初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

素数大富豪百本勝負(vs. もりしーさん編)

先日のnishimuraさんとの素数大富豪百本勝負の記事*1でも告知したとおり、もりしーさんとも百本勝負を行いました。その結果を前回同様まとめます。

基本情報

分析対象は2019年8月13日~14日、および24日~25日にかけて「素数大富豪オンライン」で行われた私・カステラともりしーさんとの全対戦100戦です。素数大富豪オンラインではプレーヤーが行動するたびにその記録が出力されますので、その結果を利用します。
素数大富豪オンラインでのルールは以下の通りです

先手・後手はシステム上でランダムに決定。シンキングタイムなし。1手1分、時間切れは強制パス。ゲーム全体での時間制限はなし。公式ルールとの相違点はペナルティ時に山札が無くなったときに他のプレーヤーが手札を捨てるという処理がないこと。それ以外は同じ。

全100戦のうち私が先手となったのは54戦、もりしーさんが先手となったのは46戦でした。
また、もりしーさんがツイキャスで試合経過を配信してくださったので、ここにリンクを上げておきます。

前半(8月13日~14日)
1(1本目~8本目2手目)
2(8本目3手目~18本目4手目)
3(18本目5手目~27本目)
4(28本目~43本目)
5(44本目~48本目2手目)
6(48本目3手目~50本目)
後半(8月24日~25日)
7(51本目~55本目1手目)
8(55本目2手目~65本目1手目)
9(65本目2手目~72本目9手目)
10(72本目10手目~81本目2手目)
11(81本目3手目~83本目)
12(84本目~89本目3手目)
13(89本目4手目~94本目)
14(95本目~100本目)

出された枚数

前回同様、素数大富豪数を1枚クラス、2枚クラス、……と分類し、各クラス、各プレーヤーごとに出された回数を表にしました。ここに素数大富豪数について、それを出すために場(素因数場は除く)に出す必要のあるカードの最小枚数がnであるとき、n枚クラスに属するというのでした。

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枚数別の出された回数

両プレーヤーとも、グロタンカットが属する2枚クラスやラマヌジャン革命が属する4枚クラスを中心に2~6枚クラスが多くなっています。特殊効果のある出し方(グロタンカットGC(2枚クラス、76回)、ラマヌジャン革命RR(4枚クラス、17回)、単独ジョーカーIN(1枚クラス、19回))を除いて考えると多い順に5枚クラス、3枚クラス、4枚クラス、6枚クラス、2枚クラスの順になります(nishimuraさんとのときは3→5→4→8→2の順)。

1枚クラスは52回でnishimuraさんのときと同数ですが、全体の回数が増えている(572回→727回)ことと、そのうち単独ジョーカーの占める回数が増えている(10回→19回)ことから、相対的に減った印象です。一方で初手全出しが頻発した影響で11~12枚クラスが増え、その大半はペナルティになっています。

ペナルティに関しては、私は6枚クラスで、もりしーさんは4~5枚クラスで多くなっています。意図的なペナルティ(カマトト)の場合もありますが、手札を組んだ上で余ったのを処理しようとして勘出しした結果、ペナルティを受けるという場合(いわゆる普通のペナルティ)も散見されました。私ともりしーさんとで枚数の違いがあるのは作戦の立て方の違いでしょうか? 現に私は手札が12~20枚のときの親番でうまく手札が組めないときには適当に6枚出しすることが多いように思います。できるだけ多い枚数で出したい*2けれども、7枚以上だともりしーさんに返されたときに再度返す数を用意するのが現状難しいので、自然と6枚出しになるように感じます。

出された数

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出された数

1位は前回同様ダントツでグロタンカットでした。nishimuraさんとの百本勝負のときと同様に、2枚出しを流すためのグロタンカットはなく、単に手札を減らすためのものやグロタンチェンジ、もしくは時間稼ぎといった使い方をされました。
それ以降からnishimuraさんとのときと違う傾向が現れました。

nishimuraさんとの百本勝負での出た数ランキング上位は以下の通りです。
1位(66回) 57
2位(14回) 131311
3位(10回) 13,X
5位(8回) 1729
6位(7回) 2
7位(5回) 7,11,1312,1313
11位(4回) 5,691,44123,13111211

2位はX(単独ジョーカー)。使い方としては、1枚出しを流すのと、上がる際に余って場に何もない状況で出されるのとでほぼ半々でした。
3位はラマヌジャン革命1729。特殊効果のある3種(グロタンカット、ラマヌジャン革命、単独ジョーカー)が上位3位を占める結果になりました。nishimuraさんのときには1度もなかった再革命が4回、うち3回では再々革命も起きています。

以下、

  • 13111211(4枚出し最大素数)
  • 13(1枚出し最大素数)
  • 131311(3枚出し最大素数)
  • 1313121311(5枚出し最大素数)
  • 1312(=2^5*41、2枚出し最大素数1213超え合成数)
  • 1313121011(5枚出し2番目に大きい素数)
  • 131312(=2^4*29*283、3枚出し最大素数131311超え合成数)
  • 1313(=13*101、2枚出し最大素数1213超え合成数)
  • 131312101111(6枚出し7番目に大きい素数)

と各枚数の最大クラスの素数合成数が続きます。ちなみに2枚出し最大素数1213は1回しか出ませんでした。1312や1313で返されることを警戒され1213を勝負手にするのは心細いと感じる場合が多かったからです。
このような大きな素数合成数が並ぶ中で5がランクイン。4回すべてもりしーさんの手です。1枚出ししようとしたときに奇数を使うよりは一の位にもってこれない5を使うのがよいと考えたのでしょうか。ちなみに私は4回すべてにKを返しています。Kを使うのは少しもったいない気もしますが、これで親番がとれれば今度は自分が好きな枚数出せるので勝負をこちらのペースに持ち込めるチャンスになりますし、ジョーカーを出されても、相手にジョーカーを使わせることで余裕をなくすことができます。

2、3回出された数からいくつかピックアップして紹介していきます。

  • 663589

66358Xは四つ子素数。偶数が多めなのでけっこう便利。

  • 886429

88624XがX=A,3,7で素数になる三つ子素数ですが886249(ハバロフスク)は素数ではありません(886249=7*13*9739)。しかし、偶数部分を最大になるように並べ替えてから9をつけると素数になります。

  • 9882463

もりしーさんが2回出した素数です。988246XはX=A,3,9,Kで素数になります。上のハバロフスクの並べ替え+1枚の形。
prm9973.hatenablog.com

  • 433612789,88554336119,433628121011,433612645678910111213

前回も紹介した「4336(しざさら)素数」たちです。もりしーさんの3回を含め、計14種20回出され、上記の4種が複数回出されました*3。最後のは21桁(4垓3361京2645兆6789億1011万1213)ですが、もりしーさんに1回返されてしまいました*4

  • 6789101112413

前回7からKまで並べた78910111213が素数で、その上位互換98710121311とともに紹介しましたが、6から並べた678910111213も素数で、6789101112413はそこにさらに4を挿入した素数。実は前回も2回出していました。

  • 1313101012111211

T,J,Q,Kを2枚ずつ使ってできる最大の素数。1枚ずつの場合は13101211で、これに形が少し似ています。今回の百本勝負では2回とも私が出しましたが、もりしーさんやnishimuraさんもよく出す印象。

決着までの手数

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決着までの手数

もりしーさんはnishimuraさんと比較して全出しやラマヌジャン革命などの変化を求めた作戦を多用するプレーヤーです。このような大胆な戦術をとるには、ペナルティによって手札が増えてもその大量の手札を捌ききれる多枚出しをたくさん覚えている必要があります。もりしーさんが実際に多枚出しを多く知っていることについては、第3期Mathpower杯での数譜からも窺えます*5。もりしーさんによる初手全出しは、先手となった46回のうち10回。これはnishimuraさん(初手全出し1回/先手46回)や私(vs. nishimuraさん: 6回/56回、vs.もりしーさん: 8回/54回)よりも多いです。そのうちワンターンキルが3回(79本目・8412841210117、93本目・58613123567129、100本目・8121045454861)記録されました。全出しに失敗したときにはペナルティで増えた手札を減らすのに手数を要します。その結果、百本勝負全体における各勝負の決着までの手数の平均値は8.7手でnishimuraさんとのとき(6.8手)より多くなりました。一方で、中央値は5.5手でほぼ同じ(5手)。6手以下の短期決戦は、nishimuraさんとの70本/102本よりは少ないものの、6割の60本で過半数を占め、中央値の増加への寄与は小さいものでした。

短期決着については前回の記事で紹介したパターンがほとんどでしたが、それに当てはまらないものもありました。
3手決着では初手ドローで12枚になった手札を6・6に分けて出す作戦の成功が2度ありました(もはもりしーさん、カは私(カステラ)。以下同様)。

21本目: 先手(カ)998623→後手(も)8121071113→先手71312121311#

99本目: 先手(も)887641→後手(カ)41212101311→先手91211121013#

合成数出しによる待ち伏せによる3手決着も2度成功しました。

3本目: 先手(カ)523→後手(も)544、カマトト→先手131210=2*5*13121#

77本目: 先手(も)947→後手(カ)8123→先手81211=13*6247#


個人的に珍しいと思ったパターン。

8本目: 先手(カ)57[GC]→先手57[GC]→先手X[IN]→先手86412111013#

後手に1回も手番を渡さず勝利(ワンサイドキル)。

94本目: 先手(も)5→後手(カ)13→先手X[IN]→先手141487711213#

X(単独ジョーカー)を勝負手にするもの。長期戦となって、手札が5~10枚ほどに減ってからこのパターンに入ることはありますが、初手から入るのは残り枚数の多さからほとんどありません。ジョーカーがありさえすればできるのがこの作戦の長所です。

最長は32手でした。nishimuraさんとのとき(23手)より9手長い。

44本目: 先手(カ)57[GC]→先手67891212121213、ペナルティ→後手(も)5734566810131111、ペナルティ→先手986869、ペナルティ→後手586134410591→先手43369876131011→後手パス→先手22221212121255581313997、ペナルティ→後手647→先手859→後手877→先手2129→後手101111→先手131311→後手パス→先手1729[RR]→後手パス→先手12121210109→後手446131110、カマトト→先手13488553663、ペナルティ→後手13→先手2→後手1、カマトト→先手433612645678910111213→後手パス→先手82121111→後手8810106、カマトト→先手2→後手1、カマトト→先手105=3*5*7→後手パス→先手13#

先手はグロタンカットのあと全出しするも失敗。後手も全出しして失敗。先手が6枚出しもまた失敗。後手11枚出しに先手はカウンターで再び親番もとるも、全出しはまたまた失敗。3枚出しラリーでお互いに手札を減らしたあと、親番をとった先手がラマヌジャン革命。先手が10枚出しでペナルティ*6を受けるが、手札にジョーカー2枚が揃う。そのまま先手ペースで勝ち切った。なお30手目の105はAX5|X=0の3枚出し合成数

まとめ

このたびは、nishimuraさんと102戦、もりしーさんと100戦行い、非常に有益な数譜が採れました。第3期Mathpower杯から10ヶ月たち、レベルがますます上がっていることが浮き彫りとなりました。まだまだ調べたいこと*7もありますが、取り急ぎこれで一区切りにしたいと思います。

