初代素数王の備忘録

KA4T6X|X=9(カステラくん)は素数。

【第3期Mathpower杯】準決勝-2 カステラ-キグロ

準決勝のもう1試合は私・カステラとキグロさんの対決になりました。キグロさんは過去2度のMathpower杯、およびせきゅーん杯の計3度ベスト4となりましたが、いずれも準決勝で敗退しており、準決勝はまさに「鬼門」です。4度目の準決勝で初の決勝進出を目指します。2回戦では48828Q5=5^Jを出しましたが、準々決勝ではK9が素数であるかわからず出せなかったなど、調子は安定しているとは言いがたいようですが果たして。私は、キグロさんとは数学デーで何度か対戦していますが、勝ち切れずに逆転負けすることが多く、個人的には相性が悪い相手という印象をもっていました。キグロさんは3枚出しのラリーで着実に手札を減らしていくことが多いので、いかにキグロさんに3枚出しをさせないかを念頭に置いて試合に臨みました。じゃんけんの結果、1本目はキグロさんの先手で始まります。解説は鰺坂もっちょさん、せきゅーんさん、みうらさんです。

1本目(18:01:26~18:16:58*1 )

初期手札キ:(A25677999QX) カ:(445558TTQKX)
キグロさんの初期手札は絵札がQとジョーカーの2枚。ラマヌジャン革命A729がありますが、仮にこれを出すと残り手札は(56799QX)。私が返せなければ57[GC]→996QX|X=K(キグロQK)で上がりですが、返されるとA,2,3,4がない手札なのでかなり苦しめです。かといってこのままでも厳しそう。私は絵札5枚の初期手札ですが素数を作るために必要な奇数がKとジョーカーの2枚しかありません。遅かれ早かれ手詰まりになりそうな予感。

1.キ:D(3)A27
2.カ:D(Q)8TT,P(36J)
キグロさんはノータイムでドロー、3を引きます。そして出したのはA27。127は4番目のメルセンヌ素数(127=2^7-1)ですが、12番目のメルセンヌ素数の指数でもあります(170141183460469231731687303715884105727=2^127-1は素数)。続いて私の手番、ドローしたのはQ。絵札は6枚になりましたが、偶数だらけの手札なので、ここは8TTと出してカマトト。ペナルティで引いた3枚はうち2枚が奇数でまずまずといったところ。

3.キ:D(J)997
4.カ:D(4)KXJ|X=K
5.キ:D(4)%
再びキグロさんの手番、3桁最大の素数997を出します。その間に私は手札右側に8T63QTJKと並べていましたが、実はこれは素数です。もし出せていたら大会初の兆超え素数となりましたが、このままキグロさんに3枚出し攻勢を続けられては負けてしまうので、崩して3枚出し最大素数のKXJ|X=Kを出し親を奪います。
5手目終了時の両者の手札 キ:(34569JQX)(残8枚) カ:(344455568TTQQ)(残13枚)

6.カ:D(2)454543
7.キ:D(A)96A5X3|X=9,P(A378KK)
手番はとったものの、手札13枚で奇数は3の1枚のみでは戦いづらい。どこかで再びカマトトして奇数カードを手にしたいところ。しかし、キグロさんが手札を8枚まで減らしているうえに、私が最初にカマトトした直後も3枚出しを続けたことから、3枚6桁素数は持っていそうなのでそう簡単には手番を渡したくない。そこで、いったん多枚出しをして様子を見ることにしました。キグロさんにとっては、私に多枚出しで一気にカードを減らされては困りますから、どこかで返そうとしてくるはず。キグロさんにドロー、あわよくばペナルティによって手札を増やさせてから自分もカマトトで手札を補充しようという作戦です。キグロさんに多枚出しを返されるというリスクはありますが、うまくいけば偶数消費と手札(とくに奇数)補充の両方ができるというメリットを優先しました。出したのは454543で、45454XはX=A,3,7で素数になる三つ子素数です。キグロさんは96A5X3|X=9と出しますが、これは3の倍数(961593=3*37*8663)。ちなみにX=Jなら(9615113)素数だったようです。

8.カ:D(8)5TT8862,P(69TTJQK)
先ほどの作戦が思惑通りにいったので、予定通りカマトト。キグロさんと同じくらいに手札を増やしても大丈夫だろうというのと、キグロさんにQの在りかを知らせないために、Q・2枚を残して7枚出します。ペナルティで引いた7枚のうち奇数は3枚ですが、絵札が5枚
も含まれており、キグロさんからすぐに親を取り返せる強力な手札になります。
8手目終了時の両者の手札 キ:(AA33456789JQKKX)(残15枚) カ:(2566889TTTTJQQQK)(残16枚)

9.キ:6A
10.カ:D(J)QK
11.キ:D(8)KQ=X^5*4A|X=2
12.カ:D(2)%
勝負を通しての制限時間*2まで残り5分。キグロさんはいったん33Aを手にもつも、時間ギリギリで出したのは6A。私はドローの後、2枚出し最大素数のQKを出します。キグロさんはそれを超える合成数出しKQ=X^5*4A|X=2でカウンター。QKに対するカウンターは記録に残っている試合では史上初です*3。私はドローしてパス。
12手目終了時の両者の手札 キ:(337889JK)(残8枚) カ:(22566889TTTTJJQQ)(残16枚)
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13.キ:83
14.カ:QT=2*5*J^2
15.キ:D(2)%
キグロさんは83と再び2枚出し。キグロさんからはKとジョーカーがすべて見えており、私がTKやQKをもっていることはあり得ないので、9Jで親がとれそうです(その後873Kで上がり)。しかし私はこれにQT=2*5*J^2と合成数出しで対抗。手番は私にうつります。

16.カ:86869
17.キ:8J3K7,P(AA367)
私の残り手札10枚は86869とTQTTJの2つの5枚出し素数に分けられます。勝負を通しての制限時間が迫っていることから、小さい方の86869から出します。対するキグロさん、「3の倍数だけチェックして出す」と言って8J3K7を出しますが、これはまさかの3の倍数でした(8113137=3*641*4219)。

18.カ:TQTTJ#
最後にTQTTJを出して私の上がり。制限時間内に勝負が終わって一安心。

15分にも及ぶ激戦は私の勝利となりました。

2本目(18:18:02~18:22:22)

初期手札キ:(A245579TQKK) カ:(2455777QQKX)
キグロさんの初期手札には先ほど出したKQ=2^5*4Aがあります。KQ=2^5*4A→57[GC]→KT9がほぼ勝ち確定ルート。私には絵札4枚にグロタンカットが2組ある初期手札。キグロさんが3枚出しすると踏んで、KQX|X=K→57[GC]→57[GC]→4Q27と組みます。KQX|X=Kより大きな3枚出しはKKJしかないので、キグロさんの勝負手がKKJでなければ勝てます。4Q2XはX=A,7,J,Kの4つで素数になる「JK四つ子素数」です*4

1.キ:4A
2.カ:KQ=2^5*4X|X=A
3.キ:D(6)%
キグロさんは一時は手にカードを5枚ほどもち多枚出しを窺いますが、最終的に出したのは2枚出しの4A。私はそれにKQ=2^5*4X|X=Aを返します。1本目にキグロさんが出したのと同じ合成数出しです。これより大きな2枚出しはKK=K*TA(またはKK=A3*TA)しかありませんが、キグロさんはもっていません。パスするほかありませんが、残りの持ち時間でパスの後の作戦を考えるのに使います。
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4.カ:57[GC]
ところが私の残り手札は57と7Q7。まずは57でグロタンカット。

5.カ:7Q7#
そして7Q7を出して上がり。

2本目は早い決着で私の勝ちとなりました。これで決勝進出に王手。

3本目(18:23:38~18:32:55)

初期手札キ:(345799TJQKK) カ:(A2234589TTK)
キグロさんの初期手札がまたしてもよい。5枚出しで2番目に大きな素数KKQTJとグロタンカット57があるのでKKQTJ→57[GC]→9439というルートがあります。943Xは4桁最大の四つ子素数です。3枚出しで攻めるならQT9→KKJ→57[GC]→439。一方の私の初期手札は絵札3枚ですが素数のつくりづらい(TTK)という組み合わせで、あまりよいとはいえません。右側に98TTK(この手札で作れる最大の5枚出し素数)と並べてはみましたが1本目と同じようにどこかでカマトトを狙おうと考えていました。

1.キ:D(J)T3
2.カ:D(7)T8,P(2Q)
キグロさんは戦略がなかなかまとまらない様子。ドローをしてさらに考えます。残り1秒で出したのはT3。私がこれに返すには絵札を使わなければなりませんが、出したところでキグロさんにQKを返され絵札を消費するだけに終わる可能性が高い。そこでT8を出してカマトト、山札から2枚引きます。

3.キ:499
4.カ:D(A)823
5.キ:JQJ
6.カ:D(Q)QTK
7.キ:D(3)%
3手目、キグロさんは499を出します。残り手札はK,57,KJQJ。せきゅーんさんによれば499は素数大富豪が考案されたカフェで売られていたという「素数カクテル」の価格です*5。また、今春札幌にオープンする予定のカレー屋「カレー パンドラ」(店長はもりしーMathpower杯! twitter: @curry_pandrah)が現在、土・日曜日にイベントバー「エデン 札幌」で特別営業しているのですが、トマトチキンカレーが499円だそうです*6。さて、勝負のほうですが、私は823を返します。これまでのドローとペナルティでグロタンカット57やラマヌジャン革命A729、2枚出し合成数のKQ=2^5*4Aが揃ったので、それらを温存する一手です。キグロさんは私がまだ絵札を1枚も消費していないことから、返されるのではないかとJQJを出すのに躊躇しましたが、ついに出しました。私はドローしたうえでQTK。キグロさんはJかQを引けば再度返せるチャンスでしたがドローしたのは3。パスします。
7手目終了時の両者の手札 キ:(357KK)(残5枚) カ:(AA224579TQ)(残10枚)

8.カ:9QT4AA
9.キ:D(8)%
私の手札は残り10枚。知っていた素数9QT4AA*7が見つけられたので、これを除くと残りは(2257)。5227なら素数だったはずと9QT4AAを出します。キグロさんはドローして手札が6枚になりましたが、どう並べても場の9QT4AAを超える数を出すことができないのでパス。

10.カ:5227#
念のため5227が素数かどうかチェック。小さな素数では割れなかったので出しました。判定は素数! これで上がりとなり、私の決勝進出が決まりました。
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私が3本連取でもりしーさんの待つ決勝へ。

講評

この試合は私にとっては初期手札がよくないなどの困難がありましたが、終始ゲームの主導権を握ることができたのが勝因だったと思います。過去のキグロさんとの対戦から、キグロさんは3枚出し程度のラリーを続けて手札を減らしていくプレーヤーだとわかっていたので、ラリーの展開にならないように心がけました。早い段階でカマトトしたり、その枚数での最大素数合成数を出すなどで、ラリーの途中に出すような中くらいの素数を出しにくくしました。そして手番を手に入れると5・6枚出しで手札を一気に消費しました。とかく偶数が多い手札だったので、偶数消費型の素数を中心に出していきました。キグロさんにとっては思うような戦い方ができず、厳しいと感じていたのではないでしょうか。
キグロさんは先手と初期手札のよさという有利な状況を生かしきれませんでした。せっかく強い初期手札を手に入れても勝負手以外でうまく組み切れないと手札をすべて出し切ることができないので、運頼みの展開になったり勝負手を少し小さいものに変えたりしなければなりません。それを少しでも減らすには、できるだけ多くの素数を覚えることに尽きます。たとえば、3本目の5手目、キグロさんの手札(57JJQKK)には3枚出し最大素数KKJがありましたが、これを除いた(57JQ)で作れる素数を知っていれば、迷うことなくKKJを出すことができたはずです。この4枚で作れる最大の素数は7Q5Jですが、他にもキグロさん自身が執筆している素数大富豪小説「QK -1213-」の第18話に登場する57QJがあります。

この試合の数譜を再度まとめてご覧ください。

1本目
キ:(A25677999QX)
カ:(445558TTQKX)
キ:D(3)A27
カ:D(Q)8TT,P(36J)
キ:D(J)997
カ:D(4)KXJ|X=K
キ:D(4)%
カ:D(2)454543
キ:D(A)96A5X3|X=9,P(A378KK)
カ:D(8)5TT8862,P(69TTJQK)
キ:6A
カ:D(J)QK
キ:D(8)KQ=X^5*4A|X=2
カ:D(2)%
キ:83
カ:QT=2*5*J^2
キ:D(2)%
カ:86869
キ:8J3K7,P(AA367)
カ:TQTTJ#


2本目
キ:(A245579TQKK)
カ:(2455777QQKX)
キ:4A
カ:KQ=2^5*4X|X=A
キ:D(6)%
カ:57[GC]
カ:7Q7#


3本目
キ:(345799TJQKK)
カ:(A2234589TTK)
キ:D(J)T3
カ:D(7)T8,P(2Q)
キ:499
カ:D(A)823
キ:JQJ
カ:D(Q)QTK
キ:D(3)%
カ:9QT4AA
キ:D(8)%
カ:5227#

次回はいよいよ決勝戦です! もりしーさんがMathpower杯連覇を果たすのか、私・カステラが2冠を達成するのか、乞うご期待!

