初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】1回戦-1 タカタ先生-くじら (1)

2018年10月7日に数学の祭典「Mathpower」において開催された素数大富豪大会(以降、「第3期Mathpower杯」と記す)の、ニコニコ動画で中継された試合を解説していきます。

壇上にはMathpower総合司会のタカタ先生とキグロさん。キグロさんから素数大富豪のルール説明の後、タカタ先生から今回のトーナメントの説明。放送では概要のみであったが、詳細を述べると

  • 参加者24人によるノックアウト方式。1試合2本(準々決勝以降は3本)先取で勝利。
  • 1本目の先攻は試合前に行われるじゃんけんの勝者。2本目以降は直前の敗者が先攻。
  • ルールは公式ルールに同じ。枚数制限なし、上がりの制限なし*1、手札上限なし*2、流れたカードは流れた順に山札になる(が、ルール通りに運用されていない勝負がいくつかある)。
  • シンキングタイム1分、1手1分(時間切れは強制パス)。
  • 1本あたりの制限時間は15分。15分が経過した時点で勝敗がついていない場合は勝負を中断、お互い手札のカードすべてを使って1つの数をつくる。素数判定の結果、素数がつくれた方の勝利。両者つくれた場合はより大きな素数がつくれた方の勝利。両者つくれなかった場合は手札の枚数の少ない方の勝利*3

そして前回に引き続き素数判定の声は若本規夫さん。昨年よりもバリエーションが増えている。壇上での使用トランプはバイスクルのガーディアン。

1回戦最初の放送はタカタ先生とくじらさんというカード。タカタ先生は第1期・第2期に続いての参加ですが、過去2回はいずれも1回戦で敗退。今回は秘策を持ち込んでいるらしい。くじらさんはMathpowerの「ミスター耐久企画」。今回もMathpower開始から円周率計算に挑戦中。計算力がプレーに生かせるかどうか。ちなみに大会における手回し計算機の使用は禁止です。この試合で勝った方が前回優勝者・もりしーさんとの対戦に駒を進める。じゃんけんの結果、1本目の先攻はくじらさん。

1本目(12:29:31~12:44:56*4 )

初期手札 く:(345669TJQKX) タ:(2245568TJQK)
くじらさん、T,J,Q,K,X各1枚ずつありかなり強い手札。実は

  • T49→KXJ|X=K→665Q3
  • 64T9→KJQX|X=J→653
  • 96643→KXQTJ|X=K→5

のように3枚出し・4枚出し・5枚出しのいずれでもほぼ勝ち確定のルートがとれます(KKJは3枚出し最大素数、KJQJは4枚出し最大素数、KKQTJは5枚出し2番目に大きな素数)。
一方のタカタ先生、T,J,Q,K各1枚ずつあるが、他のカードがすべて偶数(5は偶数)であるところが厳しい。よく見ると2,4,6,8,T,QがあるのでもしAを引いてきたなら2468TQA(昨年のMathpower杯でせきゅーんさんが出した素数)が狙えます。

1.く:43
2.タ:TJ,P(JQ)
1手目、くじらさんほぼノータイムで43。手札にQK(2枚出し最大素数)があるので2枚出しは悪くない。2手目、「10のスペシャリスト」と豪語していたタカタ先生、自信をもってTJ。しかしこれは3の倍数(1011=3*337)。10Xは四つ子でしかもX=Kでも素数になるのですが、X=Jではこのように3の倍数です。ちなみに末尾にA,3,7,9,J,Kをそれぞれつけてそれらがすべて素数になるような数は存在しません。とくに四つ子の共通部分にJをつけると3の倍数です。これについては、キグロさんの以下の記事に詳しく載っています。ch.nicovideo.jp

3.く:T59,P(A8K)
3手目、くじらさんはT59。しかしこれも先ほどと同様3の倍数(1059=3*353)。早くも泥試合の予感。
3手目終了時の両者の手札 く:(A56689TJQKKX)(残12枚) タ:(2245568TJJQQK)(残13枚)