今回対戦してくださったnishimuraさんともりしーさんに厚く御礼申し上げます。

*1:こちらからどうぞ。graws188390.hatenablog.com

*2:手札をうまく組み切れないときは往々にして手札が偶数に偏っていることが多いので。

*3:他に1回出されたのは433663、4336889、822433697、822433699、68691043363、433612121311、433625121011、43361213121011、43369876131011、43361234567891011111213。

*4:2ヶ月前はこうだったのに。

twitter.com

*5:詳細は私の過去の記事を参照: graws188390.hatenablog.com graws188390.hatenablog.com

*6:1348855336Xなら四つ子素数

*7:何か調べてほしいことがありましたら私まで。

素数大富豪百本勝負(vs. nishimuraさん編)

実に2ヶ月ぶりの更新になります。この間には蝉王戦予選リーグ、「素数大富豪で遊ぼう会in関東」の開催、「博物ふぇすてぃばる! 6」における素数大富豪ブースの運営、などなどがありましたが、まあ、これらは他の誰かが記事にしてくれる(はず)なので私は別の話を書こうと思います。

さて、毎週日曜日および毎月13日に開催されている「オンライン素数大富豪デー」ですが、8月11日(日)は21時前にログインしたところ誰もおらず、21時30分ころになってnishimuraさんが入室。nishimuraさんはオンライン素数大富豪デーの常連で、私ともよく戦っています。第3期Mathpower杯(2018年10月開催)では準々決勝で対戦いたしました*1。nishimuraさんとはそれから4時間ほどひたすら対戦を繰り返しました。その間に誰も来なかったので*2ずっと2人対戦でした。その対戦総数は実に102戦。第3期Mathpower杯で放送されたのは42戦でしたので、それの倍以上の対戦をこなしたことになります。その分の数譜が採れましたので、本稿ではその記録をまとめます。

基本情報

分析対象は2019年8月11日~12日にかけて「素数大富豪オンライン」で行われた私・カステラとnishimuraさんとの全対戦102戦です。素数大富豪オンラインではプレーヤーが行動するたびにその記録が出力されますので、その結果を利用します。
素数大富豪オンラインでのルールは以下の通りです

先手・後手はシステム上でランダムに決定。シンキングタイムなし。1手1分、時間切れは強制パス。ゲーム全体での時間制限はなし。公式ルールとの相違点はペナルティ時に山札が無くなったときに他のプレーヤーが手札を捨てるという処理がないこと。それ以外は同じ。

全102戦のうち私が先手となったのは56戦、nishimuraさんが先手となったのは46戦でした。

出された枚数

素数大富豪オンラインでは出された数はその値が出力されます。たとえばQ7もA27も同じく「127」となります。よって、今回利用する素数大富豪オンラインからの出力からはそれが何枚出しかを特定することは一般にできません。そこで、各素数大富豪数について、それを出すために場に出す必要のある最小枚数がnであるとき、「n枚クラス」であると定義し、1枚クラス、2枚クラス、……というように素数大富豪数を分類します。たとえば前述の127は(たとえ自身の記憶や前後に出された数などからA27と出されたことがわかっても)「2枚クラス」となります。同様にして128(=2^7)は(素因数場の枚数はカウントせずに)「2枚クラス」に属します。以上に留意して次の表をご覧ください。

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枚数別の出された回数

私とnishimuraさんとの間に枚数ごとの出した回数に関してはそれほど差はありません。素数大富豪は同じ枚数でカードを出していくので、そうなるのは当然なのですが。それでも2枚出しや4枚出しで差が大きいのはグロタンカットやラマヌジャン革命の出した回数の差や、上がるときの枚数*3で説明ができます。グロタンカットが属する2枚クラスが多いほかは1枚クラスから9枚クラスまで満遍なく出されています。特殊効果のある出し方(グロタンカットGC(2枚クラス、66回)、ラマヌジャン革命RR(4枚クラス、8回)、単独ジョーカーIN(1枚クラス、10回))を除いて考えると多い順に3枚クラス、5枚クラス、4枚クラス、8枚クラス、2枚クラスの順になります。
また、10枚クラス以上では私は28回(うち15回成功)出しているのに対し、nishimuraさんは11回の挑戦(うち1回成功)にとどまりました。この差は私が初手全出しを試みたり、それに失敗した後にリカバリー用の13~23枚クラスの素数を出したりしているが、nishimuraさんはより少ない枚数で堅実に勝負するという戦いかたによります。

出された回数に対する合成数出し、ペナルティの割合はそれぞれ5.1%、19.6%でした。第3期Mathpower杯での結果(4.7%、10.9%)と比較しますと、合成数出しに関してはほぼ同じですが、ペナルティは倍近くあります。素数大富豪に慣れたプレーヤー同士の対戦ですから、間違えて合成数を出してしまうことは少なくなると考えるのが自然ですが、その逆の結果となりました。ペナルティの割合が増えた理由としては一度に出す枚数が多くなったことで素数かどうかわからないまま出す機会が依然として残っていることがあります。また、カマトト(故意のペナルティ)がMathpower杯以上に積極的に行われたこともあります。とくに、合成数出しをわざと間違えて場に少ない枚数の数があるときでもその枚数以上に山札を引くことができる「合成数出しカマトト」がMathpower杯では1度もありませんでしたが、今回の百本勝負では18回を数えました。

出された数

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出された数

102戦も行ったこともあって、全部で388種もの数が出されました。うち複数回出されたのは55種。その中から回数が多いものを中心に紹介していきます。

最も多く出された数はダントツでグロタンカット57でした。全102戦のうち半分の51戦で計66回出されました。ただし、すでにある2枚出しを流すためという使い方は1度もありませんでした。これはグロタンカットによって即座に相手に親が渡ってしまうことを防ぐために、57未満の(革命時は57より大きい)2枚出しがされなかったからです。実際の使われ方は

  • 手札を完全に組み切って単に手札を減らすため
  • グロタンカットの前後でドローして手札の拡充をはかる(グロタンチェンジ)ため
  • 作戦がまとまらず時間稼ぎのため

でした。

2番目に多く出された数は3枚出し最大素数の131311。各枚数の最大クラスの素数は3枚出し以外も多く出されました。しかし、2枚出しの1213はそれを超える合成数1312=2^5*41や1313=13*101がわりと容易に揃うこと、4枚出しの13111211はそれを超える合成数がたくさんあり、合成数出しカマトトで手札を20枚以上に増やせばどれか1つでも揃うことが多くあるので、避ける場合があります。3枚出しの131311を超える合成数は131312=2^4*29*283と131313=3*7*13^2*37の2つがありますが、131312は2が最低3枚必要ですし、131313はそもそも相手に131311でKを2枚使われている上でKを最低3枚要するということで、合成数出しカマトトをしても揃わない場合が多くあります。そのため131311を勝負手とした3枚出しが多く出され、結果として131311が2番目に多く出された数になりました。

3位以降にはX(単独ジョーカー)、13をはじめとした1枚出しが相次いでランクイン。1枚出し素数は6つ(Xを入れても7つ)しかないため、1枚出しをすると必然的に同じ素数を出すことになりますから自然な結果です。

ラマヌジャン革命1729は8回で5位に入りました。実は8回すべて私が出し、nishimuraさんは1回も出していません。これは私が初手全出し失敗して手札が倍になった際に手札に絵札が少ないことからラマヌジャン革命を起こしたほうが有利と判断できる機会が多かったことが理由として考えられます。単に私が革命好きだからかもしれませんけど。

前述の1213超え2枚出し合成数1312、1313が5回ずつ出されました。13111211超え4枚出し合成数13121113=683*19211も2回出されました。

4回出され11位となった数は5,691,44123,13111211の4つ。1枚出しの5と4枚出し最大素数13111211については上でも触れましたが、残りの2つは少し異質です。691はリーマンゼータに現れる最初の非正則素数であり、44123は「QK -1213-」において吉井史(よしいふみ)が自身の名前の語呂合わせの素数として多用する素数*4ですが、素数大富豪の中では69Aと44Q3はともに並べ替え最大素数であって、44Q3が偶数消費ということくらいしか特徴がありません。691については4回とも私が出したのですが、4回とも手札を組んだ結果たまたま691が残ったように思います*5。44123は4回すべてnishimuraさんが出したので私は詳しいことはわかりませんが、1回目(40本目)と2回目(41本目)、3回目(97本目)と4回目(98本目)がそれぞれ連続した勝負で出されているので、意図的に出したのかもしれません。

他に複数回出された数からいくつかピックアップしてコメントしていきます。

  • 98710121311

7からKを順に並べた789TJQK(78910111213)という覚えやすい素数がありますが、その上位互換です。

  • 1112121211,1310101211,1312101013,1312131211,1313111011,1313121011
  • 121012101311,131012121211,131312101111

5枚10桁素数と6枚12桁素数です。どれもよく出され、かつ強い素数です。

  • 1367

K67なら素数になる唯一の並びがこれです(詰んデレセット)。A367なら革命カウンター素数

  • 24889

(2488)+奇数1枚という形の素数は8824A、88423、88427、8482Kなどとありますが、奇数が9のときは最小に並べた24889だけが素数です。

  • 96131011

私が2回出した素数で、4枚7桁最大素数9KTJに1枚追加したものです。6を「も」と読んで「キモかわいい(96KA011)」と覚えています。派生形に996131011「キグロかわいい」、9966131011「キキララかわいい」などがあります(6の読み方の変化が激しい)。

  • 98764321

987654321(3の倍数)から5を抜くと素数。他に97654321(8を抜く)、98765431(2を抜く)も素数

  • 712433611

最近私がよく出している4336(しざさら)の入った素数のひとつです。7X4336JはX=A,3,6,9,T,Qで素数になります。

  • 9101010103

9103(工藤さん)、9109(工藤くん)は知っている人も多い素数ですが、910103、910109も素数です。実は9101010103、9101010109も素数!*6

  • 4124567891011

連番に似ている形で1244567891011という素数がありますがその上位を少し入れ替えてたもの。81本目の初手で私がこれを出したところ、83本目の初手でnishimuraさんが同じ素数を出してきました。ちなみにあとで調べたところ、4124567891011を4Q456789TJとみたときの並べ替え最大奇数9876544QTJも素数のようです。

  • 8612121031013

4336(しざさら)の入った素数を出すようになる前から私がよく出していた形に下7桁が1031013(T3TA3、富田さん)の素数があります*7。最終・102本目は初手にこれを出した結果3手で決着。

決着までの手数

今回は102戦という十分な量のデータが得られたので、上がりまでにかかった手数の分布を調べてみました。

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決着までの手数

全体のおよそ7割にあたる70戦が6手以内に決着する短期決戦、そのうち26戦はたった3手で終了しています。平均手数は6.8手、中央値は5手で過去の大会と比べても非常に少ないです*8

1手目にKKJなどの最強クラスの数や絵札の多く入った多枚出しで後手に何もできない、または勘出しに頼らざるを得ない状況をつくり、後手が返すのに失敗したら、残り手札をすべて出して上がることで3手決着が実現します。たとえば