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:1本あたり15分。15分が経過した時点で勝敗がついていない場合は勝負を中断、お互い手札のカードすべてを使って1つの数をつくる。素数判定の結果、素数がつくれた方の勝利。両者つくれた場合はより大きな素数がつくれた方の勝利。両者つくれなかった場合は手札の枚数の少ない方の勝利。

*3:せきゅーん杯でもKQ=2^5*4Aが出されていますが、このとき場に出ていたのはT9でした。

*4:通常の四つ子素数と同様、一度に素数を4つ覚えられるので便利です。

twitter.com

*5:せきゅーんさん自身による素数大富豪誕生のエピソードをまとめた記事。integers.hatenablog.com

*6:お住まいが近くの方はぜひ。

twitter.com

*7:912T4J「キューピー二頭身じゃん」。実際のキューピーは三頭身に近い。出典: キューピー - Wikipedia

【第3期Mathpower杯】準決勝-1 もりしー-マモ

第3期Mathpower杯もいよいよ準決勝に入ります。1試合目はもりしーさんとマモさんの対戦です。前期Mathpower杯のもりしーさんはここまでくじらさん、ぶっちさんをストレートで破っての準決勝進出です。マモさんはEvaTecさん、OTTYさんを下してのベスト4入り。マモさんにとってはOTTYさんに続いての北海道対決です。それぞれの意気込みは
もりしーさん「地元の決戦という感じではありますけど、負けずにしっかりと戦っていく」
マモさん「(もりしーさんは)前年の優勝者なので、なるべく健闘していきたい」
ということです。解説は鰺坂もっちょさん、せきゅーんさん、そして素数判定員を務めた狡猾な狐さん*1。1本目の先手はもりしーさんになりました。

1本目(17:29:24~17:38:42*2 )

初期手札も:(23344679JQX) マ:(AA25579TJQK)
もりしーさんの初期手札はジョーカーが1枚あるものの、他の絵札がJ,Qの2枚なので少し心もとない印象。手堅く3・4枚出しで攻めようとするとマモさんに押し返される可能性が高いので、多枚出しもあり得ます*3。一方のマモさんは絵札がT,J,Q,K各1枚ずつの初期手札。3・4枚出しにはKTJ,KTQJがありますし、A,A,2があるので多枚出しでも枚数の調整が可能*4であり、ラマヌジャン革命にも対応できます。後手としては非常にバランスのとれた初期手札が入りました。

1.も:D(7)4643
2.マ:D(7)5527
3.も:D(5)9773,P(6QKX)
1手目、もりしーさんはドローの後4643「よろしみ」を出します。4649「よろしく」とセットで覚えたい素数です。ドローで手札を補充しつつ偶数消費を図ったようです。対するマモさんは5527を返します。こちらも絵札を温存し偶数消費。もりしーさんは9773を出しますが、これは合成数(9773=29*337)。もりしーさんは「あれ?」といった様子で首をかしげます。ペナルティで引いたのは(6QKX)。手札の絵札が2枚のジョーカーを含めて6枚となり、マモさんへの反撃に備えるには嬉しい。

4.マ:9Q7
5.も:D(8)KXJ|X=K
6.マ:D(3)%
マモさんは9Q7を出します。KTJ→AAでの上がりが狙い。もりしーさんはKXJ|X=Kを手札右側に置き少し考えてからドロー、8を引きます。結局KXJ|X=Kを出し、親をとることを選びます。
6手目終了時の両者の手札 も:(23567789QQX)(残11枚) マ:(AA3TJK)(残6枚)
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7.も:8623
8.マ:D(9)9KTJ
9.も:D(4)%
もりしーさんが出したのは8623「ハロー兄さん」。9QQX|X=K→757を狙った4枚出し。マモさんのドローは9。4枚7桁最大素数の9KTJを出し、勝負に出ます。もりしーさんが返すにはJかQをドローする必要があります(QQQJが出せる)が、ドローしたのは4でカウンターできず。

10.マ:3AA#
マモさんの残り手札は(AA3)。この3枚はAA3,A3A,3AAどう並べても素数です。最大の3AAとして出してマモさんが上がり。

1本目は着実に手札を減らしていったマモさんが勝利。もりしーさんは今大会初めての黒星となりました。

2本目(17:39:50~17:43:01)

初期手札も:(3488JJQKKKK) マ:(AA3345678QX)
もりしーさんの初期手札にKが4枚、絵札が合計7枚。解説陣も「うわあああああ」と声を上げてしまうほどの絶好の手札です。しかしもりしーさんは表情ひとつ変えません。マモさんはジョーカーがありますが、他は平凡といった印象。もりしーさんに立ち向かうのは難しいか。
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1.も:4KKK
2.マ:D(7)%
もりしーさんは1手目から絵札を3枚使って4KKKを出します。ちなみにKを3枚使う4枚出し素数はこれとK8KKのみです(下位互換を除く)。絵札が2枚しかないマモさんはドローするも絵札を引けずパス。

3.も:KJQJ
4.マ:D(A)%
場が流れるともりしーさんはすぐに4枚出し最大素数KJQJを出します。マモさんはドローすることしかできません。

5.も:883#
最後は883でもりしーさんが勝利。

マモさんに1枚も出させることなく一方的な展開でもりしーさんの勝ち。1-1になります。

3本目(17:44:41~17:50:01)

初期手札マ:(A22356789JQ) も:(2333467JQKK)
マモさんは絵札2枚とまたもや苦しい初期手札。1本目でも触れましたが、このような絵札が少ない初期手札のときは相手が出せないことを期待して一か八かの多枚出しを狙うという作戦があります。また今回に限っては229→5QJ=83*6A7と合成数出しで待ち伏せするという作戦もあります。どちらも相手の出方次第では一気に窮地に追い込まれてしまう戦法であり成功率も高くはありませんが、いわゆる正攻法でも返される可能性が高いのでこの場面でこのような作戦をとる価値は十分にあります。対するもりしーさんの初期手札には絵札4枚。先ほどとまではいきませんが、KKJ,QKJK,7QJKKなどがあり、今回も良さそうな手札です。

1.マ:987526A3
2.も:D(A)34KQKA2J
3.マ:%
マモさんは987526A3と8枚出し。4以外の1桁カードで作れる最大の素数です。そして手札に残った2QJは素数。もりしーさんはドローし、Aを引きます。A2をQとみなせばQを使った7枚出し素数で返せます。残り10秒で出したのは34KQKA2J。5枚出しで4番目に大きい素数KQKQJの前に34をつけた数もまた素数*5。見事カウンター成功です。
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4.も:6733#
もりしーさんは残り手札4枚を6733と並べて素数かどうかの最終チェック。そしてついに6733を場に出します。判定は素数で、もりしーさんの上がりとなりました。

もりしーさんが2本連取で決勝進出まであと1勝とします。

4本目(17:51:19~17:56:34)

初期手札マ:(A237799TTKX) も:(AA2678TJQQK)
マモさんの初期手札には絵札がジョーカーを含めて4枚ありますが、ジョーカー以外が(TTK)という組み合わせは作れる大きな素数が少なく扱いが難しいです。というのも、2枚出しTKはQKで返されてしまい、3枚出しは作れません。また1枚加えてできる4枚出しは最大がTATKで、これは絵札3枚の組み合わせにおいては素数がまったく作れない(TTT)を除いて最小です。マモさんがこの絵札をどのように使っていくかに注目です。もりしーさんは絵札5枚の初期手札。しかもその絵札5枚はQJQTKと素数が作れる組み合わせ。A,A,2もあり、マモさんが先ほどと同様に8枚出しを仕掛けてももりしーさんなら対応できそうな手札です。

1.マ:D(3)97332A
2.も:6QJTQK
3.マ:D(7)%
マモさんは少し考えてからドロー。引いたのは3です。時間いっぱいで出した97332Aは素数。マモさんは残り手札を97XTTKと並べていますがX=Qで素数です。もりしーさんは場の6枚出し素数97332Aにただ返すだけでは残り手札6枚のマモさんに上がられる可能性がありますから、ここではできるだけ大きな素数を出したいところ。持っている絵札をすべて使って6QJTQKを出します。マモさんは絵札を求めてドローしますが引けず、パス。

4.も:87A2A#
もりしーさんが残り5枚を87A2Aとして出して上がり。3-1でもりしーさんが決勝進出。
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1敗したものの、その後は3連勝でもりしーさんが勝ち上がりとなりました。
もりしーさん「これまでと変わらず確実に戦っていきたいと思います」
マモさん「やはりもりしーさんは強い」

講評

準決勝第1試合はトップクラス同士のハイレベルな戦いとなりました。
1本目の勝負の分かれ目はもりしーさんの5手目。ドローした直後は次のような状況です。

マ:(?????)(残5枚)
場:9Q7
も:(23567789JQQKXX)(残14枚)

マモさんが3枚出しで残り手札5枚となった場面。その5枚は3枚6桁素数と2枚素数に分けられている可能性が高い。もりしーさんはKXJ|X=Kがあるのでこれを出せば確実に親がとれます。考えられる作戦は2つあります。

  • すぐにKXJ|X=Kを出す(実戦はこちら)
  • いったん小さな3枚出しをして、いったんマモさんのカウンターを受けてからKXJ|X=Kを出す

前者の場合、残りの手札(23567789QQX)で絵札3枚のマモさんに立ち向かわなければなりません。マモさんのドローによる手札補充を考えると確実に親を維持するには8枚出しが必要ですがこれは難易度が高すぎる。実戦は8623(→9QQX|X=K→757)の4枚出しで現実的な出し方でした。マモさんの持っている3枚6桁素数KKJだと仮定すると、9QQKより大きな素数を作るにはKJTKに必要なT(山札に4枚)か、QKJKに必要なQ(山札に1枚)を引けばよいので、これらが引ける確率は約38.0%*6。すなわち、この勝負手9QQX|X=Kは返される確率が4割弱ほどあり、リスクが高いです。実際はマモさんが持っていたのはKKJではなくKTJで、8623の直後のドローで9を引き9KTJを返されています。
後者の作戦のメリットはKXJ|X=Kを出して親をとった後の残り手札が少なくなり、それを一気に出すことで上記のリスクを回避できるという点です。(23567789QQX)から9Q7よ大きくKKJ未満の3枚出しをしなければなりませんが、これはQQ5=X^3*97|X=5(残りは8627)やQQ8=2^5*379(残りはX67|X=K)があります*7。デメリットはマモさんがKKJを持っていた場合はそれを出す機会を与えてしまうということです。もりしーさんから見るとJ,Kがそれぞれ3枚ずつ残っていますし、マモさんは自分の手札を検討したうえで9Q7を出しているわけですから、マモさんがKKJを持っている可能性は十分あります。参考として、「マモさんの勝負手はKTJ以上である」「4手目の時点でKJQJやKKQKJが揃っていない」という仮定の下でもりしーさんから見たマモさんがKKJを出せる確率は約32.6%です*8。こちらの作戦もある程度のリスクがあります。
どちらの作戦が正解なのかは運に委ねられる部分があるので一概には言えません。

2本目はもりしーさんの手札があまりにも良いためにワンサイドゲームとなりました。もりしーさんはいつもポーカーフェイスなので、表情を手札の判断材料にすることが困難です*9。周囲のどよめきをよそに淡々とカードを出し切りました。

3本目、4本目は先手のマモさんの多枚出し(しかも残り手札も素数!)も見事でしたが、もりしーさんのカウンターがそれを上回りました。元は「7枚出しの名手」OTTYさん対策として覚えてきたという6枚11桁、7枚12桁素数がここで威力を発揮することになりました*10

解説ルームでも話題になりましたが、素数大富豪プレーヤーは「マイ素数」というのを持っています。枚数に応じて素数の個数が指数関数的に増加するので、4枚出しあたりから素数をすべて網羅して記憶することが非常に困難になります。それでもよりたくさん素数を覚えようとするのですが、覚える際の基準や優先順位といったものは現在のところ整備されていません*11。そこでプレーヤー自ら基準を設けて素数を探します。例えば、3本目マモさんの1手目987526A3は(A23456789)から1枚抜いた8枚で作れる素数、もりしーさんの2手目34KQKA2Jは5枚出し素数KQKQJの上に2枚つけて作れる素数です。ここでいう基準はプレーヤーによってさまざまであり、今回の例のようにお互いに相手の出した素数は知らなかった、ということもよくあります。この記事を読んでいるあなたもマイ素数を見つけて素数大富豪で出しましょう*12!