4.タ:D(9)T9
5.く:QK
6.タ:D(5)%
タカタ先生T9。今度こそ素数。それにくじらさんがQK。タカタ先生はドローしてパス。

7.く:TA
8.タ:QK
9.く:%
くじらさん、「10のスペシャリスト」に対しTAを放つ。それに「10のスペシャリスト」はQKで応戦。
9手目終了時の両者の手札 く:(56689JKX)(残8枚) タ:(22455568JJQ)(残11枚)

10.タ:82J,P(6TT)
タカタ先生82J。82Xは四つ子素数(ハニー素数)だと知っていたはものの、Jをつけたら3の倍数になってしまいます(8211=3*7*17*23)。このことについては2手目ですでにコメントしました。

11.く:JK,P(33)
JKは3の倍数(1113=3*7*53)。なおJKの素因数分解には「みなこさんはJK」という語呂合わせがあります。

12.タ:2
13.く:3
14.タ:5
15.く:J
16.タ:D(8)%
タカタ先生、泥試合を案じて「シンプルに」と2の1枚出し。その後テンポよく素数が出されていきます。くじらさんのJに対し、Kをもっていないタカタ先生はドローしてパス。
16手目終了時の両者の手札 く:(356689KX)(残8枚) タ:(24556688TTJJQ)(残13枚)

17.く:59
18.タ:5J,P(9Q)
くじらさんの59に対しタカタ先生は悩んで5J、しかしこれは素数ではない(511=7*73)。ちなみに511は511=2^9-1メルセンヌ数(2^n-1 (n \in \mathbb{Z}_{>0})の形に表される整数)ですが、「2^n-1素数ならn素数」が成り立ち*5、9が素数でないことからも511が素数でないことがわかります。詳しくはせきゅーんさんの以下の記事。
integers.hatenablog.com


19.く:3
20.タ:5
21.く:D(J)J
22.タ:D(K)K
23.く:%
再び1枚出しの場に。タカタ先生のKに対しくじらさんはジョーカーを温存しパスを選ぶ。

24.タ:829
25.く:%
タカタ先生ついにハニー素数829を出す。くじらさんは再びパス。
25手目終了時の両者の手札 く:(668KX)(残5枚) タ:(45668TTJJQQ)(残11枚)

26.タ:5
27.く:D(7)7
28.タ:J
29.く:D(7)K
30.タ:D(7)%
手札に奇数がなくなってきたタカタ先生、5の1枚出し。お互いドローしながら1枚出しが続き、手番はくじらさんへ。

31.く:67
32.タ:T7
33.く:D(7)%
くじらさんの67に対し、「10のスペシャリスト」はT7を返す。

34.タ:D(8)TJ,P(2X)
手札に奇数がJしかないタカタ先生、ドローするも8は偶数。そして2回目のTJ。3の倍数チェックくらいはやろう。ペナルティでカードを引いた際にジョーカーを手に入れます。
34手目終了時の両者の手札 く:(678X)(残4枚) タ:(246688TJQQX)(残11枚)
f:id:graws188390:20181021180235p:plain

35.く:D(4)7
36.タ:J
37.く:D(2)%
1枚出しで奇数を消費しあい、両者の手札から奇数が消えます。

38.タ:D(3)823
39.く:D(4)%
3をドローしてきたタカタ先生、2回目のハニー素数823を出す。

40.タ:D(9)T9
41:く:%
またも奇数をドローしたタカタ先生、思わず「よし」と声が漏れます。さっそくドローした9を使ってT9を出します。

42.タ:D(A)664A,P(AA4T)
手札の偶数消費を狙ったタカタ先生、1001チェックをして664Aを出すもこれは29の倍数(6641=29*229)。ちなみに864Aなら素数で、864A→QQ6X|X=Kで上がりとなります。QQ6J,QQ6Kは偶数消費の双子素数です。6Q6J,6Q6Kの双子と一緒に覚えておきたい素数
42手目終了時の両者の手札 く:(24468X)(残6枚) タ:(AAA44668TQQX)(残12枚)