3本目: 先手(n)1312=2^4*2*41→後手(カ)パス→先手8121011#

6本目: 先手(n)131311→後手(カ)パス→先手98762243#

13本目: 先手(カ)8101349623→後手(n)727213111211、ペナルティ→先手56113#

66本目: 先手(n)9867412131011→後手(カ)パス→先手367#

というようになります(nはnishimuraさん、カは私(カステラ)。以下同様)。
なお1度だけ記録されている3手での後手勝ちは

84本目: 先手(n)57[GC]→先手10121212477889、ペナルティ→後手(カ)962312481112139#

によるものです。先手はグロタンカットのあと全出しするが失敗。後手も全出ししこちらは成功。

4手決着は上記の3手決着にグロタンカットが絡んだもの(先手勝ち)や、3手決着を狙った先手の初手多枚出しに対し後手がカウンターし、以下先手パス→後手残り全出しで上がり(後手勝ち)というパターンが多いです。また、初手ドローしてグロタンカットすれば残り10枚になりますからそれを5・5に分ける戦法もあります。後手は手番がはじめて回ってきた際には場に5枚、相手の残り手札5枚であることから返す数が小さいと相手に上回れて負けてしまいます。たとえ絵札を温存しておきたくてもそれができないので、この戦法は後手に相当なプレッシャーをかけることができます。

44本目: 先手(n)57[GC]→先手87223→後手(カ)96131011→先手411121213#

56本目: 先手(カ)1312=2^5*41→後手(n)パス→先手57[GC]→先手81013#

95本目: 先手(カ)45567891011→後手(n)964712101211→先手パス→後手12713#

5手決着は

14本目: 先手(カ)8761→後手(n)891113=112345*57、カマトト→先手13111211→後手パス→先手7433#

のような「4・4・3戦法」(この例ではドローしているので4・4・4)が2017年末からありましたが、出された数の項で述べたように初手の4枚出しに対し、後手は合成数出しカマトトによって手札を倍増させ、13111211超えの合成数出しを狙うようになったので、先手としてはこの戦法をとりづらくなってきました(上のケースは合成数カマトトしても13111211超えの合成数がつくれなかったものです)。それでも5手決着が多いのは3手・4手決着のパターンにグロタンカットが絡んだケースによるものです。初期手札11枚をたった2回に分けて出し切るのは難しく、グロタンカットがあるときには積極的に利用して5手決着となることが多いです。他には次のような展開がみられました。

40本目: 先手(n)89→後手(カ)98=1212*24678910、カマトト→先手1313=13*101→後手パス→先手44123#

先手の勝負手はKK合成数出し。後手カマトトも意味なし。

70本目: 先手(カ)1729[RR]→後手(n)パス→先手14=2*7→後手パス→先手3131311#

先手の初手ラマヌジャン革命に対しAを持っていない後手は何もできなかった。

85本目: 先手(カ)877312101113、ペナルティ→後手(n)593257、ペナルティ→先手43361210145678910111213→後手12335577891010111112121313、ペナルティ→先手487#

互いにペナルティを受けたあと18枚出し。3手目からは3手決着のパターン。

6手決着は上記の3~5手決着にさらにグロタンカットや単独ジョーカーが絡んだもののほかに、先手にミスが出て、後手がそこを突いたケースがあります。6手で後手勝利が9回も記録されたのはこのためです。

49本目: 先手(n)136779、ペナルティ→後手(カ)211→先手1312=41*2^5→後手1313=13*101→先手パス→後手81049#

先手が初手ペナルティ。後手は仮に自分が先手であればほぼ勝ち確定手札だったのでそのまま順に出して勝利。

91本目: 先手(カ)6789101112413→後手(n)パス→先手5→後手12=2*2*3→先手パス→後手431212101013#

先手は初手9枚出しで手札を一気に減らしたものの、詰めが甘く残り1回で上がれるように手札を残すことができなかった。仕方なく1枚出しするが、そこから後手が主導権を奪い勝利。

7手以上になる場合は(カマトトを含む)ペナルティが何度も行われたときが多いです。先手が初期手札11枚からすぐに勝ちにいける場合でその思惑どおりに進んだ場合はたいてい6手以内で終了します。そうでない場合は全出しを敢行したり、1枚出しで様子をみたり、ドローして12枚になった手札をとりあえず6・6に分け、6枚を勘出ししたりといろいろ試みます。一度主導権を取られてしまうと取り返すは困難なので、カマトトによって手札を増やし強い数を出せる可能性を上げることで、相手の思い通りにさせないようにします。今年に入ってからカマトトによって大量に増えた手札を捌ききれるよう多枚出しが研究され、手札が20枚を超えても以前ほど苦にならないようになりました。そうした結果、ペナルティによって手札が増えてしまうデメリットが小さくなり、カマトトが頻発するようになりました。

97本目: 先手(n)4343812106123、ペナルティ→後手(カ)8849→先手44123→後手13111211→先手13121113=683*19211→後手パス→先手57[GC]→先手9813121013→後手パス→先手73#

先手は初期手札が芳しくなく勘出しするも失敗。後手は13111211を勝負手とするオーソドックスな4枚出しで攻めるも、先手の13111211超え合成数に阻まれる。その後、先手が残りの手札を出し切り勝利。

全102戦の中で最も手数がかかったのは23手でした。

29本目: 先手(カ)67→後手(n)1010=11123*13899、カマトト→先手57[GC]→先手642121110133、ペナルティ→後手98443→先手651253、ペナルティ→後手98223、ペナルティ→先手433612645678910111213→後手223677788999101010111111、ペナルティ→先手51251251211、ペナルティ→後手2487=829*3→先手5555=12121212*33*44、カマトト→後手7→先手X[IN]→先手1729[RR]→後手パス→先手131012121211→後手346278、カマトト→先手6654547→後手1246777、ペナルティ→先手13488553361→後手12345678967、ペナルティ→先手8221#

先手は1312=2^5*41を勝負手とするため2枚出し67から切り出すが、後手はそこに合成数出しカマトト。1313=13*101を警戒した先手は2枚出し作戦を断念し全出しするも失敗。その後先手が433612645678910111213から一気に勝負を決めにかかるも上がりきれず、合成数出しカマトトで再び手札を増やす。手札のAが4枚になった先手は手番をとったところでラマヌジャン革命を起こし、多枚出しを繰り返して手札を減らしていく。今度こそ出し切って勝利をものにした。

まとめ

以前の記事(【第3期Mathpower杯】データ分析)では、第3期Mathpower杯全体を通じてのまとめとして、何枚出しが多いかを見て全体の傾向をつかむのが難しくなったこと、出される数の種類が大きく増え、出された数全体の大半が1回のみ出された数であることなどを述べました。今回の百番勝負ではそれらが顕著な特徴として現れました。
また、今回初めて上がりまでの手数の分布について調べましたが、「先手→後手→先手」という3手決着をはじめとした超短期決戦が非常に多くなりました。私自身は先手番のときは、できるだけ早く決着するように手札を組んでおりました。早く決着するということはそれだけ相手に手番がまわる回数が少ない、すなわち相手に親をとるチャンスを与えないことになります。超短期決戦は先手が先手番というアドバンテージを最大限に生かした戦い方です。とはいえ、まだ超短期決戦の組み方がいつでもできるわけではないので、ときには全出ししたりしています。中途半端に出して安易に相手に手番を渡すよりは、手札が倍増してもよいから強い素数が揃う可能性を上げて相手が攻めづらい状況をつくったほうがよいと考えて、私はしょっちゅう全出しを敢行しています。

nishimuraさんとの百本勝負のあと、もりしーさんとも百本勝負を行うことになりました。8月13日22時から3時間半かけて50本消化しました。もりしーさんがその経過をツイキャスで配信してくださいましたので、ここにリンクを上げておきます。
1(1本目~8本目2手目)
2(8本目3手目~18本目4手目)
3(18本目5手目~27本目)
4(28本目~43本目)
5(44本目~48本目2手目)
6(48本目3手目~50本目)
残りの50本は8月24日22時より行う予定です。それが終わったらまた記事を書こうと思います。お楽しみに!

*1:試合の詳細はこちらの記事にまとめました。 graws188390.hatenablog.com

*2:ときどき入室はあったのですがすぐ退室してしまいました。

*3:たとえば、私が2枚出しで上がった回数は11回であるのに対し、nishimuraさんは4回でした。

*4:「QK -1213-」第20話参照。

*5:たとえば30本目は先手のnishimuraさんが5枚出し失敗で迎えた私の手番、初期手札(AA2569TTJJX)。TJT=2*5*XJA|X=Tを勝負手とすると残りは69Aになります。実際69A→nishimuraさんカマトト→TJT=2*5*XJA|X=T#で勝利。

*6:参考:

twitter.com

*7:参考:

twitter.com

*8:過去3回のMathpower杯では平均手数は第1期から順に21.8手、10.0手、10.7手、中央値は18手、9手、7.5手でした。

「素数大富豪トーナメント」が開催されます!

タイトルの通り、「素数大富豪トーナメント」が開催されます。現在、参加者を募集しているそうなので、当ブログで(勝手に)宣伝させていただきます。

素数大富豪トーナメントとは?

これまで素数大富豪の大会はMathpower杯(2016年より、過去3回開催)、せきゅーん杯(2018年)とありましたが、ともに事前に参加者を募り、互いにテーブルに向き合って勝負するという形式で行われました。一方で、素数大富豪トーナメントでは「素数大富豪オンライン」を使ったオンライン対戦で試合を行います。オンライン対戦なので

  • 大会の会場に向かう必要がなく、素数大富豪オンラインにログインできる環境があればどこででも参加できる
  • 実際に顔を合わせる必要はないので、顔出しNGの方も気兼ねなく参加できる
  • 素数判定やタイムキーパーなどはシステム上で自動で行われるので素数判定員がいなくても対戦するプレーヤーのみで試合ができる

などのメリットがあります。今までよりもずっと気軽に参加できる大会となっています。

大会概要

大会の概要については素数大富豪トーナメントtwitterアカウント(@prime_meeting)およびブログ(素数大富豪トーナメント短信)にてアナウンスされます。一部発表されていない箇所があるので、発表され次第更新していきます。

  • 大会名は「第1期蝉王戦(せんおうせん)」
  • 同時対戦人数は2人。
  • 大会は7月よりスタート。大会全体で約3ヶ月かかる見通し。
  • 参加資格は人間であること。自作のプログラムの使用や他者からの助言を受けながらの参加は禁止。
  • エントリー締め切り後、抽選により参加者を2組に分け予選リーグを行う。各組上位4名が決勝トーナメント進出。
    • 予選リーグは各プレーヤーが同じ組に属する4人のプレーヤーと対戦(2本先取)を行い、勝ち数によって順位が決定する。
    • 決勝トーナメントは予選リーグ通過者8名によるノックアウト方式
  • 対戦するプレーヤー同士でスケジュールを調整し試合を行う。対戦後、結果を報告する。
  • ルールは素数大富豪オンラインでのルールに依る。先手・後手はシステム上でランダムに決定。シンキングタイムなし。1手1分、時間切れは強制パス。ゲーム全体での時間制限はなし。公式ルールとの相違点はペナルティ時に山札が無くなったときに他のプレーヤーが手札を捨てるという処理がないこと。それ以外は同じ。
  • (試合中に素数判定アプリを参照する、素数Tシャツを着用する*1など)不正行為は禁止(オンライン対戦のため不正があったかの判定が困難なので、各プレーヤーの良識にゆだねられる)。

参加方法

下記の参加フォームにてエントリーを受け付けています。締め切りは6月30日(日)です。(追記: エントリーは締め切られました。)
docs.google.com

その他

素数大富豪トーナメントは素数大富豪オンラインを使用した初の大会ですので、これを機会に初めて素数大富豪オンラインを利用するプレーヤーもいることでしょう。初めてのプレイでも(素数大富豪のルールを知っていれば)操作方法はそれほど複雑ではありませんが、大会前に一度ログインして操作に慣れておくとよいかと思います。もりしーさんがYouTubeに操作方法を解説した動画を公開しておりますのでこちらもあわせてご覧ください。
www.youtube.com
また、実際にログインしても他にプレーヤーがいるとは限りませんので、ご友人などとスケジュールを調整してログインしたり、素数大富豪オンラインのログインがあったことをツイートするtwitter-bot(@primedaifugobot)をチェックしたりするとよいでしょう。また、毎週日曜日19時から、および毎月13日21時から「オンライン素数大富豪デー」として定期的に素数大富豪オンラインで素数大富豪をプレーしております。次回のオンライン素数大富豪デーは6月30日(日)です。素数大富豪トーナメントのエントリー締め切り日でもありますので、まずはエントリーして、そして素数大富豪オンラインにログインして素数大富豪を存分に楽しもう!