いつものように数譜をまとめておきます。

1本目
も:(23344679JQX)
マ:(AA25579TJQK)
も:D(7)4643
マ:D(7)5527
も:D(5)9773,P(6QKX)
マ:9Q7
も:D(8)KXJ|X=K
マ:D(3)%
も:8623
マ:D(9)9KTJ
も:D(4)%
マ:3AA#


2本目
も:(3488JJQKKKK)
マ:(AA3345678QX)
も:4KKK
マ:D(7)%
も:KJQJ
マ:D(A)%
も:883#


3本目
マ:(A22356789JQ)
も:(2333467JQKK)
マ:987526A3
も:D(A)34KQKA2J
マ:%
も:6733#


4本目
マ:(A237799TTKX)
も:(AA2678TJQQK)
マ:D(3)97332A
も:6QJTQK
マ:D(7)%
も:87A2A#

次回は、準決勝のもう1試合。私とキグロさんの対戦です。

*1:ホールでの1・2回戦および壇上での2回戦2試合を担当されました。

*2:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*3:「こういうときcpuはどうするのだろう」と思って素数大富豪 手札探索に尋ねたところ、QJ49=3^2*3*7*64X|X=Aが返ってきました。

*4:たとえば9KQTJ7(6枚出し)を9KA2TJ7(7枚出し)として出すなど。

*5:KQKQJの前には34の他に87,85,8A,63,3A,28,24,A9などがつくようです。

*6:山札24枚からKXJ|X=Kの直後と8623の直後の計2回ドローの機会があり、指定された5枚のうち少なくとも1枚引けばよいので、確率は1-(19 \times 18)/(24 \times 23)=35/92=0.3804 \dotsとなります。

*7:QQ8=2^5*379に関してはもりしーさんが自身でツイートしていらっしゃったので覚えていたかもしれません。

twitter.com

*8:
\begin{align}
\frac{P(0,2) \times \frac{3}{24}+ P(0,3) \times \frac{3}{24} + P(1,1) \times \frac{2}{24} + P(1,2)}{P(0,2)+P(0,3)+P(1,1)+P(1,2)} = \frac{919}{2816} = 0.3263 \dots
\end{align}
ただし 
\begin{align}
P(a,b) = \frac{\binom{3}{a} \binom{3}{b} \binom{30}{12-a-b}}{\binom{36}{12}}
\end{align}
(もりしーさんに渡ったカードを除く36枚から12枚選んだときにJがa枚、Kがb枚含まれる確率)

*9:対照的に私なんかは顔に出ちゃうほうです。しかも相手の表情を窺う余裕がない。

*10:もりしーさんによるMathpower杯回顧録prm9973.hatenablog.com

*11:「偶数消費型」「連番型」などが以前からありますが、それらだけではまだまだ足りません。

*12:実際のゲーム中に突如現れる素数も多数観測されておりますので遠慮なさらず。ここに素数大富豪への入り口を用意いたしました。 素数大富豪 :素数大富豪プレーヤー御用達のcpu対戦。初めてならver.1から。 素数大富豪オンライン:オンライン対戦。毎週日曜19時からと毎月13日21時からはオンライン素数大富豪デー。ビギナーからトッププレーヤーまで誰でも参加可能!

【第3期Mathpower杯】準々決勝-4 onewan-キグロ

ベスト4へ残る枠はあとひとつ。2回戦では白くまさんとの「動物対決」を制したonewan(わんわん)さんと、48828Q5=5^Jを出し会場を騒然とさせたキグロさんが残り1枠を賭けて戦います。onewanさんは2枚出し、キグロさんは3枚出しを中心とする戦術を得意とするプレーヤーで、落ち着いた試合展開になりそうです。もしキグロさんが勝ち上がりますと3期連続のベスト4入りとなります。1本目の先手はonewanさんになりました。素数判定員ははなぶさんが務めます。

1本目(16:42:36~16:52:07*1 )

初期手札о:(346789TJJQK) キ:(2345678TJQX)
onewanさんの初期手札は絵札5枚。4枚出しなら最大のKJQJがあるので、たとえば9643→KJQJ→T87などと組めると強い*2。キグロさんは11枚がすべてバラバラの初期手札。3枚出しで4番目に大きいKTJや4枚出しで3番目に大きいKTQJがあり、決して弱いわけではないのですが、onewanさんがあまりに良いため劣勢か。

1.о:D(X)8J
2.キ:D(8)%
1手目、onewanさんはドロー。ジョーカーを引きさらに手札が強くなります。2枚出しで4番目に大きい素数の8Jを出します。対するキグロさんもドローし、8を引きます。手札を並べ替え82X,3467を用意しているようですが、場の8Jに対してはジョーカーを使わなければ返せない状況。考慮時間の最後までカードを出さなかったことにより強制パスとなります。
f:id:graws188390:20190316000416p:plain

3.о:D(Q)T3
4.キ:D(J)T7
5.о:9J
6.キ:D(6)QX|X=K
7.о:D(2)%
onewanさんは再度ドロー、引いたのはまたも絵札のQ。T3で2枚出し攻勢を続けます。残り手札はQX,QK,9J,647でX=Kとすれば2枚出し最大素数のQKが2度出せます。キグロさんは手札は苦しいもののT3にはT7、9JにはQX|XKを出して親をとります。この応酬の間に私・カステラが解説ルームに到着。解説は第1期Mathpower杯・みうらさん、第2期Mathpower杯・もりしーさん、そして素数王・カステラという布陣に。
7手目終了時の両者の手札 о:(2467QQKX)(残8枚) キ:(23456688JJ)(残10枚)

8.キ:64=2^6
9.о:QK
10.キ:D(5)%
ドローを重ねた結果、手札の偶数カードがなかなか減らないキグロさんは64=2^6で一挙に偶数カードを4枚消費します。しかしこれはonewanさんが狙っていた2枚出し。ノータイムでQKが出されます。残り手札はQX,2647。キグロさんはドローしてパス。

11.о:QX|X=K
12.キ:%
onewanさんはQX|X=Kを出して勝負を決めにかかります。キグロさんは負けを悟ったのか即座にパスを宣言。

13.о:2647#
とどめは2647。onewanさんがまずは1勝。

初期手札の良かったonewanさんが2枚出し攻勢で勝利。

2本目(16:53:22~16:59:25)

初期手札キ:(A3335677JJQ) о:(22455799TKX)
キグロさんの初期手札は1本目はバラバラでしたが、今度は3が3枚、7が2枚、Jが2枚で奇数に偏っています。JQJを手札右側に寄せ、これを勝負手に3枚出しを仕掛けていく様子。一方のonewanさんは絵札3枚。ジョーカーがうまく使えるかがカギになりそうです。

1.キ:D(8)33A
2.о:D(4)%
手札を並べ替えつつ、キグロさんは山札に手を伸ばしてドロー。8を引きます。33Aを出し、3枚ある3のうち2枚を消費します。33……31という形の数は31,331,……,33333331まですべて素数です*3。onewanさんはドローしますが、カードは出さずパスを選択。

3.キ:863
4.о:997
5.キ:JQJ
6.о:D(6)%
キグロさんはonewanさんが考えている間に手札を組み切ったようです。まずは863。onewanさんの997を受けてJQJ。残り手札は(577)。ここでonewanさんはジョーカーを使ってKTX|X=Jが出せますがパス。
f:id:graws188390:20190316000447p:plain

7.キ:57[GC]
577も757も素数ですが、キグロさんはグロタンカット57を出し……

8.キ:7#
7で上がり。これでスコアは1-1のタイになります。

2本目はキグロさんが得意の3枚出しで制しました。

3本目(17:00:24~17:08:01)

初期手札о:(345677889KX) キ:(A24668TQQKX)
onewanさんの初期手札は絵札が2枚と少なめで火力に欠ける印象。ジョーカーやグロタンカットがあるのが救いか。一方のキグロさんは絵札5枚ですが、手札全体としては偶数に偏っています。2,4,6,8,T,Qが揃っているので2468TQAなどの偶数消費型多枚出しが狙えますが、キグロさんは後手なのですぐには出せません。onewanさんが1~3枚出しですと、一度に消費できる偶数カードが少ないので、キグロさんは奇数のカードが足りなくなってしまいます。

1.о:D(K)488X9|X=8
2.キ:D(T)KTQAX|X=A
3.о:D(5)%
onewanさんはドローし、Kを引きます。そして488X9|X=8と5枚出し。ちなみに48889「しばばばく」は誰かが出会い、twitter経由でもりしーさんが知り、せきゅーん杯で出されたというエピソード付きの素数です
*4*5。onewanさんもどこかでこの素数に出会ったのでしょう。対するキグロさん、ドローはT。4枚出し素数をKTQAX|X=Aと5枚で出しますが、残り手札がすべて偶数になってしまいます。onewanさんはドローしますが、場を上回る数をつくることができないのでパス。
3手目終了時の両者の手札 о:(355677KK)(残8枚) キ:(24668TQ)(残7枚)
f:id:graws188390:20190316000514p:plain

4.キ:D(4)64=2^6
5.о:3K
6.キ:D(Q)8T,P(9J)
キグロさんはドローするものの、引いたのは4。手札8枚がすべて偶数の中、64=2^6を出します。onewanさんはすでに手札を57,57,3K,6Kと組んでいます。まずは3Kを返します。キグロさん、この勝負3度目のドローも結果はまたしても偶数のQ。8Tを出してカマトト。

7.о:57[GC]
onewanさんが組んだ通りにカードを出していきます。まずはグロタンカット。

8.о:57[GC]
そして2回目のグロタンカット*6

9.о:6K#
最後に6Kを出して上がり。onewanさんが2勝目を挙げます。

onewanさんが準決勝進出に王手。

4本目(17:09:11~17:15:24)

初期手札キ:(A33889TTJKX) о:(4455889JQQK)
キグロさんは絵札がジョーカー含めて5枚の初期手札。KXJ|X=Kがあるので3枚出しが良さそうに見えます。onewanさんの初期手札は偶数カードの4,5,8,Qが2枚ずつあり、これらのカードを消費するのが難しそう。一気に消費する手段として445=5*89がありますが、キグロさんが小さな3枚出しでないと出せません。

1.キ:883
2.о:D(4)%
キグロさんはシンキングタイムに続いてさらに30秒ほど考えてから883を出します。88XはX=A,3,7で素数になる三つ子素数で、それぞれ「ヤバい」「ヤバみ」「ハバナ」という語呂合わせがあります。onewanさんはドローしますが、引いたのは3枚目の4。2回戦で自身が出したQ49などが返せますが、パスを選択。
f:id:graws188390:20190316000541p:plain

3.キ:TT3
4.о:D(3)QQJ,P(57K)
すでにA9,TT3,JXKと手札を並べ終えているキグロさん。ノータイムでTT3。onewanさんは3をドローし、右側に593「コックさん」をスタンバイ。時間ギリギリでQQJを出しますが、素数ではありません(121211=53*2287)。ちなみにTを2枚使う素数としてTT3があるのに対し、Qを2枚使う3枚出し素数は存在しません*7

5.キ:KXJ|X=K
6.о:D(5)%
キグロさんは3枚出し最大素数KXJ|X=Kを出します。onewanさんはドローしてパス。

7.キ:A9#
A9は素数ですが逆にした9Aは素数ではありません*8。キグロさんが正しくA9を出して上がり。

4本目はキグロさんが勝ち、3試合連続のフルセットに。ここでもりしーさんは次の試合の準備のため、解説終了となります。交替でせきゅーんさんが解説に加わります。

5本目(17:16:50~17:26:16)

初期手札о:(AAA356789JK) キ:(A7899JJQQKX)
onewanさんの初期手札は絵札2枚ですがAが3枚あります。2を引いてラマヌジャン革命が起こせるとかなり強いですし、JやKの代わりにAAやA3と出すことで多枚出しも狙いやすい。キグロさんの初期手札は絵札がなんと6枚。ラマヌジャン革命がない限りキグロさんが主導権を握りそうです。

1.о:J593
2.キ:QAX7|X=0
3.о:D(X)KXAA|X=K
4.キ:KJQJ
5.о:%
1手目、onewanさんはJ593「いいコックさん」を出します。ちなみに11593には「連続する9つの素数がすべて4n+1の形である最小の素数」という性質があります*9。対するキグロさんはQAX7|X=0を出します。ジョーカーを0として使う、少し珍しい出し方です。ジョーカーの使い方としては少しもったいないように思えますが、まだ手札にはKJQJが控えています。onewanさんはここでジョーカーをドロー。KXAA|X=Kで対抗します。しかし、キグロさんがKJQJを出し、親はキグロさんが取りました。
5手目終了時の両者の手札 о:(A678)(残4枚) キ:(899)(残3枚)

6.キ:D(3)983
7.о:D(8)%
キグロさんの残り手札は(899)ですが、899も989も素数ではありません(899=29*31,989=23*43)。3をドローし、983を出します。3桁で3番目に大きい素数です。絵札がないonewanさんはドローするも絵札を引けず、パス。

8.キ:D(K)K
9.о:D(8)%
残り手札が9・1枚のキグロさん、ドローしたのはK。K9なら素数ですが、自信がなかったのか引いてきたKだけを場に出しました。すでにジョーカーは2枚とも流れているのでここでonewanさんに返される可能性はありませんが、次も9と合わせて素数をつくることのできるカードをドローする保障はありません。
f:id:graws188390:20190316000612p:plain

