数を順に並べた数が素数(Smarandache-Wellin素数*3 )だったり、2つの過剰数(自分自身を除く正の約数の和が自分自身より大きい自然数)の和で表せる最小の素数だったりします(1033=945+88)。私の推し素数のひとつです。
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3.も:KXJ|X=K
4.く:D(6)%
続いてもりしーさんが出したのはKXJ|X=K、3枚出し最大素数です。くじらさんは返しようがありません。

5.も:57[GC]
そしてグロタンカットから……

6.も:A27#
A27であっという間にもりしーさんの勝ち。くじらさんは天を仰ぐ。

もりしーさんが初期手札から組み切って難なく勝利。初期手札がよかったこともありますが、相手に流れを一切渡さない勝ち方はまさにチャンピオンです。いいところがなく負けてしまったくじらさん、2本目で巻き返せるか。

2本目(13:36:02~13:42:08)

初期手札 く:(A233359QQKX) も:(245779TJQKK)
くじらさん、絵札がジョーカーを含めて4枚あり悪くない初期手札ですが、3の倍数のカードが多いのが少し気になるところ。手札に偶数しかなくて素数が出せないということはありますが、3の倍数しかなくて出せないというのもたまに起こるので注意したいところ。もりしーさんは絵札5枚にグロタンカットあり。もし先攻だったらKKQTJ→57[GC]→4729でほぼ勝ち確の強い初期手札。

1.く:D(4)59
2.も:QK
3.く:D(7)%
くじらさん、ドローして4。59を出します。多枚出しを仕掛けてくる相手には1・2枚出しでじわじわと追い込むのは有効な作戦のひとつです。対するもりしーさんは少し考え2枚出し最大素数QK。早めに親をとって自分のペースに持ち込むようです。

4.も:947
5.く:QQK,P(456)
親をとったもりしーさんはすぐさま947。残りの手札は257,KTJに分かれます。くじらさんはQQKを出すも合成数(121213=47*2579)。ちなみにQQXはXが何であっても素数になりません。覚えておくとよいかもしれません。
5手目終了時の両者の手札 く:(A233344567QQKX)(残14枚) も:(257TJK)(残6枚)

6.も:257
7.く:QA3
8.も:KTJ#
もりしーさんは手札の3枚出し素数の小さい方、257を出します。くじらさん、もりしーさんのKTJよりも大きいKQX|X=Kが手札にありましたが出したのはQA3。もりしーさんが無事KTJを出して勝利。2本先取でもりしーさんが準々決勝進出。
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1本目に続いてもりしーさんがくじらさんを圧倒する結果となりました。さすがチャンピオンといったところです。

講評

2本とももりしーさんの圧勝に終わったわけですが、くじらさんが勝つ方法はあったのでしょうか。1本目は先攻のもりしーさんが初期手札からT33→KXJ|X=K→57[GC]→A27の流れがT33の直後にKKJを返されない限り勝ち*4となる手順なのでほとんど対抗することができません。相手の勝負手がKKJでないことを信じてカマトトする方法もありますが、相手の勝負手がKKJの場合には無駄になってしまいます。
2本目については、初期手札にKQ=2^5*XA|X=4があるので、これを勝負手とすると残り手札は(3339Q)。すべて3の倍数なのでそのあとが続きませんが、最初のドローの4と組み合わせるとQ9=3*43と3に分けることができます。つまり
Q9=3*43→KQ=2^5*XA|X=4→3
でほぼ勝ち確です*5。この手順はMathpower杯終了後最初の数学デー*6で見つけました。

twitter.com


最後にこの試合の数譜です。

1本目
も:(A233577TJKX)
く:(23445899JQX)
も:T33
く:D(7)%
も:KXJ|X=K
く:D(6)%
も:57[GC]
も:A27#


2本目
く:(A233359QQKX)
も:(245779TJQKK)
く:D(4)59
も:QK
く:D(7)%
も:947
く:QQK,P(456)
も:257
く:QA3
も:KTJ#

次回は第1期・第2期ともにベスト4のキグロさんが登場。せきゅーんさんと対戦します。

*1:1回戦終了後のタカタ先生のコメント(タイムシフト13:02:01あたりから)より。

*2:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902

*3:Smarandache-Wellin素数に関するせきゅーんさんのブログ記事。integers.hatenablog.com

*4:KKJの直後にKKQ(=2^4*29*283)またはKKK(=3*7*13^2*37)の合成数出しを返される場合も考えられますがほとんど起きません。

*5:KQ=2^5*XA|X=4→9343Q3ならなおよい。

*6:数学好きまたは数学好きでない人がなんとなく集まる部室みたいなやつ(twitterの自己紹介より)。毎週水曜日にソノリテ(神田)、毎週金曜日にφカフェにて開催。公式twitter: @sugaku_day