謝辞

このたび素数大富豪トーナメントを企画していただきましたなきゃのさんに感謝いたします。また、素数大富豪オンラインを開発されたpermilさんにも厚く感謝を申し上げます。

*1:公式ルールに「素数Tシャツを着てはならない」と明記されています。参照: integers.hatenablog.com

【第3期Mathpower杯】データ分析

第3期Mathpower杯のすべての試合の解説を終えました。最後に大会全体を通しての傾向を見ることで解説を締めくくることにします。分析は前期(第2期・2017年)のMathpower杯を分析した昨年1月のもりしー氏の記事prm9973.hatenablog.com
に倣いました。

基本情報

分析対象は放送された全試合(13試合・42勝負)です*1

  • 1回戦(2試合・4勝負)
  • 2回戦(4試合・10勝負)
    • もりしー-くじら 解説
    • せきゅーん-キグロ 解説
    • カステラ-ジャッカル 解説
    • onewan-白くま 解説
  • 準々決勝(4試合・18勝負)
  • 準決勝(2試合・7勝負)
  • 決勝(1試合・3勝負)
    • もりしー-カステラ 解説

また、比較として前期(第2期・2017年)のMathpower杯のデータを参照します。分析対象は同じく放送された全試合(11試合・27勝負)です。元データは上述の記事と同じですが一部修正しています。

修正箇所

  • 2回戦・風巻-鰺坂もっちょ戦2本目1手目5Q=2^3^3を合成数出しとしてカウント(本来は誤りであるがペナルティがなく試合が成立しているため採用)
  • 同じく2手目6Q(ペナルティ)を追加
  • 決勝・みうら-もりしー戦1本目2手目8763(ペナルティ)を8765(ペナルティ)に訂正

出された枚数の変化

まず出された枚数の傾向の変化を見ます。
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第2期では3枚出しが最も多く、2回戦以降は出された手の半数が3枚出しでした。一方、第3期Mathpower杯を通じて最も多く出されたのは意外にも2枚出しでした。2枚出しが増えた要因として1回戦のタカタ先生-くじら戦で2枚出しが大量に出された(2人で44回)ことや、グロタンチェンジ*2の出現によりグロタンカットの回数が増加した(第2期6回→第3期20回)ことがあります。また、4枚出しが3枚出し並みに多く出されるなど出される枚数が分散した結果、3枚出し以上で突出した枚数が現れなかったことも原因の一つです。第2期は5枚出し以上がほとんどありませんでしたが、第3期では5枚出しのみならず、6枚出し、7枚出しも相次いで出されました。
合成数出しは4.7%で第2期(4.9%)とほぼ変わらず。ペナルティは10.9%で第2期(6.8%)より増えています。前述のタカタ先生-くじら戦でのペナルティが11回を数えたことに加え、後半の試合でも手札補充のための故意のペナルティ(カマトト)が多用されたことが原因です。

出された数について

出された数を回数ごとにまとめました。出されたすべての数を入れたため文字が大変小さくなっておりますので、クリックで拡大してからご覧ください。
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第3期Mathpower杯で最も多く出された数はグロタンカットの57(20回)でした。以下1213(14回)、11(10回)、13(9回)と1~2枚出しの素数が続きます。次いで3枚出し最大素数131311が5と並びランクイン(6回)*3。4枚出し最大素数13111211も5回出されるなど、3枚出し・4枚出しの最大クラスの素数が多く出されました。その中でもより大きな素数が好まれたためでしょうか、131011(5回→2回)や121013(4回→2回)は回数を減らしています。1回のみ出された素数の個数は実に108個。第2期(60個)と比べると1.80倍で、素数の出された回数の増加(169回→263回:1.56倍)を考慮しても増えていますし、素数ひとつひとつの桁数が多くなっていることから表ではさらに増えたように見えます。
第2期で出された最大の素数は246810121でしたが、第3期ではそれを超える素数は18回出されており、億レベルの素数が常用されつつあることが窺えます。5枚10桁素数や6枚12桁素数といった実用的にも強力な素数の他、もりしー氏の「35億素数」(3512121281)、OTTY氏の「81210四つ子素数」(812102124133,812102124139)が出されました。

プレーヤーごとの集計

プレーヤーごとに出された数をまとめてみました。ベスト4の他に参考としてくじら氏と前期のもりしー氏を加えています。
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(※「GC,RR,IN」はグロタンカット(Grothen-Cut)、ラマヌジャン革命(Ramanujan Revolution)、ジョーカー1枚出し(INfinity)を意味します)
傾向としては、グロタンカット57の登場回数の多さ、そして出される数の種類の多さが見られます。合成数出しは64=2^6,5Q=2^9などの使いやすい2冪やKQ=2^5*4Aや48828Q5=5^Jなどの勝負手となりうる合成数出しが出されていますが、回数は少なめです。
出した枚数については5枚出し以上を繰り出すプレーヤーが複数現れましたが、2~4枚の比較的少ない枚数の数も依然として多く出されています。
プレーヤーごとに次のような特徴を見られます。

  • もりしー氏: 2~4枚出しを多く使うが多枚出しに対するカウンター力を備えている。そのためかパスが極端に少ない。グロタンカッター*4
  • カステラ: 2枚出しから7枚出しまで満遍なく出しており戦術の幅が広い。
  • マモ氏: 4枚出しを中心とした手堅い展開を得意とする。
  • キグロ氏: 2~3枚出しのラリーが主な戦法。時折合成数出しで一気にカードを消費する。
  • くじら氏: 1~2枚出しをメインとした戦法。2冪の合成数出しを好む。
  • もりしー氏(第2期): 3~4枚出しを繰り出す。当時のダークホース。

まとめ

昨年のもりしー氏の記事によれば第1期は2枚出し最盛期、第2期は3枚出し最盛期とのことなので第3期は4枚出しか? と思いきや、5枚出し、6枚出しも多く出され、もはや枚数によって全体の傾向を表現することにある種限界が訪れたようです*5。出される素数の種類は飛躍的に増加し、1回のみ出された素数が出された素数全体の7割以上を占めています。素数大富豪で出せる素数はまだまだたくさんありますからこれからもそのレパートリーは増えていくことでしょう。
戦術については、3枚出しのラリーは言わずもがな、4枚出し、5枚出しの出し合いも見られました。かつては5枚出しでもすれば相手は返せる素数を知らないので親を維持したまま手札を一気に消費できていましたが、第3期Mathpower杯では3枚出しと同じようにラリーの構成要素という扱いになりました。一方で、合成数出しを主体とした戦術は、2回戦・せきゅーん-キグロ戦・1本目におけるキグロ氏の48828Q5=5^Jを除いてほとんど見られませんでした。合成数出しについてはいまだ使いこなせるプレーヤーはいないようです*6

お知らせ

北海道ではすっかりおなじみの「素数大富豪で遊ぼう会」がついに関東でも開催が決まりました!! 記念すべき第1回は5月12日(日)13:00より、赤坂TKビルにて開催されます*7。奮ってご参加ください! 私も参加いたしますのでよろしくお願いいたします。

twitter.com
参加フォーム:
connpass.com

さらに、5月23日(木)に素数大富豪が考案されてちょうど5年になります! しかもこの日付20190523は令和になって初めての素数の日付であり、途中から読んでできる数(0)190523,90523,(0)523,23,3がすべて素数という大変珍しい性質を有しています。当日は素数大富豪をプレイして5周年をお祝いしましょう!*8

twitter.com

*1:こちらからタイムシフト視聴できます。12:20:21~18:58:53live2.nicovideo.jp

*2:手番をもったときに場に何もないときに使えるテクニック。グロタンカットの前後にドローすることで手番を維持しながら手札を補充する。

*3:131311は4人で合わせて6回(もりしー2、キグロ2、カステラ1、onewan1)出されているのに対し、5はタカタ先生が1人で6回出しています。

*4:元ネタはこれ。nisei.hatenablog.com

*5:実はせきゅーん杯が4枚出し最盛期だった。せきゅーん杯を分析した記事はこちらより。prm9973.hatenablog.com

*6:合成数出しについては昨年12月に記事を書きました。 graws188390.hatenablog.com

*7:TK(1013)は素数!