10.キ:D(5)59#
キグロさんの再度のドローは5。59を出して上がりとなりました。キグロさんが準決勝進出。

最後はキグロさんが勝利をもぎ取りました。キグロさんは3期連続のベスト4入りです。

講評

準々決勝最後の試合は2枚出しや3枚出しが主体で地に足の着いたものになりました。
1本目はonewanさんが先手&初期手札絵札5枚&最初のドローがジョーカーという序盤での有利な状況から危なげなく勝利。2本目はキグロさんが堅実な3枚出しで勝ちました。どちらも自分のペースに持ち込むことで勝負を優位に進めました。
3本目はonewanさんの1手目488X9|X=8に対し、キグロさんはKTQAX|X=Aと返したことで手札の奇数がなくなり、その後に素数を出せなくなりました。ここは知っている素数*10を無理に出すよりも、勘出しでも偶数消費を狙った数を出す戦略のほうがよいように思います。出したのが実際に素数であれば奇数を温存したことでその後も素数をつくれる可能性が残りますし、素数ではなくペナルティを受けても奇数を手に入れるチャンスとなります。ただし、それでも偶数過多の状況から一気に抜け出すようなことはあまりないので、4枚出し以上の偶数消費型素数を多く覚えている必要があります。
4本目は2本目と同様にキグロさんが3枚出し攻勢を仕掛けて勝利。初期手札にKXJ|X=Kがあったこともあり、まさに盤石の態勢でした。
2-2で迎えた5本目は初期手札が極めてよかったキグロさんが4枚出しラリーを制し、親をとったことが勝因となりました。途中K9が素数であると決定できずにKを出す、というアクシデントもありましたが、最後は59を出して上がりとなりました。
試合全体を通して、キグロさんは3枚出しによって勝利を重ねました。先手のときには(受け手(小さな3枚出し))→(受け手(少し大きな3枚出し))→(勝負手(3枚6桁))→(上がり手(残り))ときっちり手札を組んで2勝しました。着実に勝利を手繰り寄せるようなプレーが多く、多枚出しでもジョーカーを消費してでも素数だと知っている数を出し、勘に頼ることはあまりしないように思います。一方、onewanさんは覚えている素数はあまり多くないようですが、時折48889(3本目)などの多枚出しを仕掛けてきます*11。キグロさんはこれに無理に返した結果、手札が偶数だけとなりonewanさんがその後の勝負を優位に進め勝利しました。2回戦でも見られましたが「推し素数」がいくつかあるようで、キグロさんよりも戦略の幅が多彩になっています。

この試合の数譜を再掲いたします。

1本目
о:(346789TJJQK)
キ:(2345678TJQX)
о:D(X)8J
キ:D(8)%
о:D(Q)T3
キ:D(J)T7
о:9J
キ:D(6)QX|X=K
о:D(2)%
キ:64=2^6
о:QK
キ:D(5)%
о:QX|X=K
キ:%
о:2647#


2本目
キ:(A3335677JJQ)
о:(22455799TKX)
キ:D(8)33A
о:D(4)%
キ:863
о:997
キ:JQJ
о:D(6)%
キ:57[GC]
キ:7#


3本目
о:(345677889KX)
キ:(A24668TQQKX)
о:D(K)488X9|X=8
キ:D(T)KTQAX|X=A
о:D(5)%
キ:D(4)64=2^6
о:3K
キ:D(Q)8T,P(9J)
о:57[GC]
о:57[GC]
о:6K#


4本目
キ:(A33889TTJKX)
о:(4455889JQQK)
キ:883
о:D(4)%
キ:TT3
о:D(3)QQJ,P(57K)
キ:KXJ|X=K
о:D(5)%
キ:A9#


5本目
о:(AAA356789JK)
キ:(A7899JJQQKX)
о:J593
キ:QAX7|X=0
о:D(X)KXAA|X=K
キ:KJQJ
о:%
キ:D(3)983
о:D(8)%
キ:D(K)K
о:D(8)%
キ:D(5)59#

準々決勝4試合がすべて終わりました。ベスト4はもりしーさん、マモさん、私、キグロさんです。
次回から準決勝。1試合目はもりしーさんとマモさんです。

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:9643は四つ子素数346XでX=9としたものの上位互換。T87は偶数を2枚使う3枚出し。

*3:次の333333331は合成数(333333331=17*19607843)。 A123568 - OEIS Factorization of 33...331 33…31という形の素数に関してはINTEGERSでも言及されています。integers.hatenablog.com

*4:もりしーさんが見たであろうツイート。

twitter.com

*5:せきゅーん杯では準々決勝もりしー-カステラの3本目で出されました。

*6:このときの若本ボイスは今までに出てきていないバージョン。

*7:「QK -1213-」第21話でも言及されています。

*8:91は「パッと見素数」と呼ばれています。www.ajimatics.com

*9:すなわち、11593,11597,11617,11621,11633,11657,11677,11681,11689は連続する9つの素数であって、すべて4で割ると1余ります。出典: https://primes.utm.edu/curios/page.php/11593.htmlprimes.utm.edu

*10:KTQJは4枚出しで3番目に大きい素数で、キグロさん自身もせきゅーん杯で4枚出しとして出しています。こちらの記事を参照: prm9973.hatenablog.com mathingnow.hatenablog.com

*11:2回戦でも66523を出しています。

【第3期Mathpower杯】準々決勝-3 カステラ-nishimura@icqk3

私の準々決勝の対戦相手nishimura@icqk3さん(以下「nishimuraさん」と記します)は素数大富豪のcpu対戦http://searial.web.fc2.com/tools/sosutop.htmlの開発者。素数大富豪がしたいけど周りに対戦してくれる人がいないときや、秘密の作戦を試したいときに便利です。私はふだんそのサイトで一番強い「ver.4☆pro☆」*1で練習しているのですが、当時の勝率は調子がいいときで4割程度(現在はたまに勝ち越せるくらい)。めちゃくちゃ強いです。nishimuraさん本人も素数大富豪プレーヤーとして大会に出場しており、昨年1月のせきゅーん杯ではベスト8でした。予選リーグではキグロさんに勝利しています。nishimuraさんとはこのMathpower杯で初顔合わせでしたが、対戦前から手強い相手だと思っておりました*2。試合はnishimuraさんの先手で始まります。

1本目(16:15:50~16:18:27*3 )

初期手札n:(A3455778JJK) カ:(A2245669TJQ)
nishimuraさんの初期手札はグロタンカットが2組あります。絵札3枚でKJJがつくれますが確実に親をとれる勝負手ではないのでグロタンカットでドローの機会を増やすのがよさそうです。Qを引けば4枚出し最大素数のKJQJができます。私はnishimuraさんと同じく絵札3枚ですが偶数の多さが目立つ初期手札。こちらもドローでよいカードを引くことを期待したくなる手札です。

1.n:D(5)57[GC]
nishimuraさんのドローは5。まずは手持ちの57を出してグロタンカット。

2.n:57[GC]
ここでもう1度ドローするかと思いきや、ドローせず2回目のグロタンカット。

3.n:A543
4.カ:D(8)8QTJ
5.n:8KJJ#
そしてA543を出します。nishimuraさんはこれで残り4枚。ここでようやく私に手番が回ってきます。場は4枚出しなので私の返し方次第ではnishimuraさんに上がられてしまいます*4。nishimuraさんはまだ絵札を1枚も消費していないので残りの4枚のうち3枚もしくは4枚すべてが絵札と思われ、現状私の手札で出せる最大の4枚出し素数の5TQJでは返される可能性が高い。また場のA543はA729よりも小さいのでラマヌジャン革命が起こせれば一気に1桁カードの多い私の優勢になりますが手札に7がない。ドローの結果は8。革命は起こすことができませんが出せる最大の4枚出し素数が8QTJになったのでそれを出します。しかし、nishimuraさんが持っていたのは8KJJ。nishimuraさんがこれを出し上がり。
f:id:graws188390:20190220205317p:plain

1本目はnishimuraさんがテンポよく手札を出して勝利。3分足らずでの決着でした。

2本目(16:19:10~16:23:45)

初期手札カ:(A23344556QQ) n:(234677TTJQK)
私の初期手札は絵札がQ・2枚のみで1本目に続いて苦しい。ただし、今回は先手なので出す枚数次第では状況を打開できるかもしれません。一方のnishimuraさんは絵札5枚と恵まれています。対照的な初期手札となりました。

1.カ:D(A)5634AA
2.n:D(7)63KTQJ
3.カ:D(5)%
私はシンキングタイムが終わるとすぐにドロー。Aを引きます。できるだけ枚数を多くして出そうとしましたが、なかなか思い出せず、5634AAの6枚出し。56341Xは四つ子素数です。残りは(2345QQ)で一応3の倍数ではないですがどう並べればよいかは知りませんでした(最大は52Q4Q3)。nishimuraさんはドローの後63KTQJを出します。一気に10桁になりました。私は絵札が足りないのでドローしてパスするしかありません。

4.n:D(6)T246777#
nishimuraさんのドローは6。手札の7枚を最小に並べT246777と出します。これがなんと素数でnishimuraさんが2連勝。
f:id:graws188390:20190220205357p:plain

nishimuraさんが連勝で準決勝進出まであと1勝としました。

3本目(16:24:40~16:31:53)

初期手札カ:(234555669QK) n:(A34457899QX)
私の初期手札は絵札2枚。偶数が多くまたも苦しい状況に見えますが、私はある素数が出せることに気づきます。一方のnishimuraさんはジョーカーがありますが絵札は他にはQのみでこちらも厳しそう。

1.カ:6655543
2.n:D(7)Q544789,P(A2479KX)
私はシンキングタイムが終わるや否や6655543を出します。665554Xは四つ子素数で、偶数消費、かつ数字が降順で大変覚えやすく、見つけやすい素数です。もりしーさんから教えていただいた素数のひとつです。7枚出しですが絵札が1枚も含まれていないので返される可能性があります。そして返された際には手札4枚の私はパスするしかなく、nishimuraさんに親が移り、2本目と同様に残り手札全出しで勝負が決まることもあり得ます*5。実戦に戻りますとnishimuraさんはドローの後、Q544789を出しますがこれは合成数(12544789=2003*6263)。ペナルティとして山札を7枚引き、親は再び私になります。
f:id:graws188390:20190220205423p:plain

3.カ:29
4.n:QK
5.カ:D(6)%
私の残り手札は(29QK)。合計すると3の倍数なので4枚一度に出すことはできません。ドローして5枚出しができることに賭けることも考えましたが、3の倍数を引いてくるリスクがあります。ここは手札を29,QKに分け29から出します。するとnishimuraさんは即座にQKを返します。私はドローしてパス。
5手目終了時の両者の手札 カ:(6QK)(残3枚) n:(AA2344457778999XX)(残17枚)

6.n:9432A
7.カ:D(3)%
ここからnishimuraさんは私の手札の枚数+2枚以上の素数を出せば無条件で手番を維持できます。まずは5枚出し以上ですが9432Aでクリア。前の試合でマモさんが出した924A3の上位互換です。私はドローして手札4枚に。

8.n:D(8)57[GC]
いったんグロタンカットを挟んで……

9.n:D(T)984AX7|X=2
10.カ:D(T)%
6枚出し以上のハードルを984AX7|X=2でクリア。私はドローで手札5枚に。
10手目終了時の両者の手札 カ:(36TQK)(残5枚) n:(4789TX)(残6枚)

11.n:D(8)7489
12.カ:6TQK
13.n:D(A)%
nishimuraさんは手札を6枚まで減らしました。実は6枚出しをしなくてもX7|X=5[GC]→8T49で上がれます(8104X「八頭身」は四つ子素数)。実戦はnishimuraさんはドローし、7489の4枚出し。私はすぐさま6TQKを返します。それに対しnishimuraさんはJ,Q,Kをドローできれば出すことができましたが、引いたのはAでパス。

14.カ:3#
私が最後の1枚・3を出して上がり。

私が1本取り返して1-2となりました。

4本目(16:32:38~16:35:46)

初期手札n:(A2234569TQK) カ:(256789JJJQX)
nishimuraさんの初期手札はKQの合成数出しがあります。T9→KQ=2^5*4A→6=2*3に気づけばほぼ勝ちです。私は絵札がジョーカーを含めて5枚の初期手札。4枚出し最大素数KJQJや5枚出しで5番目に大きい素数KQJJJが出せます。nishimuraさんが4・5枚出しなら私にも勝機が生まれます。

1.n:D(Q)T=5*2
2.カ:X[IN]
1手目、nishimuraさんはドローしQを引きます。この手札では勝負しづらいと判断したのか、T=5*2*6と1枚出し合成数を出します。1枚出しの狙いとしては(偶数カードが出しにくいので)奇数や絵札を消費させることと言われますが、わざわざそれを狙うということは手札があまりよくないと考えられます。つまりここでジョーカー1枚を消費しても、絵札4枚なら勝算があるということになります。私はジョーカーを出して手番をとります。
f:id:graws188390:20190220205501p:plain

3.カ:8JJQJ
4.n:D(4)%
私は残り手札を8JJQJ,57,269と分け、8JJQJから出します。nishimuraさんの1手目がT=5*2であり、前述のあまり強い手札ではないだろうという推測から5枚9桁なら通りそうと判断。実際はnishimuraさんは絵札3枚であり、8JJQJに返すにはKをドローして9QQKKを出すしかない状況。ドローして引いたのは4だったためパス。