43.く:D(Q)%
親が回ってきたはものの手札に奇数がないくじらさん。ドローするもQでパスを選択。

44.タ:4A
45.く:D(3)43
46.タ:6A
47.く:%
ペナルティの結果Aが3枚となったタカタ先生、ノータイムで4A。くじらさん、3をドローしてなんとか43を返す。偶数ばかりの手札に苦しんでいる様子。6Aを出したタカタ先生が再び親となる。

48.タ:4A
49.く:Q8=2^X|X=7
50.タ:D(A)QX|X=K
51.く:D(T)%
タカタ先生の出した4Aに対し、くじらさんが今大会初の合成数出しを決める。お互いにジョーカーを消費し、手番はタカタ先生へ。
51手目終了時の両者の手札 く:(46T)(残3枚) タ:(A68TQ)(残5枚)

52.タ:D(Q)TA
53.く:D(K)TK
54.タ:D(9)%
ドローするものの奇数が引けなかったタカタ先生、TAを出して再び手札の奇数が尽きる。くじらさん、KをドローしてTK。これは素数だ! タカタ先生はドローしてパス。

55.く:D(K)6K
56.タ:D(2)%
くじらさん、またもKをドロー。6Kを出す。タカタ先生、ドローに賭けるも実らず、パス。

57.く:D(3)43#
3連続で奇数をドローしてきたくじらさんが43を出して勝利。

講評

いやー長かった。途中2人の手札から奇数がなくなったときはどうなるかと思いましたがなんとか制限時間内に終わりました。実は偶数よりも奇数のほうが場に出やすいので2
周目の山札*6には奇数が多くなるため案外どうにかなったりするものです。
では今の数譜をまとめて見てみましょう。

く:(345669TJQKX)
タ:(2245568TJQK)
く:43
タ:TJ,P(JQ)
く:T59,P(A8K)
タ:D(9)T9
く:QK
タ:D(5)%
く:TA
タ:QK
く:%
タ:82J,P(6TT)
く:JK,P(33)
タ:2
く:3
タ:5
く:J
タ:D(8)%
く:59
タ:5J,P(9Q)
く:3
タ:5
く:D(J)J
タ:D(K)K
く:%
タ:829
く:%
タ:5
く:D(7)7
タ:J
く:D(7)K
タ:D(7)%
く:67
タ:T7
く:D(7)%
タ:D(8)TJ,P(2X)
く:D(4)7
タ:J
く:D(2)%
タ:D(3)823
く:D(4)%
タ:D(9)T9
く:%
タ:D(A)664A,P(AA4T)
く:D(Q)%
タ:4A
く:D(3)43
タ:6A
く:%
タ:4A
く:Q8=2^X|X=7
タ:D(A)QX|X=K
く:D(T)%
タ:D(Q)TA
く:D(K)TK
タ:D(9)%
く:D(K)6K
タ:D(2)%
く:D(3)43#

次回はこの試合の2本目です。この勝負で相手の実力がわかった2人。くじらさんがストレートで2回戦に進むのか、タカタ先生が巻き返すのか。はたして……

*1:グロタンカット・ラマヌジャン革命・単独ジョーカーで上がってよい。

*2:せきゅーん杯では手札が20枚以上になると失格となるルールがあった。

*3:ところで、ここで同数の場合はどうするのでしょう。実際に起こったことがないので存じ上げません。

*4:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。https://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902

*5:逆は成り立ちません。たとえば.11は素数ですが2^{11}-1=2047=23 \times 89

*6:この勝負では42手目にペナルティが発生した時点で初期山札は2枚となっており、それ以降の山札から2周目に入ります。