*8:Q. 具体的にどうやってお祝いするんですか? A. 素数大富豪オンラインにログインしてみてください。私がいるかもしれません。

【第3期Mathpower杯】決勝 もりしー-カステラ

昨年の10月から半年に亘り解説してきた第3期Mathpower杯もいよいよ決勝戦*1。壇上には5分ほど前までキグロさんとの準決勝を戦っていた私・カステラ*2が赤の席、もりしーさんが青の席。素数判定員は三重積さんです。この試合でもりしーさんが勝てば大会史上初の連覇、私が勝てばこちらも史上初となる2冠です。
対戦を前にそれぞれ一言。
カステラ「予想はしていたのですけど、もりしーさんと当たってしまったなっていう感じです。優勝を獲るにはもりしーさんを倒さないといけないので、全力を尽くして頑張りたいと思います」
もりしーさん「せきゅーん杯ではカステラさんに敗れて残念ながら(上位に)駒を進めろことができなかったということもありましたので、対戦しても手ごわい相手なのですけど、ここは2連覇に向けていい勝負をしたいなと思います」
じゃんけんの結果、1本目はもりしーさんが先手、私が後手となりました。ちなみにもりしーさんは最初のじゃんけんはこれで3勝1敗と勝ち越し、逆に私は4戦全敗ですべて後手スタートです*3。解説は鰺坂もっちょさん、みうらさん、タカタ先生。

1本目(18:38:21~18:43:21*4 )

初期手札も:(2245679TTKX) カ:(236678TJKKK)
もりしーさんには絵札がジョーカーを含めて4枚のまずまずの初期手札が入りました。偶数が多めで、多枚出し向きの手札です。私の初期手札は絵札5枚。Kが3枚あり、KKJのある3枚出しが理想の展開ですが、どうなるか。

1.も:D(J)46229
2.カ:D(3)76633,P(A678X)
もりしーさんはドローし、Jを引きます。絵札が5枚になったもりしーさんは46229と5枚出し。私は初期手札で作れる最大の5枚出し8JKKKを用意し、残りの手札でいったん小さめの5枚出しをしてもりしーさんの様子を見ようとしました。初期手札から8JKKKを除いた(23667T)でできる5枚出し素数を覚えていなかったのでドローしますが、引いたのは3。知っている素数が作れるカードではなかったので*5、自力で素数判定して出すことにします。焦るあまり3の倍数を出してしまっては興ざめですから*6、これは間違いなく3の倍数ではないといえる組み合わせ、すなわち四つ子素数の「幹」をとります。「幹」とは(5,7,11,13)を除く四つ子素数における十の位以上の部分(たとえば82Xにおける82の部分)のことをいいます*7。「幹」を3で割った余りは1になることが簡単にわかりますので、とくに3の倍数ではありません。 (33667)は四つ子素数73636Xの「幹」を構成する組み合わせ。うまく並び替えれば素数になるかもしれません*8。時間が押し迫っていたので最大の76633を出しましたが、判定は合成数(76633=197*389)。ペナルティとして5枚受け取ります。ジョーカーを手に入れ5枚出し最大素数KKQKJや6枚出し最大素数KKKKTJが出せます。5枚出し攻勢を仕掛けてきたもりしーさんにとっては用意していた勝負手が上回られる可能性が上がったので、決してデメリットだけではないペナルティだったと思っていました。
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3.も:57[GC]
ところが、もりしーさんはグロタンカット57を持っていました。私が46229に返せていたとしたら用意していた5枚出しの勝負手を出し、最後に57で上がり*9、返せなければ57[GC]→(勝負手)と出して手番を渡さずに上がるという二段構えの戦略。

4.も:KTTXJ|X=Q#
最後に出したのはKTTXJ|X=Q。5枚出しでの大きさは10番目ですが、(TJQK)にTを加えた5枚でできる最大の素数で覚えておきたい素数。これでもりしーさんが上がり。

1本目はもりしーさんが鮮やかな5枚出し攻勢で勝利。

2本目(18:44:36~18:48:56)

初期手札カ:(246689TKKKX) も:(A23457TJJKX)
私の初期手札にはまたもKが3枚入っています。1桁カードが偶数ばかりですが、864629が素数です。これはせきゅーん杯・決勝(カステラ-マモ)の1本目、1手目にマモさんが出した素数246689の上位互換として知っていた素数でした*10。残り5枚で勝負手を作って出す→もりしーさんが出せずにパス→864629で上がり、という短期決着を狙います。もりしーさんは絵札5枚の初期手札でこちらもよい印象。KX=2^5*4A|X=Q、KXJ|X=K,KJXJ|X=Qに加え、ラマヌジャン革命に対するカウンター(A423,A573=J*J*Kなど)もあるという万能の初期手札です。

1.カ:KXTKK|X=Q
2.も:KXJTJ|X=K
3.カ:%
私の初期手札から864629を除くと(TKKKX)。これでできる5枚出しを探します。30秒ほどかけた後KXTKK|X=Qを出します。5枚出しとしての大きさは6番目ですが、それより大きな5枚出しはKが1枚以上、KQJJJ以外なら2枚以上必要です。しかもそのKは私が3枚使ったので残り1枚、ジョーカーも残り1枚です。もりしーさんがその残り2枚を持っていて、さらに5枚出しができるだけの他の絵札も持っているとは考えにくい。KXTKK|X=Qはほぼ通るだろうと思っていました(後で計算したところ、この状況で私から見たもりしーさんが返せる確率は3.06%、ドローしても4.56%でした)。ところが、もりしーさんは残り1枚のK、残り1枚のジョーカーを両方持っており、他に絵札3枚で返せる状態。満を持してKXJTJ|X=K ! あるの~~~
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4.も:57[GC]
もりしーさんは残り6枚ですが、1本目に続いてグロタンカット57があります。まずはこれを出して残り4枚に。

5.も:A423#
4枚4桁はもりしーさんにとっては朝飯前のことでしょう*11。A423で上がり、もりしーさんが2連勝。

5枚10桁の出し合いに打ち勝ち、もりしーさんが勝利。優勝に王手。

3本目(18:50:39~18:55:24)

初期手札カ:(34568TTJJKK) も:(245579JQQKX)
私には絵札6枚の初期手札が入りました。3枚出しで4番目に大きな素数KTJ(KA011とみなして「かわいい」)が2組ある形で、並べ替えてできる最大の素数はKTTJKJ。しかも残り5枚は86453で素数。さすがにもりしーさんも絵札を6枚持っているとは考えづらい(後で計算したところ、この状況で私から見たもりしーさんが返せる確率は2.40%、ドローしても4.11%でした)ので、今度も短期決着を狙います。対するもりしーさんも絶好の初期手札ですが、6枚12桁を出すには1枚絵札が足りません。とはいえ、これは言い換えればドロー次第では6枚12桁素数が揃う可能性がある*12ということなので、まだもりしーさんには反撃の余地が残されています。恐ろしや……

1.カ:KTTJKJ
2.も:D(X)XKQQXJ|X=K|X=T
3.カ:%
私はシンキングタイムが終わるとすぐにKTTJKJを出します。続いてもりしーさんの手番。ドローの結果はなんとジョーカー! XKQQXJ|X=K|X=Tと出してカウンター成功です*13

4.も:57[GC]
もりしーさんの手札にはまたまたグロタンカットがあります。これを出して残り4枚。

5.も:4259#
会場の方を見てホール、解説ルーム、および視聴者全員の注意を引くもりしーさん*14。ゆっくりと、そして勝利を確信するようにカードをとり並べ替えます。そして出したのは4259。これは素数で、もりしーさんが上がり。もりしーさんのMathpower杯2連覇が決まりました。
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勝戦はもりしーさんが3連勝で見事優勝。おめでとうございます!!

試合終了後、タカタ先生からのインタビュー。
もりしーさん「嬉しいです!!」
カステラ「僕は全力を尽くしたので、もりしーさんをいっぱい褒め称えてやってください!」
そして、優勝したもりしーさんには素数大富豪の考案者・せきゅーんさんより『素数表 150000個』をはじめとした暗黒通信団の書籍5冊が贈呈されました。
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講評

勝戦は終わってみればもりしーさんの3連勝となりました。
1本目はもりしーさんの1手目・46229が最高の着手でした。先手が手札を完全に組み切って1手目を出したとき、後手は手なりのまま出すと先手に勝負手を出されそのまま上がられてしまいますから、カマトトして手札を増やし先手の勝負手に返せる可能性を高めるという戦略があります*15。先手にとって、この後手のカマトトは非常に厄介です。たとえば、もりしーさんから見て46229を出したときの勝負手KTTXJ|X=Qが返される確率は18.7%ですが、私のドローおよび5枚のペナルティのあとでは49.2%に上がります*16。これに対する先手の対策としては、後手にカマトトされた際にも上がれる戦略を用意しておくことです。実戦の57[GC]→KTTXJ|X=Qのようにグロタンカットを残しておいたり、75KXTTJ|X=Qのように残りのカードをすべて使って作れる素数を覚えておくという手もあります。前者は比較的簡単にできますが、初期手札で57を持っていないとできないという欠点があます。後者の方法は57を持っていない場合でも応用ができますが、そのためには大量の素数を覚えておく必要があります。
2本目は私の1手目KXTKK|X=Qが非常に惜しい手でした。確かにKXTKK|X=Qはこの5枚で出せる最大の素数ではあるのですが、上に記した通りわずか(4.56%)ですが返される可能性がありました。これはKK=K*TX|X=Aと合成数出しできる組み合わせでした。KKには返す手段がまったくありませんので、返される可能性はゼロです。この違いが2本目の勝負の行方を大きく左右することになりました。KXTKK|X=QとKK=K*TX|X=A、数としての大きさは100万倍ほど異なりますが、素数大富豪においてKKの合成数出しは絶対に返されることのない最強の1手なのです。ところが、直前にもりしーさんに完璧な試合運びで敗北していること、初期手札が絵札5枚でよかったこと、手持ちの1桁カード6枚で知っている素数が作れること、Mathpower杯の決勝の舞台で多くの方々から注目を受けていること、などなど、さまざまな要素が緊張や焦りという形となって私に押し寄せてきました。できるだけ大きな素数を出してもりしーさんを圧倒しよう、それだけしか考えることができませんでした。奇しくもこの状況は第1期Mathpower杯・決勝・4本目の鰺坂もっちょさんの状況に酷似しています。www.ajimatics.com
3本目も2本目の状況にそっくりです。初期手札は絵札は6枚、1桁が5枚。それぞれ絵札同士、1桁同士で素数が作れます。2本目と違う点はKKのような絶対的な着手が存在しないことです。実戦のKTTJKJはわずかながら返される可能性がありましたし(そして実際に返された)、3枚出し最大素数KKJを勝負手にTT3→KKJ→8645Jと組んでももりしーさんに先にKKJを返される可能性がありました。3本目に関してはKTTJKJが最善手だったと(今でも)思っています。まさかあの場面でもりしーさんがジョーカーをドローして返してくるとは思いもしませんから……
こうして振り返ると「もりしーさん、運が強すぎる」と思うことがあります。確かに、過去の数譜を見ると、ここぞという場面でキーとなるカードを引くといった状況が何度も起こっています。この決勝でも9割以上通るであろう素数にカウンターを2度も成功させています。もはや恨みたくなるような強運ですが、それを責めるのはお門違いというものです。なぜなら、私がせきゅーん杯で優勝できたのは運がよかったということもその理由の一つに挙げられるからです。たとえば、決勝(vsマモさん)の1本目は絵札がジョーカー2枚を含む7枚という初期手札でしたし、実は準々決勝(vsもりしーさん)の3本目もそうでした。現在の大会のルール(2本ないし3本先取のトーナメント方式)上、運という実力とは独立した要素が勝敗を分ける要因の一つになりうるのは仕方がないことです。せっかく素数をたくさん覚えても手札が芳しくなくて勝てないということもあります。しかし、その逆の手札がよかったからあまり素数を覚えていなくても勝てた、適当にカードを並べて全出ししたら偶々素数だったということもまた真です。素数大富豪は決して暇を持て余した神々の遊びに終わってはいけませんし、それで終わらせてはなりません。私は今日も新たな素数に出会い、来るべき大会に向けて精進いたします。もう一つお知らせがありますが、それは最後に。
さて、ウイニングプライム4259についてその特徴を調べてみました。素数大富豪においては4枚4桁素数で並べ替え最大(他に2459,2549が素数)。奇数1枚に対し偶数を3枚消費する偶数消費型の素数です。他には4261と双子素数、4253とセクシー素数であり、左切り取り可能素数の総数でもあります(素数2を除いていることに注意)*17。それから東京工業大学すずかけ台キャンパスの所在地に現れる素数です(神奈川県横浜市緑区長津田町4259)*18
最後に、ブログの執筆のために動画を見直した際私はどうやら試合中にポーカーフェイスをするのが苦手なようで、初期手札の良し悪しによってシンキングタイム中の表情がだいぶ異なることに気づきました。もりしーさんのクールな姿勢と対照的に私のリアクションがオーバー気味でした。表情で手札が読まれてしまうのは素数大富豪には限らずカードゲームでは欠点になりそうですが、このようなプレーヤーが多少なりともいたほうが視聴者側にとっては盛り上がるのではないかと思うのですが*19、いかがでしょう?