5.カ:57[GC]
私の思惑どおり、グロタンカットから

6.カ:269#
269で上がり。

前の試合に続いて、この試合もフルセットにもつれ込みます。

5本目(16:36:39~16:40:45)

初期手札n:(2334569TKKK) カ:(AAA2334678Q)
nishimuraさんはKが3枚の初期手札。5枚9桁最大の9KTKKが出せます。(23456)という5連続の並びは最大奇数の65423が素数。よって65423→9KTKK→3という組み方があります。一方の私の初期手札は絵札がQ・1枚のみ。しかし、Aが3枚、2が1枚、3が2枚あります。ということはふだんならJ,Q,Kで出すところをそれぞれAA,A2,A3で代用して出すことができます。たとえば6KQQKという5枚出し素数がありますが、この手札なら6A3QA2A3と8枚で出すことができます。つまり、nishimuraさんが多枚出しで仕掛けてきても含まれる絵札が0~1枚なら4・5枚出しの知識である程度対応できるということになります。
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1.n:D(5)965423
2.カ:4QA2A3
3.n:D(X)KKT35X|X=3,P(??????)
nishimuraさんのドローは5。965423の6枚出しを選択しました。私は手札を6枚出し素数、5枚出し素数に分け4QA2A3を出します。本来なら4QQKと4枚出しで出せる素数ですが、今回は6枚で出せます。nishimuraさんは手札6枚ですが、合計が3の倍数なのでドロー。ジョーカーを引きます。もりしーさんから「実はコレ35億なら出せるものあるんですよ」とコメント。確かに35XTKK|X=Jが素数で、その後Kで上がれます*7。最終的にnishimuraさんが出したのはKKT35X|X=3。しかし判定は合成数(131310353=359*499*733)。ちなみにジョーカーを9としていれば(131310359)素数でした。

4.カ:876A3#
私が残りの5枚を出してゲームセット。準決勝進出を決めました。ちなみに876A3も本来なら876Kと4枚出しで出せる素数。後で調べたところ8763Aも素数でした。

2連敗したときはもはやこれまでか、と思いましたがその後3連勝で準決勝進出を決めました。

講評

直前のOTTYさんとマモさんの試合にも引けを取らない試合になりましたが、あれから4ヶ月経って改めて振り返ると反省点・改善点が次々見つかったのでそれらを綴っていきます。
1本目はnishimuraさんがほぼ完璧の試合運びで勝利しました。私に手番が回ってきた時点でnishimuraさんの手札は4枚、場は4枚出しですから、どうしても返す必要があります。対抗できる素数が手札になかったのでどうしようもありませんでした。唯一気になった点はnishimuraさんの3手目A543です。A729より小さいのでラマヌジャン革命を起こされる可能性があります。543Aや54A3などならその可能性がなくなるのになぜA543なのか。1543年が鉄砲伝来の年だから*8?
2本目、私の出した6枚6桁(5634AA)にnishimuraさんが6枚10桁(63KTQJ)を返したのが見事でした。1枚ドローして手札を12枚にしてから6枚出し2回で組む戦法*9では6枚10桁が勝負手になりえます。こうした6枚出しの応酬は今後ますます見る機会が増えることでしょう*10。私としては1手目で四つ子素数の5Q4QA36A*11があったのに出せなかったことが敗因です(もし出せて、そのまま流れたら4523で上がり)。
nishimuraさんが準決勝進出に王手をかけられて迎えた3本目、私は1手目の6655543を出したあとのケアができていませんでした。残り手札(29QK)は合計が3の倍数で一発で出せないからです。もし1手目でドローしていれば7を引けたので92Q7K*12が出せましたし、他のカードだったとしても次の手番でもドローすれば手札が6枚になりますから3枚出し攻勢を仕掛けることも可能でした。結局3手目に手詰まりとなってしまい、その後しばらくnishimuraさんが主導権を握る展開となりました。最終的にはnishimuraさんにミスが出て私が勝ちましたが、反省の残る勝負となりました。
4本目は初期手札がよかったことと、nishimuraさんがほぼ勝ち確コースを見落としたことが私の勝利の要因となりました。盤石の態勢で戦えたと思います(自画自賛)。
最終・5本目は初期手札に絵札が1枚しかない厳しい状況でしたが、上で述べたようにA,2,3のカードがたくさんあったことが救いでした。nishimuraさんが6枚6桁を出したことで「返されなければ勝ち、返されると負け」と勝負の構図が単純になり冷静な判断ができたと思います。
試合全体を通してはnishimuraさんが当時の想定以上に強かったことが挙げられます*13。どの勝負も油断してはならない展開でしたし、実際にたった一つの判断の違いが勝敗を分けたものもありました。nishimuraさんが私の知らない素数を次々繰り出すので返すことができるか、出しても返されるのではないかと思いましたがそれと同時に今度はどんな素数を出してくるのだろうと楽しみな部分もありました。素数大富豪はルール上着手可能なプレーが素数によって完全に規定されていますが、どれが合法手なのかは一見しただけではわからないという大きな特徴があります。これは素数大富豪に参入するのに立ちはだかる大きなハードルとなっているわけですが、同時にでたらめに出した手がたまたま合法手(素数)だったという一発逆転があったり、プレーヤーによって知っている合法手が異なるという他のゲームには見られない魅力になっています。

最後にもう一度数譜をご覧ください。

1本目
n:(A3455778JJK)
カ:(A2245669TJQ)
n:D(5)57[GC]
n:57[GC]
n:A543
カ:D(8)8QTJ
n:8KJJ#


2本目
カ:(A23344556QQ)
n:(234677TTJQK)
カ:D(A)5634AA
n:D(7)63KTQJ
カ:D(5)%
n:D(6)T246777#


3本目
カ:(234555669QK)
n:(A34457899QX)
カ:6655543
n:D(7)Q544789,P(A2479KX)
カ:29
n:QK
カ:D(6)%
n:9432A
カ:D(3)%
n:D(8)57[GC]
n:D(T)984AX7|X=2
カ:D(T)%
n:D(8)7489
カ:6TQK
n:D(A)%
カ:3#


4本目
n:(A2234569TQK)
カ:(256789JJJQX)
n:D(Q)T=5*2
カ:X[IN]
カ:8JJQJ
n:D(4)%
カ:57[GC]
カ:269#


5本目
n:(2334569TKKK)
カ:(AAA2334678Q)
n:D(5)965423
カ:4QA2A3
n:D(X)KKT35X|X=3,P(??????)
カ:876A3#

次回は準々決勝の最後の試合です。onewanさんとキグロさんがベスト4をかけた対戦を解説します。

*1:私のいつもの設定はこちらです。

*2:現在ではオンライン素数大富豪デーでもりしーさんと互角の勝負を展開していらっしゃいます。

*3:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*4:2回戦では同じような状況で相手の手札の枚数を把握してなかったせいで負けそうになりましたが、このときはきちんとnishimuraさんの手札の枚数を確認しました。

*5:たとえば87X3A59|X=7→44Q9(877315X「バナナ最高」は四つ子素数)や83Q959X|X=3→A447(83129593「野菜肉コックさん」、下記の記事参照)があります。nisei.hatenablog.com

*6:nishimuraさんの発声は「にごじゅう」なのですが動画を見るとnishimuraさんから見て左から5,2,Tとカードが並んでいること、および素因数場のカードが5が先に流れるように回収されていることから「T=2*5」ではなく「T=5*2」としました。ルール上は素因数場に出す素因数の順序はプレーヤーの自由であり、順序の選択が流れたカードが再び山札になるときの順序に影響するので「T=2*5」と「T=5*2」の区別は必要です。

*7:他に35KKXK|X=Qがありますがこの場合手札に残るのはTとなりすぐには上がれません。

*8:それなら1453(これも素数)年も東ローマ帝国滅亡とか百年戦争終結で世界史的には有名のはずだが……

*9:2019年2月現在、この戦略を使いこなせるプレーヤーはまだいないように思えますが、近い将来スタンダードな戦法になりそうです。

*10:現に、先週(2月17日)のオンライン素数大富豪デーでも62TQQKや82QQQKが出されています。

*11:私は「故意に呼びつける(512412K6)」と覚えています。

*12:ちなみに92Q7Jも素数で92Q7Kと合わせて双子素数「QK -1213-」第57話に9QK27が登場したので、その上位互換として覚えていました。

*13:現在はオンライン素数大富豪デーでもりしーさんと互角に渡り合っていらっしゃいます。

【第3期Mathpower杯】準々決勝-2 OTTY-マモ

解説ルームは鰺坂もっちょさん・みうらさん・(画面には映っていませんが)せきゅーんさんで先ほどの試合の振りかえり真っ最中。話題はもりしーさんの繰り出した「ニカカカ(2131131131)」「35億素数(3512121281)」について。213113113Xが四つ子素数だと判明し、もっちょさんはもりしーさんに「桁数・枚数が多くなったら(覚える素数の)優先順位がわからない、何を覚えたらよいの」か尋ねた際に「四つ子(素数)は優先して覚えたほうがよい」と答えられた話を紹介。四つ子素数を覚えるメリットは1つの数字の並び(たとえば213113113)を覚えれば同時に4つ(2131131131,2131131133,2131131137,2131131139)も素数を覚えられること、実際に出す際に戦略に応じて一の位を容易に変えられる柔軟性などがあります。デメリットは四つ子素数が必ずしも素数大富豪で強い、もしくは出しやすい素数とは限らないことです。
さて、続いて壇上で対戦するのはOTTYさんとマモさんです。両者とも北海道在住でもりしーさんが幹事を務めている「素数大富豪で遊ぼう会」の常連。昨年1月のせきゅーん杯にも参戦し、OTTYさんはベスト8、マモさんは準優勝でした。北海道(とくに札幌圏)は東京以上に素数大富豪熱が高く、もりしーさんを筆頭に優勝が狙える実力をもつプレーヤーが多い地域です。今まで以上にハイレベルな試合が予想されます。1本目の先手はOTTYさんです。

1本目(15:40:28~15:44:17*1 )

初期手札О:(2346679JKXX) マ:(A36889TTQQK)
OTTYさんは「7枚出しの名手」と呼ばれているらしく、多枚出しで相手を圧倒する戦いを得意とするプレーヤー。前期のMathpower杯では3枚出し、せきゅーん杯では4枚出しが主流だったことを考えるとせきゅーんさんの「数年先を行っている感じ」というコメントにも同感です。そのOTTYさんの初期手札ですがジョーカー2枚で絶好のチャンス。KKJ(3枚出し最大素数)やKJQJ(4枚出し最大素数)があるので今回は7枚出しではなく3・4枚出しで堅実に勝利を狙いそうです。一方のマモさんは絵札5枚で悪くはないですが、OTTYさんの初期手札がもっとよい上に先手がOTTYさんですから苦戦を強いられそうです。

1.О:3467
2.マ:D(5)6988,P(689T)
OTTYさんの1手目は3467。四つ子素数346X「三四郎」を出します。マモさんは次に来るであろうOTTYさんの勝負手を警戒してカマトトして手札を補充。

3.О:KJXX|X=Q|X=J
4.マ:D(T)%
OTTYさんはほぼノータイムでKJXX|X=Q|X=Jを出します。マモさんはドローして4枚目のTを引きます。KJQJを超えるには合成数出ししかありませんが、手札に揃っておらずパス。
f:id:graws188390:20190207181408p:plain

5.О:269#
最後の3枚・269を出してOTTYさんの上がり。

OTTYさんが初期手札を「4・4・3」で組み切って勝利しました。

2本目(15:44:57~15:48:54)

初期手札マ:(44578JQKKXX) О:(A3346699JJK)
1本目は先手のOTTYさんがジョーカー2枚の初期手札から難なく勝利しましたが、今度はマモさんがジョーカー2枚の初期手札を手に入れました。この勝負はマモさんが有利な様子。OTTYさんはそれに対抗することができるか。初期手札に(JJK)とあり、Qを引けばKJQJが揃います。ここで解説ルームにせきゅーんさんが玉子焼きを差し入れます。時刻はもうすぐ午前4時、予期せぬ展開があるかもしれません。

1.マ:844X|X=3
2.О:D(A)946A
3.マ:KJQX|X=J
4.О:D(Q)%
マモさん、1手目からジョーカーを使って844X|X=3を出します。いきなりジョーカーを含めて出すというのは単にジョーカーを使わないで出せる素数がなかった場合も考えられますが、みうらさんが言うようにジョーカーを1枚消費してもなお「余裕がある」場合が多いです。ジョーカーを温存するよりも偶数の消費を意図した模様。OTTYさんは946Aを出します。946X「釧路」はX=A,3,7,Kで素数になり、四つ子素数に次いで覚えやすい素数たちです。それに対しマモさんが出したのはKJQX|X=J。OTTYさんはドローと同時にパスを宣言。KJQJを超える合成数出しは最低でも10枚必要(KJKT=2*5*KJKA)なのでドローしても9枚にしかならないOTTYさんは何をドローしても返すことはできません。
f:id:graws188390:20190207181530p:plain

5.マ:57[GC]
マモさんの残り手札は(57K)。実はこの3枚はどう並べ替えても素数にならない詰んでるセットなのですが、57があるのでグロタンカットから……

6.マ:K#
Kで上がり。マモさんが勝利し1-1のタイになります。

1本目とほぼ同じ展開となり、先手のマモさんが勝ちました。
ここで解説ルームにもりしーさんが登場。

3本目(15:50:01~16:02:55)