決勝の数譜です。意外と短い(4手、5手、5手)。

1本目
も:(2245679TTKX)
カ:(236678TJKKK)
も:D(J)46229
カ:D(3)76633,P(A678X)
も:57[GC]
も:KTTXJ|X=Q#


2本目
カ:(246689TKKKX)
も:(A23457TJJKX)
カ:KXTKK|X=Q
も:KXJTJ|X=K
カ:%
も:57[GC]
も:A423#


3本目
カ:(34568TTJJKK)
も:(245579JQQKX)
カ:KTTJKJ
も:D(X)XKQQXJ|X=K|X=T
カ:%
も:57[GC]
も:4259#

以上で、第3期Mathpower杯の解説をすべて終えました。私のブログの更新頻度が遅いせいで、放送された全13試合42勝負を扱うのに半年もかかってしまいました。この間に素数大富豪アドベントカレンダー2018、オンライン素数大富豪デーの始動、各大学での素数大富豪サークルの発足など素数大富豪界もさらなる広がりを見せています。まだ公式の発表はありませんが、10月には次期のMathpower杯が開催されますし、いずれ第2期せきゅーん杯(私にとっては防衛戦!)も行われることでしょう。10月まではまだ半年ほどありますから、これからの頑張り次第では大会で勝ち進むことのできる実力を身につけることができます。現に、もりしーさんは素数大富豪を始めて半年で第2期Mathpower杯を制しました。当ブログは次の大会の開催までは、素数大富豪の戦略や素数の覚え方など、素数大富豪に強くなるための情報を不定期ながら発信していくつもりです。今後とも「初代素数王の備忘録」をよろしくお願いいたします。

お知らせ

4月27日(土)・28日(日)に幕張メッセで開催される「ニコニコ超会議2019」において素数大富豪が体験できます! 私もスタッフとして参加するので、私と対戦できるかも? さらに今回は対戦パズルゲーム「ゴドマチ」も体験できますよ!
chokaigi.jp
godomachi.net

*1:実際のMathpower杯も開始からここまで6時間経っています。

*2:正直に言うと少し休みたかった……

*3:もっと言うと、私はせきゅーん杯でも決勝トーナメントはすべて後手スタートでした。大会中のじゃんけんでは7連敗中。

*4:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*5:当時作れそうだったのはAを引いて672A3(6721Xは四つ子素数)、2を引いて62627、5を引いて66523、7を引いて77263(7726Xは四つ子素数)など。

*6:実はせきゅーん杯の準決勝で3の倍数(612813)を出しています。詳しくはこちら。mathingnow.hatenablog.com

*7:「幹」という用語はこの記事だけのものです。

*8:7222Xのような「幹」がどう並べ替えても素数にならない四つ子素数もわずかですがあります。

*9:通常の「大富豪」では「8切り」の効果を持つ8で上がってはいけないというルールが採用されることがありますが、素数大富豪では上がりに関する制限は基本ルールでは設けられておりません。

*10:せきゅーん杯決勝の詳細についてははなぶさんの記事を参照。mathingnow.hatenablog.com

*11:この試合が行われたのは午前6時50分ころ。こちらも朝飯前。

*12:KTTJKJに返すにはT,Q,Kのどれかである必要があります。JだとQKQXJJ|X=Qが最大。

*13:蛇足ですが、2枚目のジョーカーをQに変えたXKQQXJ|X=K|X=Qも素数ですし、KXXQQJ|X=K|X=Kとすればさらに大きくできます。

*14:「試合中に長時間周囲を見ていると、カンニングと見なします」(「QK -1213-」第51話より)

*15:実戦では私は素数を出そうとして失敗した結果のペナルティでしたが、実質的にこの作戦と同じ展開となりました。

*16:それぞれもりしーさんに渡ったカードを除く42枚から初期手札11枚とドロー2回の計13枚(または、それにペナルティ5枚を加えた18枚)を選んだとき、KTTQJより大きな5枚出し素数がつくれる確率。

*17:出典: https://primes.utm.edu/curios/page.php/4259.htmlprimes.utm.edu

*18:出典: www.titech.ac.jp

*19:試合中のキグロさんのボヤキ、聞いていて楽しいし。

【第3期Mathpower杯】準決勝-2 カステラ-キグロ

準決勝のもう1試合は私・カステラとキグロさんの対決になりました。キグロさんは過去2度のMathpower杯、およびせきゅーん杯の計3度ベスト4となりましたが、いずれも準決勝で敗退しており、準決勝はまさに「鬼門」です。4度目の準決勝で初の決勝進出を目指します。2回戦では48828Q5=5^Jを出しましたが、準々決勝ではK9が素数であるかわからず出せなかったなど、調子は安定しているとは言いがたいようですが果たして。私は、キグロさんとは数学デーで何度か対戦していますが、勝ち切れずに逆転負けすることが多く、個人的には相性が悪い相手という印象をもっていました。キグロさんは3枚出しのラリーで着実に手札を減らしていくことが多いので、いかにキグロさんに3枚出しをさせないかを念頭に置いて試合に臨みました。じゃんけんの結果、1本目はキグロさんの先手で始まります。解説は鰺坂もっちょさん、せきゅーんさん、みうらさんです。

1本目(18:01:26~18:16:58*1 )

初期手札キ:(A25677999QX) カ:(445558TTQKX)
キグロさんの初期手札は絵札がQとジョーカーの2枚。ラマヌジャン革命A729がありますが、仮にこれを出すと残り手札は(56799QX)。私が返せなければ57[GC]→996QX|X=K(キグロQK)で上がりですが、返されるとA,2,3,4がない手札なのでかなり苦しめです。かといってこのままでも厳しそう。私は絵札5枚の初期手札ですが素数を作るために必要な奇数がKとジョーカーの2枚しかありません。遅かれ早かれ手詰まりになりそうな予感。

1.キ:D(3)A27
2.カ:D(Q)8TT,P(36J)
キグロさんはノータイムでドロー、3を引きます。そして出したのはA27。127は4番目のメルセンヌ素数(127=2^7-1)ですが、12番目のメルセンヌ素数の指数でもあります(170141183460469231731687303715884105727=2^127-1は素数)。続いて私の手番、ドローしたのはQ。絵札は6枚になりましたが、偶数だらけの手札なので、ここは8TTと出してカマトト。ペナルティで引いた3枚はうち2枚が奇数でまずまずといったところ。

3.キ:D(J)997
4.カ:D(4)KXJ|X=K
5.キ:D(4)%
再びキグロさんの手番、3桁最大の素数997を出します。その間に私は手札右側に8T63QTJKと並べていましたが、実はこれは素数です。もし出せていたら大会初の兆超え素数となりましたが、このままキグロさんに3枚出し攻勢を続けられては負けてしまうので、崩して3枚出し最大素数のKXJ|X=Kを出し親を奪います。
5手目終了時の両者の手札 キ:(34569JQX)(残8枚) カ:(344455568TTQQ)(残13枚)

6.カ:D(2)454543
7.キ:D(A)96A5X3|X=9,P(A378KK)
手番はとったものの、手札13枚で奇数は3の1枚のみでは戦いづらい。どこかで再びカマトトして奇数カードを手にしたいところ。しかし、キグロさんが手札を8枚まで減らしているうえに、私が最初にカマトトした直後も3枚出しを続けたことから、3枚6桁素数は持っていそうなのでそう簡単には手番を渡したくない。そこで、いったん多枚出しをして様子を見ることにしました。キグロさんにとっては、私に多枚出しで一気にカードを減らされては困りますから、どこかで返そうとしてくるはず。キグロさんにドロー、あわよくばペナルティによって手札を増やさせてから自分もカマトトで手札を補充しようという作戦です。キグロさんに多枚出しを返されるというリスクはありますが、うまくいけば偶数消費と手札(とくに奇数)補充の両方ができるというメリットを優先しました。出したのは454543で、45454XはX=A,3,7で素数になる三つ子素数です。キグロさんは96A5X3|X=9と出しますが、これは3の倍数(961593=3*37*8663)。ちなみにX=Jなら(9615113)素数だったようです。

8.カ:D(8)5TT8862,P(69TTJQK)
先ほどの作戦が思惑通りにいったので、予定通りカマトト。キグロさんと同じくらいに手札を増やしても大丈夫だろうというのと、キグロさんにQの在りかを知らせないために、Q・2枚を残して7枚出します。ペナルティで引いた7枚のうち奇数は3枚ですが、絵札が5枚
も含まれており、キグロさんからすぐに親を取り返せる強力な手札になります。
8手目終了時の両者の手札 キ:(AA33456789JQKKX)(残15枚) カ:(2566889TTTTJQQQK)(残16枚)

9.キ:6A
10.カ:D(J)QK
11.キ:D(8)KQ=X^5*4A|X=2
12.カ:D(2)%
勝負を通しての制限時間*2まで残り5分。キグロさんはいったん33Aを手にもつも、時間ギリギリで出したのは6A。私はドローの後、2枚出し最大素数のQKを出します。キグロさんはそれを超える合成数出しKQ=X^5*4A|X=2でカウンター。QKに対するカウンターは記録に残っている試合では史上初です*3。私はドローしてパス。
12手目終了時の両者の手札 キ:(337889JK)(残8枚) カ:(22566889TTTTJJQQ)(残16枚)
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13.キ:83
14.カ:QT=2*5*J^2
15.キ:D(2)%
キグロさんは83と再び2枚出し。キグロさんからはKとジョーカーがすべて見えており、私がTKやQKをもっていることはあり得ないので、9Jで親がとれそうです(その後873Kで上がり)。しかし私はこれにQT=2*5*J^2と合成数出しで対抗。手番は私にうつります。

16.カ:86869
17.キ:8J3K7,P(AA367)
私の残り手札10枚は86869とTQTTJの2つの5枚出し素数に分けられます。勝負を通しての制限時間が迫っていることから、小さい方の86869から出します。対するキグロさん、「3の倍数だけチェックして出す」と言って8J3K7を出しますが、これはまさかの3の倍数でした(8113137=3*641*4219)。

18.カ:TQTTJ#
最後にTQTTJを出して私の上がり。制限時間内に勝負が終わって一安心。

15分にも及ぶ激戦は私の勝利となりました。

2本目(18:18:02~18:22:22)

初期手札キ:(A245579TQKK) カ:(2455777QQKX)
キグロさんの初期手札には先ほど出したKQ=2^5*4Aがあります。KQ=2^5*4A→57[GC]→KT9がほぼ勝ち確定ルート。私には絵札4枚にグロタンカットが2組ある初期手札。キグロさんが3枚出しすると踏んで、KQX|X=K→57[GC]→57[GC]→4Q27と組みます。KQX|X=Kより大きな3枚出しはKKJしかないので、キグロさんの勝負手がKKJでなければ勝てます。4Q2XはX=A,7,J,Kの4つで素数になる「JK四つ子素数」です*4

1.キ:4A
2.カ:KQ=2^5*4X|X=A
3.キ:D(6)%
キグロさんは一時は手にカードを5枚ほどもち多枚出しを窺いますが、最終的に出したのは2枚出しの4A。私はそれにKQ=2^5*4X|X=Aを返します。1本目にキグロさんが出したのと同じ合成数出しです。これより大きな2枚出しはKK=K*TA(またはKK=A3*TA)しかありませんが、キグロさんはもっていません。パスするほかありませんが、残りの持ち時間でパスの後の作戦を考えるのに使います。
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4.カ:57[GC]
ところが私の残り手札は57と7Q7。まずは57でグロタンカット。

5.カ:7Q7#
そして7Q7を出して上がり。

2本目は早い決着で私の勝ちとなりました。これで決勝進出に王手。

3本目(18:23:38~18:32:55)

初期手札キ:(345799TJQKK) カ:(A2234589TTK)
キグロさんの初期手札がまたしてもよい。5枚出しで2番目に大きな素数KKQTJとグロタンカット57があるのでKKQTJ→57[GC]→9439というルートがあります。943Xは4桁最大の四つ子素数です。3枚出しで攻めるならQT9→KKJ→57[GC]→439。一方の私の初期手札は絵札3枚ですが素数のつくりづらい(TTK)という組み合わせで、あまりよいとはいえません。右側に98TTK(この手札で作れる最大の5枚出し素数)と並べてはみましたが1本目と同じようにどこかでカマトトを狙おうと考えていました。

1.キ:D(J)T3
2.カ:D(7)T8,P(2Q)
キグロさんは戦略がなかなかまとまらない様子。ドローをしてさらに考えます。残り1秒で出したのはT3。私がこれに返すには絵札を使わなければなりませんが、出したところでキグロさんにQKを返され絵札を消費するだけに終わる可能性が高い。そこでT8を出してカマトト、山札から2枚引きます。

3.キ:499
4.カ:D(A)823
5.キ:JQJ
6.カ:D(Q)QTK
7.キ:D(3)%
3手目、キグロさんは499を出します。残り手札はK,57,KJQJ。せきゅーんさんによれば499は素数大富豪が考案されたカフェで売られていたという「素数カクテル」の価格です*5。また、今春札幌にオープンする予定のカレー屋「カレー パンドラ」(店長はもりしーMathpower杯! twitter: @curry_pandrah)が現在、土・日曜日にイベントバー「エデン 札幌」で特別営業しているのですが、トマトチキンカレーが499円だそうです*6。さて、勝負のほうですが、私は823を返します。これまでのドローとペナルティでグロタンカット57やラマヌジャン革命A729、2枚出し合成数のKQ=2^5*4Aが揃ったので、それらを温存する一手です。キグロさんは私がまだ絵札を1枚も消費していないことから、返されるのではないかとJQJを出すのに躊躇しましたが、ついに出しました。私はドローしたうえでQTK。キグロさんはJかQを引けば再度返せるチャンスでしたがドローしたのは3。パスします。
7手目終了時の両者の手札 キ:(357KK)(残5枚) カ:(AA224579TQ)(残10枚)

8.カ:9QT4AA
9.キ:D(8)%
私の手札は残り10枚。知っていた素数9QT4AA*7が見つけられたので、これを除くと残りは(2257)。5227なら素数だったはずと9QT4AAを出します。キグロさんはドローして手札が6枚になりましたが、どう並べても場の9QT4AAを超える数を出すことができないのでパス。

10.カ:5227#
念のため5227が素数かどうかチェック。小さな素数では割れなかったので出しました。判定は素数! これで上がりとなり、私の決勝進出が決まりました。
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私が3本連取でもりしーさんの待つ決勝へ。

講評

この試合は私にとっては初期手札がよくないなどの困難がありましたが、終始ゲームの主導権を握ることができたのが勝因だったと思います。過去のキグロさんとの対戦から、キグロさんは3枚出し程度のラリーを続けて手札を減らしていくプレーヤーだとわかっていたので、ラリーの展開にならないように心がけました。早い段階でカマトトしたり、その枚数での最大素数合成数を出すなどで、ラリーの途中に出すような中くらいの素数を出しにくくしました。そして手番を手に入れると5・6枚出しで手札を一気に消費しました。とかく偶数が多い手札だったので、偶数消費型の素数を中心に出していきました。キグロさんにとっては思うような戦い方ができず、厳しいと感じていたのではないでしょうか。
キグロさんは先手と初期手札のよさという有利な状況を生かしきれませんでした。せっかく強い初期手札を手に入れても勝負手以外でうまく組み切れないと手札をすべて出し切ることができないので、運頼みの展開になったり勝負手を少し小さいものに変えたりしなければなりません。それを少しでも減らすには、できるだけ多くの素数を覚えることに尽きます。たとえば、3本目の5手目、キグロさんの手札(57JJQKK)には3枚出し最大素数KKJがありましたが、これを除いた(57JQ)で作れる素数を知っていれば、迷うことなくKKJを出すことができたはずです。この4枚で作れる最大の素数は7Q5Jですが、他にもキグロさん自身が執筆している素数大富豪小説「QK -1213-」の第18話に登場する57QJがあります。

この試合の数譜を再度まとめてご覧ください。

1本目
キ:(A25677999QX)
カ:(445558TTQKX)
キ:D(3)A27
カ:D(Q)8TT,P(36J)
キ:D(J)997
カ:D(4)KXJ|X=K
キ:D(4)%
カ:D(2)454543
キ:D(A)96A5X3|X=9,P(A378KK)
カ:D(8)5TT8862,P(69TTJQK)
キ:6A
カ:D(J)QK
キ:D(8)KQ=X^5*4A|X=2
カ:D(2)%
キ:83
カ:QT=2*5*J^2
キ:D(2)%
カ:86869
キ:8J3K7,P(AA367)
カ:TQTTJ#


2本目
キ:(A245579TQKK)
カ:(2455777QQKX)
キ:4A
カ:KQ=2^5*4X|X=A
キ:D(6)%
カ:57[GC]
カ:7Q7#


3本目
キ:(345799TJQKK)
カ:(A2234589TTK)
キ:D(J)T3
カ:D(7)T8,P(2Q)
キ:499
カ:D(A)823
キ:JQJ
カ:D(Q)QTK
キ:D(3)%
カ:9QT4AA
キ:D(8)%
カ:5227#

次回はいよいよ決勝戦です! もりしーさんがMathpower杯連覇を果たすのか、私・カステラが2冠を達成するのか、乞うご期待!

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:1本あたり15分。15分が経過した時点で勝敗がついていない場合は勝負を中断、お互い手札のカードすべてを使って1つの数をつくる。素数判定の結果、素数がつくれた方の勝利。両者つくれた場合はより大きな素数がつくれた方の勝利。両者つくれなかった場合は手札の枚数の少ない方の勝利。

*3:せきゅーん杯でもKQ=2^5*4Aが出されていますが、このとき場に出ていたのはT9でした。

*4:通常の四つ子素数と同様、一度に素数を4つ覚えられるので便利です。

twitter.com

*5:せきゅーんさん自身による素数大富豪誕生のエピソードをまとめた記事。integers.hatenablog.com

*6:お住まいが近くの方はぜひ。

twitter.com

*7:912T4J「キューピー二頭身じゃん」。実際のキューピーは三頭身に近い。出典: キューピー - Wikipedia

【第3期Mathpower杯】準決勝-1 もりしー-マモ

第3期Mathpower杯もいよいよ準決勝に入ります。1試合目はもりしーさんとマモさんの対戦です。前期Mathpower杯のもりしーさんはここまでくじらさん、ぶっちさんをストレートで破っての準決勝進出です。マモさんはEvaTecさん、OTTYさんを下してのベスト4入り。マモさんにとってはOTTYさんに続いての北海道対決です。それぞれの意気込みは
もりしーさん「地元の決戦という感じではありますけど、負けずにしっかりと戦っていく」
マモさん「(もりしーさんは)前年の優勝者なので、なるべく健闘していきたい」
ということです。解説は鰺坂もっちょさん、せきゅーんさん、そして素数判定員を務めた狡猾な狐さん*1。1本目の先手はもりしーさんになりました。

1本目(17:29:24~17:38:42*2 )

初期手札も:(23344679JQX) マ:(AA25579TJQK)
もりしーさんの初期手札はジョーカーが1枚あるものの、他の絵札がJ,Qの2枚なので少し心もとない印象。手堅く3・4枚出しで攻めようとするとマモさんに押し返される可能性が高いので、多枚出しもあり得ます*3。一方のマモさんは絵札がT,J,Q,K各1枚ずつの初期手札。3・4枚出しにはKTJ,KTQJがありますし、A,A,2があるので多枚出しでも枚数の調整が可能*4であり、ラマヌジャン革命にも対応できます。後手としては非常にバランスのとれた初期手札が入りました。

1.も:D(7)4643
2.マ:D(7)5527
3.も:D(5)9773,P(6QKX)
1手目、もりしーさんはドローの後4643「よろしみ」を出します。4649「よろしく」とセットで覚えたい素数です。ドローで手札を補充しつつ偶数消費を図ったようです。対するマモさんは5527を返します。こちらも絵札を温存し偶数消費。もりしーさんは9773を出しますが、これは合成数(9773=29*337)。もりしーさんは「あれ?」といった様子で首をかしげます。ペナルティで引いたのは(6QKX)。手札の絵札が2枚のジョーカーを含めて6枚となり、マモさんへの反撃に備えるには嬉しい。

4.マ:9Q7
5.も:D(8)KXJ|X=K
6.マ:D(3)%
マモさんは9Q7を出します。KTJ→AAでの上がりが狙い。もりしーさんはKXJ|X=Kを手札右側に置き少し考えてからドロー、8を引きます。結局KXJ|X=Kを出し、親をとることを選びます。
6手目終了時の両者の手札 も:(23567789QQX)(残11枚) マ:(AA3TJK)(残6枚)
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7.も:8623
8.マ:D(9)9KTJ
9.も:D(4)%
もりしーさんが出したのは8623「ハロー兄さん」。9QQX|X=K→757を狙った4枚出し。マモさんのドローは9。4枚7桁最大素数の9KTJを出し、勝負に出ます。もりしーさんが返すにはJかQをドローする必要があります(QQQJが出せる)が、ドローしたのは4でカウンターできず。

10.マ:3AA#
マモさんの残り手札は(AA3)。この3枚はAA3,A3A,3AAどう並べても素数です。最大の3AAとして出してマモさんが上がり。

1本目は着実に手札を減らしていったマモさんが勝利。もりしーさんは今大会初めての黒星となりました。

2本目(17:39:50~17:43:01)