初期手札О:(A23567889JQ) マ:(22489TTJKKK)
1本目、2本目ともに先手の初期手札がよく、それが先手の勝利につながりましたが、今回の先手OTTYさんの初期手札は絵札2枚と苦しい。ラマヌジャン革命A729を起こすことができますが、カウンターされた際に後が続かない。後手のマモさんには絵札6枚の強い初期手札が入りました。KKJ、KJTKなどOTTYさんに十分対抗できる手札です。

1.О:D(9)57[GC]
1手目、OTTYさんはドローして9を引きます。ラマヌジャン革命を見切りグロタンカット。グロタンカットはその前後に2回ドローの機会があり、絵札を引くチャンスが増えます。絵札の少ないOTTYさんは次のドローに賭けることを選んだようです。

2.О:D(4)884A2QJ3699,P(A336789QQQX)
2度目のドローは4、絵札ではありませんでした。OTTYさんはなんと手札11枚をすべて出します。これが素数であればそのまま上がりとなりましたが、8兆越えのこの数は素数ではありません(8841212113699=7*29*43552769033)。結果としてペナルティ11枚となりましたが、もともと手札が苦しかったOTTYさんにとっては絵札を引く絶好機。Q・3枚、ジョーカーを手に入れますがKが1枚もないのがネックか。実際はマモさんがKを3枚持っています。もりしーさんによればOTTYさんは普段から一か八かの全出しをしているそう。大会前には「手札悪かったら一気に全出しして(素数であることに)賭けるかたくさん引くかにする」と話していたらしい。
f:id:graws188390:20190207181554p:plain

3.マ:8429
4.О:D(T)XQTJ|X=K,P(456X)
マモさんは8429を出します。この後KJTK→2TKとまっすぐ勝利を狙うようです。OTTYさんが出したのはXQTJ|X=Kですがこれは素数ではありません(13121011=101*163*797)。(TJQK)から作れる最大の素数はKTQJであることをOTTYさんが知らないはずはないので、このペナルティは故意のもの。単にカマトトするだけなら8429より大きければ何でもよかったのですが、あえて絵札4枚を見せることでマモさんへの牽制を図ったようです。手札がさらに増え、KJQJ、さらにはそれを超える4枚出し合成数があると思わせる作戦です。ペナルティで引いたカードの中に2枚目のジョーカーがありジョーカーを2枚使えばKJQJが出せる態勢に。またOTTYさんからQとジョーカーがすべて見えているのでマモさんがKJQJを持っていないこともわかりました。
4手目終了時の両者の手札 О:(AA23334456667888999TJQQQQXX)(残27枚) マ:(2TTJKKK)(残7枚)

5.マ:KJTK
6.О:D(6)XJQX|X=K|X=J
7.マ:D(J)%
マモさんは当初の作戦通り、KJTKを出します。絶対に親をとりたいOTTYさんはジョーカー2枚を使ってXJQX|X=K|X=J。マモさんはドローしてパス。

8.О:D(3)8A9457
9.マ:D(T)%
何とか手番をとったOTTYさん。マモさんの残り手札は4枚なので6枚以上出せば手番を維持できます。出したのは8A9457でこれは素数。ちなみにKJQJ超えの合成数出しにこの素数を含むものがあります(KJKQ=2^4*8A9457*2 )。

10.О:D(5)8QT2Q4A39
11.マ:D(4)%
マモさんがドローして手札5枚になったので、確実に手番を保持するためのハードルが7枚に上がりました。OTTYさんは8QT2Q4A39を出します。9枚出しでしかも素数! 大会史上初の9枚出し成功*3、さらに出された素数としての大きさも記録更新*4です。これには解説ルームは呆然、もりしーさんでさえも「何だよコレ……」と漏らすほど。なお81210212413Xは四つ子素数。OTTYさんは8QTから始まる素数を多く覚えているらしく、それでこの四つ子素数を知っていたようです。
11手目終了時の両者の手札 О:(3335666689Q)(残11枚) マ:(24TTJK)(残6枚)

ja.primedaifugo.wikia.com

12.О:D(5)853Q3663669,P(AA2247789JK)
OTTYさんは残り11枚まで手札を減らしたものの手札に3の倍数が多く残り依然として厳しい状況。手札に5・1枚を残しまたも11枚出し。祈りながら出すものの叶わず、判定は合成数(853123663669=23*12497*2968099)。手札は再び23枚まで膨れ上がります。

13.マ:D(7)72KTTJ
14.О:D(5)%
ようやく手番が回ってきたマモさん。ドローして72KTTJを出します。残りは4の1枚。最後の1枚に素数ではないカードを残したのは72KTTJが勘出しではなく素数だと知っていたからだと思われます。OTTYさんはドローを含めた24枚の手札に絵札はわずか3枚。72KTTJを超える数を出すことができずパス。

15.マ:D(X)4X|X=A#
4について素数になるのはA,3,7の3種。マモさんのドローはジョーカーで見事上がり。準決勝進出に王手をかけました。

OTTYさんが2度も11枚出しを試みるも及ばず、マモさんが3本目を制しました。

4本目(16:03:52~16:07:41)

初期手札О:(A2334688TQK) マ:(44556799TJQ)
両者ともに絵札3枚の初期手札です。1桁カードを見てみますと下(A23)が多めのOTTYさんのほうが扱いやすそうです。というのは絵札を使う素数をQならA2のように分けて出すことができるからです。

1.О:D(2)8QT2A24K3
2.マ:9QJT65447,P(?????????)*5
先ほどマモさんに王手をかけられ後がないOTTYさんはドロー、2を引きます。出したのは8QT2A24K3。直前の勝負で出した四つ子素数81210212413Xで勝負に出ます。マモさんが返せなければ863で上がり、返されると大ピンチに陥ります。マモさんは手札に59を残して9QJT65447を出しますがこれは合成数(912111065447=389*991*2366053)。ちなみに並べ替え最大奇数の976544QTJは素数でした。
f:id:graws188390:20190207181621p:plain

3.О:863#
OTTYさんが863で上がり。なお3枚出しにおいて6と8を両方使う素数が863とその下位互換683しかないので863は3枚出しの中でもとくに覚えるべき素数のひとつになります。

4本目はOTTYさんが勝利し2-2。試合は最終・5本目に入ります。

5本目(16:08:37~16:12:55)

初期手札マ:(A234579TQKX) О:(A334458TTJX)
マモさんの初期手札は絵札4枚。グロタンカットとKQの合成数出しに気付けば次に挙げるほぼ勝ち確*6の出し方があります:

  • KQ=2^5*4A→X7|X=5[GC]→9T3

また11種11枚合成数出しもあります:

  • XQ253=4A*T9*K7|X=6

一方のOTTYさんも絵札4枚。手札を544A3,3,8TTXJと並べています。マモさんが小さい5枚出しで来たら544A3、次いで勝負手として8TTXJ|X=Kを出し最後に3で上がりという作戦でしょうか。あるいは544A33も素数なので8TTXJ|X=K、544A33の順に出すこともできます。

1.マ:D(K)57[GC]
1手目、マモさんはドローしKを手に入れます。考える時間を稼ぐためか、ひとまずグロタンカット。
f:id:graws188390:20190207181647p:plain

2.マ:924A3
3.О:D(J)TTJJX|X=J
4.マ:KKQTX|X=J#
マモさんの手札は10枚。絵札5枚でKKQTX|X=J(5枚出し2番目に大きい素数)がつくれるので残りの(A2349)で5枚出しがつくれればよいことになります。出したのは924A3。自信がなさそうな表情でしたがこれは素数。OTTYさんはこれを受けて作戦変更。ドローで手に入れたJを加えてTTJJX|X=Jを出します。手札の中で出せる最大の5枚出し素数です。しかし反撃も及ばずマモさんがKKQTX|X=Jを出してゲームセット。準決勝進出はマモさんになりました。

予想を上回る戦いが繰り広げられた試合はフルセットの末、マモさんに軍配が上がりました。

twitter.com

講評

上級者同士の試合は今までにないほど大きな素数の打ち合いになり、解説陣も追うことができないほどでした。
1本目・2本目は先手が初期手札11枚を4枚・4枚・3枚に分けて順に出すという戦略で勝利しています。この「4・4・3」戦法は2017年12月のもりしーさんの記事で紹介されていますが、当時は手札を組めるようになるために多くの素数を覚えなければならないという難点がありました。しかし、投稿からMathpower杯までの1年弱でその難点をクリアしたプレーヤーが現れました。現在では素数大富豪における正攻法として確立されています。
prm9973.hatenablog.com
3本目はOTTYさんが全出しなどでマモさんに揺さぶりをかける派手な勝負となりました。手札を大量に抱えることで一見通りそうな素数も返されてしまうのでは? と思わせ戦略を変更させます。手札が増えるということはその分上がりから遠ざかるので、手札を一気に消費するスキルが必要になります。前述の正攻法よりも高度な作戦ですが、そのまま戦っては競り負けてしまうような初期手札でも勝利を目指すことができます。
4本目はOTTYさんが1手目から9枚出しを決め勝利をもぎ取りました。初期手札11枚および最初のドローを加えた12枚の中に所望の9枚が含まれる確率は非常に低いですが揃ったときに出した際の威力は強烈です。できるだけそのような素数をたくさん覚えるために四つ子素数などが利用されることが多いです。
5本目は5枚出し攻勢でマモさんが勝ちました。初期手札を「5・5・1」に分ける戦法も先ほどの「4・4・3」と同じようにオーソドックスな戦い方となっています。3・4枚出しでは使いづらい絵札の組み合わせでも9TQJJやTQTTJなどの5枚出しの勝負手になりうる素数があるので、「4・4・3」を習得したら「5・5・1」に挑戦して戦略のバリエーションを増やしましょう。

白熱した試合を数譜でもう一度。

1本目
О:(2346679JKXX)
マ:(A36889TTQQK)
О:3467
マ:D(5)6988,P(689T)
О:KJXX|X=Q|X=J
マ:D(T)%
О:269#


2本目
マ:(44578JQKKXX)
О:(A3346699JJK)
マ:844X|X=3
О:D(A)946A
マ:KJQX|X=J
О:D(Q)%
マ:57[GC]
マ:K#


3本目
О:(A23567889JQ)
マ:(22489TTJKKK)
О:D(9)57[GC]
О:D(4)884A2QJ3699,P(A336789QQQX)
マ:8429
О:D(T)XQTJ|X=K,P(456X)
マ:KJTK
О:D(6)XJQX|X=K|X=J
マ:D(J)%
О:D(3)8A9457
マ:D(T)%
О:D(5)8QT2Q4A39
マ:D(4)%
О:D(5)853Q3663669,P(AA2247789JK)
マ:D(7)72KTTJ
О:D(5)%
マ:D(X)4X|X=A#


4本目
О:(A2334688TQK)
マ:(44556799TJQ)
О:D(2)8QT2A24K3
マ:9QJT65447,P(?????????)
О:863#


5本目
マ:(A234579TQKX)
О:(A334458TTJX)
マ:D(K)57[GC]
マ:924A3
О:D(J)TTJJX|X=J
マ:KKQTX|X=J#

次の対戦は私とnishimura@icqk3さんです。

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:6手目の時点でジョーカー2枚使えば出せた合成数出しのひとつ。KQJQ=2^3*3*TA*54A3ならジョーカー1枚の消費で出せました。

*3:8枚出しはこの20分前にもりしーさんが2A3J3J3Aで達成しています。

*4:それまでの記録はこの1時間半前に私が出したKAATQTJ(131110121011、約1300億)でした。

*5:マモさんがペナルティで引いたカードを並べきる前に勝負がつき、カードを片付けたため何を引いたかは不明です。そのため本来はカッコ内に引いたカードを書くところ”?”で表しました。”?”の個数でペナルティの枚数を表しています。

*6:KK=K*TAで返されない限り勝ち。

【第3期Mathpower杯】準々決勝-1 もりしー-ぶっち

大変お待たせいたしました。今回より準々決勝に入ります。2回戦までは2本先取でしたが、準々決勝から3本先取になります。白熱した試合が増えますね。
1試合目はもりしーさんとぶっちさんという顔合わせ。もりしーさんは前期Mathpower杯覇者。2回戦(vsくじらさん)の様子は以前書きました。ぶっちさんは第1期ベスト4の古豪。今期はシードで2回戦でいとうさんに勝利しての準々決勝進出です。なおこの試合から素数判定員が変わっております。じゃんけんによりぶっちさんが1本目の先手となりました。

1本目(15:02:48~15:12:51*1 )

初期手札 ぶ:(A446778TTKX) も:(A2567899QQQ)
ぶっちさんは絵札4枚(ジョーカーを含む)で悪くはないですが3,4枚出しでは決定的な勝負手になりそうな素数はつくれず攻撃力がない印象。もりしーさんの初期手札はQが3枚あることがカギとなりそうです。Qは2,3枚出しでは素数のバリエーションが少なく使いづらいカードですが、4枚出し以上では絵札としてその威力を十分に発揮できます。先手であれば即座に多枚出ししたいところですが今は後手。ぶっちさんが少ない枚数で出し続ければQが「お荷物」になります。