初期手札も:(3488JJQKKKK) マ:(AA3345678QX)
もりしーさんの初期手札にKが4枚、絵札が合計7枚。解説陣も「うわあああああ」と声を上げてしまうほどの絶好の手札です。しかしもりしーさんは表情ひとつ変えません。マモさんはジョーカーがありますが、他は平凡といった印象。もりしーさんに立ち向かうのは難しいか。
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1.も:4KKK
2.マ:D(7)%
もりしーさんは1手目から絵札を3枚使って4KKKを出します。ちなみにKを3枚使う4枚出し素数はこれとK8KKのみです(下位互換を除く)。絵札が2枚しかないマモさんはドローするも絵札を引けずパス。

3.も:KJQJ
4.マ:D(A)%
場が流れるともりしーさんはすぐに4枚出し最大素数KJQJを出します。マモさんはドローすることしかできません。

5.も:883#
最後は883でもりしーさんが勝利。

マモさんに1枚も出させることなく一方的な展開でもりしーさんの勝ち。1-1になります。

3本目(17:44:41~17:50:01)

初期手札マ:(A22356789JQ) も:(2333467JQKK)
マモさんは絵札2枚とまたもや苦しい初期手札。1本目でも触れましたが、このような絵札が少ない初期手札のときは相手が出せないことを期待して一か八かの多枚出しを狙うという作戦があります。また今回に限っては229→5QJ=83*6A7と合成数出しで待ち伏せするという作戦もあります。どちらも相手の出方次第では一気に窮地に追い込まれてしまう戦法であり成功率も高くはありませんが、いわゆる正攻法でも返される可能性が高いのでこの場面でこのような作戦をとる価値は十分にあります。対するもりしーさんの初期手札には絵札4枚。先ほどとまではいきませんが、KKJ,QKJK,7QJKKなどがあり、今回も良さそうな手札です。

1.マ:987526A3
2.も:D(A)34KQKA2J
3.マ:%
マモさんは987526A3と8枚出し。4以外の1桁カードで作れる最大の素数です。そして手札に残った2QJは素数。もりしーさんはドローし、Aを引きます。A2をQとみなせばQを使った7枚出し素数で返せます。残り10秒で出したのは34KQKA2J。5枚出しで4番目に大きい素数KQKQJの前に34をつけた数もまた素数*5。見事カウンター成功です。
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4.も:6733#
もりしーさんは残り手札4枚を6733と並べて素数かどうかの最終チェック。そしてついに6733を場に出します。判定は素数で、もりしーさんの上がりとなりました。

もりしーさんが2本連取で決勝進出まであと1勝とします。

4本目(17:51:19~17:56:34)

初期手札マ:(A237799TTKX) も:(AA2678TJQQK)
マモさんの初期手札には絵札がジョーカーを含めて4枚ありますが、ジョーカー以外が(TTK)という組み合わせは作れる大きな素数が少なく扱いが難しいです。というのも、2枚出しTKはQKで返されてしまい、3枚出しは作れません。また1枚加えてできる4枚出しは最大がTATKで、これは絵札3枚の組み合わせにおいては素数がまったく作れない(TTT)を除いて最小です。マモさんがこの絵札をどのように使っていくかに注目です。もりしーさんは絵札5枚の初期手札。しかもその絵札5枚はQJQTKと素数が作れる組み合わせ。A,A,2もあり、マモさんが先ほどと同様に8枚出しを仕掛けてももりしーさんなら対応できそうな手札です。

1.マ:D(3)97332A
2.も:6QJTQK
3.マ:D(7)%
マモさんは少し考えてからドロー。引いたのは3です。時間いっぱいで出した97332Aは素数。マモさんは残り手札を97XTTKと並べていますがX=Qで素数です。もりしーさんは場の6枚出し素数97332Aにただ返すだけでは残り手札6枚のマモさんに上がられる可能性がありますから、ここではできるだけ大きな素数を出したいところ。持っている絵札をすべて使って6QJTQKを出します。マモさんは絵札を求めてドローしますが引けず、パス。

4.も:87A2A#
もりしーさんが残り5枚を87A2Aとして出して上がり。3-1でもりしーさんが決勝進出。
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1敗したものの、その後は3連勝でもりしーさんが勝ち上がりとなりました。
もりしーさん「これまでと変わらず確実に戦っていきたいと思います」
マモさん「やはりもりしーさんは強い」

講評

準決勝第1試合はトップクラス同士のハイレベルな戦いとなりました。
1本目の勝負の分かれ目はもりしーさんの5手目。ドローした直後は次のような状況です。

マ:(?????)(残5枚)
場:9Q7
も:(23567789JQQKXX)(残14枚)

マモさんが3枚出しで残り手札5枚となった場面。その5枚は3枚6桁素数と2枚素数に分けられている可能性が高い。もりしーさんはKXJ|X=Kがあるのでこれを出せば確実に親がとれます。考えられる作戦は2つあります。

  • すぐにKXJ|X=Kを出す(実戦はこちら)
  • いったん小さな3枚出しをして、いったんマモさんのカウンターを受けてからKXJ|X=Kを出す

前者の場合、残りの手札(23567789QQX)で絵札3枚のマモさんに立ち向かわなければなりません。マモさんのドローによる手札補充を考えると確実に親を維持するには8枚出しが必要ですがこれは難易度が高すぎる。実戦は8623(→9QQX|X=K→757)の4枚出しで現実的な出し方でした。マモさんの持っている3枚6桁素数KKJだと仮定すると、9QQKより大きな素数を作るにはKJTKに必要なT(山札に4枚)か、QKJKに必要なQ(山札に1枚)を引けばよいので、これらが引ける確率は約38.0%*6。すなわち、この勝負手9QQX|X=Kは返される確率が4割弱ほどあり、リスクが高いです。実際はマモさんが持っていたのはKKJではなくKTJで、8623の直後のドローで9を引き9KTJを返されています。
後者の作戦のメリットはKXJ|X=Kを出して親をとった後の残り手札が少なくなり、それを一気に出すことで上記のリスクを回避できるという点です。(23567789QQX)から9Q7よ大きくKKJ未満の3枚出しをしなければなりませんが、これはQQ5=X^3*97|X=5(残りは8627)やQQ8=2^5*379(残りはX67|X=K)があります*7。デメリットはマモさんがKKJを持っていた場合はそれを出す機会を与えてしまうということです。もりしーさんから見るとJ,Kがそれぞれ3枚ずつ残っていますし、マモさんは自分の手札を検討したうえで9Q7を出しているわけですから、マモさんがKKJを持っている可能性は十分あります。参考として、「マモさんの勝負手はKTJ以上である」「4手目の時点でKJQJやKKQKJが揃っていない」という仮定の下でもりしーさんから見たマモさんがKKJを出せる確率は約32.6%です*8。こちらの作戦もある程度のリスクがあります。
どちらの作戦が正解なのかは運に委ねられる部分があるので一概には言えません。

2本目はもりしーさんの手札があまりにも良いためにワンサイドゲームとなりました。もりしーさんはいつもポーカーフェイスなので、表情を手札の判断材料にすることが困難です*9。周囲のどよめきをよそに淡々とカードを出し切りました。

3本目、4本目は先手のマモさんの多枚出し(しかも残り手札も素数!)も見事でしたが、もりしーさんのカウンターがそれを上回りました。元は「7枚出しの名手」OTTYさん対策として覚えてきたという6枚11桁、7枚12桁素数がここで威力を発揮することになりました*10

解説ルームでも話題になりましたが、素数大富豪プレーヤーは「マイ素数」というのを持っています。枚数に応じて素数の個数が指数関数的に増加するので、4枚出しあたりから素数をすべて網羅して記憶することが非常に困難になります。それでもよりたくさん素数を覚えようとするのですが、覚える際の基準や優先順位といったものは現在のところ整備されていません*11。そこでプレーヤー自ら基準を設けて素数を探します。例えば、3本目マモさんの1手目987526A3は(A23456789)から1枚抜いた8枚で作れる素数、もりしーさんの2手目34KQKA2Jは5枚出し素数KQKQJの上に2枚つけて作れる素数です。ここでいう基準はプレーヤーによってさまざまであり、今回の例のようにお互いに相手の出した素数は知らなかった、ということもよくあります。この記事を読んでいるあなたもマイ素数を見つけて素数大富豪で出しましょう*12!

いつものように数譜をまとめておきます。

1本目
も:(23344679JQX)
マ:(AA25579TJQK)
も:D(7)4643
マ:D(7)5527
も:D(5)9773,P(6QKX)
マ:9Q7
も:D(8)KXJ|X=K
マ:D(3)%
も:8623
マ:D(9)9KTJ
も:D(4)%
マ:3AA#


2本目
も:(3488JJQKKKK)
マ:(AA3345678QX)
も:4KKK
マ:D(7)%
も:KJQJ
マ:D(A)%
も:883#


3本目
マ:(A22356789JQ)
も:(2333467JQKK)
マ:987526A3
も:D(A)34KQKA2J
マ:%
も:6733#


4本目
マ:(A237799TTKX)
も:(AA2678TJQQK)
マ:D(3)97332A
も:6QJTQK
マ:D(7)%
も:87A2A#

次回は、準決勝のもう1試合。私とキグロさんの対戦です。

*1:ホールでの1・2回戦および壇上での2回戦2試合を担当されました。

*2:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*3:「こういうときcpuはどうするのだろう」と思って素数大富豪 手札探索に尋ねたところ、QJ49=3^2*3*7*64X|X=Aが返ってきました。

*4:たとえば9KQTJ7(6枚出し)を9KA2TJ7(7枚出し)として出すなど。

*5:KQKQJの前には34の他に87,85,8A,63,3A,28,24,A9などがつくようです。

*6:山札24枚からKXJ|X=Kの直後と8623の直後の計2回ドローの機会があり、指定された5枚のうち少なくとも1枚引けばよいので、確率は1-(19 \times 18)/(24 \times 23)=35/92=0.3804 \dotsとなります。

*7:QQ8=2^5*379に関してはもりしーさんが自身でツイートしていらっしゃったので覚えていたかもしれません。

twitter.com

*8:
\begin{align}
\frac{P(0,2) \times \frac{3}{24}+ P(0,3) \times \frac{3}{24} + P(1,1) \times \frac{2}{24} + P(1,2)}{P(0,2)+P(0,3)+P(1,1)+P(1,2)} = \frac{919}{2816} = 0.3263 \dots
\end{align}
ただし 
\begin{align}
P(a,b) = \frac{\binom{3}{a} \binom{3}{b} \binom{30}{12-a-b}}{\binom{36}{12}}
\end{align}
(もりしーさんに渡ったカードを除く36枚から12枚選んだときにJがa枚、Kがb枚含まれる確率)

*9:対照的に私なんかは顔に出ちゃうほうです。しかも相手の表情を窺う余裕がない。

*10:もりしーさんによるMathpower杯回顧録prm9973.hatenablog.com

*11:「偶数消費型」「連番型」などが以前からありますが、それらだけではまだまだ足りません。

*12:実際のゲーム中に突如現れる素数も多数観測されておりますので遠慮なさらず。ここに素数大富豪への入り口を用意いたしました。 素数大富豪 :素数大富豪プレーヤー御用達のcpu対戦。初めてならver.1から。 素数大富豪オンライン:オンライン対戦。毎週日曜19時からと毎月13日21時からはオンライン素数大富豪デー。ビギナーからトッププレーヤーまで誰でも参加可能!