1.ぶ:647
2.も:D(4)658,P(QKX)
ぶっちさんの1手目は647。64XはX=A,3,7で素数になる三つ子素数で3枚出しの中では使いやすい・覚えやすい素数です。「むじな」で通じるらしい。対するもりしーさんはドローの後658。初期手札が悪いと踏んだのかカマトトに出ました。そして4枚目のQ、K、ジョーカーを手に入れます。

3.ぶ:D(3)47
4.も:D(5)57[GC]
ぶっちさんは47を出します。2枚出しでは57より小さい素数は出さないほうがよいです。というのは57を出されるとグロタンカットで場が流れ、相手は絵札を消費することなく親になってしまうからです*2。そのため59,6A,64=2^6など57より少し大きい2枚出しが好まれて出されます。もりしーさんは5,7を1枚ずつ持っていますが5は他の手札数枚とともに左側に寄せ大物手の1枚として使う様子で、57を出すかは何とも言えない状況です。ドローするとなんと5を引いてきました。これで57を出せ、さらに組んだ手札を崩さずに済みました。
4手目終了時の両者の手札 ぶ:(A38TTKX)(残7枚) も:(A2456899QQQQKX)(残14枚)

5.も:D(9)9629
6.ぶ:8TTK,P(237J)
もりしーさんはドローして9。Q・4枚に続いて9も3枚となりました。9629(黒肉)を出します。前の試合の8629(ハム肉)もそうですが「~肉」で終わる語呂合わせ素数はたくさんあります。まさに飯テロ。ちなみにもりしーさんの手札右側の(49QK)は4KQ9と並べれば「鹿肉(4KA29)」と読める素数になります。ぶっちさんが出したのは8TTK。残り手札は(A3X)で8TTKで勝負に出たようです。しかしこれは合成数(8101013=31*261323)。再びもりしーさんの手番になります。

7.も:X5QQQ8A|X=3
8.ぶ:%
もりしーさんが満を持して出したのはX5QQQ8A|X=3。35億!*3ぶっちさんは時間ギリギリでA3T2T8Kを出しますが場の3512121281よりも小さいため出すことは認められず強制的にパスとなります。
f:id:graws188390:20190106194318p:plain

9.も:9Q4K#
最後にもりしーさんが出したのは9Q4K。この4枚で出せる最大の素数で上がりとなりました。

35億素数が綺麗に決まりもりしーさんが1本目を取りました。

2本目(15:13:21~15:29:48)

初期手札 ぶ:(A22447789JX) も:(33455667799)
ぶっちさんの初期手札は絵札がJ,ジョーカーの2枚と少なめですがラマヌジャン革命A729が揃っています。もしこれを出してもりしーさんがパスしたとすると残り手札は(24478JX)。ここからたとえば2→X[IN]→7448J*4という出し方が考えられます。もりしーさんはなんと絵札ゼロ。なお初期手札11枚に絵札(T,J,Q,K,ジョーカー)が1枚も含まれない確率は約0.63%(160回に1回程度)でなかなか珍しい。革命時に強いAや2も手札になく、いきなりピンチといった状況。
f:id:graws188390:20190106194503p:plain

1.ぶ:D(6)A6=2^4
2.も:D(T)57[GC]
ぶっちさんはシンキングタイムが終わるとすぐにドロー。6を引きます。その6を使ってA6=2^4の合成数出しです。念のため合成数出しについて補足しておきますと、素因数場で指数出しを使う際、底はもちろん素数でなければなりませんが指数は2以上であれば素数でなくてもOKです(今回の場合は4)。また指数部分をさらに冪乗で出すこともできますが、その場合は右から計算します(たとえば2^3^2は2^(3^2)=2^9=512であって(2^3)^2=8^2=64ではない)。ぶっちさんはこれで手札を4枚消費しましたが場はA6なので1本目と同様グロタンカットされる可能性があります。もりしーさんはドローの結果、絵札Tを引きます。少しの時間考えてから57を出しましたが、グロタンカットで手番を取ったあとの戦略を練るのに時間を使ったようです。

3.も:D(6)66653
4.ぶ:D(8)4889J,P(A28TK)
3手目のもりしーさんのドローは6で手札の6は3枚に。それを66653で全部使います。解説ルームのせきゅーんさんによれば66653は左切り取り可能素数、すなわち66653,6653,653,53,3と左から1桁ずつ切り取っていってできる数がすべて素数です。素数1つを覚えるだけでいくつも同時に素数を覚えられることもあり、記憶しているプレーヤーも多いかと思います。対するぶっちさんは4889Jを出します。これが素数で、場が流れればX[IN]→727で上がりでしたが4889Jは合成数(488911=23*29*733)。手番を取ることができません。
4手目終了時の両者の手札 ぶ:(A224778889TJKX)(残14枚) も:(34799T)(残6枚)
integers.hatenablog.com

5.も:D(3)3
6.ぶ:X[IN]
もりしーさんがドローしたのは3。絵札は2手目に引いたTのみでまだまだ苦しい状況が続いています。結局ドローした3をそのまま出しました。ぶっちさんはこのままもりしーさんに親を握り続けられるのを嫌ってかジョーカーを出します。

7.ぶ:89
8.も:D(T)94,P(QQ)
ジョーカーで手番を得たぶっちさん、ここで何を出すかが重要になります。出したのは89。もりしーさんはドローの後、94を出してさらに山札を引きます。手番は再びぶっちさんに移りますが、この1手で絵札を3枚手に入れました。
8手目終了時の両者の手札 ぶ:(A2247788TJK)(残11枚) も:(34799TTQQ)(残9枚)

9.ぶ:47
10.も:D(Q)T9
11.ぶ:8J
12.も:D(K)QK
13.ぶ:D(K)%
9手目にぶっちさんが出したのは47。2枚出し攻勢を続けるようです。もりしーさんはまたも絵札(Q)をドローし、T9を出します。せきゅーんさんによると109は地球と太陽の直径比だそうです*5。ぶっちさんは即座に8Jを返します。ここでもりしーさんは絶好のタイミングでKをドローしQK。ぶっちさんはドローしてパスします。

14.も:QQT3
15.ぶ:%
もりしーさんはQQT3を出します。今が勝負の時と睨んでの4枚出し。QQT3は4枚出しの中ではそこまで大きな素数ではありませんが、ぶっちさんが4枚出しをあまり覚えていないだろうという読みも込めて出したと思います。ぶっちさんの残り手札は(A2278TKK)。7TKKが出せれば822Aで上がれます。ところが時間いっぱいのところでぶっちさんが出したのはKKT87。枚数が違うため手札に戻されパスとなります。

16.も:947#
もりしーさんが残りの手札を出し切って2本連取となりました。

もりしーさんは初期手札絵札ゼロという大劣勢を見事にひっくり返し勝利しました。

3本目(15:30:46~15:37:29)

初期手札 ぶ:(245578TTTQX) も:(AA233789JJQ)
3本目を前に帽子を脱いだぶっちさん、巻き返せるか。初期手札は絵札がジョーカーを含めて5枚あるものの奇数が7しかなく素数が非常につくりづらい。もりしーさんは絵札3枚でまずまずの初期手札ですがKがないのが惜しい。ラマヌジャン革命を起こすのも作戦のひとつとして考えられます。

1.ぶ:D(2)QT27,P(6667)
1手目、ぶっちさんはドローしますが引いたのは2。奇数を引けず。QT27を出しますが素数ではありません(121027=37*3271)。ちなみに(2,7,T,Q)は詰んデレセットです(素数になるのは2TQ7のみ)。偶数を消費することはできませんでしたがペナルティは奇数を引くチャンスでもあります。しかし、ペナルティで引いた4枚は(6667)。奇数は1枚だけであまり嬉しくない結果に。

2.も:D(5)57[GC]
もりしーさんはドローした後、長考に入ります。まずは残り10秒まで考えてからグロタンカット。

3.も:D(3)2A3J3J3A
4.ぶ:%
そして再びドロー。要領よく手札を並べ替え2A3J3J3Aを出します。大会史上初の8枚出し成功です。解説ルームも出された当初は困惑の様子でしたが2のあとに131(KA)を3つ並べたものだとわかると「『ニカカカ』*6って何ですか?」(みうらさん) まあ何であれ覚えやすいならいいんじゃないんですかね。なお213113113Xは四つ子素数だそうです*7。対するぶっちさんはQT466687を出しますがまたも場より小さい数を出してしまったので認められず、時間切れで強制パス。
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5.も:Q89#
もりしーさんが最後に出したQ89は素数。3本目ももりしーさんが勝利し準決勝進出を決めました。

前期Mathpower杯覇者がぶっちさんをまったく寄せ付けない試合運びでストレート勝ち。

講評

この試合はまさにもりしーさんの独壇場となりました。もりしーさんは今期のMathpower杯に向けて「35億素数」や大きな四つ子素数を中心に素数を覚えてきたようで、その成果が現れた結果となりました。Mathpower杯は2019年1月現在その試合経過が生放送される唯一の素数大富豪大会なので「魅せプレイ」を積極的に狙っていく絶好の機会です。とくに「35億素数」が出されたときの盛り上がりは今大会の名場面のひとつになりました。詳しいいきさつについてはもりしーさん自身がMathpower杯を振り返ったこちらの記事を参照。
prm9973.hatenablog.com

2本目は前述のような映える素数はなかったもののもりしーさんの底力が発揮された勝負だったと感じます。2本目のもりしーさんの初期手札は絵札がなく。その時点で負けを覚悟してもおかしくない状況でした。しかしもりしーさんは諦めません。まずグロタンカットで親をとると66653を出します。これは偶数を消費するだけでなく多枚出しによってぶっちさんが返せずに再び親をもつことが大いに期待できる出し方です。ぶっちさんがペナルティを受けた後、もりしーさんは3の1枚出し。ここがこの勝負のポイントとなりました。この時点でぶっちさんから見るともりしーさんは初期手札から3枚ドロー、8枚出して残り手札は6枚。出しているのはすべて1桁のカードですからJ,K,ジョーカーが手札にあってそれを温存しているように見えます。もりしーさんの残り手札にジョーカーがあったとするとぶっちさんはジョーカーを返さない限りもりしーさんが再び親となります。なのでぶっちさんがあの場面でジョーカーを出したのはそれを阻止するということで悪手ではありません。ただしもりしーさんからするとぶっちさんにジョーカーを出させたという点ではもりしーさんの作戦勝ちといえるでしょう。

その後ぶっちさんは2枚出し攻勢を仕掛けます。2枚はすべての偶数カードが消費できる最小の枚数で素数大富豪の入門としては基本ですが、戦略面からいうと2枚出しは注意を要します。まず2枚出し素数が揃いやすいこと。初期手札が悪くてもドローやペナルティを繰り返せば最大素数(QK)やそれを超える合成数出し(KQ=2^5*4Aなど)が3枚出し以上に比べて容易に揃います。しかも1手で消費できる枚数が少ないので手数が多くなりドローの機会も多くなります。そのため2枚出しが主体の勝負では初期手札の優劣はあまり問題になりません*8。ぶっちさんの2枚出しに対し、もりしーさんはカマトトやドローを駆使し絵札をためてQKを揃えました。

次にグロタンカットの存在です。前述のように57を出すと即座に親がとれるので57より小さな2枚出しは(相手にグロタンカットを出されないように)避けることが多いです。ところが4を使う2枚出し素数はすべて57より小さい(4A,43,47)ので4を2枚出しで出そうとなると57より小さくても出すか、または合成数出し*9をしなければなりません。つまり4は2枚出しでは消費しにくいのです。ぶっちさんが57より小さい2枚出しをしたのがこの試合を通して2回ありましたが、その両方に4が含まれています(47,A6=2^4)。そして2回とももりしーさんにグロタンカットを出されています。

さて、もりしーさんにストレート負けを喫したぶっちさんですが、反撃の機会は何度かありました。1本目のX5QQQ8A|X=3や3本目の2A3J3J3Aの多枚出しの直後の勘出しは可能性は低いものの決まれば勝負の展開が大きく変わっていたかもしれません。実際は出したものの場に出ている数より小さいため認められず、残念な結果になってしまいました。また、3本目は初期手札が偶数ばかりだったので、思い切って初手全出しもありだったと思います。もし素数であればそれで1本取れますし、素数でなかったとしても手札が20枚以上となって戦略の幅が広がり、もりしーさんも戦いづらくなったかもしれません。ただし後者の効果は全出しをする方がある程度多枚出しを知っていることが前提となり、今回の場合その効果はあまり期待はできなかったでしょう。とはいえ全出し成功が一番の「魅せプレイ」であることは言うまでもありません。

この試合の数譜を改めて見てみます。

1本目
ぶ:(A446778TTKX)
も:(A2567899QQQ)
ぶ:647
も:D(4)658,P(QKX)
ぶ:D(3)47
も:D(5)57[GC]
も:D(9)9629
ぶ:8TTK,P(237J)
も:X5QQQ8A|X=3
ぶ:%
も:9Q4K#


2本目
ぶ:(A22447789JX)
も:(33455667799)
ぶ:D(6)A6=2^4
も:D(T)57[GC]
も:D(6)66653
ぶ:D(8)4889J,P(A28TK)
も:D(3)3
ぶ:X[IN]
ぶ:89
も:D(T)94,P(QQ)
ぶ:47
も:D(Q)T9
ぶ:8J
も:D(K)QK
ぶ:D(K)%
も:QQT3
ぶ:%
も:947#


3本目
ぶ:(245578TTTQX)
も:(AA233789JJQ)
ぶ:D(2)QT27,P(6667)
も:D(5)57[GC]
も:D(3)2A3J3J3A
ぶ:%
も:Q89#

次回はOTTYさんとマモさんの「北海道対決」です。

お知らせ

改めまして新年あけましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いいたします。
さて、年々盛り上がりを見せる素数大富豪ですが、2019年から「素数大富豪で遊ぼう会」*10の初代幹事・二世さんの呼びかけでオンライン素数大富豪デーが開催されることになりました!
nisei.hatenablog.com
これはオンラインで素数大富豪ができるサイト素数大富豪オンラインを使って素数大富豪をしよう、という企画です。予定では毎週日曜日の19時からおよび毎月13日の21時からで、今日はその初日です。誰でも参加可能なのでぜひアクセスしてみてください! 私も参加するつもりなのでよろしくお願いいたします。

*1:時間はタイムシフトにおけるこの勝負の放送時間です。

*2:それで上がりとなる場合や自分から5や7が3~4枚見えているなどで相手が57を持っていないと思われる場合はこの限りではありません。

*3:この”!”は階乗を表す記号ではありません。感嘆を表す記号です。また35億は2010年代半ばにおける世界の男性人口の概数です。

*4:「744はj-不変量の定数項」tsujimotterさんが2018年8月のロマンティック数学ナイトで紹介した素数

twitter.com

*5:INTEGERSにも書いてありました。integers.hatenablog.com

*6:素数を語呂合わせで覚えるのにKAで「カ」、TAで「タ」と読むことが多いです。日本語に頻繁に現れる音にもかかわらずうまく対応する数字がないのでこれは非常に便利です。

*7:213113113Xについてのもりしーさんのツイート

twitter.com

*8:裏を返せば多枚出しは揃いにくいので初期手札の時点でどれだけ揃っているかが重要になります。多枚出しをするプレーヤーが増えて「素数大富豪は運ゲー」といわれるようになった理由のひとつです。

*9:KQ=2^5*4Aの他に64=2^6,8A=3^4,86=2*43,94=2*47などが使いやすいです。

*10:札幌を中心に月1,2回開催される素数大富豪がしたい人が集まって素数大富豪をするイベント。もりしーさんが二世さんから引き継いで幹事を務めている。

極める合成数出し ~ふみこさんは愛に生く~

この記事は素数大富豪Advent Calendar 2018の19日目の記事です。
adventar.org


今年も早いもので残りK日となりました*1。さて、本日、私・カステラが取り上げるテーマは「合成数出し」です。素数大富豪は「決められた出し方に沿ってカードを出し最も早く手札をなくしたプレーヤーが勝つゲーム」という点では大富豪やページワンなどと同じですが、「任意の(2以上の)整数は素数の積に一意に分解される」という素数の特徴*2が反映された合成数出しこそ素数大富豪を素数大富豪たらしめていると言ってよいでしょう。合成数出しの誕生のいきさつは素数大富豪の考案者・せきゅーんさんのブログに詳しく書かれています。
integers.hatenablog.com
この記事ではそんな合成数出しについて主に戦略面を中心に語っていきます。

強い合成数出し

素数出しにおいても強い素数があるように、合成数出しにも強い合成数が存在します。

2枚出し
  • KT=2*5*KA
  • KJ=3*19*23
  • KQ=2^5*4A
  • KK=K*TA

以上の4つが2枚出し最大素数QKより大きな合成数です。単に強いだけでなく2枚出しで手札を一度に5~7枚も消費できることも魅力的です。とくにKQについては初期手札の時点から揃っている場合が他と比べて多いので、見つけたときにはそれを勝負手にして手札を組むとよいでしょう。

3枚出し
  • KKQ=2^4*29*283
  • KKK=3*7*K^2*37

3枚出し最大素数KKJより大きな合成数はこの2つですが、2枚出しと比べると出される頻度は一気に下がります。というか揃うことが滅多にない。そこで比較的出しやすく戦略に幅をもたせることからオススメするのが合計8枚消費の3枚出しです。これは初期手札11枚を

  • (3枚出し)→(8枚消費の3枚出し)

に分けて出すことでKKJなどの強い素数がなくても、最初の3枚出しに対する相手のカウンターが小さければ残り8枚を一気に出して上がることができる「必殺技」です。以下に2万以上の3枚出しのうち、合計8枚で出せる合成数をまとめました。あなたのお気に入りを見つけて実戦で出してみましょう。

  • 2JT=2*5*2AJ
  • 2JK=43*49A
  • 2KT=2*5*2KA
  • 2KJ=TA*2AA
  • 3TJ=3*T337
  • 3JJ=53*587
  • 3QT=2*5*3QA
  • 3QJ=23^2*59
  • 3QK=7^3*7*A3
  • 3QK=7^2^2*A3
  • 3QK=7^2*7^2*K
  • 3QK=7^2*7*7*K
  • 3QK=7*7*7*7*K
  • 4JT=2*5*4AJ
  • 4JJ=7^2*839
  • 4JJ=7*7*839
  • 4KJ=T9*379
  • 4KQ=2^5*Q9A
  • 5TT=2*5*5TA
  • 5TK=K9*367
  • 5JJ=3^4*63A
  • 5JK=79*647
  • 5QJ=83*6A7
  • 5KJ=K*3947
  • 5KK=23^2*97
  • 6TT=2*5*6TA
  • 6QT=2*5*6QA
  • 6KT=2*5*6KA
  • 6KQ=2^7*479
  • 7JK=7*TA59
  • 7QT=2*5*7QA
  • 8JT=2*5*8AJ
  • 8JQ=2^3*TK9
  • 8QJ=K*6247
  • 9KK=Q7*7A9
  • TTJ=83*QA7
  • TJT=2*5*TAJ
  • QTT=2*5*QTA
  • KQT=2*5*KQA
4枚出し以上

4枚出し以上になると合計11枚の合成数出しが狙えるようになります。つまり初期手札の全出しです。素数大富豪cpuと対戦していると時折cpuが初期手札全出し合成数をすることから、初期手札11枚が実は合成数出し可能であったということが少なからずあるわけです。とは言うものの実際にそれをその場で計算して見つけるのは非常に困難です。しかも、初期手札は合成数出しの形の順番どおり都合よく並んでいるわけではありませんから仮に覚えていたとしてもそれをバラバラに並んだ初期手札から見つけるのは容易ではないです。そこでより見つけやすい合成数を優先して覚えるのがひとつの作戦です。どんな合成数が「見つけやすい」かは個人の感じ方によるため、一概に言うことはできませんが、ここでは使用するカードがばらけているものを取り上げます。初期手札にダブりがあるかどうかは簡単に判断できるので、もしなかった場合は以下の合成数出しが出せるチャンスがあります。

必要な11枚がすべて異なる11種11枚合成数出し(カッコ内は含まれない2種)(追記(2021年2月23日): はちさんにより11種11枚合成数出しは以下の35個ですべてであることが検証されました。*3 )

  • 4AJQ=2^3*K*59*67 (8T)
  • 4K6T=2*3*5*A7*8J (9Q)
  • 6JK4=2*3A*9857 (TQ)
  • 7Q9T=2*5*J*648A (3K)
  • 85KQ=2^4*7*J*69A (3T)
  • QKT6=2*7A*8543 (9J)
  • 85674=2*3*T9*KA (JQ)
  • T5496=2^3*KA87 (JQ)
  • Q5378=2*J*4A*K9 (6T)
  • Q9A84=2^5*J*367 (TK)
  • K8976=2^5*43*TA (JQ)
  • 3869Q=2^5*T7*AK (4J)
  • 5Q86A=43*J927 (TK)
  • 58AK6=2^4*3*QT7 (9J)
  • 58KA7=J*43*Q29 (6T)
  • 5928J=47*Q6A3 (TK)
  • 6Q253=4A*T9*K7 (8J)
  • 68AK4=2*97*35J (TQ)
  • 7A6T4=2^3*895K (JQ)
  • 76T48=2^3*95KA (JQ)
  • 8T7A4=2*3*K5J9 (6Q)
  • 8523K=7*J*AT69 (4Q)
  • 9Q7A8=2*43*T6K (5J)
  • 9624J=857*AQ3 (TK)
  • T8Q23=J*K*756A (49)
  • T853Q=2^7*6A*K9 (4J)
  • AQJ59=K*86243 (7T)
  • QA5T4=2^7*J*863 (9K)
  • A78629=3*J*54K (TQ)
  • 3654A7=K*28T9 (JQ)
  • 63852A=K*49J7 (TQ)
  • T9365A=K*84Q7 (2J)
  • AT7469=J*83*QK (25)
  • J65A84=2^7*9T3 (QK)
  • Q84A73=J^2*T6K (59)

A~Tにあと1枚加えてできる合成数出し(カッコ内は加えるカード)

  • 4T29A=7*586A3 (A)
  • 74285A=3^6*TA9 (A)
  • 65T8=2*2*4A*397 (2)
  • 43A56=2*2*T789 (2)
  • 83426=2*7*59*TA (2)
  • T2754=2*83*6A9 (2)
  • 453389=67^2*TA (3)
  • T3648=2^5*4A*79 (4)
  • T6875=3^2*5^4*A9 (5)
  • 968T=2*3*5*7*46A (6)
  • 656A8=2*7*43*T9 (6)
  • 46578=2*3*7*AT9 (7)
  • T7683=257*4A9 (7)
  • T8937=4A*2657 (7)
  • 462T7=53*87A9 (7)
  • 269487=3^5*AT9 (9)
  • 6T48A=T3*5927 (T)
  • J65A84=2^7*9T3 (J)
  • 85674=2*3*T9*KA (K)
  • T5496=2^3*KA87 (K)
  • K8976=2^5*43*TA (K)
  • 7A6T4=2^3*895K (K)
  • 76T48=2^3*95KA (K)
  • 3654A7=K*28T9 (K)

他に10連続+1枚の11枚合成数出しを探したところ

  • 68574=2*3*J*T39 (2~J+3)
  • 8Q74K=7*J6T59 (4~K+7)
  • 859463=J^2*7T3 (2~J+3)
  • J56843=Q7*9T9 (3~Q+9)
  • 4T5728=2^9*3^6*J (2~J+2)

がありました。

これらの合成数出しを見出すのにnishimura@icqk3さんの素数探索
http://searial.web.fc2.com/tools/somake.html
http://searial.web.fc2.com/tools/sosutansaku.html
およびEvaTecさんの協力を得ました。ここに感謝の意を表します。

その他の合成数出し

上で示した合成数出しは勝負手になりうるものとして紹介いたしました。それ以外の合成数出しについても覚えることは無駄ではありません。ここで合成数出しを覚えるメリットとして次が挙げられます。

  • 「詰んでるセット」でも出せる

例えば99QKはそのままではどう並べ替えても素数にならない「詰んでるセット」です。ところがこれをK9Q9と並べるとK9Q9=373^2で合成数出しが狙える形です。

  • 確実にそれが「素数」でないといえる

素数をまとめて覚えようと四つ子素数などのまとめて覚えられるセットを探索しているときに、「これが素数だったら全部素数だったのに~」ってことありませんか? 例えば586XはX=A,7,9,Kで素数になりますがX=3だと素数ではありません(5863=11*13*41)。そこで5863の素因数分解を覚えてしまえば、手札に5,8,6とあるときに「586Xって1つだけ素数でないのがあったけどどれだっけ?」となったときにそれが5863であると思い出すための道標になります。もちろん合成数出しとして出せたのなら万々歳です。ちなみに5863の素因数分解の語呂合わせは「小春さんは良いJK」(5863=4A*J*K)です*4

最後に

この記事には「ふみこさんは愛に生く」という変わったサブタイトルをつけましたが、何か気付かれた方もいらっしゃるでしょうか。今日は12月19日、1219の素因数分解1219=23\times53。つまり「ふみこさんは愛に生く」という語呂合わせで覚えられます!*5

*1:今なんの違和感もなくKを13と読んだ方は素数大富豪中毒者です。たぶん。

*2:素数」を使って述べられる整数環\mathbb{Z}の特徴、ともいえます。この言い換えは\mathbb{Z}以外の一意分解環上で素数大富豪が可能であることを示唆します。実際、素数大富豪の派生としてガウス素数大富豪(ガウス整数環\mathbb{Z}[\sqrt{-1}] 上の素数大富豪)が存在します。

*3:

*4:ちょうど1年前に作ったはじめての合成数出しの語呂合わせで私のお気に入り合成数のひとつです。

*5:2353といえば自然対数の底の有名な語呂合わせ「鮒一鉢二鉢一鉢二鉢至極惜しい」(2.718281828459045)に続く4桁です。